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サトシの譚
防戦
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「で、其方は何をしているのかなぁ?」
地の底から響いてくるような、怖気を震う声がサトシの耳元に届く。サトシは飛び上がり、祭壇から距離を取る。
教会入り口近くにいたはずの人影は、祭壇の横まで来ていた。
「ただの通行人です。お気になさらず。」
サトシは距離を取りながら、逃亡できる機会をうかがう。
「通行人ねぇ。今晩は珍しく来客が多い。其方も加わらんか?」
「いえいえ。皆さん楽しんでいらっしゃるようですので、私はこの辺で退散させていただこうかと……」
祭壇を挟んで屍術師とにらみ合う。教会の入り口へ逃げるか、裏口から逃げるか。サトシの頭はフル回転していた。が、その時。
「そう遠慮する必要はないぞぃ。ほれ、皆も其方と遊びたがっておるようだ。」
教会入り口から骸骨戦士が続々と入り込んでくる。とっさにサトシは裏口へと視線を移すが、裏口にも人影が見えた。
ゴブリンだ。
『なんでゴブリンが?って、そういう事か。』
ゴブリンはうつろな目をしてヨタヨタと礼拝堂へ入ってくる。ゾンビ化していた。サトシにはあまりにも厄介な状況だった。
「ちょっとこれから用事がありまして。帰していただけると助かるんですが……」
必死に軽口をたたいてみる。しかし、戦闘を避けることができなそうだとサトシは判断し魔術錬成の準備に入る。
サトシは目を瞑り、
「ライトボール!!」
と声高に叫ぶ。目を閉じていてもわかるほど周囲が明るくなり、悲鳴が聞こえる。光が落ち着いたところでサトシが目を開けると、屍術師が顔を抑えながらうずくまっている。出入口をふさいでいた骸骨戦士やゴブリンゾンビはライトボールを受けてよろめいている。すかさずサトシはもう一発お見舞いする。
「ライトボール!」
教会入り口の骸骨戦士は砂像のように崩れてゆく。が、裏口のゴブリンゾンビはまだ耐えている。
「ステータス!」
『ゴブリンゾンビ LV:15 HP:210/870 ATK:339 DEF:199 弱点:火 光』
『あと少しか。3発ほどで行けるか。』
ライトボールが効くとわかってサトシは安心していた。が、教会入り口が空いた今しかチャンスが無いと、ゴブリンゾンビのことは放っておいて、入り口から外に飛び出る。
外には、100体を優に超えるゴブリンゾンビと骸骨戦士の集団がサトシを待ち構えていた。
「礼儀のなってない客人だなぁ」
体の芯から震えが来るような声だった。屍術師が教会の入り口から姿を現す。ライトボールが直撃したためか、フードが破れ顔が見えている。年のころは40歳といったところだろうか、顔の右半分はやけどしたようにただれている。
サトシは屍術師が行動を起こす前にアンデッドを屠るべく、急いで魔術錬成に入る。
「ライトボール!ライトボール!ライトボール!!」
魔力の限り乱れ打つ。それが功を奏したのか、目の前のアンデッドたちはことごとく砂塵のごとく崩れ落ちる。先ほどから経験値獲得を告げるメッセージが眼前に表示されているが、サトシにそれを見て喜ぶ余裕はなかった。レベルアップの表示でさえも「MPが回復する」と安堵するのがやっとで、必死の形相で魔術錬成を繰り返す。
屍術師は次から次へとアンデッドを出現させてはサトシを追い詰める。一進一退の攻防が夜通し続いた。
東の空が白んできたころ、
「宴はこれまでか。なかなか愉快であった。其方の顔しかと心に刻んだ。再び相まみえるときは覚悟せよ。」
そう言い残して屍術師と共にアンデッドは消えていった。
地の底から響いてくるような、怖気を震う声がサトシの耳元に届く。サトシは飛び上がり、祭壇から距離を取る。
教会入り口近くにいたはずの人影は、祭壇の横まで来ていた。
「ただの通行人です。お気になさらず。」
サトシは距離を取りながら、逃亡できる機会をうかがう。
「通行人ねぇ。今晩は珍しく来客が多い。其方も加わらんか?」
「いえいえ。皆さん楽しんでいらっしゃるようですので、私はこの辺で退散させていただこうかと……」
祭壇を挟んで屍術師とにらみ合う。教会の入り口へ逃げるか、裏口から逃げるか。サトシの頭はフル回転していた。が、その時。
「そう遠慮する必要はないぞぃ。ほれ、皆も其方と遊びたがっておるようだ。」
教会入り口から骸骨戦士が続々と入り込んでくる。とっさにサトシは裏口へと視線を移すが、裏口にも人影が見えた。
ゴブリンだ。
『なんでゴブリンが?って、そういう事か。』
ゴブリンはうつろな目をしてヨタヨタと礼拝堂へ入ってくる。ゾンビ化していた。サトシにはあまりにも厄介な状況だった。
「ちょっとこれから用事がありまして。帰していただけると助かるんですが……」
必死に軽口をたたいてみる。しかし、戦闘を避けることができなそうだとサトシは判断し魔術錬成の準備に入る。
サトシは目を瞑り、
「ライトボール!!」
と声高に叫ぶ。目を閉じていてもわかるほど周囲が明るくなり、悲鳴が聞こえる。光が落ち着いたところでサトシが目を開けると、屍術師が顔を抑えながらうずくまっている。出入口をふさいでいた骸骨戦士やゴブリンゾンビはライトボールを受けてよろめいている。すかさずサトシはもう一発お見舞いする。
「ライトボール!」
教会入り口の骸骨戦士は砂像のように崩れてゆく。が、裏口のゴブリンゾンビはまだ耐えている。
「ステータス!」
『ゴブリンゾンビ LV:15 HP:210/870 ATK:339 DEF:199 弱点:火 光』
『あと少しか。3発ほどで行けるか。』
ライトボールが効くとわかってサトシは安心していた。が、教会入り口が空いた今しかチャンスが無いと、ゴブリンゾンビのことは放っておいて、入り口から外に飛び出る。
外には、100体を優に超えるゴブリンゾンビと骸骨戦士の集団がサトシを待ち構えていた。
「礼儀のなってない客人だなぁ」
体の芯から震えが来るような声だった。屍術師が教会の入り口から姿を現す。ライトボールが直撃したためか、フードが破れ顔が見えている。年のころは40歳といったところだろうか、顔の右半分はやけどしたようにただれている。
サトシは屍術師が行動を起こす前にアンデッドを屠るべく、急いで魔術錬成に入る。
「ライトボール!ライトボール!ライトボール!!」
魔力の限り乱れ打つ。それが功を奏したのか、目の前のアンデッドたちはことごとく砂塵のごとく崩れ落ちる。先ほどから経験値獲得を告げるメッセージが眼前に表示されているが、サトシにそれを見て喜ぶ余裕はなかった。レベルアップの表示でさえも「MPが回復する」と安堵するのがやっとで、必死の形相で魔術錬成を繰り返す。
屍術師は次から次へとアンデッドを出現させてはサトシを追い詰める。一進一退の攻防が夜通し続いた。
東の空が白んできたころ、
「宴はこれまでか。なかなか愉快であった。其方の顔しかと心に刻んだ。再び相まみえるときは覚悟せよ。」
そう言い残して屍術師と共にアンデッドは消えていった。
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