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サトシの譚
魔術教室と依頼達成
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「ちょっとまて。ノーヘルとバイクって。なぁ。ルークス!あんた。一体!」
「あぁ、ああ、そうね。まあ、いいじゃない。」
ルークスはサトシの質問に口ごもる。それがすべて物語っていた。異世界人だ。いや。この表現を使うと言う事は少なくとも日本に居た人間だろう。
「そう言う事なんだな。」
アイの手前、サトシは言葉を濁す。
「まあ、想像に任せるよ。で、俺の事信じる気になったかい?これだけ魔法についても教えるって言ってんだ。信じてくれよ。」
サトシは宙に浮きながら、しばらく考え込む。アイが不安げにサトシの顔を覗き込むが、その様子にサトシはアイの頭を撫でながら
「何でもない。ところで、アイはルークスさんの事どのくらい知ってるんだ?」
アイはしばらく考え込む。そして、
「そんなに知らないな。前にあったことがある程度」
「そうか、わかった。ルークスさん。取り敢えず信用しますよ。その代わりと言っては何ですけど、魔法の事、もっと教えてください。」
「ああ、そんなことでよければお安い御用だ。取り敢えず仲良くいこうぜ。ついでに俺もパーティー登録しておいてもらえると助かるけどな。」
サトシは忘れないうちにルークスをパーティーメンバーに登録することにした。
サトシたちは上空に舞い上がり、平原を見渡しながら北へと移動する。
エンドゥの街に城壁は無く、大通りを北に進むと建物がまばらになりやがてただの平原となっていた。
南の方角には小高い山があるが、北側には高い建物や山は無く、上空からだと遠くまで見渡すことができた。
「オークはどのあたりに居るかね?」
ルークスは遠くを確認しようとずんずん北へと進んで行く。サトシもそれを追う。しばらく進むと、背の低い木々が目立つようになり、その先には森が見えてきた。
「あのあたりだとオークの集落があってもおかしくないな。」
ルークスの言うように、水場もあり身を隠すにもちょうどよさそうな場所であった。
「上からじゃ、確認するのは難しそうですね。」
サトシは木立の隙間から下を覗こうとするがよく見えなかった。
「探索ができればいいんだよな。」
「探索」
ルークスが唱えると、ルークスの周りに無属性の魔法陣が現れ、次第に魔法陣が大きくなる。その魔法陣は森を上空から包み込むほどの大きさになると、森に無数の光の点が現れる。サトシはうらやましそうにその様子を眺める。
「それは、どうやって?」
「ああ、探索だな。無属性魔法だ。探し物に便利だな。唱えて魔力流すだけだから簡単だぞ。
それはそうと結構いるな。あれはオークとゴブリンだ。人は……いなさそうだな。それ以外にも魔獣が結構いるが、一旦森から外に出してみるか。」
「どうやって?」
「森の中に火事でも起こせば、皆飛び出してくるんじゃないか?とりあえず、外に出てくれると楽だな。」
「じゃあ、俺がやってみます。あの光の点がオークたちなんですよね?あれを追い出せばいいですか?」
「ああ、やってみてくれ。」
サトシは、光の点が森の外に出るように、森の中心に近いところに火柱を上げることにする。
「ファイアストーム」
森の中心、ちょうど光の点が集まっている場所の近くに炎の竜巻を起こす。すると、その光の点が急に激しく動き出し、森の外に向かって移動する。
「お、重畳。重畳。」
その様子をルークスは満足そうに見ていたが、サトシに尋ねる。
「ところでよ。さっきファイアストームって言ってたよな?」
「はい。ファイアストームです。火と風の合成魔法です。」
「なるほどな。合成は良いんだけどさ、お前の起こした魔法。どっちかと言えば「ファイアトルネード」じゃね?」
サトシは英語の授業で指摘された学生のように少し不愉快になったが、一応その真意を尋ねる。
「どういうことですか?」
「まあ、そう拗ねるな。別に英語力をどうこう言ってるわけじゃないんだよ。この世界の魔法は言葉が結構重要なのさ。で、その言葉とイメージが合致していないと威力が半減するんだよね。」
ルークスはそう言いながら、光の点が全くない場所めがけて魔法を放つ。
「ファイアストーム」
ルークスの掌から放たれた炎は激しい暴風に乗って森の広範囲を火炎放射のように焼き尽くす。
「うわ!なんだこれ!」
サトシはその様子に驚愕する。威力が桁違いだった。
「どちらかと言えば、ストームだから嵐なんだよね。一方方向に吹き付ける風をイメージするといいと思うぜ。それに対して。」
ルークスは今度は焼け野原になった場所に手をかざし
「ファイアトルネード」
今度はその焼け野原から火柱が立ち上がり、竜巻のように渦を巻く。その大きさはサトシの比ではなく、直径20mほどにもなっていた。
「どう?わかってもらえたかい。」
サトシは呆然とその様子を眺めていたが、ルークスがやったのと同じように試してみる。
「ファイトルネード」
同様に焼け野原になった場所を狙うと、その場所にルークスの魔法の倍ほどもある大きな火炎竜巻が発生する。
「おいおい、お前の魔力どうなってんだよ!すげーな。ってか。なんで魔力減らない?」
魔法の威力と共に、サトシの魔力が減らないことにルークスは疑問を抱いた。
「あ、これ、闇属性魔法の「ドレイン」使いながらやってるんで、周囲の魔力を吸って発動してます。」
「なに?そんなことできんの!?いや、それすごいな。」
「でも、助かります。これで随分戦闘が楽になります!」
サトシは踊りだしたいような気分だった。
「まあ、喜んでもらえてうれしいよ。」
そんなこんなでほったらかしになっていたオークたちが、森からわらわらと逃げ出して来る。オークが二十数匹、ゴブリンが数匹と言ったところだ。
「で、どうしましょうか。あれ。」
「そうなぁ。全部燃やしちまうと、依頼達成の証拠が無くなるしな。それとサトシはなんかほしいって言ってなかったっけ?」
「ああ、オークとゴブリンが持ってるクズ装備が欲しいんですよ。」
「なんでクズ装備限定なんだよ。良い装備じゃだめなのか?」
「いや、それはそれでありがたいんですけど、俺鍛冶屋スキル持ってるんで、整備できるから。」
「なるほどね。了解、じゃあ、切り刻んで終わりにしようか。サトシ試しにやってみる?ウィンドカッターなんてどう?」
「あ、いいですね。ちょっと試してみます。で、ある程度数が減ったら、剣術も練習したいんで突っ込んでみます。」
「なんだ。随分狂戦士発言だな。戦闘狂か?まあいいけど。じゃあ、なんかあったら援護するよ。」
「ありがとうございます。」
「あ、そうそう。風魔法強化用の魔法陣はこれね。」
またサトシの目前に魔法陣が現れる。多重の風強化魔法陣だった。
「ありがとうございます。やってみます『ウィンドカッター』」
強烈な竜巻がオークの集団に襲い掛かる。
10匹ほどのオークが竜巻に放り上げられながら、切り刻まれてゆく。竜巻が通った後には肉片しか残っていなかった。
残りのオークとゴブリンを討伐すべく、サトシは地面に降りてゆく。アイは着地すると、オークたちから距離を取り、ライトボールを放ちオークたちの視界を奪う。
サトシは一番手近に居たオーク背後に回り込み、首を切り落とす。首を失ったオーク数歩歩いてその場に倒れ込む。流れるようにオークの眉間や首を狙い、それぞれ一撃で屠って行く。7匹ほど倒したところでオークたちの視界が戻り、サトシめがけて襲い掛かってくる。サトシはそれらの攻撃をかわしながら、足や武器を持つ腕を狙い、相手の動きを止めてゆく。時折魔法も交えながらサトシはすべてのオークを討伐した。
「いや。見事だな。大したもんだ。驚いたよ。」
上空からルークスが手を叩きながらするすると降りてきた。
「じゃあ、頂くものだけ頂いて帰るとするか。」
「そうですね。」
サトシたちは、オークの耳や舌を落とし袋に入れて持ち帰ることにする。
「ところで、この荷物持って帰る方法あります?」
「ああ、この装備か。ってか、サトシお前ノープランだったの?」
「えへっ。まあ。」
「てへぺろじゃねぇよ。まあいいか。じゃあ、転移も教えておこうか?」
「マジで。良いんすか?」
「教えるのは問題ないんだけど、気を付けないといけないことがあるけどな。」
「なんです?」
「まず、自分の知っている場所以外は飛ぶな。一応想像すれば大まかな場所さえわかれば飛べないことは無い。でも、変なところに飛ぶと、崖だったり、土の中だったり、火や水の中ってこともある。要は危ないんだよ。」
「なるほど。気を付けます。」
「一旦獲物はここに置いときな。後で取りに来よう。ここからヨウトに飛ぶ方が楽だろう。こっから冒険者ギルドまでは空を飛んでいけばすぐだしな。」
「確かに。」
そうして、サトシたちはオーク討伐のあかしを持って冒険者ギルドへ向かった。
「こんにちは」
「あ、いらっしゃい。どうしたんです?何か忘れものですか?」
受付嬢がサトシたちに尋ねる。
「いや、討伐が終わったんで。」
「へ?なんの討伐ですか?」
「オークの。」
「「「!?」」」
話が聞こえたらしい周囲の冒険者たちも一気にサトシたちの方を凝視する。
「え、ホントですか?」
「はい。これ、オークの体の一部です。」
「あ、はい。少々お待ちください。」
受付嬢は、オークの体の一部が入った革袋を預かると、奥の部屋へと下がって行く。数分ののち再びカウンターに戻ってくる。
「た、たしかに。討伐確認いたしました。あのぉ。20体以上の討伐も確認できましたので、昇級についてはいかがいたしましょうか?」
ギルドに居た冒険者たちからどよめきが起こる。
「昇級ってした方が良いんですかね?」
「どうでしょう。こればかりはご本人様次第と言ったところですね。受けられる依頼がある程度制限されますし、特に今回は2階級特進ですのでCランク以上の依頼しか受けられなくなります。今のところCランク以上しか侵攻できないダンジョンもありませんので、こちらでは何とも……」
「どうします?ルークスさん。」
「いや、俺こだわりないし。何でもいいんじゃない?七宝でも真鍮でも。」
「ところで、今届いてる依頼でCだと受けられなくなるやつって、何があります?」
「そうですねぇ……」
受付嬢は、依頼が記載されたファイルを後ろの書棚から取り出し確認する。
「いま、すでに着手されてる者も含めて……5つほどが受けられなくなりますね。洞窟での魔石採取や、魔獣の森への植物採取など、どれも素材採取関係の依頼ですね。今エンドゥのギルドで受けている依頼が200件余りですから……」
受付嬢は言葉を途中で濁したが、それほど影響ないと言う事だろう。サトシはしばらく悩んだ末、ルークスに確認する。
「昇級しようと思うんですが、いいですか?アイはどう思う?」
「さっきも言ったが、俺はどっちでもいいよ。もともと冒険者ってそんなに稼げるわけじゃないからな。いろんなダンジョンに入れる方がいいんじゃないか?」
「アタシはどっちでもいいよ。サトシが決めて。」
「ん~。」
一呼吸おいて、サトシは受付嬢に告げる。
「じゃあ、昇級でお願いします。」
「承知しました。いま認識票をお持ちいたします。」
3人はしばらくその場で待たされた。20分ほどすると、受付嬢が布袋に入った認識票を持ってきた。裸で渡された七宝とはえらい違いだった。
「お待たせしました。Cランク冒険者の認識票です。それと、今回の昇級についてはエンドゥの冒険者ギルド史上最短記録となりました。」
三人には、その最短記録とやらが、めでたいのかめでたくないのか良くわからなかった。
「あぁ、ああ、そうね。まあ、いいじゃない。」
ルークスはサトシの質問に口ごもる。それがすべて物語っていた。異世界人だ。いや。この表現を使うと言う事は少なくとも日本に居た人間だろう。
「そう言う事なんだな。」
アイの手前、サトシは言葉を濁す。
「まあ、想像に任せるよ。で、俺の事信じる気になったかい?これだけ魔法についても教えるって言ってんだ。信じてくれよ。」
サトシは宙に浮きながら、しばらく考え込む。アイが不安げにサトシの顔を覗き込むが、その様子にサトシはアイの頭を撫でながら
「何でもない。ところで、アイはルークスさんの事どのくらい知ってるんだ?」
アイはしばらく考え込む。そして、
「そんなに知らないな。前にあったことがある程度」
「そうか、わかった。ルークスさん。取り敢えず信用しますよ。その代わりと言っては何ですけど、魔法の事、もっと教えてください。」
「ああ、そんなことでよければお安い御用だ。取り敢えず仲良くいこうぜ。ついでに俺もパーティー登録しておいてもらえると助かるけどな。」
サトシは忘れないうちにルークスをパーティーメンバーに登録することにした。
サトシたちは上空に舞い上がり、平原を見渡しながら北へと移動する。
エンドゥの街に城壁は無く、大通りを北に進むと建物がまばらになりやがてただの平原となっていた。
南の方角には小高い山があるが、北側には高い建物や山は無く、上空からだと遠くまで見渡すことができた。
「オークはどのあたりに居るかね?」
ルークスは遠くを確認しようとずんずん北へと進んで行く。サトシもそれを追う。しばらく進むと、背の低い木々が目立つようになり、その先には森が見えてきた。
「あのあたりだとオークの集落があってもおかしくないな。」
ルークスの言うように、水場もあり身を隠すにもちょうどよさそうな場所であった。
「上からじゃ、確認するのは難しそうですね。」
サトシは木立の隙間から下を覗こうとするがよく見えなかった。
「探索ができればいいんだよな。」
「探索」
ルークスが唱えると、ルークスの周りに無属性の魔法陣が現れ、次第に魔法陣が大きくなる。その魔法陣は森を上空から包み込むほどの大きさになると、森に無数の光の点が現れる。サトシはうらやましそうにその様子を眺める。
「それは、どうやって?」
「ああ、探索だな。無属性魔法だ。探し物に便利だな。唱えて魔力流すだけだから簡単だぞ。
それはそうと結構いるな。あれはオークとゴブリンだ。人は……いなさそうだな。それ以外にも魔獣が結構いるが、一旦森から外に出してみるか。」
「どうやって?」
「森の中に火事でも起こせば、皆飛び出してくるんじゃないか?とりあえず、外に出てくれると楽だな。」
「じゃあ、俺がやってみます。あの光の点がオークたちなんですよね?あれを追い出せばいいですか?」
「ああ、やってみてくれ。」
サトシは、光の点が森の外に出るように、森の中心に近いところに火柱を上げることにする。
「ファイアストーム」
森の中心、ちょうど光の点が集まっている場所の近くに炎の竜巻を起こす。すると、その光の点が急に激しく動き出し、森の外に向かって移動する。
「お、重畳。重畳。」
その様子をルークスは満足そうに見ていたが、サトシに尋ねる。
「ところでよ。さっきファイアストームって言ってたよな?」
「はい。ファイアストームです。火と風の合成魔法です。」
「なるほどな。合成は良いんだけどさ、お前の起こした魔法。どっちかと言えば「ファイアトルネード」じゃね?」
サトシは英語の授業で指摘された学生のように少し不愉快になったが、一応その真意を尋ねる。
「どういうことですか?」
「まあ、そう拗ねるな。別に英語力をどうこう言ってるわけじゃないんだよ。この世界の魔法は言葉が結構重要なのさ。で、その言葉とイメージが合致していないと威力が半減するんだよね。」
ルークスはそう言いながら、光の点が全くない場所めがけて魔法を放つ。
「ファイアストーム」
ルークスの掌から放たれた炎は激しい暴風に乗って森の広範囲を火炎放射のように焼き尽くす。
「うわ!なんだこれ!」
サトシはその様子に驚愕する。威力が桁違いだった。
「どちらかと言えば、ストームだから嵐なんだよね。一方方向に吹き付ける風をイメージするといいと思うぜ。それに対して。」
ルークスは今度は焼け野原になった場所に手をかざし
「ファイアトルネード」
今度はその焼け野原から火柱が立ち上がり、竜巻のように渦を巻く。その大きさはサトシの比ではなく、直径20mほどにもなっていた。
「どう?わかってもらえたかい。」
サトシは呆然とその様子を眺めていたが、ルークスがやったのと同じように試してみる。
「ファイトルネード」
同様に焼け野原になった場所を狙うと、その場所にルークスの魔法の倍ほどもある大きな火炎竜巻が発生する。
「おいおい、お前の魔力どうなってんだよ!すげーな。ってか。なんで魔力減らない?」
魔法の威力と共に、サトシの魔力が減らないことにルークスは疑問を抱いた。
「あ、これ、闇属性魔法の「ドレイン」使いながらやってるんで、周囲の魔力を吸って発動してます。」
「なに?そんなことできんの!?いや、それすごいな。」
「でも、助かります。これで随分戦闘が楽になります!」
サトシは踊りだしたいような気分だった。
「まあ、喜んでもらえてうれしいよ。」
そんなこんなでほったらかしになっていたオークたちが、森からわらわらと逃げ出して来る。オークが二十数匹、ゴブリンが数匹と言ったところだ。
「で、どうしましょうか。あれ。」
「そうなぁ。全部燃やしちまうと、依頼達成の証拠が無くなるしな。それとサトシはなんかほしいって言ってなかったっけ?」
「ああ、オークとゴブリンが持ってるクズ装備が欲しいんですよ。」
「なんでクズ装備限定なんだよ。良い装備じゃだめなのか?」
「いや、それはそれでありがたいんですけど、俺鍛冶屋スキル持ってるんで、整備できるから。」
「なるほどね。了解、じゃあ、切り刻んで終わりにしようか。サトシ試しにやってみる?ウィンドカッターなんてどう?」
「あ、いいですね。ちょっと試してみます。で、ある程度数が減ったら、剣術も練習したいんで突っ込んでみます。」
「なんだ。随分狂戦士発言だな。戦闘狂か?まあいいけど。じゃあ、なんかあったら援護するよ。」
「ありがとうございます。」
「あ、そうそう。風魔法強化用の魔法陣はこれね。」
またサトシの目前に魔法陣が現れる。多重の風強化魔法陣だった。
「ありがとうございます。やってみます『ウィンドカッター』」
強烈な竜巻がオークの集団に襲い掛かる。
10匹ほどのオークが竜巻に放り上げられながら、切り刻まれてゆく。竜巻が通った後には肉片しか残っていなかった。
残りのオークとゴブリンを討伐すべく、サトシは地面に降りてゆく。アイは着地すると、オークたちから距離を取り、ライトボールを放ちオークたちの視界を奪う。
サトシは一番手近に居たオーク背後に回り込み、首を切り落とす。首を失ったオーク数歩歩いてその場に倒れ込む。流れるようにオークの眉間や首を狙い、それぞれ一撃で屠って行く。7匹ほど倒したところでオークたちの視界が戻り、サトシめがけて襲い掛かってくる。サトシはそれらの攻撃をかわしながら、足や武器を持つ腕を狙い、相手の動きを止めてゆく。時折魔法も交えながらサトシはすべてのオークを討伐した。
「いや。見事だな。大したもんだ。驚いたよ。」
上空からルークスが手を叩きながらするすると降りてきた。
「じゃあ、頂くものだけ頂いて帰るとするか。」
「そうですね。」
サトシたちは、オークの耳や舌を落とし袋に入れて持ち帰ることにする。
「ところで、この荷物持って帰る方法あります?」
「ああ、この装備か。ってか、サトシお前ノープランだったの?」
「えへっ。まあ。」
「てへぺろじゃねぇよ。まあいいか。じゃあ、転移も教えておこうか?」
「マジで。良いんすか?」
「教えるのは問題ないんだけど、気を付けないといけないことがあるけどな。」
「なんです?」
「まず、自分の知っている場所以外は飛ぶな。一応想像すれば大まかな場所さえわかれば飛べないことは無い。でも、変なところに飛ぶと、崖だったり、土の中だったり、火や水の中ってこともある。要は危ないんだよ。」
「なるほど。気を付けます。」
「一旦獲物はここに置いときな。後で取りに来よう。ここからヨウトに飛ぶ方が楽だろう。こっから冒険者ギルドまでは空を飛んでいけばすぐだしな。」
「確かに。」
そうして、サトシたちはオーク討伐のあかしを持って冒険者ギルドへ向かった。
「こんにちは」
「あ、いらっしゃい。どうしたんです?何か忘れものですか?」
受付嬢がサトシたちに尋ねる。
「いや、討伐が終わったんで。」
「へ?なんの討伐ですか?」
「オークの。」
「「「!?」」」
話が聞こえたらしい周囲の冒険者たちも一気にサトシたちの方を凝視する。
「え、ホントですか?」
「はい。これ、オークの体の一部です。」
「あ、はい。少々お待ちください。」
受付嬢は、オークの体の一部が入った革袋を預かると、奥の部屋へと下がって行く。数分ののち再びカウンターに戻ってくる。
「た、たしかに。討伐確認いたしました。あのぉ。20体以上の討伐も確認できましたので、昇級についてはいかがいたしましょうか?」
ギルドに居た冒険者たちからどよめきが起こる。
「昇級ってした方が良いんですかね?」
「どうでしょう。こればかりはご本人様次第と言ったところですね。受けられる依頼がある程度制限されますし、特に今回は2階級特進ですのでCランク以上の依頼しか受けられなくなります。今のところCランク以上しか侵攻できないダンジョンもありませんので、こちらでは何とも……」
「どうします?ルークスさん。」
「いや、俺こだわりないし。何でもいいんじゃない?七宝でも真鍮でも。」
「ところで、今届いてる依頼でCだと受けられなくなるやつって、何があります?」
「そうですねぇ……」
受付嬢は、依頼が記載されたファイルを後ろの書棚から取り出し確認する。
「いま、すでに着手されてる者も含めて……5つほどが受けられなくなりますね。洞窟での魔石採取や、魔獣の森への植物採取など、どれも素材採取関係の依頼ですね。今エンドゥのギルドで受けている依頼が200件余りですから……」
受付嬢は言葉を途中で濁したが、それほど影響ないと言う事だろう。サトシはしばらく悩んだ末、ルークスに確認する。
「昇級しようと思うんですが、いいですか?アイはどう思う?」
「さっきも言ったが、俺はどっちでもいいよ。もともと冒険者ってそんなに稼げるわけじゃないからな。いろんなダンジョンに入れる方がいいんじゃないか?」
「アタシはどっちでもいいよ。サトシが決めて。」
「ん~。」
一呼吸おいて、サトシは受付嬢に告げる。
「じゃあ、昇級でお願いします。」
「承知しました。いま認識票をお持ちいたします。」
3人はしばらくその場で待たされた。20分ほどすると、受付嬢が布袋に入った認識票を持ってきた。裸で渡された七宝とはえらい違いだった。
「お待たせしました。Cランク冒険者の認識票です。それと、今回の昇級についてはエンドゥの冒険者ギルド史上最短記録となりました。」
三人には、その最短記録とやらが、めでたいのかめでたくないのか良くわからなかった。
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