中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?

ミクリヤミナミ

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生方蒼甫の譚

呪い

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「貴族から?」
 難癖をつけてきてる貴族の事かな?と考えていると、どうやらそれを察したのか、ギルマスがこちらを睨みつけている。
 わかってるよ。言わないから。大丈夫だって。

 と思ったら、ギルマスが自分から何やら話し始めた。
「キース様、イパ様との件については一部この者にも伝えております。」

 だれよ?イパ様って。
 いや、なんとなく領主様がキース様なのは判ったけどさ。

「そうですか、お恥ずかしい限りです。イパ様はベローマの実質的な支配者です。このエンドゥもベローマとの交易無しには立ち行けないものですから。」

 そう言えば、ここからほど近いところに王国領があったような……あまり興味がなかったのでよく知らんが。
 そこの有力貴族からプレッシャーをかけられてるってことか。

「ところで、この町の鉱山とベローマの貴族とはどのような関係が?」
 実際隣町の有力者がここまで幅を利かせる理由がよくわからん。なんか弱みでも握られてるのか?

「それにはこの町の成り立ちからご説明したほうが良いでしょう。もともとこの地には町がなく、荒廃した土地だったそうです。」

 というわけで、領主様からの説明があった。要約すると
 
 この荒廃した土地に周囲の街から追い出された人々が流れついて住み始めた。しかし、土地は毒に侵されており、狩猟しようにも動物もほとんどいないし、そんな土地だから作物すら育たず農業もままならない状況だったらしい。
 人々は失意の中で細々と暮らしていたんだが、そんな時、一部の者が「山を掘れ」との神の啓示を受け、あの山を掘り始めたそうだ。
 普通に考えれば、極限状態で頭がおかしくなっただけの様な気もするが、藁にもすがる思いだったんだろう。
 で、いざ掘り出してみると、山からは希少な金属が豊富にザックザックと出てきて、近隣の街に高値で売れたそうだ。その時に、啓示を受けて人々をまとめ上げた人物こそ領主様の先祖だったらしい。
 また、この山から掘り出される金属は非常に質が高く、王国においても珍重されたようで、先代の国王より爵位ももらったみたいだな。
 まあ、子爵らしいから、相変わらずベローマの貴族には頭が上がらんらしい。なんせ、向こうは公爵なんだそうだ。

 で話を戻すが、鉱山から採掘される鉱石の量が増えると問題も起きた。鉱石を精錬して周囲の街に売っていたんだが、その精錬作業で多量の毒物が流れ出た。まあ、金属あるあるだな。鉱毒ってやつだ。
 周囲の街が大きくなり、取引量が増えてくると、この鉱毒の問題は大きくなっていった。町からは多くの病人や死者が出る。生活がままならない状態に陥ってきたらしい。
 そんな時に手を差し伸べてくれたのが、ベローマの貴族だった。当時はそこまで権力を握っていたわけではなかったようだが、この町で採掘される鉱石をそのまま買い取ると言ってくれたらしい。
 金属の状態なら高額で取引されるが、鉱石となると買いたたかれる。普通なら二束三文だ。だが、その貴族は比較的高額で買い取ると言ってくれたらしい。
 しかし、それには条件があった。この鉱山の所有権を渡せというものだった。普通ならそんな申し出はすっぱり断るもんだが、この町の事情もある。精錬しなければ取引してくれるところは何処にもない。だからと言って、精錬すれば町の人々は鉱毒でじり貧だ。
 加えて、そのベローマの貴族は好条件を出してきた。鉱山の所有権と、採掘量に応じた税をわずかばかり払えば今まで通り採掘に関しては何も干渉しないと言ってきた。
 当時の領主様からすれば願ってもない申し出で、加えてデメリットもない。このことから所有権に関してはベローマの貴族に譲渡したそうだ。

 まあ、なんでそんなまどろっこしい事をしたのかはよくわからないが、お互いwinwinの関係だったってことだろう。当時はね。
 そして、そのまま今に至るってわけだ。

 ところが、今回の騒動だ。領主としては鉱山再開に向けてマンティコア討伐依頼を出したいところだが、一応所有者であるベローマの貴族にも確認をしてみた。
 当然、あっちの収入も減るわけだから、二つ返事で了解してくれるだろうと踏んでいたところ、まさかの討伐依頼却下と来た。
『なぜなのか?』と再三使者を送るが、回答はいつも『魔獣の討伐依頼に関しては許可しない』の一点張りだった。そこで、苦肉の策として『探索依頼』を出していると言う事らしい。
 
「結局イパ様が何をお考えなのかはわからずじまいなんですよ。有益な情報がなく申し訳ない。」
 確かに領主様からしてもよくわからんのだろうな。
 となると、後気になることと言えば……

「大変不躾な質問で恐縮ですが、領主様のお身体は、やはり鉱毒の関係ですか?」
 明らかに体調が悪そうだ。さっきから鉱毒の話が出てるから、それかとも思ったが、町の他の奴らに体調悪そうなやつがいなかったからなぁ。

「おい!ルークス!!」
 おっと、ギルマスに怒られた。まあ、不躾過ぎたか。

「いえ、構いません。もう少し私の体が丈夫であればこの町に貢献できるのでしょうが……代々当主は原因不明の病に侵されているのです。原因も不明で、当初は鉱毒かとも思われたのですが……」

「そうですか……」
 とりあえず、ステータス確認してみるか。NPC相手にどこまで詳細なステータスが出るのかわからんが。

「キース 職業:領主 子爵 …… 損傷個所:肺(呪い) 」

 あちゃぁ。呪いか。病気じゃないね。

「お気を悪くなさらないでいただきたいのですが、どうやら病気や毒の類ではなく『呪い』の様なのですが、何かお心当たりはありますか?」

「な!ルークス!!」
 また怒られた。言い過ぎたかな。
「良いのです。
 ……そうですか。
 やはり呪いですか。」

「やはり?と言いますと。」

「実は、父も夭逝しておりますが、父が無くなる直前の事です。私が町に出ていた時に、通りすがりの老人から声をかけられまして、そのようなことを言われのです。」
「具体的にはなんと?」
「先祖が住んでいた廃屋に原因がある。そこの邪神の呪いが原因だと。」
「その老人はどのような者でしたか?」

「そうですね。随分酒に酔っていたようでしたので、一緒に居た従者から『あのような者の意見に耳を貸してはならない』と言われたのですが、なにやら言葉に妙な説得力がありまして、それに……」

「それに?」
「木の板を持ち歩いて、時折それを眺めながら私に話しかけていたものですから、どうにも気になって、印象に残っているのです。」

「木の板ですか……」
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