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サトシの譚
惨劇
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ゴブリンの集団の方へサトシは進んでゆく。ゆっくりとした足取りではあるが、迷いはない。
再度剣を握り直し、ゴブリンたちの様子を窺う。まだサトシの事に気づいていないようだった。
近づくにつれてゴブリンたちの様子がはっきり見えてくる。集落を襲ったゴブリンよりもずいぶんと小さい。子供だろうか。
その中でも比較的大きなゴブリンがサトシに気が付いた。怪訝な顔をして、周囲に知らせる。すると、サトシに気づいたゴブリンたちは口々に奇声を上げながら、蜘蛛の子を散らすようにそれぞれ掘っ立て小屋に逃げ込んでゆく。
キィキキキィキィケヤァーーーー!
耳障りな声が周囲から鳴り響く。
掘っ立て小屋から大柄なゴブリンたちが武器を持って駆けだしてきた。口々に奇声を上げながらサトシの事を威嚇してくる。サトシはそれを悠然と見据えながら最も大きいゴブリンに近づいてゆく。
ゆったりと歩いて近づくサトシに警戒しながら、そのゴブリンは棍棒を高々と振り上げ威嚇する。しかしサトシにひるむ様子はなかった。
「長(おさ)は誰だ?」
サトシはゆっくりと尋ねる。
キキェーーー!
ゴブリンは奇声を上げて威嚇を続ける。
「はぁ、だから長は誰だ?どこにいる?」
ゴブリンは顔を引きつらせて棍棒をサトシめがけて振り下ろす。が、その棍棒を握る手をサトシは抜き手も見せず切り落とす。すると棍棒は命中することなくサトシの後方に手首ごと飛んで行く。
ゴブリンは空振りしたのち、自分の手首がなくなっていることに気づく。そして悲鳴に似た奇声を上げる。
「うるさい」
サトシは静かに言い放つと、ゴブリンの顎先に剣を突き立てる。
「もう一度聞く。長は誰だ?どこにいる?」
ゴブリンは恐怖と怒りの入り混じった表情でサトシをにらみつけ、サトシの剣を奪おうと手を伸ばす。が、サトシはそのまま喉を剣で突き通して首を撥ねる。
ゴブリンの体は力なくその場にへたり込む。
「おい、貴様ら!長を呼んで来い。来ないなら集落を焼け野原にするぞ!」
サトシはそういうと、少し離れた掘っ立て小屋にファイアストームをお見舞いする。掘っ立て小屋を覆いつくすほどの火柱が上がり、竜巻となって小屋は跡形もなく吹き飛ぶ。中から火だるまになったゴブリンが3匹駆けだしてくるが、数秒で消し炭になり消え去る。
その様子に、周囲のゴブリンたちに戦慄が走る。消え去った掘っ立て小屋と、サトシを交互に見ながらゴブリンたちは距離を取り始める。
「だから、早く呼んで来い。さもないと全部燃やし尽くすぞ。」
サトシは全員に聞こえるように、努めてゆっくりと告げる。
すると、奥の森から武装したゴブリンたちがこちらに向かって走ってくる。数は20ほどだろうか。ほとんどが大柄なホブゴブリンだ。
それらはやはり奇声を上げながらサトシを威嚇し駆け寄ってくる。その様子をヤレヤレといった表情でサトシは眺める。
「お前が長か?」
一番大柄なゴブリンに大声で尋ねる。が、奇声を上げるだけで会話にならない。サトシはステータスを確認する。
「ゴブリンロード Lv22 HP HP:2900/2900 ATK:1289 DEF:379 弱点:火」
「そうみたいだな。」
そういうと、サトシはゴブリンロードたちを泥沼で足止めしたところにファイアストームをお見舞いする。
ギヤァァァーーー!
大きな叫び声をあげながらゴブリンロードとホブゴブリンたちは燃え尽きる。その様子を周りのゴブリンたちはあっけにとられて眺めていた。
「で、お前たちはどうする?」
サトシはほかのゴブリンたちに問いかける。が、その意図は伝わらなかった。
ゴブリンたちは、武器を振りかぶってサトシに襲い掛かる。が、連携の取れていないゴブリンたちの攻撃は、今のサトシに通じるはずもなく、ことごとく切り伏せられる。
その中には大人のゴブリンだけでなく、メスや子供のゴブリンもいた。
はじめはメスや子供のゴブリンの攻撃を躱し、棍棒を切り落とすなど無力化していたが、執拗に襲い掛かってくる状況にサトシは、
「結局同じか、俺もゴブリンも。女子供を手にかけないなんて綺麗ごとだな。」
と、自分やジルがゴブリンに襲われたことを思い出す。自分たちの平穏は誰かの犠牲のもとに成り立っている。結局ここで見逃しても復讐の連鎖を止めることができないと思い至る。
「ごめんね……いや、謝って済む問題でもないか。君たちも謝らないんだろうから、俺も謝らないよ。さよなら。」
せめて痛みなく。サトシはそう思いながらすべてのゴブリンを切り伏せてゆく。
最後の一人を切り伏せると、辺りは静寂に包まれる。
切り伏せたゴブリンの亡骸を、ひとところに集め、ファイアストームで焼き払う。すべてが消し炭になったことを確認すると、ジルとアンヌのもとへ向かう。
ひどい腐臭の中、二人の亡骸は大量の蛆にたかられ、変わり果てた姿となっていた。ほかの亡骸も別の集落から連れ去られた人たちだろう。
サトシは冥福を祈りながら荼毘に付す。
その火を眺めながら、サトシは己の無力さを痛感していた。
再度剣を握り直し、ゴブリンたちの様子を窺う。まだサトシの事に気づいていないようだった。
近づくにつれてゴブリンたちの様子がはっきり見えてくる。集落を襲ったゴブリンよりもずいぶんと小さい。子供だろうか。
その中でも比較的大きなゴブリンがサトシに気が付いた。怪訝な顔をして、周囲に知らせる。すると、サトシに気づいたゴブリンたちは口々に奇声を上げながら、蜘蛛の子を散らすようにそれぞれ掘っ立て小屋に逃げ込んでゆく。
キィキキキィキィケヤァーーーー!
耳障りな声が周囲から鳴り響く。
掘っ立て小屋から大柄なゴブリンたちが武器を持って駆けだしてきた。口々に奇声を上げながらサトシの事を威嚇してくる。サトシはそれを悠然と見据えながら最も大きいゴブリンに近づいてゆく。
ゆったりと歩いて近づくサトシに警戒しながら、そのゴブリンは棍棒を高々と振り上げ威嚇する。しかしサトシにひるむ様子はなかった。
「長(おさ)は誰だ?」
サトシはゆっくりと尋ねる。
キキェーーー!
ゴブリンは奇声を上げて威嚇を続ける。
「はぁ、だから長は誰だ?どこにいる?」
ゴブリンは顔を引きつらせて棍棒をサトシめがけて振り下ろす。が、その棍棒を握る手をサトシは抜き手も見せず切り落とす。すると棍棒は命中することなくサトシの後方に手首ごと飛んで行く。
ゴブリンは空振りしたのち、自分の手首がなくなっていることに気づく。そして悲鳴に似た奇声を上げる。
「うるさい」
サトシは静かに言い放つと、ゴブリンの顎先に剣を突き立てる。
「もう一度聞く。長は誰だ?どこにいる?」
ゴブリンは恐怖と怒りの入り混じった表情でサトシをにらみつけ、サトシの剣を奪おうと手を伸ばす。が、サトシはそのまま喉を剣で突き通して首を撥ねる。
ゴブリンの体は力なくその場にへたり込む。
「おい、貴様ら!長を呼んで来い。来ないなら集落を焼け野原にするぞ!」
サトシはそういうと、少し離れた掘っ立て小屋にファイアストームをお見舞いする。掘っ立て小屋を覆いつくすほどの火柱が上がり、竜巻となって小屋は跡形もなく吹き飛ぶ。中から火だるまになったゴブリンが3匹駆けだしてくるが、数秒で消し炭になり消え去る。
その様子に、周囲のゴブリンたちに戦慄が走る。消え去った掘っ立て小屋と、サトシを交互に見ながらゴブリンたちは距離を取り始める。
「だから、早く呼んで来い。さもないと全部燃やし尽くすぞ。」
サトシは全員に聞こえるように、努めてゆっくりと告げる。
すると、奥の森から武装したゴブリンたちがこちらに向かって走ってくる。数は20ほどだろうか。ほとんどが大柄なホブゴブリンだ。
それらはやはり奇声を上げながらサトシを威嚇し駆け寄ってくる。その様子をヤレヤレといった表情でサトシは眺める。
「お前が長か?」
一番大柄なゴブリンに大声で尋ねる。が、奇声を上げるだけで会話にならない。サトシはステータスを確認する。
「ゴブリンロード Lv22 HP HP:2900/2900 ATK:1289 DEF:379 弱点:火」
「そうみたいだな。」
そういうと、サトシはゴブリンロードたちを泥沼で足止めしたところにファイアストームをお見舞いする。
ギヤァァァーーー!
大きな叫び声をあげながらゴブリンロードとホブゴブリンたちは燃え尽きる。その様子を周りのゴブリンたちはあっけにとられて眺めていた。
「で、お前たちはどうする?」
サトシはほかのゴブリンたちに問いかける。が、その意図は伝わらなかった。
ゴブリンたちは、武器を振りかぶってサトシに襲い掛かる。が、連携の取れていないゴブリンたちの攻撃は、今のサトシに通じるはずもなく、ことごとく切り伏せられる。
その中には大人のゴブリンだけでなく、メスや子供のゴブリンもいた。
はじめはメスや子供のゴブリンの攻撃を躱し、棍棒を切り落とすなど無力化していたが、執拗に襲い掛かってくる状況にサトシは、
「結局同じか、俺もゴブリンも。女子供を手にかけないなんて綺麗ごとだな。」
と、自分やジルがゴブリンに襲われたことを思い出す。自分たちの平穏は誰かの犠牲のもとに成り立っている。結局ここで見逃しても復讐の連鎖を止めることができないと思い至る。
「ごめんね……いや、謝って済む問題でもないか。君たちも謝らないんだろうから、俺も謝らないよ。さよなら。」
せめて痛みなく。サトシはそう思いながらすべてのゴブリンを切り伏せてゆく。
最後の一人を切り伏せると、辺りは静寂に包まれる。
切り伏せたゴブリンの亡骸を、ひとところに集め、ファイアストームで焼き払う。すべてが消し炭になったことを確認すると、ジルとアンヌのもとへ向かう。
ひどい腐臭の中、二人の亡骸は大量の蛆にたかられ、変わり果てた姿となっていた。ほかの亡骸も別の集落から連れ去られた人たちだろう。
サトシは冥福を祈りながら荼毘に付す。
その火を眺めながら、サトシは己の無力さを痛感していた。
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