中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?

ミクリヤミナミ

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生方蒼甫の譚

一発逆転

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 殺人虫キラーバグの攻撃は単調だった。
 上空100mほどの位置で竜巻形状を作り、そこから帯状に編隊を組んで降下してくる。その触手のような帯状の編隊は地面すれすれの位置を滑るように俺たちの方へ向かってくる。
 途中に障害物があっても、物量にものを言わせた体当たり攻撃で粉々に打ち砕く。サトシの超合金イモータライト防壁がなければ、すでにこの辺り一帯は更地になっているだろう。

 事実、農業用施設や収穫を控えていた麦畑、田んぼについては壊滅している。イナゴの大群に襲われたような有様だ。

 サトシは、俺やアイの動きに合わせて防壁を出現させる。すでに結構な距離が出来上がっているので、防塁といった方が適切だろう。俺たちはその防塁に潜みながら、殺人虫キラーバグの背後に回り込み「超高出力LASER」をお見舞いする。

 ドガガガカァァァァァァッァァーーーん!

 いやいや、サトシの「超高出力LASER」えぐいな。
 さすが無属性魔法の熟練度が高いだけある。レベルこそ下がってしまったが、とんでもない破壊力だ。一撃で殺人虫(キラーバグ)は蒸発してしまう。
 だが、敵もさるもの。LASERは強力だがそれ自体の攻撃範囲は狭い。俺たちが攻撃態勢に入ると殺人虫キラーバグは編隊を解き、的を絞らせないように霧散してしまう。

「なかなか厄介だな」
「即座に攻撃方法に対応してきましたね」

 先ほどから連続で攻撃してはいるが、まだ竜巻の半分ほどしか駆除できていない。

 それに加えて、その竜巻を悠然と眺めるように天使たちが控えている。あれらが全部攻撃態勢に入ったら、とてもじゃないが太刀打ちできそうにない。が、

「なあ、後ろの天使たちどう思う?」
「どう?って言いますと?」
「あいつらもいずれ攻撃してくると思うか?」
「どうですかね。今の竜巻を倒せば、順に攻めてくる感じですかね」
「今攻撃したらどうだろう?藪蛇になるかな」
「あーそういうことですか。ん~」
 サトシは俺の意図に気づいてくれたようだ。今上空にいる天使たちはまさに「天使型」を保ってくれている。集合している今ならサトシの「超高出力LASER」で2匹ほどは屠れそうな状態ではある。しかし、なまじ手を出してしまうと今まで傍観していたやつら全員が動き出す可能性も否定できない。そんなことになったらそれこそヨウトは瞬時に壊滅だ。

「やっぱ厳し……」
 俺が天使型を保った殺人虫キラーバグから視線を背後にいるサトシに向けると、そこには両掌を天使型に向けたサトシと、サトシの背中に手を当てるアイの姿があった。

 へ?何やってんの。

「薙ぎ払え!!」
 ふいにアイが叫ぶ。

「どこの殿下だよ!!」
 つい突っ込んでしまった。

 サトシは両掌から今までとは比較にならないほどの大出力で「超高出力LASER」を放つ。そして放ち続けたまま横一文字に振り切る。

 複数の天使型が「超高出力LASER」で横なぎに切り付けられ、上下真っ二つに分断される。

 一瞬の静寂の後、

 ズガガガガガカァァァァァァッァァーーーん!!

 激しい爆発と、強烈な熱風が俺たちの方まで届く。

 俺たちは防塁の中に身を潜め、それが収まるのを待つ。あたりの様子を探りながらサトシの方を見ると、満面の笑みだ。

「おいおい、大丈夫かよ。こんな事して」
「まあ、何とかなるんじゃないですかね。これで数を減らせなきゃどのみち詰みですしね」

 ノープランかよ。衝動的すぎんだろ。

 爆風が落ち着いたのを見計らって防塁から顔を出し、奴らの様子を窺うと……

「詰みですかね」
「詰みだな」

 再び編隊を整えて天使型を保つ殺人虫キラーバグ達は両手を広げ、こちらに向かって攻撃態勢を取ろうとしているところだった。
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