中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?

ミクリヤミナミ

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魔王の譚

英雄を模した男

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「で、そのカルロスの様子はどんなだった?」
 役に立たなそうなシャルロットを諦め、ルークスに確認する。
「そうだな。コスプレとして見るんなら……かなりの完成度だったな。俺もリメイク版を少しプレイしたことがあるけど、まんまその人だったよ」
「いや、そんなこと聞いてるわけじゃ……って、そんなにも完ぺきだったのか?」
「ああ、細かいディテールまで作りこまれたコスチュームだったな。挙句に顔や声まで似てた、というか本物と言われても信じるレベルだよ」

 俺が聞きたかったのはコスプレの様子じゃなかったんだが、「完成度が高い」という話に嫌な予感が走る。

 俺はNPCを弄れるようになってから、かなりの数の部下を改造してきた。最初はオリジナリティ溢れるキャラメイクをしていたが、100人を超えたあたりからネタ切れとなり、ついでに飽きてきた。そこで、生前の記憶からゲームキャラやアニメキャラを作るようになった時期がある。
 メジャーどころからマイナーキャラまで、あの頃はキャラメイクが一番楽しかったころかもしれない。
 ちょうどセフィロ〇似の部下を作った時がその頃だ。コスチューム、武器もさることながら、顔かたち、立ち振る舞いや声まで(当然日本語版CVだが)凝りに凝って作り上げていった。

 ルークスの言う「カルロスの完成度」がどのくらいなのかはさておき、俺の様なスキルがなければそんなキャラメイクは難しいはずだ。少なくともあの衣装を作るだけでも大変だ。俺も一人では作れなかった。当時ジークムント……つまり初代王(ルドルフ)の助けを借りて(というか強請って)完成した。

 そんなものが、他の奴に作れるか?
 それに顔や声色が自然発生的にセフィロ〇に似ることもあり得るんだろうか?

 などと考えを巡らせていると、後ろから弾むようなシャルロットの声がする。

「そうか!そうか。そんなにクオリティが高かったか……やはり……」
 ため息交じりに上気した頬に手を当てながらうっとりとしている。
 鬱陶しい。俺の思考の邪魔をするな。

「はぁ」
 その様子を見てルークスがとろんとした目でため息をつく。

 こいつも鬱陶しい。二人とも消し去ってしまいたい。いや。完全なる下僕に落としてやるか……
 と、物騒な思考に陥りそうなほど鬱陶しい。

 が、そんなことすれば一段と魔王呼ばわりされてしまうしな。自重しよう。

「おい。うざい」
 ルークスは俺の言葉で雷を受けたように背筋を伸ばす。

 シャルロットはやれやれといった表情で俺に向き直った。
「少しくらい良いではないか。ここんところ刺激がないのじゃ。何か血沸き肉躍るような出来事でもなければ年老いてしまうではないか」
「すでに年老いた婆に言われてもな。それに、血沸き肉踊りたいならお前の孫に色恋沙汰のイロハでも教えてやれ。あれは見てて居たたまれん」
「なに?エリザがそんな楽しげなことになっておるのか?おぬしはそのような情報をなぜもっと早く寄越さんのじゃ!」

 
 ん~。殴りたい。

 いや。

 消し去りたい。

 本当にこいつも下僕にしてやろうか……

 まあ、いい。話題を変えよう。

「で、そのカルロスは他に特徴無かったのか?」

 俺の質問にルークスはしばらく考え込む。そして

「関西弁だったな。いや、大阪弁かな。それなりに流暢な」
「なんだ?それなりにって」
「いや。俺も昔大阪に住んでたことがあるんだか、奴の方言は似非関西弁には聞こえなかったんだ……けど」
 そこまで言ってルークスは口ごもる。

「けど、なんだよ」
「なんだろう。ちょっと違和感があるんだよなぁ。まあ、俺も子供のころだからさ、大阪にいたの。ネイティブってわけじゃないんだけど……」
「ネイティブってなんだよ。まあ、云わんとしてる事はわかるが……」
「ん~。言葉で表しづらいんだけど、イントネーションとかは自然なんだよ、でも何か引っかかるんだよなぁ」
 ルークスはそういうと腕を組み頭を傾けながら考え込んでしまった。

「じゃあ、その関西弁のことはいいとして、他に何か気になったことはないか?」
 するとルークスは何かを思いついたように膝を打つ。
「そうだ。あいつ手下のステータス弄ってた!」
「ステータスを?俺みたいにか?」
「いや。魔力までは付けてなかったけど、攻撃力とか防御力をかなり盛ってたな」
「それは奴のスキルでか?」
「たぶんそうなんだと思う。奴も「人心掌握☆☆」を持ってたよ。あと「まねっこ☆」も」
「☆☆か……それに、「まねっこ」って」
 まんまゲームだな。俺が知ってるゲームのスキルと同じなら「まねっこ」はかなり厄介なスキルだ。後でルークスに調べてもらおう。

「おい、その☆☆とはなんじゃ?」
 シャルロットが小首をかしげながら聞いてくる。熟女好きならたまらない仕草だろうが、俺にはピクリとも来ない。
 俺の横でルークスは悶えているが、当然しゃべらせない。
 さっき天命の書板で初めて知った情報だ。シャルロットが知らなくて当然だろう。こんなおいしい情報知られてなるものか。

「お前にゃ関係のないことだ」
「なんじゃ、おぬしらだけずるいぞ!ルークスとやら。教えてたもれ!」
「だめだ!」
「なんじゃけち臭い。というか、おぬしの下僕でもあるまいて。のうルークス。わしのもとに来んか?好待遇で迎えてやるぞ」
「だからだめだと言ってんだろ。こいつは使えるやつなんでな。おめえにゃ渡さんよ」

「お前に渡さない……って。え?。何?そういうこと。あら。やだ。ちょっと!すごい!!あなた達そういうことなの?そういう関係!?」
 シャルロットが鼻息荒く興奮し始めた。
「なに?どっち?ねえ!?ねぇってばぁ!」
「腐女子!」
 興奮するシャルロットを見て、ルークスの息遣いも荒くなる。

 もうやだ。こいつら。やっぱ帰る。
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