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サトシの譚
二正面作戦
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サトシはゆっくりと目を開け、同じ天井をぼんやりと眺めながら思う。
『どこで失敗した?』
父親のあの行動は何が原因だったのか。思い返せば日中の様子に思い当たる節があった。
『ヨウトか』
ヨウトの話を聞いているあたりから若干の違和感があった。
『あの話には触れない方がいいのかな。でも、どうやってゴブリンを撃退する?』
両親から誤解されないようにゴブリンを撃退する方法を見つけなければ、また同じ結末を迎える。やはり、ヨウトに逃げるのが最善だとサトシは考える。できる限り自然に皆をヨウトに逃がすには……考えが浮かばない。
サトシはゆっくりと上体を起こし頭を抱える。
「ふぅ~。」
大きなため息をついて、サトシは立ち上がる。小屋の外に出て、井戸で水を汲み顔を洗う。
「直接ゴブリンの巣を叩くか。」
考えるのが面倒になって、強硬手段に出ようとする。
「いっそのことファイアストームをあの洞穴で起こせば、皆蒸し焼きになるんじゃ……」
と言い及んで、アイの事を思い出す。
「アイの親子も今は囚われてるな」
アイから聞いた話が正しいなら、1~2日前からあの洞穴に捕らえられているはずだ。安直な方法を取れば二人も殺すことになってしまう。そう思い至りまた頭を抱える。しばらくぶつぶつと独り言を言った後、
「まあ、悩んでても仕方ないし準備するか。」
サトシは問題を先送りし、気持ちを切り替えた。前回と同様に召喚ゴブリンから装備を奪い、ヨウトでレベル上げに勤しむことにした。
……
今回の装備はそれなりだった。カールと鍛えたグラディウスほどではないが、十分使用に耐える片手剣が手に入った。レベルが上がり腕力が向上していることもあり、片手で十分振り抜ける。今ならグラディウスも片手で使えそうだった。
「そろそろレベルを上げるのは難しいだろうな…」
そう思いながらヨウトの墓地に向かうと、いつものようにスケルトンが這い出して来る。が、様子が違っていた。
前回までは、ボロボロに破れた服を着た元村人らしいスケルトンが這い出してきていたが、今回はほとんどのスケルトンが武器を持っている。サトシは慌ててステータスを確認する。
『骸骨戦士 Lv:10 HP 660/660 ATK 220 DEF 230 弱点:火 光』
レベルは同じくらいだが今までのスケルトンよりずいぶん強い。サトシは慌てて魔術錬成に入る。
「ライトボール!」
無数の閃光弾がスケルトンに向かってゆく。スケルトンはそれを受けてよろめきはするが、以前のように一撃で砂像のように消え去ることは無い。
「チィ!硬いな。ステータス!」
『骸骨戦士 Lv:10 HP 235/660 ATK 220 DEF 230 弱点:火 光』
半分以上HPを削っていた。それを確認してサトシは安堵する。再びライトボールを乱れ打つ。
一撃では倒せないものの、一匹当たり2発で倒せた。光の魔法との相性は変わらず良いようだ。一度に20匹ほど殲滅できるため非常に効率がいい。サトシは経験値に期待する。
「経験値54800獲得」
「ぼろい!!」
昨日の約10倍だった。これなら効率が上がるとサトシは小躍りしながらライトボールを乱射する。加えて目の前には骸骨戦士が残した武器が無数に転がっている。斧や短剣など、一つ一つはそれほど価値がなさそうだが、素材としての利用価値はありそうだった。
小一時間ほど作業を繰り返すと、目の前にメッセージが現れる。
「経験値55285獲得 サトシのレベルが19に上昇、体力の最大値が上昇しました、腕力が向上しました。攻撃力が向上しました。生命力が向上しました。知性が向上しました。防御力が向上しました。素早さが向上しました。運が向上しました。」
「良いぞぉ。」
サトシは満足げにステータスを確認する。
『ユーザー:サトシ 職業:剣士見習い LV:19 HP:772/772 MP:38/38 MPPS:30 STR:57 ATK:132 VIT:45 INT:22 DEF:85 RES:22 AGI:234 LUK:139 EXP:16777506
スキル:観念動力(テレキネシス) 剣:Lv44 棍棒:Lv3 属性適合 魔術 火:Lv12 水:Lv10 風:Lv11 土:Lv10 光:Lv18 無:Lv12 損傷個所 無し』
「MPも全回復したことだし。ここからは剣術練習とするか。」
サトシはそう言うと、骸骨戦士の集団に飛び込む。軽快な動きで剣を振り抜き、敵の頭部を破壊する。頭部を破壊された骸骨戦士はその場に崩れ落ちる。攻撃をひらひらと躱しながら次々と屠って行く。行動加速をかけなくても以前とは比べ物にならないほど見事な立ち回りだった。
サトシは体力の続く限り骸骨戦士の頭部を砕き続ける。すると
「経験値2714獲得 剣の熟練度が向上しました。剣士にジョブチェンジしました。それに伴いパラメータ再計算が行われます。」
『剣士!』
「サトシのレベルは17に降下、体力の最大値が上昇しました、腕力が向上しました。攻撃力が向上しました。生命力が向上しました。知性が減少しました。素早さが減少しました。防御力が向上しました。運が減少しました。」
サトシは早速ステータスを確認する。
『ユーザー:サトシ 職業:剣士 LV:17 HP:964/964 MP:51/51 MPPS:35 STR:76 ATK:151 VIT:61 INT:20 DEF:101 RES:21 AGI:220 LUK:128 EXP:16852118
スキル:観念動力(テレキネシス) 剣:Lv50 棍棒:Lv3 属性適合 魔術 火:Lv12 水:Lv10 風:Lv11 土:Lv10 光:Lv18 無:Lv12 損傷個所 無し』
「剣士かぁ。」
サトシはにやける。横から骸骨戦士が襲い掛かってくるが、半笑いで躱しつつ頭部を切断する。そして地面に落ちている斧や短剣など、使えそうなものを拾っては、街道の方へ放り投げる。あたりを見渡し、目ぼしい武器がなくなったところで、サトシは墓地から出るため通路上に居る骸骨戦士を次々と兜割にしつつ進む。墓地を出ると、数匹の骸骨騎士(スケルトンウォリアー)が追いかけてくるが、ライトボールで一掃する。
夜が明けるまでまだ時間はあるが、サトシは引き上げることにする。先程放り投げた武器を拾い持ち帰る。集落に戻ると鍛冶屋に向かい、荒れ放題の工房に武器や自分の装備を隠しておく。ここならゴブリンの襲撃が来てもすぐ取りに来ることができると考えたからだ。
サトシは井戸に向かうと、軽く水浴びをして汗を流しながらこれからの事について考えを巡らせる。
『とりあえず父さんに説明してみるか。』
サトシが剣術や魔術の練習をしていること。ゴブリンが今日襲ってくること。それらを父親に説明してみることにした。
「まあ、ダメならまた死んでやり直せばいいか。」
残念なほど随分気楽な人生観になっていた。小屋に戻ると、自分の寝床で横になる。朝まではゆっくり休むことにした。
……
しばらくすると、両親が起きだして身支度を始める。サトシは頃合いを見て父親に話しかける。
「父さん。」
「おお、どうした。今日は早いな。」
「今日はウルサンに行くの?」
「いや、今日は行かないな。明日まとめていくことにしてるんだ。ちょうどよかった、実は明日はお前たちにもウルサンに一緒に行ってもらおうと思っててな。」
「実は、大事な話があるんだ。」
「ン?どうした。深刻な顔をして。」
サトシは父親の様子を窺う。努めて冷静に話し始める。
「実は、俺冒険者になるために特訓してるんだ。」
「ああ、お前が冒険者になりたいって言ってるのは知ってたよ。たまに丘向こうで棒切れを振り回してるのも見てるしな。」
父親はほほえましい思い出を思い出しながらにやさしく語りかける。
「で、結構強くなったんだ。」
「そうかそうか。頼りにしてるぞ。」
父親はやさしくサトシの肩を叩く。全く信用していないようである。
「魔術も使えるようになったから、ちょっと見てほしいんだ。」
「魔術?」
父親の表情が曇る。
『失敗したか?』
サトシは不安に駆られながらも話を続ける。
「俺、未来が見えるんだ。またここにゴブリン達がやってくる。だからそれに備えて準備してたんだ。」
タイムリープの事は伏せた。どの道信用されないだろうと思ったからだ。そして、
「ちょっと外に来てくれる。俺の魔術を見せるよ。」
父親は怪訝な顔つきでサトシの後に続く。サトシは小屋から出ると畑の前で立ち止まる。
「あの丘の麓に、炎の竜巻を出すよ。」
「……」
父親は黙ってサトシの言葉を聞きながら、視線を丘に移す。サトシはそれを確認して魔術錬成を始める。
「ファイアストーム」
3mほどもある火柱が上がり周囲から風を巻き込みながら待っすく上空に伸びてゆく。サトシたちの場所からは200メートルほど離れているが、それでも軽く熱を感じるほどだった。
「あ!?」
父親は口を開けたまま呆けている。信じられない光景を見たという表情だ。
『さあ、どう出る?』
サトシは父親の様子を観察する。
「あ、あぅ。あ、あれはお前がやったのか?」
「うん。俺の魔術だよ。」
「おまえ、いつの間にそんな……。いや、それよりもゴブリン達が来るって……」
「そう。ゴブリンが来るんだ。今晩。」
「こ、今晩!」
父親は目を大きく開き腰を抜かさんばかりだった。
「だから父さん、協力してほしいんだ。今のままだと父さんは殺されるし、ジルや母さんはゴブリンに連れ去られてしまう。みんなを助けたいんだ。俺に協力してほしい!」
サトシは父親の腕を取り、必死に訴えた。信じてもらえるだろうか。
火柱を見て呆けていた父親の目が生気を取り戻し、今度はサトシを見据える。しばらくの沈黙の後
「お、お前を信じるよ。」
『マジっすか?ちょろいっすね。あんたも』
とサトシは拍子抜けした。正直なところ、今回も信じてもらえず『悪魔憑きだ!』と皆に疎外されるバッドエンドを想像していたが、呆気ないくらいうまく説得できたようだ。
「で、何をすればいい?」
ただ、いざ聞かれると何をすればいいのかよくわからなかった。取り敢えずは前回と同じ行動を取り、夕方ゴブリンが来る前に、両親とジルにはどこかに隠れていてもらいたかった。
「たぶんゴブリン達がやってくるのは日暮れの頃だから、それまでは準備をしたいんだ。俺は魔法があるし、いざとなれば逃げきれると思うんだ。でも父さんたちが心配なんだ。どこか安全な場所に隠れていてほしい。」
「安全な場所かぁ」
父親は考え込む。サトシも正直期待していない。前回裏の小屋に隠れたときも恐怖のあまりジルが叫んで見つかってしまった。おそらく今回も同じではないかと考えている。そんな時、サトシはヨウトの事を思い出す。
『ヨウトはどうだろう。骸骨騎士(スケルトンウォリアー)になってたけど大丈夫かなぁ』
前回は、ヨウトの廃屋に隠れていれば、ゴブリン襲撃をやり過ごせると考えていた。スケルトンなら殲滅も容易だし、家の中まで襲ってくることはなさそうだった。しかし、今は骸骨戦士が発生する。殲滅自体は問題ないが、家の中まで入ってくることが無いだろうか。だが、隠れ家としてはヨウトの廃屋が最適だとサトシは思っていた。
「父さん、実はヨウトで特訓をしてたんだけど……」
「ヨウトで!?」
あ、まずい。とサトシは思った。が杞憂だった。
「あそこは生ける屍が出る。あれに噛まれるとお前も生ける屍になるぞ!」
「心配しなくても大丈夫だよ。俺光属性の魔法が使えるから、遠くから奴らを倒せるんだ。」
「本当か?無茶しないでくれよ。お前がやられちまったら俺たちにはもう……」
父親には悲壮感が漂っていた。よほどサトシの事を大切に思っているのだろう。サトシもそのことを感じて、今までの無鉄砲な行動を反省する。
「心配かけてごめん。でも大丈夫だよ。で、さっきもヨウトの墓地で特訓してきたんだけど、生ける屍が持ってた武器が大量にあるんだ。あれも使えると思うんだよね。」
「おまえ……無茶しやがって。」
「ゴブリンもあそこまでは来ないかもしれないし。もし来たとしても、あそこでなら立派な建物が多いから、隠れるのにもってこいだと思うんだ。どうかな?」
「まあ、ちゃんとカギがかかる家があるなら何とかなるかもしれんが……」
「それと、いざとなったらゴブリンに生ける屍をぶつけることもできるんじゃないかなぁ」
「それは無茶だろ?いくら何でも。」
父親は苦い顔をしたが、サトシは案外いけるんじゃないかと考えていた。
「ねえ、父さん。今から準備を手伝ってもらえない?」
「今からか?畑仕事……、まあ、ゴブリンが来るなら畑仕事どころじゃないか。」
なんやかんや言いながら、息子のこんな与太話を信じてくれる父親に感謝しかなかった。父親は、母親とジルを説得してくれた。日中であれば生ける屍も出てこないはずだ。家の中の家具を利用してバリケードを作ることも可能だろう。
そして4人でヨウトに向かう。
「今度こそ。見てろよ!ゴブリンども」
『どこで失敗した?』
父親のあの行動は何が原因だったのか。思い返せば日中の様子に思い当たる節があった。
『ヨウトか』
ヨウトの話を聞いているあたりから若干の違和感があった。
『あの話には触れない方がいいのかな。でも、どうやってゴブリンを撃退する?』
両親から誤解されないようにゴブリンを撃退する方法を見つけなければ、また同じ結末を迎える。やはり、ヨウトに逃げるのが最善だとサトシは考える。できる限り自然に皆をヨウトに逃がすには……考えが浮かばない。
サトシはゆっくりと上体を起こし頭を抱える。
「ふぅ~。」
大きなため息をついて、サトシは立ち上がる。小屋の外に出て、井戸で水を汲み顔を洗う。
「直接ゴブリンの巣を叩くか。」
考えるのが面倒になって、強硬手段に出ようとする。
「いっそのことファイアストームをあの洞穴で起こせば、皆蒸し焼きになるんじゃ……」
と言い及んで、アイの事を思い出す。
「アイの親子も今は囚われてるな」
アイから聞いた話が正しいなら、1~2日前からあの洞穴に捕らえられているはずだ。安直な方法を取れば二人も殺すことになってしまう。そう思い至りまた頭を抱える。しばらくぶつぶつと独り言を言った後、
「まあ、悩んでても仕方ないし準備するか。」
サトシは問題を先送りし、気持ちを切り替えた。前回と同様に召喚ゴブリンから装備を奪い、ヨウトでレベル上げに勤しむことにした。
……
今回の装備はそれなりだった。カールと鍛えたグラディウスほどではないが、十分使用に耐える片手剣が手に入った。レベルが上がり腕力が向上していることもあり、片手で十分振り抜ける。今ならグラディウスも片手で使えそうだった。
「そろそろレベルを上げるのは難しいだろうな…」
そう思いながらヨウトの墓地に向かうと、いつものようにスケルトンが這い出して来る。が、様子が違っていた。
前回までは、ボロボロに破れた服を着た元村人らしいスケルトンが這い出してきていたが、今回はほとんどのスケルトンが武器を持っている。サトシは慌ててステータスを確認する。
『骸骨戦士 Lv:10 HP 660/660 ATK 220 DEF 230 弱点:火 光』
レベルは同じくらいだが今までのスケルトンよりずいぶん強い。サトシは慌てて魔術錬成に入る。
「ライトボール!」
無数の閃光弾がスケルトンに向かってゆく。スケルトンはそれを受けてよろめきはするが、以前のように一撃で砂像のように消え去ることは無い。
「チィ!硬いな。ステータス!」
『骸骨戦士 Lv:10 HP 235/660 ATK 220 DEF 230 弱点:火 光』
半分以上HPを削っていた。それを確認してサトシは安堵する。再びライトボールを乱れ打つ。
一撃では倒せないものの、一匹当たり2発で倒せた。光の魔法との相性は変わらず良いようだ。一度に20匹ほど殲滅できるため非常に効率がいい。サトシは経験値に期待する。
「経験値54800獲得」
「ぼろい!!」
昨日の約10倍だった。これなら効率が上がるとサトシは小躍りしながらライトボールを乱射する。加えて目の前には骸骨戦士が残した武器が無数に転がっている。斧や短剣など、一つ一つはそれほど価値がなさそうだが、素材としての利用価値はありそうだった。
小一時間ほど作業を繰り返すと、目の前にメッセージが現れる。
「経験値55285獲得 サトシのレベルが19に上昇、体力の最大値が上昇しました、腕力が向上しました。攻撃力が向上しました。生命力が向上しました。知性が向上しました。防御力が向上しました。素早さが向上しました。運が向上しました。」
「良いぞぉ。」
サトシは満足げにステータスを確認する。
『ユーザー:サトシ 職業:剣士見習い LV:19 HP:772/772 MP:38/38 MPPS:30 STR:57 ATK:132 VIT:45 INT:22 DEF:85 RES:22 AGI:234 LUK:139 EXP:16777506
スキル:観念動力(テレキネシス) 剣:Lv44 棍棒:Lv3 属性適合 魔術 火:Lv12 水:Lv10 風:Lv11 土:Lv10 光:Lv18 無:Lv12 損傷個所 無し』
「MPも全回復したことだし。ここからは剣術練習とするか。」
サトシはそう言うと、骸骨戦士の集団に飛び込む。軽快な動きで剣を振り抜き、敵の頭部を破壊する。頭部を破壊された骸骨戦士はその場に崩れ落ちる。攻撃をひらひらと躱しながら次々と屠って行く。行動加速をかけなくても以前とは比べ物にならないほど見事な立ち回りだった。
サトシは体力の続く限り骸骨戦士の頭部を砕き続ける。すると
「経験値2714獲得 剣の熟練度が向上しました。剣士にジョブチェンジしました。それに伴いパラメータ再計算が行われます。」
『剣士!』
「サトシのレベルは17に降下、体力の最大値が上昇しました、腕力が向上しました。攻撃力が向上しました。生命力が向上しました。知性が減少しました。素早さが減少しました。防御力が向上しました。運が減少しました。」
サトシは早速ステータスを確認する。
『ユーザー:サトシ 職業:剣士 LV:17 HP:964/964 MP:51/51 MPPS:35 STR:76 ATK:151 VIT:61 INT:20 DEF:101 RES:21 AGI:220 LUK:128 EXP:16852118
スキル:観念動力(テレキネシス) 剣:Lv50 棍棒:Lv3 属性適合 魔術 火:Lv12 水:Lv10 風:Lv11 土:Lv10 光:Lv18 無:Lv12 損傷個所 無し』
「剣士かぁ。」
サトシはにやける。横から骸骨戦士が襲い掛かってくるが、半笑いで躱しつつ頭部を切断する。そして地面に落ちている斧や短剣など、使えそうなものを拾っては、街道の方へ放り投げる。あたりを見渡し、目ぼしい武器がなくなったところで、サトシは墓地から出るため通路上に居る骸骨戦士を次々と兜割にしつつ進む。墓地を出ると、数匹の骸骨騎士(スケルトンウォリアー)が追いかけてくるが、ライトボールで一掃する。
夜が明けるまでまだ時間はあるが、サトシは引き上げることにする。先程放り投げた武器を拾い持ち帰る。集落に戻ると鍛冶屋に向かい、荒れ放題の工房に武器や自分の装備を隠しておく。ここならゴブリンの襲撃が来てもすぐ取りに来ることができると考えたからだ。
サトシは井戸に向かうと、軽く水浴びをして汗を流しながらこれからの事について考えを巡らせる。
『とりあえず父さんに説明してみるか。』
サトシが剣術や魔術の練習をしていること。ゴブリンが今日襲ってくること。それらを父親に説明してみることにした。
「まあ、ダメならまた死んでやり直せばいいか。」
残念なほど随分気楽な人生観になっていた。小屋に戻ると、自分の寝床で横になる。朝まではゆっくり休むことにした。
……
しばらくすると、両親が起きだして身支度を始める。サトシは頃合いを見て父親に話しかける。
「父さん。」
「おお、どうした。今日は早いな。」
「今日はウルサンに行くの?」
「いや、今日は行かないな。明日まとめていくことにしてるんだ。ちょうどよかった、実は明日はお前たちにもウルサンに一緒に行ってもらおうと思っててな。」
「実は、大事な話があるんだ。」
「ン?どうした。深刻な顔をして。」
サトシは父親の様子を窺う。努めて冷静に話し始める。
「実は、俺冒険者になるために特訓してるんだ。」
「ああ、お前が冒険者になりたいって言ってるのは知ってたよ。たまに丘向こうで棒切れを振り回してるのも見てるしな。」
父親はほほえましい思い出を思い出しながらにやさしく語りかける。
「で、結構強くなったんだ。」
「そうかそうか。頼りにしてるぞ。」
父親はやさしくサトシの肩を叩く。全く信用していないようである。
「魔術も使えるようになったから、ちょっと見てほしいんだ。」
「魔術?」
父親の表情が曇る。
『失敗したか?』
サトシは不安に駆られながらも話を続ける。
「俺、未来が見えるんだ。またここにゴブリン達がやってくる。だからそれに備えて準備してたんだ。」
タイムリープの事は伏せた。どの道信用されないだろうと思ったからだ。そして、
「ちょっと外に来てくれる。俺の魔術を見せるよ。」
父親は怪訝な顔つきでサトシの後に続く。サトシは小屋から出ると畑の前で立ち止まる。
「あの丘の麓に、炎の竜巻を出すよ。」
「……」
父親は黙ってサトシの言葉を聞きながら、視線を丘に移す。サトシはそれを確認して魔術錬成を始める。
「ファイアストーム」
3mほどもある火柱が上がり周囲から風を巻き込みながら待っすく上空に伸びてゆく。サトシたちの場所からは200メートルほど離れているが、それでも軽く熱を感じるほどだった。
「あ!?」
父親は口を開けたまま呆けている。信じられない光景を見たという表情だ。
『さあ、どう出る?』
サトシは父親の様子を観察する。
「あ、あぅ。あ、あれはお前がやったのか?」
「うん。俺の魔術だよ。」
「おまえ、いつの間にそんな……。いや、それよりもゴブリン達が来るって……」
「そう。ゴブリンが来るんだ。今晩。」
「こ、今晩!」
父親は目を大きく開き腰を抜かさんばかりだった。
「だから父さん、協力してほしいんだ。今のままだと父さんは殺されるし、ジルや母さんはゴブリンに連れ去られてしまう。みんなを助けたいんだ。俺に協力してほしい!」
サトシは父親の腕を取り、必死に訴えた。信じてもらえるだろうか。
火柱を見て呆けていた父親の目が生気を取り戻し、今度はサトシを見据える。しばらくの沈黙の後
「お、お前を信じるよ。」
『マジっすか?ちょろいっすね。あんたも』
とサトシは拍子抜けした。正直なところ、今回も信じてもらえず『悪魔憑きだ!』と皆に疎外されるバッドエンドを想像していたが、呆気ないくらいうまく説得できたようだ。
「で、何をすればいい?」
ただ、いざ聞かれると何をすればいいのかよくわからなかった。取り敢えずは前回と同じ行動を取り、夕方ゴブリンが来る前に、両親とジルにはどこかに隠れていてもらいたかった。
「たぶんゴブリン達がやってくるのは日暮れの頃だから、それまでは準備をしたいんだ。俺は魔法があるし、いざとなれば逃げきれると思うんだ。でも父さんたちが心配なんだ。どこか安全な場所に隠れていてほしい。」
「安全な場所かぁ」
父親は考え込む。サトシも正直期待していない。前回裏の小屋に隠れたときも恐怖のあまりジルが叫んで見つかってしまった。おそらく今回も同じではないかと考えている。そんな時、サトシはヨウトの事を思い出す。
『ヨウトはどうだろう。骸骨騎士(スケルトンウォリアー)になってたけど大丈夫かなぁ』
前回は、ヨウトの廃屋に隠れていれば、ゴブリン襲撃をやり過ごせると考えていた。スケルトンなら殲滅も容易だし、家の中まで襲ってくることはなさそうだった。しかし、今は骸骨戦士が発生する。殲滅自体は問題ないが、家の中まで入ってくることが無いだろうか。だが、隠れ家としてはヨウトの廃屋が最適だとサトシは思っていた。
「父さん、実はヨウトで特訓をしてたんだけど……」
「ヨウトで!?」
あ、まずい。とサトシは思った。が杞憂だった。
「あそこは生ける屍が出る。あれに噛まれるとお前も生ける屍になるぞ!」
「心配しなくても大丈夫だよ。俺光属性の魔法が使えるから、遠くから奴らを倒せるんだ。」
「本当か?無茶しないでくれよ。お前がやられちまったら俺たちにはもう……」
父親には悲壮感が漂っていた。よほどサトシの事を大切に思っているのだろう。サトシもそのことを感じて、今までの無鉄砲な行動を反省する。
「心配かけてごめん。でも大丈夫だよ。で、さっきもヨウトの墓地で特訓してきたんだけど、生ける屍が持ってた武器が大量にあるんだ。あれも使えると思うんだよね。」
「おまえ……無茶しやがって。」
「ゴブリンもあそこまでは来ないかもしれないし。もし来たとしても、あそこでなら立派な建物が多いから、隠れるのにもってこいだと思うんだ。どうかな?」
「まあ、ちゃんとカギがかかる家があるなら何とかなるかもしれんが……」
「それと、いざとなったらゴブリンに生ける屍をぶつけることもできるんじゃないかなぁ」
「それは無茶だろ?いくら何でも。」
父親は苦い顔をしたが、サトシは案外いけるんじゃないかと考えていた。
「ねえ、父さん。今から準備を手伝ってもらえない?」
「今からか?畑仕事……、まあ、ゴブリンが来るなら畑仕事どころじゃないか。」
なんやかんや言いながら、息子のこんな与太話を信じてくれる父親に感謝しかなかった。父親は、母親とジルを説得してくれた。日中であれば生ける屍も出てこないはずだ。家の中の家具を利用してバリケードを作ることも可能だろう。
そして4人でヨウトに向かう。
「今度こそ。見てろよ!ゴブリンども」
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パンの製造員を目指す専門学生……だったんだけど。
車に轢かれそうになった猫ちゃんを助けようとしたら、あっさり事故死。でも、その猫ちゃんが神様の御使と言うことで……復活は出来ないけど、僕を異世界に転生させることは可能だと提案されたので、もちろん承諾。
ただ、ひとつ神様にお願いされたのは……その世界の、回復アイテムを開発してほしいとのこと。パンやお菓子以外だと家庭レベルの調理技術しかない僕で、なんとか出来るのだろうか心配になったが……転生した世界で出会ったスライムのお陰で、それは実現出来ることに!!
相棒のスライムは、パン製造の出来るレアスライム!
けど、出来たパンはすべて回復などを実現出来るポーションだった!!
パン職人が夢だった青年の異世界のんびりスローライフが始まる!!

スライムスレイヤー ~イシノチカラ~
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「あんた、スライム増やしてどうすんの?」
***
この世界のモンスターは全てスライムが擬態した姿である。
ギルドのクエストを受け、モンスター討伐を生業としている者を討伐者と呼ぶ。
討伐者はモンスターを浄化する石の力を伝達させた武器でモンスターを倒す。
そんなことも知らなかった主人公を見ていた少女が声をかけ、一緒にモンスターを討伐していくことになる。
そして明らかになるもう一つの不思議な力。
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