中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?

ミクリヤミナミ

文字の大きさ
上 下
292 / 321
終章

3人

しおりを挟む
『3人……』
 ルークスは視線をサトシに移す。
 特に気取られている様子はない。いや、サトシに気づかれても問題ないはずだ。あえて念話(チャット)を使った理由。
『エリザベートか?』
 ルークスはフリードリヒに確認する。
『いや、エリザじゃない』
『じゃあ、誰だよ?』
 ルークスは不自然にならないように天命の書板を再び呼び出して中を確認するふりをしていた。
『一人は親っさん……初代魔王だ』
『マジか!?確かなのか?』
『ああ、仕事内容と特徴が一致する』
『にしても、あんなざっくりとした仕事と特徴なんて、結構誰でも該当するだろ?』
『いや、親っさんについてはかなり確信が持てる』
『なんで言い切れるんだよ』
『親っさんは俺の元上司だ』
『へ!?』
 フリードリヒは「勘だ」と言い逃れる事も出来たが、敢えてそうしなかった。
 ある意味ここまで実験対象である自分たちに情報を開示した生方に敬意を表した形だ。
『上司って、同じ会社か?あんたら』
『まあな。直属って訳じゃないが、か……役職は親っさんが上だったって事だな』
『そりゃぁどこの……』
 とルークスは言いかけて言葉を飲み込む。以前話した時に教えてもらえなかったことを思い出したからだ。何より、初代魔王はすでにこの世界で死んでいる。確認のしようが無いことから、これ以上の詮索は無用だと判断した。
『いや、それは良い。後二人は?』
『もう一人はルドルフだ。初代王の』
『初代王?あんたなんでそんなことまで知ってんだよ』
『昔、奴もクレータ街に住んでたからな。その時に色々話してくれたんだよ。同じ転生者同士』
『そうか。でも初代王もなんやかんやで今この世界に居ないよな?』
『ああ、殺されたらしいな。本人には確認が取れんが……』
『「本人には……」ってなんだよ。なにか秘策でもあんのか?』
『奴の本名を知ってる。それと住んでた場所もな』
『へぇ。結構親しかったんだな』
『親しいも何も、こんな話転生者同士しかできねぇんだから、同類に会ったらおのずと話すだろ?』
『ああ、そう言うもんか。で、本名がわかったらなんなんだ?』
『お前がログアウトした時にでも調べてもらいてぇんだよ。本人が生きてるのかどうか』
『いや。生きてんだろ。シナプススキャンが実用化されてからそんなに経ってないし、確か33人の中に高齢の被験者は居なかったはずだ』
『消されてるって事もあるんじゃねぇか?』
『おい、怖い事言うなよ』
『……本当にか?
 確かにお前の実験目的は理解したよ。なんだかくだらん目的で研究してるとは思うけどな。だが、他の被験者のデータをどういう目的で利用してるのかがさっぱりわからん。加えてさっきのサトシのあれだ』
 「あれ」とは、最終段階(ファイナルフェーズ)に到達したというあの表示の事だ。ルークスもそこは気になっていた。
『くだらんとは失礼な!……まあ、反論しずらいな。でも研究なんてそんなもんだろ?なんか便利になればいいなぁ~ってところから始まるんだろうが!チキショウ。まあいいや。そうだな。たぶんあれは趙博士の研究なんだろうな』
『ならなぜ俺たちに同じことが起きない?』
『それこそ俺に分かる訳無いだろ!何がトリガーになってるのか、俺が知りたいくらいだよ!
 で、なんで本人を調べる必要がある?』
『奴がこの実験に協力した理由を知りたい。あいつから聞いた話にそんな実験の事は無かった。それに俺にもそんな記憶はない。サトシも同じなんだろ?』
『まあ、確かに言われて見りゃそうだな』
 
 ルークスは自分がシナプススキャンをした時の事について思い出していた。
 全身に電極を取り付けた上で頭に大きな機械を装着して、休憩を挟みながら合計数十時間にわたって脳の内部をスキャンする。かなり大掛かりな作業になるうえに、静脈から放射性元素を含む薬液を注入しておく必要がある。
 ただ、放射性元素を含むと言っても自然界から受ける放射線量や健康診断時のレントゲン検査よりはるかに低い値で健康上直ちに問題になる事は無い。
 とは言え、少なくとも長時間の拘束と内部被ばくの危険性がある実験だ。街角アンケートのようにホイホイ依頼を承諾するような類の物ではない。
 おそらく誓約書も書くだろうし、数日間は仕事や学業を休む必要があっただろう。

 そう考えると、一番印象に残っているはずの最新の記憶がないというのはおかしな話である。
 
『少なくともお前は研究者なんだ。被験者に会っても怪しまれんだろ?』
『そうだなぁ。まあ、時間があれば調べてみるか』
『ああ、頼む』
『で、あと一人は?』
『……』
 その問いにフリードリヒは言い淀む。その様子を不審に思ったルークスは視線をフリードリヒに向ける。
『なあ?あと一人』

『……カールだ』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 ***************************** ***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。*** ***************************** マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ARIA(アリア)

残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライムからパンを作ろう!〜そのパンは全てポーションだけど、絶品!!〜

櫛田こころ
ファンタジー
僕は、諏方賢斗(すわ けんと)十九歳。 パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。 車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。 ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!! 相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム! けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!! パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

スライムスレイヤー ~イシノチカラ~

亜形
ファンタジー
「あんた、スライム増やしてどうすんの?」 *** この世界のモンスターは全てスライムが擬態した姿である。 ギルドのクエストを受け、モンスター討伐を生業としている者を討伐者と呼ぶ。 討伐者はモンスターを浄化する石の力を伝達させた武器でモンスターを倒す。 そんなことも知らなかった主人公を見ていた少女が声をかけ、一緒にモンスターを討伐していくことになる。 そして明らかになるもう一つの不思議な力。 ***

処理中です...