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生方蒼甫の譚
リプレイ再び
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さて、ようやく王都での拠点を手に入れた。リックとギルが頑張ってくれたらしく、ストーブとランプは飛ぶように売れている。何より驚くべきはギルの仕事ぶりだ。数日しかたっていない状態で注文数以上作っていたらしい。とはいえギルの所だけではとても王都の需要に追い付けない。リックはギルとも相談のうえで王都中の鍛冶屋に製作を依頼しているようだ。
その甲斐もあってか、石油の方も徐々に売れてきているようだ。エンドゥからの輸送に難があるが、テンスによるとサトシが試作エンジンを積んだ自走式のタンクローリーを作ってくれたらしい。まだトラクターに毛が生えたくらいの速度しか出ないようだが、休憩要らずで王都ーエンドゥ間を往復できるのはありがたい。
そうこうしている間に、マンセルと自称キャスバルの交渉もまとまっていた。自称キャスバル的にはリザードマンにも通貨を浸透させたいようで、街道整備にはリザードマンを活用するとのこと。その給金で食料や日用品などを王都から購入するらしい。
ついでに、街道整備の際にアスファルトによる舗装を条件に入れてもらった。なぜかって?原油を精製する際にアスファルトがどうしても発生するんだよね。捨てるのも大変だし。利用できるのであれば非常にありがたい。ってわけでテンスに頼んでそれも輸送してもらってる。
いやはや、順調順調。怖いくらいだな。
準備が整ったところで俺は王都の新居でログアウトすることにした。
……
現実世界ではあれから数分しかたっていないが、疲労具合が半端ない。大丈夫かね、この研究。
というわけで、当分は外から眺めることにする。
すでに経済活動は軌道に乗っている。サトシ、アイ、テンス、自称キャスバルに任せておけば大丈夫だろう。
言い訳の為に王都の貴族を調査すると言ってはいたが、そもそもそんな気は全くない。
なぜって?
一応冒険者ギルドで確認はしたんだよね。イパって貴族について。俺が手を下すまでも無く当主が突然死してた。現在世継ぎ争いで大揉め中。クロードが死んだからかなぁ……と思ってはいる。
まあ、調べたところで「ユーザー」についての情報は手に入りそうにないからね。たぶんあれイベントの登場人物だし。無視してよし!との判断です。
で、今は外からサトシたちの様子を観察中
彼らはせっせと働いていますよ。
流石に朝に食べたサンドイッチだけでは腹が持たないから、車を飛ばして近くのコンビニに買い出しに行ってきた。
いやぁ。スリリングだったよ。時間を止めずに研究室を離れるのは。
え?止めりゃいいじゃないかって?
まあ、なんだ。緊張感って大切じゃん?
知らんけど。
一体俺は誰に話してるんだかわからんが、まあいいや。
コンビニ弁当をむさぼりながらPCの画面を眺めていると、王都南門から早送りでアスファルトの道が伸びてゆき大森林の中央に分け入って行く。面白いなこれ。
大きな道路はワイトリバー湿地帯の手前で軽く東に逸れて、湿地帯をかすめながら南へと伸びてゆきそのまま山岳地帯を抜け周辺都市へと繋がった。
途端に道路にはひっきりなしに馬車が行き来を始めるようになった。すると、街道沿いにぽつぽつと店らしきものまで立ち並ぶようになる。
昔の日本もこんな感じで地方が発展していったんだろうなぁ……と、感心していると、王都の西門からエンドゥに向かって道路を敷き始めていた。今回はエンドゥ側からも工事が始まっていてあっという間に輸送網が完成した。
ここまでざっと1年ってところだろうか。はぁ、このほとんどがサトシの尽力によるものだと思うと感慨深いな。
いつの間にやらエンドゥと王都の輸送手段は自動車がメインになっていた。1000倍速で見ていても、どんどん自動車の速度が上がっていることがわかる。サトシの奴無茶しやがって。
サトシの車の趣味がわかるなぁ。昭和の旧車って感じだ。俺もあんまり詳しくは無いが、そんな俺でも知ってる車が走ってる。
さて、いつまでも見ていたいところだが、サトシのログチェックもしなきゃならん。アイの記録を漁るか。
AIとはいえ、女の子の記憶を探るのは気が引けるが研究だ。仕方ない。そう、仕方ないのである。
ふふふ。
仕方ない。
さて、見るか。
……
アイは母親とウルサンで生活していた。
が、ウルサンでの生活は筆舌に尽くしがたく逃げるように町を後にする。
荒野を当ても無く彷徨っていた二人はゴブリンに襲われてしまう。
暴行の末、巣に拉致された二人は凌辱の限りを尽くされ、母親は殺されてしまう。
……
見るに堪えんな。
こんなはずないんだが……
俺が設定したのは、比較的裕福な暮らしをしていたサトシ家族の隣人のはずだ。
何をどうしたら、こんな殺伐とした設定になる?
そりゃアイから恨まれるはずだわ。
目をそらしたい気持ちを抑えながら、シーンを飛ばしつつサトシとの出会いまで記録を進める。
捕らえられているアイの檻に、ゴブリンは新たな犠牲者を連れてくる。30代くらいの女性とその娘と思われる少女。
女性はゴブリン達に連れて行かれる。その時檻のカギが外れていたがゴブリン達は気づかずに行ってしまう。それを見てジルと名乗る少女はアイと共に助けを求めるべく脱走する。が、ほどなくゴブリンの追手に見つかってしまう。ジルはアイを逃がし自分が囮となる。「近くの集落にサトシと言う少年が居るからそこまで逃げろ」と伝えて。
アイは失意の中、必死に山道を駆け下りる。一心不乱に走り続ける。どれほど時間がたっただろうか、走る気力も尽きたころサトシの集落にたどり着いた。
その甲斐もあってか、石油の方も徐々に売れてきているようだ。エンドゥからの輸送に難があるが、テンスによるとサトシが試作エンジンを積んだ自走式のタンクローリーを作ってくれたらしい。まだトラクターに毛が生えたくらいの速度しか出ないようだが、休憩要らずで王都ーエンドゥ間を往復できるのはありがたい。
そうこうしている間に、マンセルと自称キャスバルの交渉もまとまっていた。自称キャスバル的にはリザードマンにも通貨を浸透させたいようで、街道整備にはリザードマンを活用するとのこと。その給金で食料や日用品などを王都から購入するらしい。
ついでに、街道整備の際にアスファルトによる舗装を条件に入れてもらった。なぜかって?原油を精製する際にアスファルトがどうしても発生するんだよね。捨てるのも大変だし。利用できるのであれば非常にありがたい。ってわけでテンスに頼んでそれも輸送してもらってる。
いやはや、順調順調。怖いくらいだな。
準備が整ったところで俺は王都の新居でログアウトすることにした。
……
現実世界ではあれから数分しかたっていないが、疲労具合が半端ない。大丈夫かね、この研究。
というわけで、当分は外から眺めることにする。
すでに経済活動は軌道に乗っている。サトシ、アイ、テンス、自称キャスバルに任せておけば大丈夫だろう。
言い訳の為に王都の貴族を調査すると言ってはいたが、そもそもそんな気は全くない。
なぜって?
一応冒険者ギルドで確認はしたんだよね。イパって貴族について。俺が手を下すまでも無く当主が突然死してた。現在世継ぎ争いで大揉め中。クロードが死んだからかなぁ……と思ってはいる。
まあ、調べたところで「ユーザー」についての情報は手に入りそうにないからね。たぶんあれイベントの登場人物だし。無視してよし!との判断です。
で、今は外からサトシたちの様子を観察中
彼らはせっせと働いていますよ。
流石に朝に食べたサンドイッチだけでは腹が持たないから、車を飛ばして近くのコンビニに買い出しに行ってきた。
いやぁ。スリリングだったよ。時間を止めずに研究室を離れるのは。
え?止めりゃいいじゃないかって?
まあ、なんだ。緊張感って大切じゃん?
知らんけど。
一体俺は誰に話してるんだかわからんが、まあいいや。
コンビニ弁当をむさぼりながらPCの画面を眺めていると、王都南門から早送りでアスファルトの道が伸びてゆき大森林の中央に分け入って行く。面白いなこれ。
大きな道路はワイトリバー湿地帯の手前で軽く東に逸れて、湿地帯をかすめながら南へと伸びてゆきそのまま山岳地帯を抜け周辺都市へと繋がった。
途端に道路にはひっきりなしに馬車が行き来を始めるようになった。すると、街道沿いにぽつぽつと店らしきものまで立ち並ぶようになる。
昔の日本もこんな感じで地方が発展していったんだろうなぁ……と、感心していると、王都の西門からエンドゥに向かって道路を敷き始めていた。今回はエンドゥ側からも工事が始まっていてあっという間に輸送網が完成した。
ここまでざっと1年ってところだろうか。はぁ、このほとんどがサトシの尽力によるものだと思うと感慨深いな。
いつの間にやらエンドゥと王都の輸送手段は自動車がメインになっていた。1000倍速で見ていても、どんどん自動車の速度が上がっていることがわかる。サトシの奴無茶しやがって。
サトシの車の趣味がわかるなぁ。昭和の旧車って感じだ。俺もあんまり詳しくは無いが、そんな俺でも知ってる車が走ってる。
さて、いつまでも見ていたいところだが、サトシのログチェックもしなきゃならん。アイの記録を漁るか。
AIとはいえ、女の子の記憶を探るのは気が引けるが研究だ。仕方ない。そう、仕方ないのである。
ふふふ。
仕方ない。
さて、見るか。
……
アイは母親とウルサンで生活していた。
が、ウルサンでの生活は筆舌に尽くしがたく逃げるように町を後にする。
荒野を当ても無く彷徨っていた二人はゴブリンに襲われてしまう。
暴行の末、巣に拉致された二人は凌辱の限りを尽くされ、母親は殺されてしまう。
……
見るに堪えんな。
こんなはずないんだが……
俺が設定したのは、比較的裕福な暮らしをしていたサトシ家族の隣人のはずだ。
何をどうしたら、こんな殺伐とした設定になる?
そりゃアイから恨まれるはずだわ。
目をそらしたい気持ちを抑えながら、シーンを飛ばしつつサトシとの出会いまで記録を進める。
捕らえられているアイの檻に、ゴブリンは新たな犠牲者を連れてくる。30代くらいの女性とその娘と思われる少女。
女性はゴブリン達に連れて行かれる。その時檻のカギが外れていたがゴブリン達は気づかずに行ってしまう。それを見てジルと名乗る少女はアイと共に助けを求めるべく脱走する。が、ほどなくゴブリンの追手に見つかってしまう。ジルはアイを逃がし自分が囮となる。「近くの集落にサトシと言う少年が居るからそこまで逃げろ」と伝えて。
アイは失意の中、必死に山道を駆け下りる。一心不乱に走り続ける。どれほど時間がたっただろうか、走る気力も尽きたころサトシの集落にたどり着いた。
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