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終章
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「何の相談だい?」
サトシたちの後ろからオットーの声がした。
オットーは薄ら笑いこそ浮かべているものの、ルークスたちの話題に気楽に入る気持ちにはなれなかった。
「俺達もここで待機って命令されちまったからな。まあ、仲良くやろうや」
そう言いながら、会話を半ば強引に打ち切ろうとする。
ルークス、サトシ共にどちらも確認したいことはまだっあった。が、Sランク冒険者たちに聞かせる内容ではないと考え、この場で話すのはあきらめた。
「さ、奥の会議室でのんびりくつろぎながら待とうや」
オットーは、サトシたちを抜き去ると会議室へずかずかと入って行く。皆がそれに続きめいめい畳の上に座り込む。するとフリードリヒの部下たちが飲み物を持って現れる。
「さすがに酒ってわけにいかないか」
ルークスが、部下たちの持つ飲み物を覗き込みながら残念そうにつぶやく。彼らの持ってきた飲み物の中に酒類は無いようだった。
「待機してるだけだからな。呼び出しがありゃ戦地に赴くんだしよ。まあ、仕方ねぇってこった」
オットーがおどけながら麦茶を受け取り、うまそうに飲み干す。
「にしても、ここでじっと待ってるのも退屈ですね」
エリザは宴会場のような造りの部屋を眺めながら誰にともなく話しかける。
「だいたい、合図ってのはいつごろ来るんだ?すぐってわけにいかねぇだろ?」
オットーは麦茶のお代わりを要求しながらだらけた様子で畳の上に寝転がる。
「そっすね。ウルサンの様子が分かればいいんですけどねぇ」
サトシがルークスの方にちらりと視線を向ける。
「そうだなぁ」
けだるそうにルークスが答えると、サトシは眉間にしわを寄せながら呆れたようにルークスに詰める。
「ルークスさん。天命の書板使いましょうよ。何のための便利道具ですか……」
「あ!」
ルークスは上の空で返事していたことを誤魔化すように慌てて天命の書板を呼出し表示を確認する。
「まあ、そう睨むなよ。なんか見れるみたいだ」
「まったく……、画面大きくなったりしないですか?空間表示的な感じで」
サトシはやれやれと言った表情で空中に人差し指で矩形を描く。『このあたりに大きく表示しろ』という意図は、今度はルークスにはっきり伝わった。
「やってみよう。え~と。「投影(プロジェクション)」」
ルークスは天命のタブレットに浮かび上がっていた呪文を唱える。すると、サトシたちの着座位置から3mほど前方に、100インチほどの画面が浮かび上がる。
「うぇっ!」
オットーはのけぞるように驚き、ヨハンは言葉を失っていた。エリザは最近驚きすぎてあきれ果てていた。
「努力不足なんでしょうか……私。Sランクなんて名乗ってて良いのかしら……」
とうとう自身の現状を反省する始末であった。
その声を聞き我に返ったオットーがエリザを慰める。
「大丈夫だ。あれが異常なんだよ。な?フリードリヒの旦那も言ってたろ?気にするな!な!」
とはいうものの、オットーも何が何やら理解できずにいたのは事実であった。
「さて、ウルサンの様子は……っと」
ルークスとサトシはそんなことお構いなしに空中の大画面をさも当たり前のように眺めていた。そして、ルークスが右手を動かしながら、画面に映るウルサンの映像を調整していた。ちょうどカメラを上下左右に動かすように、画面はパンとチルトを繰り返す。
「あ、今なんか映りましたよ。その建物の奥の方、人影……ですかね」
「ウルサンの裏路地……だな。ちょうど自由連合の当たりじゃねぇかな」
「敵陣の真っただ中って事ですか。良いですね。特等席じゃないですか」
「ちょっと表通りに出てみるか」
ルークスが手を動かすと、それに呼応するように映像が前進する。ドローンによる空撮影場を見るような安定した映像だった。
薄暗い裏路地から表通りに出ると、ウルサンの被害状況が明らかになった。
「酷い有様ですね」
「だな」
ルークスの知るウルサンは華やかな繁華街という印象であったが、今映像に映し出されている街にその面影は全くなかった。
瓦礫だらけの通りには倒れ込んで動かない人影がそこら中に転がっている。通りに面した建物は焼け焦げ、一部崩れている所もある。
その通りに沿って進んで行くと、道路中央に凛と立つ小柄な人影が見えた。
「あ、ハルマンだ」
「あいつですか……」
「あれ?お前見たんじゃないのこの状況」
「俺が見たのは、影武者さんに移ってからですから。もうこの人は居なくなってましたよ」
「そうか……あ」
急にルークスが頓狂な声を上げる。
「どうしました?なんか居ましたか」
「いや。あの。これ。のぞき見してるの……管理者にばれたりしない?」
「あ!」
サトシも全くそこに考えが至っていなかった。
「「……」」
しばらく二人は顔を見合わせたまま沈黙する。
「まあ、やっちまったモンは仕方ないか……」
「ですね。気づいていないことに賭けましょう」
サトシたちの後ろからオットーの声がした。
オットーは薄ら笑いこそ浮かべているものの、ルークスたちの話題に気楽に入る気持ちにはなれなかった。
「俺達もここで待機って命令されちまったからな。まあ、仲良くやろうや」
そう言いながら、会話を半ば強引に打ち切ろうとする。
ルークス、サトシ共にどちらも確認したいことはまだっあった。が、Sランク冒険者たちに聞かせる内容ではないと考え、この場で話すのはあきらめた。
「さ、奥の会議室でのんびりくつろぎながら待とうや」
オットーは、サトシたちを抜き去ると会議室へずかずかと入って行く。皆がそれに続きめいめい畳の上に座り込む。するとフリードリヒの部下たちが飲み物を持って現れる。
「さすがに酒ってわけにいかないか」
ルークスが、部下たちの持つ飲み物を覗き込みながら残念そうにつぶやく。彼らの持ってきた飲み物の中に酒類は無いようだった。
「待機してるだけだからな。呼び出しがありゃ戦地に赴くんだしよ。まあ、仕方ねぇってこった」
オットーがおどけながら麦茶を受け取り、うまそうに飲み干す。
「にしても、ここでじっと待ってるのも退屈ですね」
エリザは宴会場のような造りの部屋を眺めながら誰にともなく話しかける。
「だいたい、合図ってのはいつごろ来るんだ?すぐってわけにいかねぇだろ?」
オットーは麦茶のお代わりを要求しながらだらけた様子で畳の上に寝転がる。
「そっすね。ウルサンの様子が分かればいいんですけどねぇ」
サトシがルークスの方にちらりと視線を向ける。
「そうだなぁ」
けだるそうにルークスが答えると、サトシは眉間にしわを寄せながら呆れたようにルークスに詰める。
「ルークスさん。天命の書板使いましょうよ。何のための便利道具ですか……」
「あ!」
ルークスは上の空で返事していたことを誤魔化すように慌てて天命の書板を呼出し表示を確認する。
「まあ、そう睨むなよ。なんか見れるみたいだ」
「まったく……、画面大きくなったりしないですか?空間表示的な感じで」
サトシはやれやれと言った表情で空中に人差し指で矩形を描く。『このあたりに大きく表示しろ』という意図は、今度はルークスにはっきり伝わった。
「やってみよう。え~と。「投影(プロジェクション)」」
ルークスは天命のタブレットに浮かび上がっていた呪文を唱える。すると、サトシたちの着座位置から3mほど前方に、100インチほどの画面が浮かび上がる。
「うぇっ!」
オットーはのけぞるように驚き、ヨハンは言葉を失っていた。エリザは最近驚きすぎてあきれ果てていた。
「努力不足なんでしょうか……私。Sランクなんて名乗ってて良いのかしら……」
とうとう自身の現状を反省する始末であった。
その声を聞き我に返ったオットーがエリザを慰める。
「大丈夫だ。あれが異常なんだよ。な?フリードリヒの旦那も言ってたろ?気にするな!な!」
とはいうものの、オットーも何が何やら理解できずにいたのは事実であった。
「さて、ウルサンの様子は……っと」
ルークスとサトシはそんなことお構いなしに空中の大画面をさも当たり前のように眺めていた。そして、ルークスが右手を動かしながら、画面に映るウルサンの映像を調整していた。ちょうどカメラを上下左右に動かすように、画面はパンとチルトを繰り返す。
「あ、今なんか映りましたよ。その建物の奥の方、人影……ですかね」
「ウルサンの裏路地……だな。ちょうど自由連合の当たりじゃねぇかな」
「敵陣の真っただ中って事ですか。良いですね。特等席じゃないですか」
「ちょっと表通りに出てみるか」
ルークスが手を動かすと、それに呼応するように映像が前進する。ドローンによる空撮影場を見るような安定した映像だった。
薄暗い裏路地から表通りに出ると、ウルサンの被害状況が明らかになった。
「酷い有様ですね」
「だな」
ルークスの知るウルサンは華やかな繁華街という印象であったが、今映像に映し出されている街にその面影は全くなかった。
瓦礫だらけの通りには倒れ込んで動かない人影がそこら中に転がっている。通りに面した建物は焼け焦げ、一部崩れている所もある。
その通りに沿って進んで行くと、道路中央に凛と立つ小柄な人影が見えた。
「あ、ハルマンだ」
「あいつですか……」
「あれ?お前見たんじゃないのこの状況」
「俺が見たのは、影武者さんに移ってからですから。もうこの人は居なくなってましたよ」
「そうか……あ」
急にルークスが頓狂な声を上げる。
「どうしました?なんか居ましたか」
「いや。あの。これ。のぞき見してるの……管理者にばれたりしない?」
「あ!」
サトシも全くそこに考えが至っていなかった。
「「……」」
しばらく二人は顔を見合わせたまま沈黙する。
「まあ、やっちまったモンは仕方ないか……」
「ですね。気づいていないことに賭けましょう」
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