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魔王の譚

魔王と呼ばれた男

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「大丈夫だ!あきらめるな。救援部隊がこちらに向かってるはずだ」
「……ほ……だ……」
「大丈夫。安心しろ。絶対に守ってやる」

 ……


 ………


 ……………


 自分が転生したことに気付いたのは3歳頃だろうか。

 急に昔の記憶がよみがえって自分が転生したんだと気づいた。

 その時から周囲の人々も違って見えるようになった。

 それは、気分的な問題ではなく明確に、本当に明確に「違って」見えた。

 

 それに気づいたのは父親の姿を目で追っているときだった。

 彼の周囲がぼんやりと光って見えた。

 目ヤニでもついたかと、何度も目を擦ってみるが、そのぼんやりとした光は収まる気配がなかった。

 視力が悪くなったのかと心配になり、他の人も見てみると同様に薄っすらと光っている。

 流石にこの年で目が悪くなるのは勘弁してほしいな……などと、父親の背中を凝視していると
 
 そのぼんやりした光が、細かい光の粒の集まりであることが分かった。

 その光はとても神秘的だった。

 キラキラと揺らめく様に淡く光っている。俺はすぐにその様子に夢中になった。

 そりゃそうだろう。転生したこの世界は、クソが付くほどの田舎だ。周囲に面白そうなものなど何もない。

 以前の記憶がよみがえった俺には、トンボやバッタを追いかけて喜べるような純真な心があるはずもない。
 
 そんな俺にとって、その光は神秘的である以上に、それが何なのか。謎めいていて夢中になった。
 
 
 殆どの人にはその光がまとわりついている。そしてその光り方は人それぞれ違っていた。

 しばらく観察を続けていると、その光の粒がよりはっきりと見えるようになってきた。

 光の輪郭が明確になり、それらの光の粒が記号や文字だと認識できるようになった。

 今まで揺らめいて見えていたのは、その記号が目まぐるしく変化しているためだった。
 
 俺は一層その様子に興味が湧いた。それを見ているのが楽しくて、道行く人たちを眺めてはその記号の意味に思いを巡らせるようになった。

 確かに、前世を思い返すと物事の規則性を推測したりするのは得意だったかもしれない。そのおかげか、それらの記号や文字が表す意味に気がづいた。
 
 その浮かび上がる文字や記号はその光を纏う人々の「能力」や「特徴」だ。
 
 能力の高い人物の場合、その周囲には大量の文字や記号が鮮やかな光を放ちながら激しく動き回っている。しかし、平凡な能力しか持たない者には、少数の記号と文字が緩やかに浮かんでいるだけだった。


 俺の父と祖父に当たる人物の周りには、驚くほど大量の文字と記号が目まぐるしく動き回り明らかに異彩を放っていた。

 実際、俺の父と祖父は超常的な能力の持ち主だった。世に言う「魔王」だ。

 これは比喩ではなく。実際東方に住む人々から「魔王」と呼ばれて恐れられる存在だった。

 つまり、俺はその3代目と言うことだ。


 それに気づいたときは、正直天狗になっていた。転生したら「魔王」だった。素敵じゃない。人生勝ち組だよ。なんてね。そんなことを思っていた。

 
 あいつらと会うまでは
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