中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?

ミクリヤミナミ

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生方蒼甫の譚

鬼畜の所業

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 坑道の入り口から骸骨騎士がわらわらと現れる。やっぱり復活しちゃったかぁ……。

 それに、さっきより増えてない?
 
 せめてひと眠りしたかった。実際に休めるかどうかは別として……せめて気持ちだけでも。

 と言ってるそばからサトシはウッキウキで地面に手を突く。

「茨の道!」
 な!和風なネーミング!

 30体を超える骸骨騎士の足元に、超合金イモータライトの棘が無数に現れる。

 広範囲に広がった棘は脛までしか伸びなかったが、骸骨騎士の動きを止めるには十分だった。

 早めに終わらせて休みたい。一気に行くぞ!
「ソーラレイ!」
 パラメータを弄った効果は絶大だった。上空から降り注ぐ強烈な光が骸骨騎士を焼き尽くす

 ……まではいかなかったが、それなりに効果はあったようだ。

 HPかなり削れたかな。まあ、良しとしよう。

「ソーラレイ!」
 なぬ!アイまで使えるようになってるのか!?

 アイのソーラレイは、さすがに俺の威力と同等とはいかないにしても、骸骨騎士にそれなりに効いていた。
 恐るべし。レベル上げの効果。

「五月雨斬り!」
 素早く行動加速ヘイストを自らかけたサトシは残像を伴い骸骨騎士の間をすり抜けながら切り付けてゆく。見事というほかなかった。熟練度が上がった効果だろう。アイのティンクルバリアが必要ないほど軽やかなステップで骸骨騎士の攻撃を躱し、次々と屠って行く。

 前回の苦戦が嘘のように、一方的に攻撃を続ける。

 が、俺は休みたい。できれば早く終わらせたい。

「サトシ!よけろ!」
「了解!」
 サトシが骸骨騎士の集団をすり抜け森の方まで大きく退く。それを確認して。

「大地を統べる光の神よ。御身に捧ぐ我が魂を糧として、かの冥府の者どもらを裁きの光で打ち払い給え!ソーラレイ!」

 俺の体が光りだすと、その光は上空へと打ち出される。上空には大きな魔法陣が現れ、そこから強烈な光線が放たれる。

 ドゴゴゴォォォーーーーーーン!!

 周囲すべてが白で覆われるほどの強烈な光は轟音を伴い骸骨騎士たちに降り注ぐ。
 直後に爆風で飛ばされそうになるが、かろうじて耐える。

 いやいや、呪文唱えただけで効きすぎだろ!レベルが違うんですが。これ巻き込まれたらこっちも危ないじゃん。

 光が落ち着くと、骸骨騎士は跡形もなく消え去り、地面に超合金イモータライトの棘だけが残っていた。

「うひょー。凄いっすね。めちゃくちゃレベル上がってません?」
 サトシが軽い口調で森から駆け出してきた。

「いや、ここまでの威力だとは思ってなっかったな。お前を退かせて正解だったよ。危うく殺すところだ。」

「気を付けないとヤバいっすね。連携は大事ですね。」

「さて、中に入るか。気が滅入るけど。」

「大丈夫ですよ。ミノタウロスよりは楽に行けるんじゃないですか?」

「ホントかなぁ」

 坑道に入りしばらく進むと、先ほどと同じようにデュラハンがこちらに向かって悠然と進んで来るのが見える。

「お出でなすったな。サトシ。頼む。」

「わっかりました!」
 ノリノリっすね。まあ、頼もしいような、不安なような。

「茨の道!」

 デュラハンは地面から無数に立ち上がる棘に貫かれる。先ほどより範囲が狭いからか、それともレベルと熟練度が上がったからか、棘の長さと太さは先ほどの3倍以上になっている。

探索シーク
 デュラハンの急所は胸のあたりにあるはずだ。探索対象を急所に設定する。すると、デュラハンのちょうど心臓あたりに赤く反応があった。

「サトシ見えるか?あれがこいつの急所だ!」
 俺は、デュラハンの背後に回り
「短勁!」
 背中から急所のあたりを打ち抜く。腰まで棘で固定されたデュラハンはバランスを崩し、両手を広げた状態になる。胸元ががら空きだ。

「閃光突き!」
 サトシの鋭い突きがデュラハンの急所を貫く。

 にもかかわらず、デュラハンは剣を大上段に構える。振り下ろす。

 デュラハンの斬撃は、サトシの頭部めがけて振り下ろされるが、アイが掛けたティンクルバリアに阻まれる。

「閃光突き!!」
 サトシが何度も急所を突き続ける。俺もその突きを避けつつ短勁を打ち続ける。

 餅つきみたいだな。

 5発ほど打ったところで、デュラハンは力なく両手をだらりと垂らし、動かなくなった。
 
 時間にすれば数分だ。ミノタウロスの時に比べれば圧倒的に早い。が、精神的にくるものがある。疲れ方はあまり変わらん気がするな。

「楽勝じゃないですか!!」
 サトシ、お前とは意見が合わないようだな。
 ジト目でサトシを睨むが、奴は意に介さないようだ。空気が読めないのか……それとも読まないのか。
 横を見るとアイも同じくジト目でサトシを睨んでいる。

 アイと同じ気持ちになるとはな。

 まあ、いい。短時間で倒せたことは素晴らしい。

「すごいっすね。よく弱点見つけましたね!」
 興奮気味にサトシが聞いてくる。

 ああ、鬱陶しい。

「おう、ちょっと思うところがあってな。サイクロプスやミノタウロスも同じように急所を探索かけると見えると思うぜ」
「これで攻略できますね!」

 なんだろう。にこやかなサトシの笑顔が、こんなにも不快に思うなんて。

「さ、急ごうか。」
 早く寝たい。

 
 サトシは俺とアイのそんな気持ちも知らないで、坑道をずいずいと進んでゆく。

 ちょうど分かれ道に差し掛かった時、左側の道から大きな足音が聞こえてきた。
 ミノタウロスだ。

「サトシ、退くぞ。」
「なんでです?一気に行っちゃいましょうよ!」

「馬鹿か。しばらくしたらサイクロプスもやってくるだろ!二匹相手は分が悪すぎる。デュラハンみたいにうまくいくかわからんぞ!」

「そうでしたね。危ない危ない。了解です。」
 猪突猛進タイプだな。

 サトシはミノタウロスを挑発しながら、いま来た坑道の方へおびき寄せる。

「茨の道!!」
 意気揚々とサトシは地面に棘を出す。

 が、ミノタウロスは後ろに下がった。

 なんだ?いま、避けたような気がするが……

 しかし、サトシのスキルは確実に成長しているようで、先ほどよりも棘の大きさと範囲が5割ほど大きくなっていた。
 後ずさったミノタウロスの足と胸を貫き動きを止めている。

探索シーク
 急所を探ると、ミノタウロスの急所は右角の根元にあるようだった。

 さっき倒せたのは、これか。運よく急所を真っ二つにできたからか。

 先ほどと同様に、俺が背後から短勁で体勢を崩し、サトシが急所を狙う。アイはサトシにティンクルバリアをかけ、隙を見て回復。

 こちらも10分とかからず倒すことができた。

 着実に実力が上がっている。

 上がっているんだが納得がいかない。

 何にって、

 そう、このしたり顔のサトシにだ。

「着実に強くなってますねぇ。良いんじゃないですか!さ、次行きましょう!」

「そうだな。早く済ましちまおう。」
「そうね。早く帰るためだもんね。」

 俺もアイも諦めの境地である。

 3人はサイクロプスのもとへと急ぐ。

 サイクロプスが見えるや否や、サトシは足止めにかかる。

「茨の……」

 途端にサイクロプスが後ろに飛びのいた。
 読まれた!?いや、完全に読んでるな。なぜだ?

 まあ、すでに答えは出ている。メタAIだ。
 ゲーム進行上、全体を統括するAIがある。それが今までの俺たちの行動を把握して対策を打ってきたってことだろう。
 確かに、ゲームとしてハメ技がいつまでも通用するってのは飽きられ易いからな。

 しかし、サトシも手慣れたものである。さっきミノタウロスが若干避けたのに気づいていたんだろう。避けられると踏んでのこの作戦ってことか。

 相手に聞こえるように呪文を唱え始め、サイクロプスが後ろに引いたことを確認してその場所に棘を発生させた。

 見事である。

 さすが、この辺りがゲーム用AIとは格の違いを見せつけたってところか。
 俺の研究も無駄ではなさそうだな。
 安心したよ。


 ……道!」

 サイクロプスが着地した場所に大量の棘が突き出してくる。
 肩のあたりまで貫かれたサイクロプスは、すでに身動きをとる事も出来ない。こうなってはサトシの独壇場である。

「探索(シーク)」
 サイクロプスの目の後ろ、中心から少しずれた位置に急所があるらしい。

 サトシは急所めがけて突きを喰らわす。

「閃光突き!!」


 サイクロプス討伐を告げるファンファーレが俺たちの頭の中に響き渡る。

 今回はサトシの作戦勝ちだな。数秒で片が付いた。

「さすがだな。避けるのに気づいてたんだな。」

「何のことです?」

 へ?

「いや、お前の行動を読んで、サイクロプスが後ろに飛びのいたじゃん?」
「あ、あれ、俺の行動読まれてたんすか?いやいや、奴にしてみりゃ初見でしょ?無理っしょ!」

 ああ、気づいてなかったの?なに、単に反射的に出現位置ずらしただけ?

 残念な子だ。

 やばい。おれの研究、失敗かもしれん。



「いやいや、結果オーライですね。この辺りは問題なく倒せるようになってきましたね。」
「そうだな。余裕は出てきたみたいだな。」

 ふぅ。一息ついた俺たちの足元に、転移の魔法陣が広がる。

 あれ?

 っと思ったら、ヨウトの街に戻っていた。状況が呑み込めない俺とアイをよそに、サトシは非情にも呪文を唱える。

「転移」
 再度広がる足元の魔法陣。

 気づくと目の前には坑道の入り口がある。
 真っ暗闇の中から骸骨騎士がわらわらと

 って。

「ちょっとまてぇい!!!」

「何やってんすか!さあ、二週目ですよ!回転上げてきましょう!」
「ふっざけんなぁ!!」
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