252 / 321
魔王の譚
英雄を模した男
しおりを挟む
「で、そのカルロスの様子はどんなだった?」
役に立たなそうなシャルロットを諦め、ルークスに確認する。
「そうだな。コスプレとして見るんなら……かなりの完成度だったな。俺もリメイク版を少しプレイしたことがあるけど、まんまその人だったよ」
「いや、そんなこと聞いてるわけじゃ……って、そんなにも完ぺきだったのか?」
「ああ、細かいディテールまで作りこまれたコスチュームだったな。挙句に顔や声まで似てた、というか本物と言われても信じるレベルだよ」
俺が聞きたかったのはコスプレの様子じゃなかったんだが、「完成度が高い」という話に嫌な予感が走る。
俺はNPCを弄れるようになってから、かなりの数の部下を改造してきた。最初はオリジナリティ溢れるキャラメイクをしていたが、100人を超えたあたりからネタ切れとなり、ついでに飽きてきた。そこで、生前の記憶からゲームキャラやアニメキャラを作るようになった時期がある。
メジャーどころからマイナーキャラまで、あの頃はキャラメイクが一番楽しかったころかもしれない。
ちょうどセフィロ〇似の部下を作った時がその頃だ。コスチューム、武器もさることながら、顔かたち、立ち振る舞いや声まで(当然日本語版CVだが)凝りに凝って作り上げていった。
ルークスの言う「カルロスの完成度」がどのくらいなのかはさておき、俺の様なスキルがなければそんなキャラメイクは難しいはずだ。少なくともあの衣装を作るだけでも大変だ。俺も一人では作れなかった。当時ジークムント……つまり初代王(ルドルフ)の助けを借りて(というか強請って)完成した。
そんなものが、他の奴に作れるか?
それに顔や声色が自然発生的にセフィロ〇に似ることもあり得るんだろうか?
などと考えを巡らせていると、後ろから弾むようなシャルロットの声がする。
「そうか!そうか。そんなにクオリティが高かったか……やはり……」
ため息交じりに上気した頬に手を当てながらうっとりとしている。
鬱陶しい。俺の思考の邪魔をするな。
「はぁ」
その様子を見てルークスがとろんとした目でため息をつく。
こいつも鬱陶しい。二人とも消し去ってしまいたい。いや。完全なる下僕に落としてやるか……
と、物騒な思考に陥りそうなほど鬱陶しい。
が、そんなことすれば一段と魔王呼ばわりされてしまうしな。自重しよう。
「おい。うざい」
ルークスは俺の言葉で雷を受けたように背筋を伸ばす。
シャルロットはやれやれといった表情で俺に向き直った。
「少しくらい良いではないか。ここんところ刺激がないのじゃ。何か血沸き肉躍るような出来事でもなければ年老いてしまうではないか」
「すでに年老いた婆に言われてもな。それに、血沸き肉踊りたいならお前の孫に色恋沙汰のイロハでも教えてやれ。あれは見てて居たたまれん」
「なに?エリザがそんな楽しげなことになっておるのか?おぬしはそのような情報をなぜもっと早く寄越さんのじゃ!」
ん~。殴りたい。
いや。
消し去りたい。
本当にこいつも下僕にしてやろうか……
まあ、いい。話題を変えよう。
「で、そのカルロスは他に特徴無かったのか?」
俺の質問にルークスはしばらく考え込む。そして
「関西弁だったな。いや、大阪弁かな。それなりに流暢な」
「なんだ?それなりにって」
「いや。俺も昔大阪に住んでたことがあるんだか、奴の方言は似非関西弁には聞こえなかったんだ……けど」
そこまで言ってルークスは口ごもる。
「けど、なんだよ」
「なんだろう。ちょっと違和感があるんだよなぁ。まあ、俺も子供のころだからさ、大阪にいたの。ネイティブってわけじゃないんだけど……」
「ネイティブってなんだよ。まあ、云わんとしてる事はわかるが……」
「ん~。言葉で表しづらいんだけど、イントネーションとかは自然なんだよ、でも何か引っかかるんだよなぁ」
ルークスはそういうと腕を組み頭を傾けながら考え込んでしまった。
「じゃあ、その関西弁のことはいいとして、他に何か気になったことはないか?」
するとルークスは何かを思いついたように膝を打つ。
「そうだ。あいつ手下のステータス弄ってた!」
「ステータスを?俺みたいにか?」
「いや。魔力までは付けてなかったけど、攻撃力とか防御力をかなり盛ってたな」
「それは奴のスキルでか?」
「たぶんそうなんだと思う。奴も「人心掌握☆☆」を持ってたよ。あと「まねっこ☆」も」
「☆☆か……それに、「まねっこ」って」
まんまゲームだな。俺が知ってるゲームのスキルと同じなら「まねっこ」はかなり厄介なスキルだ。後でルークスに調べてもらおう。
「おい、その☆☆とはなんじゃ?」
シャルロットが小首をかしげながら聞いてくる。熟女好きならたまらない仕草だろうが、俺にはピクリとも来ない。
俺の横でルークスは悶えているが、当然しゃべらせない。
さっき天命の書板で初めて知った情報だ。シャルロットが知らなくて当然だろう。こんなおいしい情報知られてなるものか。
「お前にゃ関係のないことだ」
「なんじゃ、おぬしらだけずるいぞ!ルークスとやら。教えてたもれ!」
「だめだ!」
「なんじゃけち臭い。というか、おぬしの下僕でもあるまいて。のうルークス。わしのもとに来んか?好待遇で迎えてやるぞ」
「だからだめだと言ってんだろ。こいつは使えるやつなんでな。おめえにゃ渡さんよ」
「お前に渡さない……って。え?。何?そういうこと。あら。やだ。ちょっと!すごい!!あなた達そういうことなの?そういう関係!?」
シャルロットが鼻息荒く興奮し始めた。
「なに?どっち?ねえ!?ねぇってばぁ!」
「腐女子!」
興奮するシャルロットを見て、ルークスの息遣いも荒くなる。
もうやだ。こいつら。やっぱ帰る。
役に立たなそうなシャルロットを諦め、ルークスに確認する。
「そうだな。コスプレとして見るんなら……かなりの完成度だったな。俺もリメイク版を少しプレイしたことがあるけど、まんまその人だったよ」
「いや、そんなこと聞いてるわけじゃ……って、そんなにも完ぺきだったのか?」
「ああ、細かいディテールまで作りこまれたコスチュームだったな。挙句に顔や声まで似てた、というか本物と言われても信じるレベルだよ」
俺が聞きたかったのはコスプレの様子じゃなかったんだが、「完成度が高い」という話に嫌な予感が走る。
俺はNPCを弄れるようになってから、かなりの数の部下を改造してきた。最初はオリジナリティ溢れるキャラメイクをしていたが、100人を超えたあたりからネタ切れとなり、ついでに飽きてきた。そこで、生前の記憶からゲームキャラやアニメキャラを作るようになった時期がある。
メジャーどころからマイナーキャラまで、あの頃はキャラメイクが一番楽しかったころかもしれない。
ちょうどセフィロ〇似の部下を作った時がその頃だ。コスチューム、武器もさることながら、顔かたち、立ち振る舞いや声まで(当然日本語版CVだが)凝りに凝って作り上げていった。
ルークスの言う「カルロスの完成度」がどのくらいなのかはさておき、俺の様なスキルがなければそんなキャラメイクは難しいはずだ。少なくともあの衣装を作るだけでも大変だ。俺も一人では作れなかった。当時ジークムント……つまり初代王(ルドルフ)の助けを借りて(というか強請って)完成した。
そんなものが、他の奴に作れるか?
それに顔や声色が自然発生的にセフィロ〇に似ることもあり得るんだろうか?
などと考えを巡らせていると、後ろから弾むようなシャルロットの声がする。
「そうか!そうか。そんなにクオリティが高かったか……やはり……」
ため息交じりに上気した頬に手を当てながらうっとりとしている。
鬱陶しい。俺の思考の邪魔をするな。
「はぁ」
その様子を見てルークスがとろんとした目でため息をつく。
こいつも鬱陶しい。二人とも消し去ってしまいたい。いや。完全なる下僕に落としてやるか……
と、物騒な思考に陥りそうなほど鬱陶しい。
が、そんなことすれば一段と魔王呼ばわりされてしまうしな。自重しよう。
「おい。うざい」
ルークスは俺の言葉で雷を受けたように背筋を伸ばす。
シャルロットはやれやれといった表情で俺に向き直った。
「少しくらい良いではないか。ここんところ刺激がないのじゃ。何か血沸き肉躍るような出来事でもなければ年老いてしまうではないか」
「すでに年老いた婆に言われてもな。それに、血沸き肉踊りたいならお前の孫に色恋沙汰のイロハでも教えてやれ。あれは見てて居たたまれん」
「なに?エリザがそんな楽しげなことになっておるのか?おぬしはそのような情報をなぜもっと早く寄越さんのじゃ!」
ん~。殴りたい。
いや。
消し去りたい。
本当にこいつも下僕にしてやろうか……
まあ、いい。話題を変えよう。
「で、そのカルロスは他に特徴無かったのか?」
俺の質問にルークスはしばらく考え込む。そして
「関西弁だったな。いや、大阪弁かな。それなりに流暢な」
「なんだ?それなりにって」
「いや。俺も昔大阪に住んでたことがあるんだか、奴の方言は似非関西弁には聞こえなかったんだ……けど」
そこまで言ってルークスは口ごもる。
「けど、なんだよ」
「なんだろう。ちょっと違和感があるんだよなぁ。まあ、俺も子供のころだからさ、大阪にいたの。ネイティブってわけじゃないんだけど……」
「ネイティブってなんだよ。まあ、云わんとしてる事はわかるが……」
「ん~。言葉で表しづらいんだけど、イントネーションとかは自然なんだよ、でも何か引っかかるんだよなぁ」
ルークスはそういうと腕を組み頭を傾けながら考え込んでしまった。
「じゃあ、その関西弁のことはいいとして、他に何か気になったことはないか?」
するとルークスは何かを思いついたように膝を打つ。
「そうだ。あいつ手下のステータス弄ってた!」
「ステータスを?俺みたいにか?」
「いや。魔力までは付けてなかったけど、攻撃力とか防御力をかなり盛ってたな」
「それは奴のスキルでか?」
「たぶんそうなんだと思う。奴も「人心掌握☆☆」を持ってたよ。あと「まねっこ☆」も」
「☆☆か……それに、「まねっこ」って」
まんまゲームだな。俺が知ってるゲームのスキルと同じなら「まねっこ」はかなり厄介なスキルだ。後でルークスに調べてもらおう。
「おい、その☆☆とはなんじゃ?」
シャルロットが小首をかしげながら聞いてくる。熟女好きならたまらない仕草だろうが、俺にはピクリとも来ない。
俺の横でルークスは悶えているが、当然しゃべらせない。
さっき天命の書板で初めて知った情報だ。シャルロットが知らなくて当然だろう。こんなおいしい情報知られてなるものか。
「お前にゃ関係のないことだ」
「なんじゃ、おぬしらだけずるいぞ!ルークスとやら。教えてたもれ!」
「だめだ!」
「なんじゃけち臭い。というか、おぬしの下僕でもあるまいて。のうルークス。わしのもとに来んか?好待遇で迎えてやるぞ」
「だからだめだと言ってんだろ。こいつは使えるやつなんでな。おめえにゃ渡さんよ」
「お前に渡さない……って。え?。何?そういうこと。あら。やだ。ちょっと!すごい!!あなた達そういうことなの?そういう関係!?」
シャルロットが鼻息荒く興奮し始めた。
「なに?どっち?ねえ!?ねぇってばぁ!」
「腐女子!」
興奮するシャルロットを見て、ルークスの息遣いも荒くなる。
もうやだ。こいつら。やっぱ帰る。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
『フェアリーテイル』へようこそ!~最強美人の毒舌(?)ギルド受付嬢のパーフェクトマニュアル~ギルド冒険者を指南します!
夕姫
ファンタジー
【冒険者はもう飽きました。もう服が汚れたり、野営したりしなくてすみます!】
「実は私……パーティーを解散したいんです」
ある王都の宿屋の一室で、ギルド冒険者パーティー『精霊の剣』のリーダーのリリス=エーテルツリーから驚きの発言が飛び出す。それもそのはず、『精霊の剣』は現段階で王国最強と呼んでもおかしくはない程の実力者たちだからだ。
またリリス=エーテルツリーは26歳という若さですべてのジョブをマスターしたとんでもない人物であった。
そんな『精霊の剣』に商人あがりの荷物持ちとしてパーティーの一員にいる主人公のエミル=ハーネット。彼も驚きを隠せない。そしてリリスの理由に更に仲間全員が驚愕をする。
「ギルド受付嬢になりたいんです」
その言葉に激怒し呆気なくパーティーは解散する。部屋に取り残されたエミルとリリス。しかしエミルはとんでもないものを目撃する。それはお淑やかで温和な性格だと思われたリリスからの止まらない毒舌の嵐……
そうこれは商人あがりの新人ギルドマスターと最強と呼ばれたある1人の冒険者がなぜかギルド受付嬢として、色々な問題を解決し冒険者ギルド経営しながら第2の人生を楽しむお仕事系エンジョイストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる