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お寒いのがお好き
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「ただいまぁ」
部屋に入り明かりをつけると、いつも通り黒猫は窓際に佇んでいる。
「ほう、今日は機嫌悪くなさそうだな。」
こちらをちらりと見るとすぐに窓の外に目をやる。
「そうね。今日はそんなにでもなかったかな。」
「そうか、じゃあ、愚痴を聞く必要もないか。では」
「まあ、そういうなよ。聞いて帰れよ。」
帰りにスーパーで買ってきた総菜と、刺身の盛り合わせをマイバッグから出すと、黒猫はこちらにやってくる。
「聞くことあるのか?」
「まあ、それなりには。」
刺身をいくつか小皿に取り分け、黒猫の前に出す。
「仕方ない。聞くとしようか。」
言ったとたんにがっつき始める。
「さて、愚痴ってわけでもないんだが、まあ日報みたいなもんだな。」
「日報ね。」
すでに食べ終わってる。早いな。食うの。
「女子高生の花山がさ、パートのおばちゃんに嫌われてんのさ。」
「高専生だっけ?」
「そう。よく覚えてるな。」
「まあな。なんで嫌われるんだよ。何かしたのか?」
「したと言えばしてるし、してないと言えばしてないな。」
「煮え切らんな」
「言いがかりに近いからな。」
「言いがかり?」
「妬みって言う方が合ってるかな」
「嫉妬か。なんで?」
「仕事はできるんだよ。花山は。」
「ほう」
「もともとキッチンスタッフでバイトに応募してきて、物覚えもいいし、段取りもいい。動きもテキパキしてるから影のエースなんだよ。」
「お、珍しく絶賛だな。」
「まあな。評価はちゃんとするサ。」
「あれ?フロアじゃなかったか。花山。」
「そうそう。今はフロアなんだよ。」
「なんで?なんか問題あったのか?」
「問題…と、いえば、問題かな。」
「なんだ、また歯切れが悪いな。」
「あいつ、ぽっちゃり…ではないな。デブなんだよ。ひいき目に見ても。以前はぽっちゃりとデブの境界だったが、最近は振り切ったな。デブに」
「どストレートで来たな。ヘイトだぞ。」
「いや、事実を述べたまでだ。まあ、動けるデブで、仕事もできるから全く問題なかったんだけどさ。」
「じゃあいいじゃねぇか。キッチンの方が外見問題ないだろ。」
「見た目の問題じゃなくてさ。仕事はできるんだけど、デブ特有の問題でさ、汗っかきなのよ。」
「まあ、太ってる人は仕方ないよな。」
「えらく理解があるな。でも、キッチン熱いじゃん。火ぃ使うし。」
「確かにそうだな。じゃ、本人が嫌がったのか?」
「いや、本人は全く。どちらかと言えばキッチンを楽しんでたと思うよ。料理も集中して作ってたし。」
「なに、いいじゃねぇか。じゃあ。」
「いや、良くねぇんだよ。作ってる姿がさ。」
「フライヤーとか、電磁調理器とか、結構熱源多いじゃん。その横でスイーツとか盛り付ける時があるんだけどさ。」
「おう。」
「スイーツの盛り付けが好きらしくてさ。結構こだわるのよ。」
「いいねぇ。キッチンスタッフの鏡じゃん。なんでキッチンから外す必要がある?」
「心意気は良いんだけどさ。集中してると、前かがみで作業するじゃん。するとさ、ぼたぼた落ちるのよ。」
「なにが?」
「汗が。」
「ああ、まあ想像できるな。でも一応JK(女子高専生)だろ?ご褒美じゃん?」
「いやいや、そういう店じゃねぇんだよ。衛生管理者としてはひやひやするよ。」
「なるほどね。で、フロアに左遷か?」
「さすがに、それはかわいそうだろ?俺もそこまで鬼じゃないよ。」
「じゃあ、どうやって説得した?」
「『暑いだろ?』って聞いた。」
「へ、何だよいきなり。」
「いや、暑そうじゃん。」
「まあ、そうだけど、で、そしたらなんて?」
「『暑いです』ってさ。」
「その会話が何だよ。」
「で、フロア涼しいよって。」
「ああ、そういうこと。」
「そ、そしたら喜んでフロアに来た。まあ、もともとスペック高いからさ、すぐに仕事憶えて、うちのエースだよ。」
「でも影なんだろ?」
「そ、影の。」
「なんだよ。その影って。」
「まあ、大友女史ほどの華が無いのもあるが、一番の理由は、ちょいちょいいなくなる。」
「なんだ。さぼるのか?お前と一緒じゃん。」
「一緒にすんなよ。さぼってねーし。店長会議だって言ってんだろ?」
「イマジナリー店長会議な。」
「お、おう。まあ、そうともいうが。」
「で、さぼり癖か?」
「いや、さぼってるわけじゃないんだよ。むしろ働きまくってる。夕方に配送が来るんだよ。」
「配送?」
「工場から食材を送ってくるんだよ。前日に注文した奴を。」
「ああ、コンビニとかでも夜中に来てるな。」
「そうそう、ってなんで猫が知ってる?」
「それはいいから、で?」
「おぅ。でだ。配送が来たら、キッチンスタッフは届いた食材をキッチンの奥にあるでっかい冷凍庫の中で番重から棚に移すんだよ。」
「番重?」
「『ばんじゅう』ってのはプラスチック製のコンテナだな。たぶんいろんなところで見るよ。食パンとか、それこそコンビニ弁当もそれに入って配送されるぜ。」
「ああ、あれか。で、その作業が何?」
「その作業、防寒着来てやるんだけど、寒いから嫌がるバイトが多いんだよ。でもさ、花山はその作業が大好きでさ。」
「大好き?なんで?」
「涼しいからじゃない?知らんけど。以前聞いたらそんなこと言ってたよ。『暑いより寒いほうがいいです』って。変わったやつだよ」
「へぇ。じゃあ、いいやつじゃん。」
「そうなんだけどさ。一応今はフロアスタッフだからさ。パートのおばちゃんからすると、『勝手なことしてる』って思われてんのさ。」
「まあ、そうだろうけど、でも役には立ってるんだろ?」
「まあな。一応そのことも加味して、配送の時間帯のフロアは花山が抜けても大丈夫なように手厚くしてるんだけどさ。気に入らないんだとよ。」
「なんで?」
「やっかみだろうな。たぶん。」
「ああ、さっき言ってた嫉妬か?何に対して?」
「花山はさ。デブだけど、愛嬌があるんだよ。」
「ああ、居るな。そういう子。」
「俗にいう、『男好きする顔』なんだよね。」
「ほほう。じゃあ、結構モテてるのか?」
「そうだな、男のバイトは、花山派が優勢かな。後は岡田派と田中派が拮抗してるな。」
「あれ?以外に朱莉ちゃん派は少ないのか?」
「田中は手が届かない感じなんだよな。ま、あきらめてる感じかなみんな。」
「じゃあ、大友さんは?」
「ああ、あれは殿堂入り。ほぼ全員大友シンパだよ。」
「なんだよ。節操ねぇな。」
「ま、そんなもんだろうよ。別に本当に付き合うわけでもなし。『誰がかわいい』『誰が好みだ』なんて、好きに言わせてやれよ。」
「で、お前はどうなんだよ?店長特権で何とかなるんじゃねぇのか?」
「何ともならん。俺は分け隔てなくみんな好きだ。」
「おうおう、博愛精神か?病院いけ。」
「ひどい。ま、立場上、誰かに付くってわけにもいかんしな。まあ、ほんとに女子高生3人は揃いも揃ってかわいいと思うよ。大友女史にはかなわんが。」
「ははん。なるほど。お前全員が好みか。」
「ノーコメントで。ってか、俺の話は良いんだよ。」
「へいへい。で、その人気にパートのおばちゃんが嫉妬してるってか?」
「一人だけだけどな。嫉妬してるのは。」
「ほう。」
「ちょいと、勘違いしてるパートのおばちゃんが居るんだよ。まあ、おばちゃんって言っても、俺より年下だけどな。」
「年下をおばちゃん呼ばわりか。強気に出たな。」
「まあ、そういうな。旦那の稼ぎがいいから扶養の範囲で働いてるんで、あんまりシフトも入ってないんだよ。だから、女子高生と混ざることが多いんで文句が出るんだろうな。」
「女子高生に囲まれるってことは、男子高校生にも囲まれてるってことか?」
「そう、シフトはだいたいそのあたりだからな。男前の男子高校生にも囲まれてるよ。ある意味ハーレムと言えなくもない。むしろ、花山が冷蔵庫にこもってる時間が我が世の春なんだけどな。そういうわけにもいかないみたいだ。本人は至って自己肯定感が強いから、自分をそれなりの美女だと認識してると思うよ。結構勘違い発言多いからな。小西さん。」
「コニタンはちやほやしてもらえないのか?」
「コニタンって…まあ、な。男子高校生は正直だからな。」
「というと。」
「ちょいと、本人の思いとは裏腹に、見た目がね。」
「ルッキズムは感心せんな。平等に見なさい。自分の顔も。」
「俺は良いんだよ。ほっといてくれよ。あきらめてるよ。って何言わせんだ。」
「で、見目麗しくないと言うことだな、そのご夫人は。」
「丁寧に、酷いこと言うな。まあ、そういうこった。男子高校生からは『梅さん』と呼ばれてる。」
「なんだ。お前んところの店は、淋しくなったり梅だったりするのか?衛生観念どうなってんだ。」
「いや、性病の話じゃねぇよ。往年のアニメが出典だな。」
「ん?アニメ?『梅さん』?」
「ド根性〇エル」
「は?高校生が知ってるのか?ド根性ガエ〇。」
「最近、ドラマ版の再放送があったらしくて、それに興味持った奴が動画サイトで原作見たらしいよ。」
「で、似てるのか?」
「いやぁ、聞いたときコーヒー吹き出しちまった。
俺、世代だからさ〇根性ガエルの。小西さんを見たときの既視感の原因が理解できたよ。ビシっと海馬に刺さったね。その言葉が。」
「そんなに似てるのか。」
「まあ、生き写しってやつ?ていうか、血縁者ですか?ってくらい。」
「よかったじゃねぇか。かわいいJKと殿堂入りのパート。それに、有名人生き写しのパートが加わったんだろ。有名店まっしぐらだな。」
「その売り方はできそうにないな。ネットじゃなくても炎上するわ。」
「ま、延焼する前に帰るよ今日は。」
黒猫はひと鳴きして窓から出て行った。
部屋に入り明かりをつけると、いつも通り黒猫は窓際に佇んでいる。
「ほう、今日は機嫌悪くなさそうだな。」
こちらをちらりと見るとすぐに窓の外に目をやる。
「そうね。今日はそんなにでもなかったかな。」
「そうか、じゃあ、愚痴を聞く必要もないか。では」
「まあ、そういうなよ。聞いて帰れよ。」
帰りにスーパーで買ってきた総菜と、刺身の盛り合わせをマイバッグから出すと、黒猫はこちらにやってくる。
「聞くことあるのか?」
「まあ、それなりには。」
刺身をいくつか小皿に取り分け、黒猫の前に出す。
「仕方ない。聞くとしようか。」
言ったとたんにがっつき始める。
「さて、愚痴ってわけでもないんだが、まあ日報みたいなもんだな。」
「日報ね。」
すでに食べ終わってる。早いな。食うの。
「女子高生の花山がさ、パートのおばちゃんに嫌われてんのさ。」
「高専生だっけ?」
「そう。よく覚えてるな。」
「まあな。なんで嫌われるんだよ。何かしたのか?」
「したと言えばしてるし、してないと言えばしてないな。」
「煮え切らんな」
「言いがかりに近いからな。」
「言いがかり?」
「妬みって言う方が合ってるかな」
「嫉妬か。なんで?」
「仕事はできるんだよ。花山は。」
「ほう」
「もともとキッチンスタッフでバイトに応募してきて、物覚えもいいし、段取りもいい。動きもテキパキしてるから影のエースなんだよ。」
「お、珍しく絶賛だな。」
「まあな。評価はちゃんとするサ。」
「あれ?フロアじゃなかったか。花山。」
「そうそう。今はフロアなんだよ。」
「なんで?なんか問題あったのか?」
「問題…と、いえば、問題かな。」
「なんだ、また歯切れが悪いな。」
「あいつ、ぽっちゃり…ではないな。デブなんだよ。ひいき目に見ても。以前はぽっちゃりとデブの境界だったが、最近は振り切ったな。デブに」
「どストレートで来たな。ヘイトだぞ。」
「いや、事実を述べたまでだ。まあ、動けるデブで、仕事もできるから全く問題なかったんだけどさ。」
「じゃあいいじゃねぇか。キッチンの方が外見問題ないだろ。」
「見た目の問題じゃなくてさ。仕事はできるんだけど、デブ特有の問題でさ、汗っかきなのよ。」
「まあ、太ってる人は仕方ないよな。」
「えらく理解があるな。でも、キッチン熱いじゃん。火ぃ使うし。」
「確かにそうだな。じゃ、本人が嫌がったのか?」
「いや、本人は全く。どちらかと言えばキッチンを楽しんでたと思うよ。料理も集中して作ってたし。」
「なに、いいじゃねぇか。じゃあ。」
「いや、良くねぇんだよ。作ってる姿がさ。」
「フライヤーとか、電磁調理器とか、結構熱源多いじゃん。その横でスイーツとか盛り付ける時があるんだけどさ。」
「おう。」
「スイーツの盛り付けが好きらしくてさ。結構こだわるのよ。」
「いいねぇ。キッチンスタッフの鏡じゃん。なんでキッチンから外す必要がある?」
「心意気は良いんだけどさ。集中してると、前かがみで作業するじゃん。するとさ、ぼたぼた落ちるのよ。」
「なにが?」
「汗が。」
「ああ、まあ想像できるな。でも一応JK(女子高専生)だろ?ご褒美じゃん?」
「いやいや、そういう店じゃねぇんだよ。衛生管理者としてはひやひやするよ。」
「なるほどね。で、フロアに左遷か?」
「さすがに、それはかわいそうだろ?俺もそこまで鬼じゃないよ。」
「じゃあ、どうやって説得した?」
「『暑いだろ?』って聞いた。」
「へ、何だよいきなり。」
「いや、暑そうじゃん。」
「まあ、そうだけど、で、そしたらなんて?」
「『暑いです』ってさ。」
「その会話が何だよ。」
「で、フロア涼しいよって。」
「ああ、そういうこと。」
「そ、そしたら喜んでフロアに来た。まあ、もともとスペック高いからさ、すぐに仕事憶えて、うちのエースだよ。」
「でも影なんだろ?」
「そ、影の。」
「なんだよ。その影って。」
「まあ、大友女史ほどの華が無いのもあるが、一番の理由は、ちょいちょいいなくなる。」
「なんだ。さぼるのか?お前と一緒じゃん。」
「一緒にすんなよ。さぼってねーし。店長会議だって言ってんだろ?」
「イマジナリー店長会議な。」
「お、おう。まあ、そうともいうが。」
「で、さぼり癖か?」
「いや、さぼってるわけじゃないんだよ。むしろ働きまくってる。夕方に配送が来るんだよ。」
「配送?」
「工場から食材を送ってくるんだよ。前日に注文した奴を。」
「ああ、コンビニとかでも夜中に来てるな。」
「そうそう、ってなんで猫が知ってる?」
「それはいいから、で?」
「おぅ。でだ。配送が来たら、キッチンスタッフは届いた食材をキッチンの奥にあるでっかい冷凍庫の中で番重から棚に移すんだよ。」
「番重?」
「『ばんじゅう』ってのはプラスチック製のコンテナだな。たぶんいろんなところで見るよ。食パンとか、それこそコンビニ弁当もそれに入って配送されるぜ。」
「ああ、あれか。で、その作業が何?」
「その作業、防寒着来てやるんだけど、寒いから嫌がるバイトが多いんだよ。でもさ、花山はその作業が大好きでさ。」
「大好き?なんで?」
「涼しいからじゃない?知らんけど。以前聞いたらそんなこと言ってたよ。『暑いより寒いほうがいいです』って。変わったやつだよ」
「へぇ。じゃあ、いいやつじゃん。」
「そうなんだけどさ。一応今はフロアスタッフだからさ。パートのおばちゃんからすると、『勝手なことしてる』って思われてんのさ。」
「まあ、そうだろうけど、でも役には立ってるんだろ?」
「まあな。一応そのことも加味して、配送の時間帯のフロアは花山が抜けても大丈夫なように手厚くしてるんだけどさ。気に入らないんだとよ。」
「なんで?」
「やっかみだろうな。たぶん。」
「ああ、さっき言ってた嫉妬か?何に対して?」
「花山はさ。デブだけど、愛嬌があるんだよ。」
「ああ、居るな。そういう子。」
「俗にいう、『男好きする顔』なんだよね。」
「ほほう。じゃあ、結構モテてるのか?」
「そうだな、男のバイトは、花山派が優勢かな。後は岡田派と田中派が拮抗してるな。」
「あれ?以外に朱莉ちゃん派は少ないのか?」
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「じゃあ、大友さんは?」
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「ほう。」
「ちょいと、勘違いしてるパートのおばちゃんが居るんだよ。まあ、おばちゃんって言っても、俺より年下だけどな。」
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「まあ、そういうな。旦那の稼ぎがいいから扶養の範囲で働いてるんで、あんまりシフトも入ってないんだよ。だから、女子高生と混ざることが多いんで文句が出るんだろうな。」
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「そう、シフトはだいたいそのあたりだからな。男前の男子高校生にも囲まれてるよ。ある意味ハーレムと言えなくもない。むしろ、花山が冷蔵庫にこもってる時間が我が世の春なんだけどな。そういうわけにもいかないみたいだ。本人は至って自己肯定感が強いから、自分をそれなりの美女だと認識してると思うよ。結構勘違い発言多いからな。小西さん。」
「コニタンはちやほやしてもらえないのか?」
「コニタンって…まあ、な。男子高校生は正直だからな。」
「というと。」
「ちょいと、本人の思いとは裏腹に、見た目がね。」
「ルッキズムは感心せんな。平等に見なさい。自分の顔も。」
「俺は良いんだよ。ほっといてくれよ。あきらめてるよ。って何言わせんだ。」
「で、見目麗しくないと言うことだな、そのご夫人は。」
「丁寧に、酷いこと言うな。まあ、そういうこった。男子高校生からは『梅さん』と呼ばれてる。」
「なんだ。お前んところの店は、淋しくなったり梅だったりするのか?衛生観念どうなってんだ。」
「いや、性病の話じゃねぇよ。往年のアニメが出典だな。」
「ん?アニメ?『梅さん』?」
「ド根性〇エル」
「は?高校生が知ってるのか?ド根性ガエ〇。」
「最近、ドラマ版の再放送があったらしくて、それに興味持った奴が動画サイトで原作見たらしいよ。」
「で、似てるのか?」
「いやぁ、聞いたときコーヒー吹き出しちまった。
俺、世代だからさ〇根性ガエルの。小西さんを見たときの既視感の原因が理解できたよ。ビシっと海馬に刺さったね。その言葉が。」
「そんなに似てるのか。」
「まあ、生き写しってやつ?ていうか、血縁者ですか?ってくらい。」
「よかったじゃねぇか。かわいいJKと殿堂入りのパート。それに、有名人生き写しのパートが加わったんだろ。有名店まっしぐらだな。」
「その売り方はできそうにないな。ネットじゃなくても炎上するわ。」
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