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生方蒼甫の譚
落とし穴
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またかよ。
言ってるそばからこれだ。
今回は、自分が落ちていることに早めに気づくことが出来たと思う。
以前と比べればずいぶん進歩している。
と、思いたい。
結構な距離落下していることもあり、途中で「反重力」を唱える余裕があった。
真っ暗闇で上空を見上げると、明るい四角が見える。俺が落とされた床の穴かな。
などと見ていると、音もなく四角が消える。
床閉じられたか。
たぶんクロードだよな。やった奴。
領主様もグルか?
いや、そんな雰囲気は無かったな。
まあ、人を見る目がないから何とも言えんが、もしグルならこんなまどろっこしいことする必要ないもんな。
屋敷に入った時点で始末すればいい。
ギルマスが居たから手を出さなかったのか?
ん~。よくわからん。まあ、落とされたもんは仕方ない。
今更上に行っても床が開いてないし……
あれ?開ければいいんじゃない?
セオリーとしては、ここから落ちる。どうせ地下には魔物が居て、俺を襲ってくるんでしょ?そっから逃げて……
って展開がお約束なんだろうけど。
嫌です。そんな結末望んでません。お宝いただきます。くれるって言ったんだから問題ないよね。個数言われてないから、全部もらっても文句はないよね?
というわけで、するすると上空に進む。
床の隙間からわずかに光が漏れている。
部屋の様子は?
「探索」
部屋の中に人はいないようだ。クロードも俺が落ちたのを確認して領主様のところに戻ったんだろう。じゃあ、今入っても大丈夫だな。
落とし穴の扉をちょっと強めに押してみる。
ん~びくともしないな。
じゃあ、引いてみるか。
ガタン!
あ、開いた。
床の穴から少しだけ顔を出し、周囲を確認する。特にさっきと変わりないか。
安心した俺は、そのまま落とし穴から出て、財宝の確認をする。財宝はっと……
いいねぇ。価値はよくわからんが、財宝って感じだ。
……
と、テンションが高かったのも最初のうちだけで、
その後宝物庫内を見て回るうちに、お宝への興味はどんどんなくなっていった。
なぜって?
お宝を手にとってステータスを確認していったわけですよ。すると、
「王妃の宝石:王妃が身に着けていたとされる宝石、高く売れる」
「ウイングブーツ:空を飛べるようになるブーツ、防御力 +1」
「水鏡の盾:敵の攻撃を5%の確率で跳ね返す 防御力 +10」
「王家の剣:王家に伝わる宝刀 高く売れる 攻撃力 +8」
こんなのばっかりだ。そりゃ気持ちも滅入ろうというものですよ。
「高く売れる」って言われても、別に金が欲しい訳じゃないしね。なにより必要ならいくらでも出せるし。
結局無駄足か。そのまま下に落ちて魔物を倒してた方が有意義だったかな。
と、落とし穴に向かおうとしたとき、ショーケースの中に古びたカギを見つける。
周りが金ぴかな装飾で彩られる中、あまりにもその様子は異様だった。
ステータスを確認すると
「???のカギ:?????を開くことが出来る。」
なんだ?文字化けしてるのか?
多少気味の悪いアイテムだが、重要そうなので頂いておくことにした。
その他に目ぼしいものは無く、俺は宝物庫を後にする。
何なら、玄関から出て行っても良いんだけどなぁ。まあ、落とし穴の中も気になるしな。
というわけで、再度落とし穴に潜る。何が哀しくてわざわざ罠にはまるのかとも思うが、好奇心に勝てなかった。
反重力で落とし穴からゆっくりと下に降りてゆく。一応行儀がいいので、落とし穴の床も閉じておくことにする。下からでも難なく閉めることが出来た。壊れてなくてよかったよ。
小さめのライトボールで行き先を照らしながらするすると下降する。比較的深い穴だ。100mくらいは降りただろうか、随分大きな空洞に出た。
ちょうど野球場くらいの広さだろうか。ドーム何個分という表現自体は好きではないが、ちょうど1個分くらいだと思う。
落とし穴はこの空洞のちょうどど真ん中のてっぺんに繋がっていた。屋敷と落とし穴、どちらが先に作られたのかはよくわからんが、御大層な代物だ。
どちらかと言えば、魔物を期待したんだが、ここには人骨が散らばってるだけで特に魔物がいる気配はなかった。
なんだよ。お約束じゃないのかよ。つまらん。
面白味も無いのでとりあえずこの場から立ち去ることにする。
「転移」
ギルド裏手の路地に転移する。日中だがあのあたりなら人目に付きにくい。それにギルマスの様子も確認したいしな。
転移が終わり、裏路地から出てくると、ちょうどギルマスが馬車で帰ってきたところだった。
馬車から降りるギルマスに声をかける。
「よう!」
「おお!、早かったな。宝物庫はどうだった……って、あれ?どうやって帰ったんだ。」
「ああ、宝物庫は、あれだ。身の丈に合わない豪華なモンばっかりだったからな。遠慮しといた。で、早馬で送ってもらったんだよ。」
「そうか。そりゃ残念だったな。まあ、鉱山奥のマンティコアを倒せば、鉱山も再開できるし、報酬もたんまり期待できるさ。まあ、頑張ってくれよ!」
ギルマスの対応は至って普通だった。特に慌てた様子もないし。ってことは、やっぱりグルではないんだろうな。
ま、ギルマスがグルじゃないってことは、ギルドも関係ないってことだ。取り敢えず今後の活動に影響は出ないだろう。一安心だな。
じゃあ、いったん宿に帰って下準備するか。
言ってるそばからこれだ。
今回は、自分が落ちていることに早めに気づくことが出来たと思う。
以前と比べればずいぶん進歩している。
と、思いたい。
結構な距離落下していることもあり、途中で「反重力」を唱える余裕があった。
真っ暗闇で上空を見上げると、明るい四角が見える。俺が落とされた床の穴かな。
などと見ていると、音もなく四角が消える。
床閉じられたか。
たぶんクロードだよな。やった奴。
領主様もグルか?
いや、そんな雰囲気は無かったな。
まあ、人を見る目がないから何とも言えんが、もしグルならこんなまどろっこしいことする必要ないもんな。
屋敷に入った時点で始末すればいい。
ギルマスが居たから手を出さなかったのか?
ん~。よくわからん。まあ、落とされたもんは仕方ない。
今更上に行っても床が開いてないし……
あれ?開ければいいんじゃない?
セオリーとしては、ここから落ちる。どうせ地下には魔物が居て、俺を襲ってくるんでしょ?そっから逃げて……
って展開がお約束なんだろうけど。
嫌です。そんな結末望んでません。お宝いただきます。くれるって言ったんだから問題ないよね。個数言われてないから、全部もらっても文句はないよね?
というわけで、するすると上空に進む。
床の隙間からわずかに光が漏れている。
部屋の様子は?
「探索」
部屋の中に人はいないようだ。クロードも俺が落ちたのを確認して領主様のところに戻ったんだろう。じゃあ、今入っても大丈夫だな。
落とし穴の扉をちょっと強めに押してみる。
ん~びくともしないな。
じゃあ、引いてみるか。
ガタン!
あ、開いた。
床の穴から少しだけ顔を出し、周囲を確認する。特にさっきと変わりないか。
安心した俺は、そのまま落とし穴から出て、財宝の確認をする。財宝はっと……
いいねぇ。価値はよくわからんが、財宝って感じだ。
……
と、テンションが高かったのも最初のうちだけで、
その後宝物庫内を見て回るうちに、お宝への興味はどんどんなくなっていった。
なぜって?
お宝を手にとってステータスを確認していったわけですよ。すると、
「王妃の宝石:王妃が身に着けていたとされる宝石、高く売れる」
「ウイングブーツ:空を飛べるようになるブーツ、防御力 +1」
「水鏡の盾:敵の攻撃を5%の確率で跳ね返す 防御力 +10」
「王家の剣:王家に伝わる宝刀 高く売れる 攻撃力 +8」
こんなのばっかりだ。そりゃ気持ちも滅入ろうというものですよ。
「高く売れる」って言われても、別に金が欲しい訳じゃないしね。なにより必要ならいくらでも出せるし。
結局無駄足か。そのまま下に落ちて魔物を倒してた方が有意義だったかな。
と、落とし穴に向かおうとしたとき、ショーケースの中に古びたカギを見つける。
周りが金ぴかな装飾で彩られる中、あまりにもその様子は異様だった。
ステータスを確認すると
「???のカギ:?????を開くことが出来る。」
なんだ?文字化けしてるのか?
多少気味の悪いアイテムだが、重要そうなので頂いておくことにした。
その他に目ぼしいものは無く、俺は宝物庫を後にする。
何なら、玄関から出て行っても良いんだけどなぁ。まあ、落とし穴の中も気になるしな。
というわけで、再度落とし穴に潜る。何が哀しくてわざわざ罠にはまるのかとも思うが、好奇心に勝てなかった。
反重力で落とし穴からゆっくりと下に降りてゆく。一応行儀がいいので、落とし穴の床も閉じておくことにする。下からでも難なく閉めることが出来た。壊れてなくてよかったよ。
小さめのライトボールで行き先を照らしながらするすると下降する。比較的深い穴だ。100mくらいは降りただろうか、随分大きな空洞に出た。
ちょうど野球場くらいの広さだろうか。ドーム何個分という表現自体は好きではないが、ちょうど1個分くらいだと思う。
落とし穴はこの空洞のちょうどど真ん中のてっぺんに繋がっていた。屋敷と落とし穴、どちらが先に作られたのかはよくわからんが、御大層な代物だ。
どちらかと言えば、魔物を期待したんだが、ここには人骨が散らばってるだけで特に魔物がいる気配はなかった。
なんだよ。お約束じゃないのかよ。つまらん。
面白味も無いのでとりあえずこの場から立ち去ることにする。
「転移」
ギルド裏手の路地に転移する。日中だがあのあたりなら人目に付きにくい。それにギルマスの様子も確認したいしな。
転移が終わり、裏路地から出てくると、ちょうどギルマスが馬車で帰ってきたところだった。
馬車から降りるギルマスに声をかける。
「よう!」
「おお!、早かったな。宝物庫はどうだった……って、あれ?どうやって帰ったんだ。」
「ああ、宝物庫は、あれだ。身の丈に合わない豪華なモンばっかりだったからな。遠慮しといた。で、早馬で送ってもらったんだよ。」
「そうか。そりゃ残念だったな。まあ、鉱山奥のマンティコアを倒せば、鉱山も再開できるし、報酬もたんまり期待できるさ。まあ、頑張ってくれよ!」
ギルマスの対応は至って普通だった。特に慌てた様子もないし。ってことは、やっぱりグルではないんだろうな。
ま、ギルマスがグルじゃないってことは、ギルドも関係ないってことだ。取り敢えず今後の活動に影響は出ないだろう。一安心だな。
じゃあ、いったん宿に帰って下準備するか。
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