タケシくんはちょっとだけクサイ。〜ちょっとじゃねーよ！(# ゜Д゜)ゴルァ!〜

5 無理ゲーのはじまり

　しかし、どれだけ森の中を掻き分けて行っても
　湧き水も小川も見つからない。

　喉は激しく乾き、腹もさっきからグルグルと鳴りまくっている。


「はら・・・減った(;´Д`)」


　石を投げつけられた頭や背中がズキズキと痛み出した。

　空腹と喉の乾きでフラフラする。


　__なんだこれ？　

　___無理ゲーすぎだろ？　

　_____転生者のチート能力発動はどうした？

　特殊能力のスキルも魔法もなにも頭の中に思いつかない。
　むしろバグだらけの無理ゲー展開。　
　これ、完全にク●ゲーじゃねーか！？


　異世界転生して1日もたたずに、
　ゲームオーバーの予感しかしない。

　日もどんどん傾き、周りも薄暗くなって来た。

　これ以上は暗くて、木の枝や鋭い棘のある植物を交わしながら森の中を進むのも限界だ。

　オレはついにその場にへたり込んだ。
　もう立ち上がる気力も無い。

　そんなオレの頭の上を相変わらず羽虫どもが楽しそうにぶーんぶーんとやっている。

　そいつらをもはや手で払うこともできないくらいに疲れきっていた。

　頭のキズがズキズキとしてきた。

　日はどんどん落ちて、夜の闇が今にも森を征服しようとしていた。

　闇が深まるにつれてどんどんと心細く、恐怖心も湧いてくる。

　ついには夜の闇が完全に支配し、頭上は高い木々で覆われて星空もほとんど見えない。

　月明かりのような僅かな明かりも感じられず目隠しをされたような闇だ。
　この世界に月はないのかもしれない。

　疲れと恐怖と闇でもはやその場から動くこともできない。

　ドクドクとキズの痛みだけが脈打っている。


「朝までこのまま動かずにいるしかないか…？」


　そう震える声で一人、闇の中でつぶやいたとき、不意に周りの空気が激しく震えた。


『グオオオオ！！！』



　それはこれまでオレが生きてきて、映画やアニメですら聞いたことのない、本物の獣の雄叫びだった。



　____心臓を掴まれ、背筋が凍るほどの恐怖というものをオレはこのとき、知ったのだった。