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魔王の譚

ぶっちゃける男

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 サトシたちがクレータ街で生活を始めて一週間ほど。
 随分とこの街の生活にも慣れたようだ。サトシはカールと共に道具製作に勤しんでいる。当初は武器防具ばかりを作っていたが、今は文明の利器を次々と製作している。大当たりってところだ。まさかここまで使えるやつだとは思わなかった。
 カールも嬉々としてそれに付き合っている。どうやらかなり気が合うようだな。

 まあ、その様子をエリザが陰からじっと眺めているのが怖いけどな。
 
 そして、もう一人。ルークスの方だ。
 一応クレータ街に居る時は俺の部下を見張り役としてつけている。これは本人も同意している事だ。時折クレータ街を離れ王都に行っているようで、あちらの部下からの連絡では単に商売に勤しんでいるようだった。
 何より石油を手に入れているというのが驚きだった。石油と「創造主(クリエイター)」。この二つがあるだけでこの街の近代化が一気に捗る。この二人の協力は何としても取り付けないとな。

 ルークスとは一度腹を割って話す必要があるな。


 そんな様子を観察しつつ、数日が過ぎた。

 ルークスの様子を確認するが、特に怪しい動きは無い。むしろ生き生きとしている。部下からの報告では、ここ数日は風呂に入る時間が長くなっているらしい。クレータ街の生活を謳歌してくれているようでありがたい。
 その間サトシはカールとよろしくやっている様だ。相変わらずエリザは奥歯を噛みしめながらそれを見ているらしい。冗談抜きにそのうち血の涙を流すんじゃなかろうか。ちょっと心配だ。

 ということで、そろそろ頃合いかな。

 ルークスを俺の屋敷に招待する。今日は宴会場ではなく俺の書斎。というか、これまた親っさん達がふざけて作った茶室だ。
 入り口も狭けりゃ中も狭いが、その狭さがなぜか心地いい。
 今、俺とルークスはその茶室で胡坐をかきながら酒を酌み交わしている。

 やっぱり俺アルコール依存症かなぁ。
 と、少し心配にはなるがやめる気はない。


「で、どうだ。クレータ街の生活は?」
「いや。良いもんだな。ここまで快適だとは思ってなかったよ。サトシがヨウトを改造してたけど、まさにこの街は魔改造と呼ぶにふさわしいな」
「魔改造ね……」
 
「で、俺に何の用だ?」
「いや、なに。腹を割って話したいと思ってよ」
「俺の何を知りたいんだ?」
 少し警戒されたか?
「いや。まあ体裁ぶっても仕方ないからな。以前も伝えたが、ここ数日のお前の行動は監視させてもらってる」
「だな」
 王都の尾行も気づいてるって事か……
「で、その上で、俺はお前に敵対する意思はない」

 その言葉を聞いて、ルークスはしばらく考え込む。
「……じゃあ、俺にどうしろと?」
「話を聞きたいだけだよ」
「話ねぇ……」
 さっきからかなりの量の酒を飲ませてるがあまり効果は無さそうだ。やはり警戒の色が濃い。が、以前ほどではない。
 それに、「魂持ち」が酔った時の表示とも違う。「魂無し」に酒を飲ませたときに近い挙動だ。
 
「俺に何もかも打ち明けちまおう……なんて気分にならねぇか?」
「ならんな。流石に」
 いろんな意味で素直だねぇ。

「なら、俺が話す内容を聞いてもらえるかい?」
 俺がそう言うと、ルークスはぽかんとした表情を見せる。
「あんたが、話す?」
「ああ、俺がこれから色々と話す。中には質問もあるが、答えたくなければ答えなくてもいい。聞いてくれるだけで十分だ」
「それは、答えなくても俺の心が読めるって事か?」
 ルークスの警戒度合いが上がる。が、不信感までは抱いていないようだ。
「そこは好きなように解釈してもらっていいさ」

「……そうか。まあ、どうぞ」
 ルークスは覚悟を決めたように俺に向き直った。

「さて、それじゃ。まず何から話そうか
 そうだなぁ、……俺はこの世界が仮想現実だと思ってるんだが。その認識に間違いはないか?」
「!?」
 ルークスはいきなり固まった。「魂無し」に近い反応だな。奴らが思考停止した時こんな感じになる。周囲をぶんぶん回ってた「警戒」やら「疑念」の文字が一気に消え去った。周囲を回るキラキラした文字情報もぴたりと止まってる。

 なるほど。図星だな。
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