265 / 321
魔王の譚
人質
しおりを挟む
エリザはローブから鋭いけりを少女に向けて放つ。
ほぼ同時にウルフが背中から刀を抜きエリザに斬りかかる。
エリザは蹴りの体勢からバク転、バク中を繰り返して斬撃を躱しつつ背後に飛び退く。
少女は目の前を通り過ぎたエリザの蹴りの風圧に押され後ろに倒れこんでいた。
「おい!何やってんだ!?」
カールがウルフに食って掛かる。
「今の斬撃!殺気がこもってたぞ!?それにエリザもどうした?なんでだ?」
カールは訳が分からないといった表情で二人に詰め寄る。が、二人はそんなカールのことなど気にも留めず、お互い薄ら笑いのままにらみ合う。
「カール。相変わらずお前は察しが悪いなぁ。脳筋ここに極まれりって感じやな。そんなんやったらモテへんぞ。あ、モテてたらその歳まで独り身ってこと無いワナ」
エリザはそういいながらカラカラと笑う。しかし、その視線はウルフに注がれていた。
「おい、なんだよ。どうしたんだよ。エリザ!?お前おかしいぞ!!」
カールは必死に呼びかけるが、それに対するエリザの反応はない。
「カール。お前はじっとしてろ。もうこいつはエリザじゃない。カルロスだ」
ウルフはそういうと刀を強く握りなおす。
「カルロスって……そんな分けねぇだろ。エリザだよなぁ!?なあ。エリザ!!冗談だよな!?な?ちょっと悪戯心出してみただけだよな?」
カールは懇願するような目でエリザに訴えかけるが、エリザはにやけた表情のままウルフをじっと見つめて動かない。
「なあってばぁ!!」
「うるさいなぁ!ええ加減に……っつ!」
エリザの一瞬のスキを突くようにウルフが動く。鋭い斬撃が二度、三度とエリザの急所めがけて繰り出される。
が、エリザはことごとくそれを躱してゆく。
「っておい。いきなり来るなぁ。にしても、然(さ)しものウルフさんでもちょっと気の迷いがあるんか?なんや温(ぬる)い太刀筋やで」
「減らず口は聞けるみたいだな」
エリザの言葉にウルフが答える。が、視線から放たれる殺気は先ほどよりも強くなっていた。
「おい!お前確実に殺しに行ってるだろ!?仲間だぞ!エリザなんだぞ!」
カールは相変わらず喚き散らしている。が、ウルフに全く動じる気配はない。
「だからいい加減あきらめろ!エリザはカルロスの手に落ちた。取り戻す方法はわからん。が、奴を倒さなきゃ始まらんことだけは確かだ」
「そんな。取り戻す方法が分からないって……なんだよ。お前魔王なんじゃねぇのかよ!?」
カールはわなわなと震えながら視線を地面に落とす。太刀の柄がギリギリと鳴るほど強く握りしめられ、カールの周囲には靄のようなものが立ち上っていた。
その靄は次第に濃度を増し、周囲に向かって熱気を放ち始める。
カールを中心として周囲に向かって風が吹き始める。
「おい!カール!?」
オットーが慌ててカールに駆け寄ろうとする。が、カールの勢いに押されて立ち止まる。
カールはゆっくり顔をエリザの方に向けた。
その瞳には魔方陣が浮かび、鈍く紫色に輝き始める。
「エリザを……かえせ」
ほぼ同時にウルフが背中から刀を抜きエリザに斬りかかる。
エリザは蹴りの体勢からバク転、バク中を繰り返して斬撃を躱しつつ背後に飛び退く。
少女は目の前を通り過ぎたエリザの蹴りの風圧に押され後ろに倒れこんでいた。
「おい!何やってんだ!?」
カールがウルフに食って掛かる。
「今の斬撃!殺気がこもってたぞ!?それにエリザもどうした?なんでだ?」
カールは訳が分からないといった表情で二人に詰め寄る。が、二人はそんなカールのことなど気にも留めず、お互い薄ら笑いのままにらみ合う。
「カール。相変わらずお前は察しが悪いなぁ。脳筋ここに極まれりって感じやな。そんなんやったらモテへんぞ。あ、モテてたらその歳まで独り身ってこと無いワナ」
エリザはそういいながらカラカラと笑う。しかし、その視線はウルフに注がれていた。
「おい、なんだよ。どうしたんだよ。エリザ!?お前おかしいぞ!!」
カールは必死に呼びかけるが、それに対するエリザの反応はない。
「カール。お前はじっとしてろ。もうこいつはエリザじゃない。カルロスだ」
ウルフはそういうと刀を強く握りなおす。
「カルロスって……そんな分けねぇだろ。エリザだよなぁ!?なあ。エリザ!!冗談だよな!?な?ちょっと悪戯心出してみただけだよな?」
カールは懇願するような目でエリザに訴えかけるが、エリザはにやけた表情のままウルフをじっと見つめて動かない。
「なあってばぁ!!」
「うるさいなぁ!ええ加減に……っつ!」
エリザの一瞬のスキを突くようにウルフが動く。鋭い斬撃が二度、三度とエリザの急所めがけて繰り出される。
が、エリザはことごとくそれを躱してゆく。
「っておい。いきなり来るなぁ。にしても、然(さ)しものウルフさんでもちょっと気の迷いがあるんか?なんや温(ぬる)い太刀筋やで」
「減らず口は聞けるみたいだな」
エリザの言葉にウルフが答える。が、視線から放たれる殺気は先ほどよりも強くなっていた。
「おい!お前確実に殺しに行ってるだろ!?仲間だぞ!エリザなんだぞ!」
カールは相変わらず喚き散らしている。が、ウルフに全く動じる気配はない。
「だからいい加減あきらめろ!エリザはカルロスの手に落ちた。取り戻す方法はわからん。が、奴を倒さなきゃ始まらんことだけは確かだ」
「そんな。取り戻す方法が分からないって……なんだよ。お前魔王なんじゃねぇのかよ!?」
カールはわなわなと震えながら視線を地面に落とす。太刀の柄がギリギリと鳴るほど強く握りしめられ、カールの周囲には靄のようなものが立ち上っていた。
その靄は次第に濃度を増し、周囲に向かって熱気を放ち始める。
カールを中心として周囲に向かって風が吹き始める。
「おい!カール!?」
オットーが慌ててカールに駆け寄ろうとする。が、カールの勢いに押されて立ち止まる。
カールはゆっくり顔をエリザの方に向けた。
その瞳には魔方陣が浮かび、鈍く紫色に輝き始める。
「エリザを……かえせ」
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
獣人の里の仕置き小屋
真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。
獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。
今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。
仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)
あおっち
SF
港に立ち上がる敵AXISの巨大ロボHARMOR。
遂に、AXIS本隊が北海道に攻めて来たのだ。
その第1次上陸先が苫小牧市だった。
これは、現実なのだ!
その発見者の苫小牧市民たちは、戦渦から脱出できるのか。
それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。
同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。
台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。
新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。
目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。
昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。
そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。
SF大河小説の前章譚、第4部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる