中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある？

魔王の譚

逃げる男

「少なくとも2回以上は死にましたね。で、あれから4年くらいは経ちましたかねぇ」

　軽い。その青年の語り口は異常に軽かった。しかし、それとは対照的に内容はかなりヘビーなものだった。

　カールが去ってからもゴブリンに襲われて殺されたが、時間をさかのぼり蘇る。それを数回繰り返しているうちに強くなったそうな。

　普通に聞いていれば、「何言ってんだこいつ？」と相手にすらしない内容だったが、奴の能力が真実である事を証明していた。


　サトシと一緒に居た魔導士風の男……ルークスの正体について、サトシも正確には理解していないようだ。しかし、彼の話から二人のこれまでの状況についてはある程度把握できた。

「そうか。アイちゃんは……」
　カールはそこまで言うと、神妙な面持ちで黙り込んだ。

「あ、それよりカールさん」

　それより？

「王都に戻るんですか？もし戻るなら、俺に道具製作と剣術教えてもらえませんか？」

「あ、いや」
　そりゃ口ごもるよな。ちょっとこのサトシってやつはおかしいな。

　何処が？と言われると困るが、何かがおかしい。まともじゃない。

　……

　いや。俺の周りまともな奴いなかったわ。

　にしても、おかしいな。

「ダメですか？」
「いや。だめってわけじゃないんだ。俺王都に戻らないことにしたんだよ……」
　と、カールはバツが悪そうに俺の顔に視線を移す。

「王都に戻らない？」

　サトシはその言葉に疑問を抱いたようだったが、大事なことを忘れてた。

「取り込み中悪いんだが、一旦クレータ街に戻るぞ」
「戻る？」
　オットーが訝しがる。
「ああ、さっきサトシたちが天使を撃退しただろ？たぶん第二波が来る。それに、最後の攻撃。あれでクレータ街も被害を受けてるかもしれん。確認したいんだよ」
「あのコウクウキって奴で帰るのか？」
「いや。あれはもう使えんだろうな。捨てていく」
「「航空機！？」」
　サトシとルークスが食いついた。
「なんだ！？あんたたち航空機まで作ってんのか！？何モンだ？」
「いや、俺がお前に問いたいよ。が、今はそれどころじゃない。奴らが来たら流石に次は太刀打ちできん。サトシ。さっきの電磁パルスだろ？」
「あ、え！？……はい。よくわかりましたね」
「まあな。で、あれもう一回できるか？」
「いえ。なけなしの弾は使っちゃいましたからね。あ、最大魔力で「ガンマ線バースト」打てればもしかしたら……」
「ガンマ線バースト！？」
　なんだよ。こいつらそんな技まで使えるのか？最大魔力ってんなら、カールが居るから何とかなりそうな気もするが……
「今は準備不足だろうな。時間がない。ってことで、いったん引き上げるぞ。クレータ街まで戻る」
「ウルサンや王都はどうするんだ？」
「さっきまでの雲が無くなったからな。たぶん通信はつながるんじゃないか。そんな気がする。だからいったん帰るぞ」

　するとカールが食って掛かる。
「帰るって……さっきコウクウキ使えないって言ったろ？」
「大丈夫だ。たぶん転移はできる。おい、急ぐぞ」

　正直なところ、サトシとルークスを連れて行くのは少々心配だが、今天使たちの攻撃を受けるわけにはイカンし、こいつらを野放しにするのも問題がある。仕方がないので連れていくことにする。

「おい、お前達も俺の周りに寄れ。一気にクレータ街まで飛ぶぞ」
　カールやエリザ達と同じように、サトシとルークスも俺の周りに近づいてきた。この様子からして、こいつらも転移はできるんだろうな。まあ、これだけのステータスで出来ない方が驚きだしな。
「じゃ、行くぞ」
　周囲の風景が一瞬歪むと、目の前には見慣れたクレータ街入り口の風景が広がっていた。