冷酷王の知られざる秘密

あげは凛子

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 私は私でオズワルドの首に抱きついて耳元に息を吹きかけると、オズワルドが軽く睨んできた。

「オズワルドだって働き者だね」
「まぁな。お前ではないが、肉を食べるとヤりたくなるのは何だろうな?」

 挑戦的な事を言って薄く笑うオズワルドは、今まで見てきたどんな男の人よりも魅力的だ。

 互いの服を脱がせ合い、裸になるなりまずは確かめるように抱き合う。心音を聞きながらオズワルドの乳首を円を描くように撫でると、それだけでオズワルドの屹立は少しだけ大きくなるのだ。

 オズワルドもオズワルドで片手で私のお尻を撫で、もう片方の手は私の太ももを撫でる。

「んっ……」

 指先の繊細な動きに私が身体を捩ると、オズワルドはすかさず私の割れ目に手を入れてきた。

「あっん!」
「もう濡れてるぞ」
「結構前から濡れてたよ」
「そうなのか?」
「うん。だって、この後オズワルドとするんだ~って思ったら勝手に濡れちゃうんだもん」

 言いながら私はオズワルドの睾丸を軽く握ると、オズワルドは低く呻いて腰を引こうとする。そんなオズワルドを逃さないように私はオズワルドの腰に腕を回して、屹立を扱き出した。

 そんな私に反撃だとばかりにオズワルドは私の蜜壺に指を二本ねじ込み、それぞれバラバラに動かし始める。

「やん! そこ、駄目だよ」
「どうして? 随分気持ちよさそうだが――っ」

 声を詰まらせたオズワルドの弱点は亀頭だ。ここに触れるとオズワルドの先走りが溢れてくる。

「オズもね?」
「……お前……」

 まさかやり返されるとは思っていなかったのか、オズワルドは軽く私を睨みつけ、そのまま私を持ち上げた。

「ここでは何の遠慮もいらない。好きなだけ喘げ」
「うん」

 天幕ではそこまで大声では喘げなかった。何故なら声が外に丸聞こえだったからだが、この部屋はどうやら防音がしっかりしているようだ。通ってきたどこの部屋からも声は聞こえなかった。

 オズワルドは私の身体にゆっくりと屹立を沈めて行く。私は完全に持ち上げられているので、オズワルドのしたい放題だ。

「はぁ……気持ち良い……溶けそう……」

 静かに私の中に沈む屹立にうっとりしながら言うと、オズワルドも深い息を吐きながら言う。

「ああ……俺もだ。挿れるだけで、どうにかなりそうだ」

 いつもよりもずっとずっと静かでゆっくりなセックスは、それだけで私達を高ぶらせた。前戯もほとんどしなかったので、まるでこれが前戯だとでも言うように。
 
 どれぐらいの間、そうしていただろう。

「流石に……もう無理だ……」
「もう?」
「……お前……」

 呆れたようなオズワルドに伸し掛った私は、そのままオズワルドの胸を枕にして欠伸を噛み殺す。

「お前だって眠いんじゃないか」
「だって、今日ずっと馬車だったんだもん。もうお尻ゴワゴワだよ」
「寝る前にもう一度風呂に入るぞ」
「うん……」

 私はノロノロとオズワルドの上から下りてお風呂に向かおうとすると、そんな私の後からオズワルドが心配そうについてくる。

「一緒に入る?」
「ああ。足取りが不安なんだよ、お前」

 言いながら二人ですっかり冷めた湯船に浸かると、どちらともなく欠伸をする。

「眠い……」
「ああ……おい、ここで寝るな」
「う~ん……」

 どうにか必死になって起きようとするが、それとは裏腹に意識がどんどん遠ざかっていく。

「こら! おい、ダリア!」
「……」

 はるか遠くでオズワルドの声が聞こえた気がしたけれど、いつの間にか私はすっかり夢の中の世界に旅立ってしまっていたようだ。

 気がつくと私はオズワルドに抱きかかえられた状態でベッドに居た。そして相変わらずナイトドレスのボタンはきっちり一番上まで閉まっている。

「あー……あのまま寝ちゃったのかぁ……」

 眠い目を擦りながらぽつりと言うと、それまで固く目を閉じていたオズワルドがうっすらと目を開けた。

「……お前、王を差し置いて風呂で寝るとは、良い度胸だな」
「ごめんってば! ちゃんと服とか着せてくれたんだね」
「仕方ないだろう? 素っ裸のまま風呂に放置など出来ないだろうが」
「はは、確かに」
「正しくは、身体も洗ったし頭も洗った。乾かして服を着せた、だ。感謝しろ」
「えっ⁉️」

 まさかそこまでしてくれているとは思ってもいなくて思わずオズワルドを凝視すると、オズワルドは少しだけ怯んだように引きつる。

「いや、冗談だぞ? 信じるなよ?」
「なんだ、びっくりした……そんな献身的な人なのかって思っちゃった」
「冷酷王と呼ばれている人間が、そんな事すると思うか?」
「思わないけど、オズワルドは全然冷酷じゃないじゃん。皆の勝手なイメージだよ」

 言いながら私はベッドから下りると、水差しに入っていた水をグラスに注いで一つをオズワルドに手渡した。

「はい、どうぞ」
「ああ、すまない」

 水を受け取ったオズワルドはそれを一気に飲み干して自分もベッドから出てくる。

「朝ご飯とかってどうしたらいいの?」
「ん? ああ、あれを使え」

 そう言ってオズワルドが指さした先に置いてあったのは、昔懐かしいダイヤル式の電話だ。しかも何だかお洒落である。

「凄い! 懐かしい!」
「懐かしい?」
「うん。私の時代にもこれあったんだよ。まぁ、とは言えはるか昔の事だけどさ」

 何だか意外な所でレトロな物に出会ってしまって思わず嬉しくなった私は、受話器を取ってオズワルドを見上げた。そんな私を見てオズワルドは何かを察したように番号を言う。

 私はそれに従ってダイヤルを回すと、嬉々として受話器を耳に当てる。使った事はないが、多分これでいいはずだ。

「おはようございます! えっと、朝食を――」

 そこまで言ってオズワルドを振り返ると、オズワルドは考える素振りも見せずに指を二本立てた。それを見て受話器に向かって喋ると、電話は切れた。

「凄い! ねぇねぇ、他にもどっかにかける用事ない?」

 動画やテレビで見たことはあっても、使った事の無かったダイヤル式の電話に興奮している私を見て、オズワルドは呆れたような顔をする。

「そんな物で喜べるなんてお手軽だな。残念だがそんな期待の目を向けられても、もうどこにも用事はないぞ」
「ちぇ」

 握りしめていた受話器を置くと、私はそのまま洗面所へ向かう。その間にオズワルドは寝巻きからラフな私服に着替えていた。

 それからしばらくして部屋に2人分の朝食が運ばれてきた。

 夕食と同じように私はオズワルドの正面を陣取って私服に着替えたオズワルド
に尋ねる。

「今日はお休みなの?」
「ああ。流石に今日はな。兵士たちも今日から一週間は休みだ」
「オズは?」
「俺の休みは今日だけだな」
「働きすぎじゃないの?」

 思わず私が問いかけると、オズワルドは肩を竦めてみせる。

「休みなんてあってもどうせやる事もないしな」
「どうして? あ、勃たなかったから⁉️ 痛い!」
「大きな声で言うな。いや、それとは関係なく、休みの日はあんな事になる前も誰かを抱いたりはしなかった。というか、休みの日にあまりそんな気分にはならないんだ」
「なるほど」

 つまりオズワルドの性欲は戦場や仕事で高ぶると発揮されるのか。



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