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終章
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「お前か。お前があの時の騎士なのか?」
「ほぅ。思い出したか?でや?感動の再会は。楽しんでもらえたかなぁ?」
カールの表情は落ち着いているものの、その眼光は見る者が怖気を震うほどの凄味があった。しかし、カルロスはまったく気に留める様子もなく話を続ける。
「ホンマお前は役に立たん。邪魔ばっかりしよる。結局「創造主(クリエイター)」も発現してないんやろ?なんやねん。この盆暗が。お前が死んでルドルフが生き残っとったらよかったのに。なぁ?お前もそう思うやろ?」
カールはカルロスを見据えたまま動かない。
「つまらん奴っちゃな」
一気に距離を詰めようとするカルロスに対して、カールも即座にバックステップし距離を取る。
「なんや?逃げるんか?怖いんか。父ちゃん殺した相手とは戦いとう無いか?」
詰め寄るカルロス、退くカール。その追いかけっこが続く。
「へぇ。そうか。お前がそうなんか。それは意外やったなぁ」
カルロスの独り言にカールが眉を顰める。
「おい。あれ……どう思う」
会議室で画面を凝視していたルークスがサトシに尋ねる。サトシは画面に映し出されているカルロスの不審な挙動を見逃すまいと必死に視線で追いかけながら答える。
「たぶん。やり取りしてますね……管理者と」
「やっぱりそう思うか」
サトシとルークスの意見は一致していた。管理者との会話。そうアタリを付けていた。
「おい!?どういうことだ?さっきのカールの表示と言い。なんなんだよ!?」
オットーの疑問は尤もだが、サトシとルークスに答える余裕はなかった。
「なら。こういうのはどうや?」
カルロスが画面から姿を消す。会議室の面々は状況が呑み込めずにいた。
カールもフリードリヒもカルロスを見失っていた。
「ぬるいなぁ」
そのカルロスの声は、フリードリヒの背後から聞こえる。
途端に身構え振り返るフリードリヒ。カールも声の出所を目で追う。
そこには偽エリザの首に手をかけるカルロスの姿があった。
フリードリヒは即座に太刀を抜きカルロスへ切りかかるが、カルロスは短剣で太刀の軌道をずらすと、その勢いで偽エリザを捕まえたまま後ろへと飛び退く。
「エリザ!?」
「「「不味い!」」」
フリードリヒ、サトシ、ルークスがハモる。
「カール。お前には絶望を味わってもろたほうが良(え)えらしい。悪思うなや」
カルロスは、偽エリザの首に掛けた手を締め上げる。偽エリザは苦悶の表情でうめき声をあげる。
「エリザ!!?」
「おい!?カールに作戦伝えてないのか!?」
ルークスは慌ててオットーに向き直り詰め寄る。
「ちゃんと旦那の手下が説明してたよ!
……でも、あの様子だと……聞いてなかったか……」
オットーは苦い表情でカールの様子を睨みつけていた。
「エリザを離せ!」
「いややね。お前が助けたら良(え)えんとちゃうか?
まあ、間に合えば……やけどなぁ!!」
その言葉と同時にカルロスの短剣がエリザの胸を背中から貫いた。
エリザの胸から突き出した短剣は、そのまま縦に腹の方へと下ってゆく。
そして、エリザの胸元から迸る鮮血。
「ははははは!!間に合わんかったなぁ!鈍間や。役立たずの鈍間が!」
カルロスはエリザの首から手を離すと、自由落下を始めるエリザの首元を短剣で横一文字に切り裂く。
エリザの首は体からワンテンポ遅れて落下してゆく。
カールにはその様子が永遠とも思えるほどゆっくりと感じられていた。
「きっ。きっ。貴様ぁ!!??」
絶叫するカールに、またも無機質なアナウンスが流れる。
「新しい脆弱接続を発見しました」
「脆弱接続の修正を行います。0/61717216」
「脆弱接続の修正に失敗しました。」
「新しい脆弱接続を発見しました」
「脆弱接続の修正を行います。0/88261158225」
「脆弱接続の修正に失敗しました。」
「新しい脆弱接続を発見しました」
「脆弱接続の修正を行います。0/7768225844526824」
「脆弱接続の修正に失敗しました。」
「現人格の破損を確認しました。人格データの修復処理を行います」
「お、お、おおおおおぉぉぉぉぉぉ」
カールは日本刀で体を支えながら、カルロスを睨みつける。口から出るのは嗚咽とも慟哭ともつかないうめき声だけだった。
やがて、カールの体が虹色に光りはじめる。顔や腕には亀裂が現れ、そこから激しい光が漏れ出ていた。
「人格データの修復に失敗しました。」
「現人格に複数の破損個所を確認しました。引き続き人格データの修復処理を行います」
「人格データの修復に失敗しました。」
「現人格を破棄し、人格データの再構築処理を行います」
「な!?ちょっと待て!?」
ルークスが驚きの声を上げたとき、無情なアナウンスが全員の頭の中に響き渡る。
「人格データの再構築に成功しました」
「ほぅ。思い出したか?でや?感動の再会は。楽しんでもらえたかなぁ?」
カールの表情は落ち着いているものの、その眼光は見る者が怖気を震うほどの凄味があった。しかし、カルロスはまったく気に留める様子もなく話を続ける。
「ホンマお前は役に立たん。邪魔ばっかりしよる。結局「創造主(クリエイター)」も発現してないんやろ?なんやねん。この盆暗が。お前が死んでルドルフが生き残っとったらよかったのに。なぁ?お前もそう思うやろ?」
カールはカルロスを見据えたまま動かない。
「つまらん奴っちゃな」
一気に距離を詰めようとするカルロスに対して、カールも即座にバックステップし距離を取る。
「なんや?逃げるんか?怖いんか。父ちゃん殺した相手とは戦いとう無いか?」
詰め寄るカルロス、退くカール。その追いかけっこが続く。
「へぇ。そうか。お前がそうなんか。それは意外やったなぁ」
カルロスの独り言にカールが眉を顰める。
「おい。あれ……どう思う」
会議室で画面を凝視していたルークスがサトシに尋ねる。サトシは画面に映し出されているカルロスの不審な挙動を見逃すまいと必死に視線で追いかけながら答える。
「たぶん。やり取りしてますね……管理者と」
「やっぱりそう思うか」
サトシとルークスの意見は一致していた。管理者との会話。そうアタリを付けていた。
「おい!?どういうことだ?さっきのカールの表示と言い。なんなんだよ!?」
オットーの疑問は尤もだが、サトシとルークスに答える余裕はなかった。
「なら。こういうのはどうや?」
カルロスが画面から姿を消す。会議室の面々は状況が呑み込めずにいた。
カールもフリードリヒもカルロスを見失っていた。
「ぬるいなぁ」
そのカルロスの声は、フリードリヒの背後から聞こえる。
途端に身構え振り返るフリードリヒ。カールも声の出所を目で追う。
そこには偽エリザの首に手をかけるカルロスの姿があった。
フリードリヒは即座に太刀を抜きカルロスへ切りかかるが、カルロスは短剣で太刀の軌道をずらすと、その勢いで偽エリザを捕まえたまま後ろへと飛び退く。
「エリザ!?」
「「「不味い!」」」
フリードリヒ、サトシ、ルークスがハモる。
「カール。お前には絶望を味わってもろたほうが良(え)えらしい。悪思うなや」
カルロスは、偽エリザの首に掛けた手を締め上げる。偽エリザは苦悶の表情でうめき声をあげる。
「エリザ!!?」
「おい!?カールに作戦伝えてないのか!?」
ルークスは慌ててオットーに向き直り詰め寄る。
「ちゃんと旦那の手下が説明してたよ!
……でも、あの様子だと……聞いてなかったか……」
オットーは苦い表情でカールの様子を睨みつけていた。
「エリザを離せ!」
「いややね。お前が助けたら良(え)えんとちゃうか?
まあ、間に合えば……やけどなぁ!!」
その言葉と同時にカルロスの短剣がエリザの胸を背中から貫いた。
エリザの胸から突き出した短剣は、そのまま縦に腹の方へと下ってゆく。
そして、エリザの胸元から迸る鮮血。
「ははははは!!間に合わんかったなぁ!鈍間や。役立たずの鈍間が!」
カルロスはエリザの首から手を離すと、自由落下を始めるエリザの首元を短剣で横一文字に切り裂く。
エリザの首は体からワンテンポ遅れて落下してゆく。
カールにはその様子が永遠とも思えるほどゆっくりと感じられていた。
「きっ。きっ。貴様ぁ!!??」
絶叫するカールに、またも無機質なアナウンスが流れる。
「新しい脆弱接続を発見しました」
「脆弱接続の修正を行います。0/61717216」
「脆弱接続の修正に失敗しました。」
「新しい脆弱接続を発見しました」
「脆弱接続の修正を行います。0/88261158225」
「脆弱接続の修正に失敗しました。」
「新しい脆弱接続を発見しました」
「脆弱接続の修正を行います。0/7768225844526824」
「脆弱接続の修正に失敗しました。」
「現人格の破損を確認しました。人格データの修復処理を行います」
「お、お、おおおおおぉぉぉぉぉぉ」
カールは日本刀で体を支えながら、カルロスを睨みつける。口から出るのは嗚咽とも慟哭ともつかないうめき声だけだった。
やがて、カールの体が虹色に光りはじめる。顔や腕には亀裂が現れ、そこから激しい光が漏れ出ていた。
「人格データの修復に失敗しました。」
「現人格に複数の破損個所を確認しました。引き続き人格データの修復処理を行います」
「人格データの修復に失敗しました。」
「現人格を破棄し、人格データの再構築処理を行います」
「な!?ちょっと待て!?」
ルークスが驚きの声を上げたとき、無情なアナウンスが全員の頭の中に響き渡る。
「人格データの再構築に成功しました」
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