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生方蒼甫の譚
朱に交われば赤くなる
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俺とサトシによる死闘の幕が切って落とされた!!
……とはならなかった。
ワンサイドゲームですな。
ほぼいじめです。
いじめ。かっこ悪い。
そんな感想です。
俺が戦闘態勢に入るや否や、足元から突き出てくる無数の茨。
痛くないのかって?
痛いに決まってるじゃないですか!?
5倍ですよ。5倍。
激痛に意識が飛びますよ。でもね。それをスキルが許さない。
どうやら、痛みによる気絶もスキルで回避できるみたいなんですよ。
あら素敵。状態異常回避ってこんなに有用なの!?
ってなると思います?
むしろこの痛みが状態異常だろ!?これを回避してくれよ。
いや、確かに損傷治癒効いてますよ。茨で足止めを受けて欠損した部位がみるみる再生していきますから。いやはや。凄いね。凄い。ああすごい。
なら、なぜ痛覚を消してくれなかったのか……ってことですよ。回復痛まである。まあ、正直そんなの誤差範囲ですけどね。
回復痛なんて普通預金の利子くらいしか感じないですよ。眉毛の「ふけ」かって話ですよ。
正直戦闘が始まってすでに20分ほどたっているが開始早々戦意喪失。
ええ、今となってはもう無我の境地ですよ。「どうにでもして」そんな気持ちです。
そんな気持ちを知ってか知らずか、嬉々として茨で攻撃してくるサトシ。
ほぼ木偶と化した私の体をその茨がむしばんでゆきます。
………
……
……さん
……クスさん
ルークスさん
「はっ!」
サトシの呼びかけで我に返る。完全に無我の境地に到達していたらしい。
「大丈夫ですか?全く攻撃してこなかったですけど」
「お前さ?本気でそれ言ってる」
「と言いますと?」
「……お前、大丈夫か?」
「大丈夫?」
「いや、ホントに理解してないのか?お前の攻撃、俺に反撃のスキを与えてないだろうが。あれでどう反撃しろって言うんだ?」
「またまた、反撃出来たでしょ?」
あまりにふざけたサトシの物言いに、いい加減俺も怒りを通り越して呆れてきた。こいつとはしっかりと話し合う必要がありそうだ。
「あのな。もう反論するのも疲れたけどさ。お前自分の状況を冷静に判断しろ。」
「はい?」
「あの攻撃を受けて反撃しろって方が無理だ。俺には当然痛覚もある。前も言ったが5倍に増幅される呪い付きだ。痛みで反撃なんかできるわけないだろ」
「え?」
サトシは硬直していた。俺の静かな物言いに、ようやく本心からの言葉だと気づいたようだった。
今まで俺が必死に伝えてきた言葉はこいつには冗談として届いていたんだろうなぁ。
体の傷はすべて治癒している。サトシが茨を消したことで、体中の穴はすべてふさがり体力も全回復状態だった。
「まあ、いいや。で、経験値と熟練度はどうだった?」
俺の方もステータスを確認するが、痛い目にあっただけで経験値は入っていないようだった。
攻撃してないし、そりゃ当然か。
「思いのほか入りませんでしたよ。熟練度は武器防具作ってる時と同じくらいの感じですね。あえて模擬戦でやる必要はないと思います」
「ならよかった。もうこんな目はこりごりだよ。……ってかさ。痛覚消せない?」
「どうしたんです?」
「いや。だからさっきも言ったろ?おれ今「痛み5倍の刑」なんだよ。何とかしてほしいんだ」
「そっすね。痛覚無効化ですか。あ、いや。調べてくださいよ」
いけね。また忘れてたよ。存在を。
「観測者」
慌てて天命の書板を呼び出す。
「いい加減使い馴れてくださいよ」
「すまん」
というわけで表示を確認する、と。
「痛覚無効化に有効な付与スキル
念 願(極):30%の確率で願いが叶う
切 願(極):50%の確率で願いが叶う
自己暗示(極):80%の確率で自己暗示がかかる
催 眠(極):高確率で願いが叶う
観念動力(極):物質を操作可能
狂戦士(極) :混乱状態+無差別物理攻撃(対象防御力-20%)
天使転生☆ :制御不能+無差別光属性攻撃(対象魔法防御力-20%)
悪魔転生☆ :制御不能+無差別闇属性攻撃(対象魔法防御力-20%) 」
「あ~。自己暗示的に「痛覚無効」を発動しろって事か。で、後半の奴は全部「バーサク」じゃん。そりゃ痛覚もクソも無いわな」
「現実的なのは「催眠」か「観念動力」ですかね」
「その辺だな。どれかアクセサリーに付与できるか?」
「どれが良いです?」
「あ~。そうなぁ。痛覚が無い分ダメージに気づかないことがあると危ないしな……、「治癒」とか「再生」と一緒にしてもらえると助かるかな」
「じゃあ、追加しときますね」
軽いなぁ。
「どうぞ」
早速ステータスで確認すると、「賢者の胸当て」に観念動力が追加されていた。
「たぶん痛覚無効を念じればいいんだと思いますよ」
「じゃあ、ちょっとやってみるよ」
言われたとおりに痛覚無効を念じてみる。と。
ピキーン!
目の前に電球が灯ったような明るさを感じ、甲高い音が頭の中に鳴り響く。そして
「スキル『痛覚無効』を獲得しました。」
は?
……とはならなかった。
ワンサイドゲームですな。
ほぼいじめです。
いじめ。かっこ悪い。
そんな感想です。
俺が戦闘態勢に入るや否や、足元から突き出てくる無数の茨。
痛くないのかって?
痛いに決まってるじゃないですか!?
5倍ですよ。5倍。
激痛に意識が飛びますよ。でもね。それをスキルが許さない。
どうやら、痛みによる気絶もスキルで回避できるみたいなんですよ。
あら素敵。状態異常回避ってこんなに有用なの!?
ってなると思います?
むしろこの痛みが状態異常だろ!?これを回避してくれよ。
いや、確かに損傷治癒効いてますよ。茨で足止めを受けて欠損した部位がみるみる再生していきますから。いやはや。凄いね。凄い。ああすごい。
なら、なぜ痛覚を消してくれなかったのか……ってことですよ。回復痛まである。まあ、正直そんなの誤差範囲ですけどね。
回復痛なんて普通預金の利子くらいしか感じないですよ。眉毛の「ふけ」かって話ですよ。
正直戦闘が始まってすでに20分ほどたっているが開始早々戦意喪失。
ええ、今となってはもう無我の境地ですよ。「どうにでもして」そんな気持ちです。
そんな気持ちを知ってか知らずか、嬉々として茨で攻撃してくるサトシ。
ほぼ木偶と化した私の体をその茨がむしばんでゆきます。
………
……
……さん
……クスさん
ルークスさん
「はっ!」
サトシの呼びかけで我に返る。完全に無我の境地に到達していたらしい。
「大丈夫ですか?全く攻撃してこなかったですけど」
「お前さ?本気でそれ言ってる」
「と言いますと?」
「……お前、大丈夫か?」
「大丈夫?」
「いや、ホントに理解してないのか?お前の攻撃、俺に反撃のスキを与えてないだろうが。あれでどう反撃しろって言うんだ?」
「またまた、反撃出来たでしょ?」
あまりにふざけたサトシの物言いに、いい加減俺も怒りを通り越して呆れてきた。こいつとはしっかりと話し合う必要がありそうだ。
「あのな。もう反論するのも疲れたけどさ。お前自分の状況を冷静に判断しろ。」
「はい?」
「あの攻撃を受けて反撃しろって方が無理だ。俺には当然痛覚もある。前も言ったが5倍に増幅される呪い付きだ。痛みで反撃なんかできるわけないだろ」
「え?」
サトシは硬直していた。俺の静かな物言いに、ようやく本心からの言葉だと気づいたようだった。
今まで俺が必死に伝えてきた言葉はこいつには冗談として届いていたんだろうなぁ。
体の傷はすべて治癒している。サトシが茨を消したことで、体中の穴はすべてふさがり体力も全回復状態だった。
「まあ、いいや。で、経験値と熟練度はどうだった?」
俺の方もステータスを確認するが、痛い目にあっただけで経験値は入っていないようだった。
攻撃してないし、そりゃ当然か。
「思いのほか入りませんでしたよ。熟練度は武器防具作ってる時と同じくらいの感じですね。あえて模擬戦でやる必要はないと思います」
「ならよかった。もうこんな目はこりごりだよ。……ってかさ。痛覚消せない?」
「どうしたんです?」
「いや。だからさっきも言ったろ?おれ今「痛み5倍の刑」なんだよ。何とかしてほしいんだ」
「そっすね。痛覚無効化ですか。あ、いや。調べてくださいよ」
いけね。また忘れてたよ。存在を。
「観測者」
慌てて天命の書板を呼び出す。
「いい加減使い馴れてくださいよ」
「すまん」
というわけで表示を確認する、と。
「痛覚無効化に有効な付与スキル
念 願(極):30%の確率で願いが叶う
切 願(極):50%の確率で願いが叶う
自己暗示(極):80%の確率で自己暗示がかかる
催 眠(極):高確率で願いが叶う
観念動力(極):物質を操作可能
狂戦士(極) :混乱状態+無差別物理攻撃(対象防御力-20%)
天使転生☆ :制御不能+無差別光属性攻撃(対象魔法防御力-20%)
悪魔転生☆ :制御不能+無差別闇属性攻撃(対象魔法防御力-20%) 」
「あ~。自己暗示的に「痛覚無効」を発動しろって事か。で、後半の奴は全部「バーサク」じゃん。そりゃ痛覚もクソも無いわな」
「現実的なのは「催眠」か「観念動力」ですかね」
「その辺だな。どれかアクセサリーに付与できるか?」
「どれが良いです?」
「あ~。そうなぁ。痛覚が無い分ダメージに気づかないことがあると危ないしな……、「治癒」とか「再生」と一緒にしてもらえると助かるかな」
「じゃあ、追加しときますね」
軽いなぁ。
「どうぞ」
早速ステータスで確認すると、「賢者の胸当て」に観念動力が追加されていた。
「たぶん痛覚無効を念じればいいんだと思いますよ」
「じゃあ、ちょっとやってみるよ」
言われたとおりに痛覚無効を念じてみる。と。
ピキーン!
目の前に電球が灯ったような明るさを感じ、甲高い音が頭の中に鳴り響く。そして
「スキル『痛覚無効』を獲得しました。」
は?
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