181 / 321
生方蒼甫の譚
戦闘準備
しおりを挟む
「魔法使えるか?」
「試してみましょう」
「ファイアボール……」
「トルネード……」
「……」
詠唱してみるが全く反応がない。
ステータスを確認すると、確かに属性がグレーアウトしている。
「あ、やっぱり無属性はグレーアウトしてませんよ」
「マジで?あ、ホントだ」
サトシは試しにとばかりに、あれやこれやと道具を作り出す。
「イケますね。このスキルは使えますから、攻撃も防御も大丈夫だと思います」
「反重力」
俺も試しに使ってみた。一応浮かぶことはできた。が、レベルが低すぎるため動きが緩慢だ。
「これ厳しいな。攻撃も弱いって事だろ?」
「一応熟練度はそのままみたいですから、そっちがどのくらい効くかでしょうね」
「あてには出来んな」
実際敵さん次第だな。本気で通常兵器が来ようもんなら太刀打ちできるかわからん。ミサイル攻撃を防ぐの?無理っしょ。
あ、超合金(イモータライト)か。あれならいけるか?
「なあ、サトシ。超合金(イモータライト)で鎧とか作れる?」
「! なるほど!!イケるかもしれませんね。鎧に使う板材を、段ボール構造とかハニカム構造にすれば……」
なんかスイッチ入ったみたいだな。随分考え始めたけど……
「そんな時間考えてるあるか?」
「そうでした。取り急ぎ作ってみます。まずはアイから」
まずアイなのか。
アイの体にまとわりつく様に鎧が完成してゆく。
すげぇな。こんな作り方出来るんだ。ちょっといやらしいな。
女性用に曲線が美しい鎧だ。
というか、少し見ない間にアイは大人びたなぁ……
眩しい物を見る目でアイを見ていたら、サトシとアイに睨まれた。
解せぬ。
「次はルークスさんですね。」
「すまん。助かる……」
俺の方もやはり鎧が体にまとわりつく様に出来上がって行く。
「ってあれ?ローブの下なの?ローブボロボロにならない?結構気に入ってるんだけど」
「ローブの上だとデザイン的にごてごてするかなぁと思って。それに中だとごわつきますよ。たぶん」
そんなことを言いながらサトシの作業は止まらない。スキル使いこなしてんなぁ。初代王もこんな感じだったのかなぁ。
「あ、そうだ。カールだっけ?お前が習ったって言う鍛冶屋」
「……ああ、はい」
なんか歯切れ悪いな。なんだろう。
「行ってきたよ。カールは魔王討伐で不在だったけど、代わりに腕のいい若い鍛冶屋が店番してた」
「あ、そうなんですね……どんな店でした?」
「えげつなかったよ。お前が自分に厳しい理由がわかったよ。あそこに置いてあったカールの作品異常だわ。全部伝説級以上だった。今度一緒に見に行こうぜ」
「今度があればですね」
「ヤな事言うね」
「それこそ、ルークスさんこそフラグ立てないでくださいよ」
「ちげぇねえ」
サトシはそんな会話の中で自分の鎧と共に、俺たちの武器も作り上げ暮れていた。
さて、準備は整った。時間は?すると天命の書板(タブレット)には
「3分」
と表示される。
場所は?
「ヨウト発電所」
やっぱりか。
「サトシ。発電所に転移するぞ!」
「わかりました。あ、ちょっと待ってください。たぶんルークスさんが思ってるヨウトとは随分雰囲気が変わってますから俺が転移しますよ」
確かにモニターで見ただけでも随分変わっている。あの中に立つと全く以前とは景色が違うんだろうな。それはそれで楽しみだ。
さあ、守りに行くか。
「転移」
サトシが俺の肩に手をかけ転移の魔法陣が足元に広がる。
いつの間にかサトシに身長負けてるな。ちょっとショック。
転移が終わると、俺の知るヨウトはそこにはなかった。周囲は整備された田畑と奇麗なアスファルト敷きの広い道路。電柱に電線。以前住んでいた建物は何処にもなかった。新興住宅街と言った雰囲気だ。ここまで発展させるのはさぞ大変だったろう。サトシの努力を無駄にしないように俺も協力しよう。
サトシはヨウトに到着するなり、大声でティックたちに指示を飛ばす。
「ティック!!アン!!みんなを建物の地下に連れて行って!これからとんでもない攻撃が来るかもしれないから!」
離れた所に居たティックとアンが慌ててその指示に従う。周囲の従業員たちに声をかけながら、それぞれ手近な建物に避難してゆく。
「建物の中で大丈夫か?がれきに埋もれたらどうにもならんだろ?だいたい地下でも破壊されるんじゃないか?」
「たぶん大丈夫ですよ。こんなこともあろうかと、地下にイモータライトでシェルター作っておきましたから」
「こんなこともあろうかと思ってたのか?」
「正直に言いますと、趣味です。ほら、地下シェルターってかっこいいじゃないですか?」
「知らんよ。だいたい地下シェルターなんて活用しないに越したことないだろ?普通興味も持たんだろ?」
「いや、キャンプの延長みたいなもんで、作り出したら楽しくなっちゃって。全部の建物の地下に作っちゃったんですよね。まさかこんなところで役に立つとは。我ながら慧眼だったと思いますよ」
「慧眼ねぇ。まあいいや。結果オーライだ。じゃ。思う存分暴れられるってことだな」
「暴れようにもレベル低いですけどね」
それもそうだな。って あ!痛み5倍か!
やっぱやめようかなぁ。
「ルークスさん。来ました」
え!?まじで!?心の準備が
西の方に飛行物体が見えた。ミサイルと言うわけでもなさそうだ。時折虹色に光りながらこちらに向かってくる。
サトシとアイはすでに臨戦態勢だ。さて、俺も腹を括るか。
なかなか近づいてこない。と思っていたがどうやら違った。途轍もなくデカいようだ。それが、かなり遠くから高速でこちらに向かっていた。
永遠にも思える時間が流れる。徐々に大きくなる敵の姿は、近づくたびに神々しさを増していく。その姿に俺たちの戦意はどんどん失われていった。
戦意が絶望に変わるころ天命の書板(タブレット)から警戒音が鳴り響く。
そしてそれは到達した。
俺たちの頭上に現れたのは、12枚の羽根を持つ虹色の天使たちだった。
「試してみましょう」
「ファイアボール……」
「トルネード……」
「……」
詠唱してみるが全く反応がない。
ステータスを確認すると、確かに属性がグレーアウトしている。
「あ、やっぱり無属性はグレーアウトしてませんよ」
「マジで?あ、ホントだ」
サトシは試しにとばかりに、あれやこれやと道具を作り出す。
「イケますね。このスキルは使えますから、攻撃も防御も大丈夫だと思います」
「反重力」
俺も試しに使ってみた。一応浮かぶことはできた。が、レベルが低すぎるため動きが緩慢だ。
「これ厳しいな。攻撃も弱いって事だろ?」
「一応熟練度はそのままみたいですから、そっちがどのくらい効くかでしょうね」
「あてには出来んな」
実際敵さん次第だな。本気で通常兵器が来ようもんなら太刀打ちできるかわからん。ミサイル攻撃を防ぐの?無理っしょ。
あ、超合金(イモータライト)か。あれならいけるか?
「なあ、サトシ。超合金(イモータライト)で鎧とか作れる?」
「! なるほど!!イケるかもしれませんね。鎧に使う板材を、段ボール構造とかハニカム構造にすれば……」
なんかスイッチ入ったみたいだな。随分考え始めたけど……
「そんな時間考えてるあるか?」
「そうでした。取り急ぎ作ってみます。まずはアイから」
まずアイなのか。
アイの体にまとわりつく様に鎧が完成してゆく。
すげぇな。こんな作り方出来るんだ。ちょっといやらしいな。
女性用に曲線が美しい鎧だ。
というか、少し見ない間にアイは大人びたなぁ……
眩しい物を見る目でアイを見ていたら、サトシとアイに睨まれた。
解せぬ。
「次はルークスさんですね。」
「すまん。助かる……」
俺の方もやはり鎧が体にまとわりつく様に出来上がって行く。
「ってあれ?ローブの下なの?ローブボロボロにならない?結構気に入ってるんだけど」
「ローブの上だとデザイン的にごてごてするかなぁと思って。それに中だとごわつきますよ。たぶん」
そんなことを言いながらサトシの作業は止まらない。スキル使いこなしてんなぁ。初代王もこんな感じだったのかなぁ。
「あ、そうだ。カールだっけ?お前が習ったって言う鍛冶屋」
「……ああ、はい」
なんか歯切れ悪いな。なんだろう。
「行ってきたよ。カールは魔王討伐で不在だったけど、代わりに腕のいい若い鍛冶屋が店番してた」
「あ、そうなんですね……どんな店でした?」
「えげつなかったよ。お前が自分に厳しい理由がわかったよ。あそこに置いてあったカールの作品異常だわ。全部伝説級以上だった。今度一緒に見に行こうぜ」
「今度があればですね」
「ヤな事言うね」
「それこそ、ルークスさんこそフラグ立てないでくださいよ」
「ちげぇねえ」
サトシはそんな会話の中で自分の鎧と共に、俺たちの武器も作り上げ暮れていた。
さて、準備は整った。時間は?すると天命の書板(タブレット)には
「3分」
と表示される。
場所は?
「ヨウト発電所」
やっぱりか。
「サトシ。発電所に転移するぞ!」
「わかりました。あ、ちょっと待ってください。たぶんルークスさんが思ってるヨウトとは随分雰囲気が変わってますから俺が転移しますよ」
確かにモニターで見ただけでも随分変わっている。あの中に立つと全く以前とは景色が違うんだろうな。それはそれで楽しみだ。
さあ、守りに行くか。
「転移」
サトシが俺の肩に手をかけ転移の魔法陣が足元に広がる。
いつの間にかサトシに身長負けてるな。ちょっとショック。
転移が終わると、俺の知るヨウトはそこにはなかった。周囲は整備された田畑と奇麗なアスファルト敷きの広い道路。電柱に電線。以前住んでいた建物は何処にもなかった。新興住宅街と言った雰囲気だ。ここまで発展させるのはさぞ大変だったろう。サトシの努力を無駄にしないように俺も協力しよう。
サトシはヨウトに到着するなり、大声でティックたちに指示を飛ばす。
「ティック!!アン!!みんなを建物の地下に連れて行って!これからとんでもない攻撃が来るかもしれないから!」
離れた所に居たティックとアンが慌ててその指示に従う。周囲の従業員たちに声をかけながら、それぞれ手近な建物に避難してゆく。
「建物の中で大丈夫か?がれきに埋もれたらどうにもならんだろ?だいたい地下でも破壊されるんじゃないか?」
「たぶん大丈夫ですよ。こんなこともあろうかと、地下にイモータライトでシェルター作っておきましたから」
「こんなこともあろうかと思ってたのか?」
「正直に言いますと、趣味です。ほら、地下シェルターってかっこいいじゃないですか?」
「知らんよ。だいたい地下シェルターなんて活用しないに越したことないだろ?普通興味も持たんだろ?」
「いや、キャンプの延長みたいなもんで、作り出したら楽しくなっちゃって。全部の建物の地下に作っちゃったんですよね。まさかこんなところで役に立つとは。我ながら慧眼だったと思いますよ」
「慧眼ねぇ。まあいいや。結果オーライだ。じゃ。思う存分暴れられるってことだな」
「暴れようにもレベル低いですけどね」
それもそうだな。って あ!痛み5倍か!
やっぱやめようかなぁ。
「ルークスさん。来ました」
え!?まじで!?心の準備が
西の方に飛行物体が見えた。ミサイルと言うわけでもなさそうだ。時折虹色に光りながらこちらに向かってくる。
サトシとアイはすでに臨戦態勢だ。さて、俺も腹を括るか。
なかなか近づいてこない。と思っていたがどうやら違った。途轍もなくデカいようだ。それが、かなり遠くから高速でこちらに向かっていた。
永遠にも思える時間が流れる。徐々に大きくなる敵の姿は、近づくたびに神々しさを増していく。その姿に俺たちの戦意はどんどん失われていった。
戦意が絶望に変わるころ天命の書板(タブレット)から警戒音が鳴り響く。
そしてそれは到達した。
俺たちの頭上に現れたのは、12枚の羽根を持つ虹色の天使たちだった。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
保健室の秘密...
とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。
吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。
吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。
僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。
そんな吉田さんには、ある噂があった。
「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」
それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる