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生方蒼甫の譚
鉱山の廃墟
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さて、そろそろ始動しますか。というわけで、ログインして宿の部屋を出る。
カウンターには見慣れない姉ちゃんが突っ立っている。
「あれ、いつものあんちゃんは?」
「今日はお休みです。お客さん生きてたんですね。」
「生きてたんですねとは、ご挨拶だな。」
「あは。すんません。一月以上も物音一つしなかったもんですから。」
まあ、そうか。
「ま、修行だ。修業。で、世話になったな。これで出ていくよ。またいずれ頼むよ!」
「えーと。追加料金はありませんね。じゃありがとうございました。またごひいきに!」
なんだよ。NPCにも休みがあるのか。
ってことは、アイの奴大丈夫かなぁ。
……
街の様子を眺めながら鉱山へと向かう。
ひと月の変化と言うのはそれほど感じない。
あれ?そういやNPCも年取るのかな?
まあいいか。
そんなことを考えながらとぼとぼ歩いていると、鉱山入り口に近づいていた。
ビシッ!!
ザザザザァーー!!
ブウォン!
ビシッ!!
ザザザザァァァーー!!
ブウォン!
なんだかいろんな音が定期的に繰り返されている。
まあ、発信源の予想はついてるんだけどね。
サトシとアイが目の前に現れる。
鉱山からは骸骨騎士がわらわらと発生してくるが、サトシはそこに勢いよく突っ込みながら叫ぶ。
「茨!!」
なんだ、新技か?
ビシッ!!
サトシが骸骨騎士たちの方に手をかざすと、すべての骸骨騎士の頭部から棘の様な物が突き出して来る。
ザザザザァァァーー!!
途端に骸骨騎士はその場に崩れ落ち砂塵と化す。
え?一撃。ってか、地面触ってないよね。
触らなくても超合金の棘出せるようになったの?凄すぎない?
ヒュン!
風切り音を残して、二人は坑道の中に駆けこんで行く。
坑道の中から、軽い爆発音が聞こえる。あの三匹を屠っているんだろう。
ものの数分で、転移の魔法陣が坑道入り口前の広場に現れる。
なんだよ。このスピード。頭おかしいだろ。
サトシとアイが現れたタイミングで、俺は大声を上げる。
「ストォォップ!!!!」
その声を聞いて、サトシはつんのめった。
「とっとっと!
あ、ルークスさん。もう調査終わったんですか?」
もう?
え?
もう?
「あ、ああ。調査は一応な。で、そっちは随分頑張ってたみたいだな。」
サトシの顔は充実感に満ち溢れている。幸せいっぱいといった感じだ。
それに引き換え、アイは……
そんなに老けてたっけ?なんか疲れ切ってない?
「アイお前どうしたんだ」
「うるさいわね。」
「回復(ヒール)」
アイの顔に多少生気が戻った。
「せっかくのかわいい顔が台無しじゃないか。」
自然とこの言葉が出た、あまりにアイが不憫でならなかったからだろう。
「な!何よ。急に!」
お、かわいいな。ツンデレか?今までツンしかなかったからな。刺すようなツン。
まあ、攻撃されたしな。
忘れてないよ。
さて、
「サトシもそろそろ休んだらどうだ。ずっと回りっぱなしだろ?」
サトシの背後から骸骨騎士が近づいて来ていたが、サトシは軽くそちらを振り返ると
「茨」
と唱える。すると、すべての骸骨騎士は頭に棘を生やした後、さらさらと消えていった。
「お前、いつの間にそんなことできるようになったんだよ。」
「スキルがランクアップしたみたいなんですよ。「創造「極」」から「創造主」に。そしたらイメージするだけで作り出すことが出来るようになりました。」
化け物じみてきたな。と言うか、確実に化け物だ。勝てる気がせん。こいつに喧嘩売ったら、頭に棘生やされて殺されるんでしょ?そんなの嫌ですよ絶対。
まあ、味方であれば心強い限りだ。というわけで本題に入る。
「で、レベル上げも十分だろ?」
「いや、ようやく調子が出てきたところですからね。もう少しやりたい所ですけどね。」
「へ?まだやんの?」
「ええ、おかしいですか?」
「一か月だよ。」
「何がです?」
「レベル上げしてたの。」
「え?」
「いや、お前がレベル上げしてた期間。41日間……」
「4じゅう1……にち?」
サトシが壊れたロボットの様にぎこちない表情になる。
「何?サトシ気づいてなかったの?お前どのくらいだと思ってた?」
サトシは、指折り数えながらせわしなく目を動かす。
「あれ、2回ほど夜が明けたのは覚えてるんですよ。だから、二日くらいは経ったかなぁって。あれ?アイ、俺そんなに回ってた?」
「うん。41日と3時間14分」
わお。さすが観察用AI。
でもなんでだろう。サトシに対する言葉に、珍しく棘がある。そこはかとない怒りを感じるのは俺の気のせいだろうか?
「ま。まじで。」
「ホントに気づいてなかったのか?」
「は、はい。いや、思いのほかレベルが上がったなぁとは思ってたんですけどね。そんなに回ってたとは。あれ?食事は。」
「アタシが「完全回復(フルケア)」かけてたから」
「完全回復(フルケア)?お前そんなのまで使えるようになってたの?ってか、食事要らねぇんだ。それ。なに?食べてないから排泄もいらないわけ?」
「たぶん。」
「そんな都合よく……まあ、いいか。」
サトシも観念したようだった。まさか自分が41日間もレベル上げに興じていたとは思っていなかったようだ。
ってか、気づけよ。やっぱりデータ壊れてんな。これ。実験になるのかなぁ。まあ、いいか。取り敢えずデータ取っとけば何かの役に立つだろう。
「で、それはそれとしてだ。一応情報収集したところによると、このあたりに廃墟があるらしい。昔領主様が住んでた屋敷らしいんだが、そこにヒントがありそうなんだよね。」
気を取り直したサトシは、俺の話に食いつく。
「ヒントですか。」
「で、出来ればお前たちと一緒にそこに向かいたいんだが、どうだ?まだレベル上げ足りないか?そろそろ実践で試してみたいだろ?」
サトシは顎に手を当てて考え込んでいる。
「まあ、そうですね。そろそろ違うタイプの敵とも戦ってみたいですしね。」
思ったよりあっさり了解してくれたな。
「で、アイはどうする?」
「アタシはサトシについて行く」
でしょうね。健気だね。
「じゃ、善は急げだ。早速廃墟に行くとするか。」
「どこにあるんです?」
場所は攻略サイトでリサーチ済みだ。
「あそこだ。」
探索で廃墟の位置を探すと、赤い光が廃墟を指し示す。
さて、いったい何が出てくるのかな。
カウンターには見慣れない姉ちゃんが突っ立っている。
「あれ、いつものあんちゃんは?」
「今日はお休みです。お客さん生きてたんですね。」
「生きてたんですねとは、ご挨拶だな。」
「あは。すんません。一月以上も物音一つしなかったもんですから。」
まあ、そうか。
「ま、修行だ。修業。で、世話になったな。これで出ていくよ。またいずれ頼むよ!」
「えーと。追加料金はありませんね。じゃありがとうございました。またごひいきに!」
なんだよ。NPCにも休みがあるのか。
ってことは、アイの奴大丈夫かなぁ。
……
街の様子を眺めながら鉱山へと向かう。
ひと月の変化と言うのはそれほど感じない。
あれ?そういやNPCも年取るのかな?
まあいいか。
そんなことを考えながらとぼとぼ歩いていると、鉱山入り口に近づいていた。
ビシッ!!
ザザザザァーー!!
ブウォン!
ビシッ!!
ザザザザァァァーー!!
ブウォン!
なんだかいろんな音が定期的に繰り返されている。
まあ、発信源の予想はついてるんだけどね。
サトシとアイが目の前に現れる。
鉱山からは骸骨騎士がわらわらと発生してくるが、サトシはそこに勢いよく突っ込みながら叫ぶ。
「茨!!」
なんだ、新技か?
ビシッ!!
サトシが骸骨騎士たちの方に手をかざすと、すべての骸骨騎士の頭部から棘の様な物が突き出して来る。
ザザザザァァァーー!!
途端に骸骨騎士はその場に崩れ落ち砂塵と化す。
え?一撃。ってか、地面触ってないよね。
触らなくても超合金の棘出せるようになったの?凄すぎない?
ヒュン!
風切り音を残して、二人は坑道の中に駆けこんで行く。
坑道の中から、軽い爆発音が聞こえる。あの三匹を屠っているんだろう。
ものの数分で、転移の魔法陣が坑道入り口前の広場に現れる。
なんだよ。このスピード。頭おかしいだろ。
サトシとアイが現れたタイミングで、俺は大声を上げる。
「ストォォップ!!!!」
その声を聞いて、サトシはつんのめった。
「とっとっと!
あ、ルークスさん。もう調査終わったんですか?」
もう?
え?
もう?
「あ、ああ。調査は一応な。で、そっちは随分頑張ってたみたいだな。」
サトシの顔は充実感に満ち溢れている。幸せいっぱいといった感じだ。
それに引き換え、アイは……
そんなに老けてたっけ?なんか疲れ切ってない?
「アイお前どうしたんだ」
「うるさいわね。」
「回復(ヒール)」
アイの顔に多少生気が戻った。
「せっかくのかわいい顔が台無しじゃないか。」
自然とこの言葉が出た、あまりにアイが不憫でならなかったからだろう。
「な!何よ。急に!」
お、かわいいな。ツンデレか?今までツンしかなかったからな。刺すようなツン。
まあ、攻撃されたしな。
忘れてないよ。
さて、
「サトシもそろそろ休んだらどうだ。ずっと回りっぱなしだろ?」
サトシの背後から骸骨騎士が近づいて来ていたが、サトシは軽くそちらを振り返ると
「茨」
と唱える。すると、すべての骸骨騎士は頭に棘を生やした後、さらさらと消えていった。
「お前、いつの間にそんなことできるようになったんだよ。」
「スキルがランクアップしたみたいなんですよ。「創造「極」」から「創造主」に。そしたらイメージするだけで作り出すことが出来るようになりました。」
化け物じみてきたな。と言うか、確実に化け物だ。勝てる気がせん。こいつに喧嘩売ったら、頭に棘生やされて殺されるんでしょ?そんなの嫌ですよ絶対。
まあ、味方であれば心強い限りだ。というわけで本題に入る。
「で、レベル上げも十分だろ?」
「いや、ようやく調子が出てきたところですからね。もう少しやりたい所ですけどね。」
「へ?まだやんの?」
「ええ、おかしいですか?」
「一か月だよ。」
「何がです?」
「レベル上げしてたの。」
「え?」
「いや、お前がレベル上げしてた期間。41日間……」
「4じゅう1……にち?」
サトシが壊れたロボットの様にぎこちない表情になる。
「何?サトシ気づいてなかったの?お前どのくらいだと思ってた?」
サトシは、指折り数えながらせわしなく目を動かす。
「あれ、2回ほど夜が明けたのは覚えてるんですよ。だから、二日くらいは経ったかなぁって。あれ?アイ、俺そんなに回ってた?」
「うん。41日と3時間14分」
わお。さすが観察用AI。
でもなんでだろう。サトシに対する言葉に、珍しく棘がある。そこはかとない怒りを感じるのは俺の気のせいだろうか?
「ま。まじで。」
「ホントに気づいてなかったのか?」
「は、はい。いや、思いのほかレベルが上がったなぁとは思ってたんですけどね。そんなに回ってたとは。あれ?食事は。」
「アタシが「完全回復(フルケア)」かけてたから」
「完全回復(フルケア)?お前そんなのまで使えるようになってたの?ってか、食事要らねぇんだ。それ。なに?食べてないから排泄もいらないわけ?」
「たぶん。」
「そんな都合よく……まあ、いいか。」
サトシも観念したようだった。まさか自分が41日間もレベル上げに興じていたとは思っていなかったようだ。
ってか、気づけよ。やっぱりデータ壊れてんな。これ。実験になるのかなぁ。まあ、いいか。取り敢えずデータ取っとけば何かの役に立つだろう。
「で、それはそれとしてだ。一応情報収集したところによると、このあたりに廃墟があるらしい。昔領主様が住んでた屋敷らしいんだが、そこにヒントがありそうなんだよね。」
気を取り直したサトシは、俺の話に食いつく。
「ヒントですか。」
「で、出来ればお前たちと一緒にそこに向かいたいんだが、どうだ?まだレベル上げ足りないか?そろそろ実践で試してみたいだろ?」
サトシは顎に手を当てて考え込んでいる。
「まあ、そうですね。そろそろ違うタイプの敵とも戦ってみたいですしね。」
思ったよりあっさり了解してくれたな。
「で、アイはどうする?」
「アタシはサトシについて行く」
でしょうね。健気だね。
「じゃ、善は急げだ。早速廃墟に行くとするか。」
「どこにあるんです?」
場所は攻略サイトでリサーチ済みだ。
「あそこだ。」
探索で廃墟の位置を探すと、赤い光が廃墟を指し示す。
さて、いったい何が出てくるのかな。
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