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カールの譚
ダンジョン攻略
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坑道を抜け、ダンジョンへと進んだ。最初の大広間には団体さんが鎮座していたが、それはまあ特に問題なく処理できた。その後、広い廊下を進んでゆく。
「やっぱりトラップはあるか?」
オットーに尋ねてみると、
「ああ、でもお前なら大丈夫だろ?」
とにべもない返事。
「いや、まあ、解除してもらえると助かるな。」
「おお、カールさんに頼っていただけるとは!」
なんか腹立つな。まあ、やってもらえるのはありがたいので
「お願いします。」
と、下手に出てみた。
「承知いたしました!」
と、はた目には慇懃な対応だが、本心は如何にって感じか。まあ、容易に想像できるがな。
「で、さっきの感じだとそろそろサイクロプスか。」
オットーがトラップを解除しながら聞いてくる。
「だなぁ。奴はデュラハンほど面倒じゃないが、それでもさっきみたいに瞬殺ってわけにはいかないだろうな。」
「カールさんにしては弱気ですね。まあ、デュラハンも俺らから見たら、2度目も瞬殺に近かったが……」
「んなこたぁねぇよ。結構難儀したぜ。ま、エリザのおかげで助かったけどさ。次も頼むよ。」
「あ、はい。頑張ります。」
頑張る必要はないと思うんだが。でも、けなげな感じも良いね。
「ヨハン。すまねぇが、サイクロプスが現れて、俺の攻撃範囲に入ったら一撃だけ目を狙ってもらえるか?」
「……ああ、わかった。目が弱点なのか?さっきも目を一撃で仕留めてたな。」
「いや、目は弱点ではないんだ。ずっと前に戦った時に、目をつぶしても動きに迷いがなかったからな。実際気配で相手を見てるんだと思う。俺が狙ってるのは、目の奥の下の方にある急所だよ。そこに魔力をぶち込むとはじけてくれるんだよ。」
「そんなところに急所があるのか?サイクロプス討伐でそんな話は聞いたことないぞ。そこだったら目つぶしを狙いに行って、入ることもあるんじゃねぇか?」
「いや、そんな表面的な場所にはねぇんだよ。たぶん頭蓋の中に、もう一つ殻があってそれに守られてると思う。前回もそうだが、前戦った時もずいぶん堅かった。」
今までサイクロプスを倒したのは3回だが、最初のはずいぶん苦労した。どうせ胸に急所があるだろうと踏んで、胸ばかり狙ってたんだが、全く効果がなく、傷はすぐ回復するしで、一晩中戦う羽目になった。早々に目つぶしはしたが、効果はないし。最後は自棄(やけ)になって頭を何度も串刺しにしていたら、頭蓋の中の殻にあたったらしく動きが止まった。で、魔力を流したら爆散した。
それから何年かして、2回目に出会ったときに試してみたら案の定急所だったって感じだ。だから、さっきは簡単に倒せた。
でも、今回に関しては、いきなり狙っても避けてくるような気がしてる。だから、ヨハンとエリザに助けてもらおう。
「御出ででなすったぜ」
オットーが気配を察知した。
「エリザ、ヘイスト頼む。ヨハン、俺の間合いで頼む。」
「わかりました。」
「……了解」
こちらの気配に気づいたサイクロプスが、地響きを立てながらこちらに向かって走ってくる。
奴の一つ一つの動作は遅いが、こちらの攻撃に対する回避行動は意外に素早い。エリザのヘイストが効いてきた。俺の背後ではヨハンが距離を測りながらサイクロプスの目を狙っている。あと5m。
ビュッ!
ちょうどサイクロプスが俺の間合いに差し掛かった時に、ヨハンの射た矢がサイクロプスの目めがけて飛んで行く。さすがヨハン!
サイクロプスは回避行動に入る。
『左か!』
避けたほうに目標を修正して剣を突き立てる。俺の伸ばした右手に急所の手ごたえがあった。
「爆ぜろ!」
魔力を一気に込めと、サイクロプスの頭はザクロのようにはじける。頭を失った胴体はその後10mほど走って俺たちの後方で倒れこんだ。
「よし。イッチョ上がり。助かったよ。エリザ。ヨハン」
「見事なもんだな。」
「いや、フォローがあると助かるよ。それがなきゃあんな風にはいかんさ。」
実際見た目以上にギリギリの勝負だった。まあ結果オーライだ。
その後ミノタウロスも同様にサクッと倒す。奴は角の根元に急所があるが、左右どちらなのかがわからない。前回同様今回も勘が当たった。
で、目の前にはマンティコアの居る大広間の扉だ。さて、次も一撃で……とはいかなかった。
静かに開けた扉の向こうには、すでに起き上がったマンティコアがいた。
翼をこれ見よがしに大きく広げ、こちらを威嚇している。人間に似た顔は口角が吊り上がり、不気味な笑みを浮かべている。開いた口の中にはサメのように尖ったがった細かい歯が3重にびっしりと並んでいる。
「よくここまでたどり着いたな。愚かな人間よ!」
えぇぇ!!しゃべれんの?
その感想は、3人も同じだったようで、微妙な表情でお互いの顔を見合わせた。
「1000年の長きにわたり、我への信仰を忘れた罪。貴様らの命で償ってもらおうか!!」
いやはや、さっきあっさり死んだのはなかった事にするんですね。わかります。じゃねぇよ。なんだよ。しれっと話進めてんじゃねぇよ。
「おい、さっき真っ二つになったのは何だったんだ?お前何もんだ!」
あまりに釈然としなかったから、つい聞いちゃった。
「ふはははは!不遜な人間よ。我はこの地を統べる神。貴様らはこの場で我に踏みつぶされるのだ!!」
いや、聞いてた?俺の話。
「だから、お前さっき死んだじゃん?あれ何よ?」
「1000年の長きに…」
いや、それさっき聞いたよ。俺の話聞けよ。1000年で脳みそも退化したのか?
「もういい。行くぞ。」
やべえ、作戦練るの忘れてた。どうしよう。
「カール、バフかけます。それと、デバフをマンティコアにかけてみて様子を見ましょう。」
「……俺も、魔法攻撃の矢が効くのか確認してみる。カールは注意を引き付けてくれ。」
「俺も状態異常系のアイテムを奴にぶち込んでみる。すきを作ってくれ。頼む。」
さすがSランク、頼りになるねぇ。
エリザのバフが効き始めたのを確認して、俺は奴の前を動き回りかく乱する。前足や顔を切りつけてみて反応を見る。ダメージは通るみたいだな。
「ダメですね。デバフは聞かないようです。」
「状態異常系のアイテムもだめだな。俺は毒系の回復に回る。」
「……物理攻撃の矢は通るが、魔法攻撃はだめだ。奴の体力を削ることは無理そうだから、俺が陽動に回る。」
「了解。じゃあ、本格的に行くぜ。」
俺の攻撃を主軸に、3人がフォローしてくれる。
まずは前足と、尻尾だな。攻撃パターンも単調だ。前足でのひっかき攻撃と、尻尾の毒針による攻撃。
当たらなければどうと言う事はない。
斬撃で奴の体力を削る。これはいけるんじゃないか?と思った時だった。
奴の顔が、不気味にゆがむ。口が大きく開き中に無数の歯が見えた。その時
ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
奴が叫び声をあげる!
「ぐはぁっ!」
強烈な衝撃と痛みが俺を襲う!
なんだ!視界がゆがむ。足がふらつく。目をきつく瞑り、ゆっくりと前を見ると、目の前には血だらけになったエリザが倒れている。
「エリザ!!」
駆け寄ろうとしたとき、背後から何かに肩をつかまれる。マンティコアだ!!
なんだ!場所が入れ替わってるのか?それとも、俺の方向感覚が狂ったのか?なんだと!マンティコアが3匹に分裂している。サイズは小さいが3匹となると厄介だ。とっさに剣を構え、倒れているエリザをかばう。オットーとヨハンは何処へ行った?
すると、小柄になった3匹のマンティコア、その一際小さいやつがこちらに術をかける。
「麻痺(スタン)!!」
ギッ!
ち、身動きが、かろうじて動けはするが攻撃を回避できない。やられる!と思った時。
「魔術解除(デスペル)」
急に体が重くなる。ヘイストが切れたか。おかげで麻痺も取れたが…ってあれ?なんで俺仲間の3人に剣を向けてんの?
……
うわ、危ねぇ!マンティコアに背中向けてたよ。なんで?
エリザがほっとした表情で告げる。
「魅惑(テンプテーション)です。正気に戻ってよかったですよ。マンティコアよりよほどカールの方が恐ろしいですから。」
三人に安堵の色が見える。
「すまん。気を付ける。」
「頼むぜ、カール!」
「おう。」
奴の攻撃パターンは単調だが、魅惑(テンプテーション)はシャレにならんな。なら、まずは叫べないように喉元か。
「もう一度、バフを頼む。まずは叫べなくする!」
「はい!」
俊敏性と攻撃力が向上したのがわかる。一気に喉元を切り裂く。そして!
そして。
そして?
あれ、首が落ちたら動かなくなった。
「おう、一撃だったな。」
「さすがですね、」
「……見事だ。」
あ、あう。そう、そうですね。そうよね。確かにほとんどの生き物が首を落とせば死ぬもんね。そう。計画通り。ニヤリ。
冷汗が流れるが気にしない。
「さて、どうなるかな」
首のなくなったマンティコアは地響きを立ててその場に崩れ落ちる。そして、光の粉に変化し蒸発するように消えてゆく。
それに呼応するように、周囲から邪悪な気配が消えてゆく。これはオットーじゃなくてもわかるくらい明らかな変化だ。が。一応オットーに確認しよう。
「オットー。どうだ、敵の気配は。」
「消えたな。ダンジョンだけじゃなく、鉱山全体から消えたよ。こいつが元凶だったってことだろうな。まあ、釈然とはしないが。」
だよねぇ。でもまあ、良しとするか。
マンティコアの死体が完全に消え去ると、大広間の奥に新たな扉が現れる。
「これは?」
オットーは、慎重に近づくと、周囲を確認する。
「特にトラップはないな。入ってみるか?」
「まあ、意味ありげに出てきた扉だからな。一応入ってみよう。」
オットーが先頭に立って中へと入ってゆく。
『玉座の間』と言うにふさわしい豪華な部屋には、金銀財宝がうずたかく積まれていた。一生遊んで暮らせそう……だが、
少々気がかりだ。これを本当にもらっていいものなのだろうか?今は邪悪な雰囲気が消え、ただの古代遺跡といった様子だが、先ほどまで呪いがかかっていたのは間違いないし、なにより1回目の不可解な感じが不気味でたまらない。
ん~。これの扱いは、ここの領主に任せた方が得策な気がしてきた。
「なあ、オットー、これもらわない方がいい気がするんだが、お前どう思う?」
「奇遇だな。俺も、やばいと思うぜ、これはギルドに任せよう。最終的には領主が判断するだろう。二人も異存ないか?」
「ええ、問題ありません」
「……任せるよ」
まあ、もったいない気もするが、なんとなくここまでの不可解な感じからすると、もらわない方が得策だろう。少々名残惜しいがギルドに向かうとしよう。
「エリザ、冒険者ギルドに転移を頼む」
「承知しました。」
足元に魔方陣が現れ、冒険者ギルド前に転移する。
冒険者ギルドに到着すると、受付嬢とギルドマスターが迎えてくれた。
「鉱山を解放してくれたんだってな!やっぱりSランクはすげーな!」
へ?なに?何で知ってるのさ?すげぇ気持ち悪いんですけど。あからさまにオットーが嫌な顔をしている。このギルドでの対応は明らかに想定外だ。
「お前たちはこの町の恩人だよ!ぜひこの報酬を受け取ってくれ!!」
いやいや、話が速すぎだろ?こっちが説明する暇もなしか。エリザとヨハンは後ずさりし始めている。
「あ、あのよ。ダンジョンの魔物は退治したから、鉱山に魔物はもう出ないと思う。それと、ダンジョンの最奥に財宝があるが、あれの処遇は依頼主の領主に任せる。俺たちは所有権を放棄する。自由にしてくれていい。」
オットーにしては珍しく早口でまくし立てた。もう、一秒たりともこの場所にいたくないんだろう。同じ気持ちだ。なんなんだこいつら。
「ぜひ、領主のもとへ来てくれって、使いの者が来てるぜ!」
その言葉を聞き終わる前に、俺たちは転移でキャラバンの野営地へ飛んだ。転移が終わるなりオットーは、キャラバンの面子に出発の指示を出す。
「用意ができ次第出発だ。俺たちは一足早く町を出る。町の外で合流だ。」
奴らが追いかけてきそうで怖いんだろう。賛成だ。俺たち四人はそそくさと街を出て、そこでキャラバンと合流することにした。
もう、この町には近づきたくない。
「ヌー」
ビクゥッ!!
四人とも飛び上がらんばかりに驚いた。エリザの荷物の中に隠れていたヌーがエリザの方に飛び乗り一鳴きしたようだ。
ああ、これからこいつを見るたびにこの町を思い出すのか、暗鬱な気分になった。
「やっぱりトラップはあるか?」
オットーに尋ねてみると、
「ああ、でもお前なら大丈夫だろ?」
とにべもない返事。
「いや、まあ、解除してもらえると助かるな。」
「おお、カールさんに頼っていただけるとは!」
なんか腹立つな。まあ、やってもらえるのはありがたいので
「お願いします。」
と、下手に出てみた。
「承知いたしました!」
と、はた目には慇懃な対応だが、本心は如何にって感じか。まあ、容易に想像できるがな。
「で、さっきの感じだとそろそろサイクロプスか。」
オットーがトラップを解除しながら聞いてくる。
「だなぁ。奴はデュラハンほど面倒じゃないが、それでもさっきみたいに瞬殺ってわけにはいかないだろうな。」
「カールさんにしては弱気ですね。まあ、デュラハンも俺らから見たら、2度目も瞬殺に近かったが……」
「んなこたぁねぇよ。結構難儀したぜ。ま、エリザのおかげで助かったけどさ。次も頼むよ。」
「あ、はい。頑張ります。」
頑張る必要はないと思うんだが。でも、けなげな感じも良いね。
「ヨハン。すまねぇが、サイクロプスが現れて、俺の攻撃範囲に入ったら一撃だけ目を狙ってもらえるか?」
「……ああ、わかった。目が弱点なのか?さっきも目を一撃で仕留めてたな。」
「いや、目は弱点ではないんだ。ずっと前に戦った時に、目をつぶしても動きに迷いがなかったからな。実際気配で相手を見てるんだと思う。俺が狙ってるのは、目の奥の下の方にある急所だよ。そこに魔力をぶち込むとはじけてくれるんだよ。」
「そんなところに急所があるのか?サイクロプス討伐でそんな話は聞いたことないぞ。そこだったら目つぶしを狙いに行って、入ることもあるんじゃねぇか?」
「いや、そんな表面的な場所にはねぇんだよ。たぶん頭蓋の中に、もう一つ殻があってそれに守られてると思う。前回もそうだが、前戦った時もずいぶん堅かった。」
今までサイクロプスを倒したのは3回だが、最初のはずいぶん苦労した。どうせ胸に急所があるだろうと踏んで、胸ばかり狙ってたんだが、全く効果がなく、傷はすぐ回復するしで、一晩中戦う羽目になった。早々に目つぶしはしたが、効果はないし。最後は自棄(やけ)になって頭を何度も串刺しにしていたら、頭蓋の中の殻にあたったらしく動きが止まった。で、魔力を流したら爆散した。
それから何年かして、2回目に出会ったときに試してみたら案の定急所だったって感じだ。だから、さっきは簡単に倒せた。
でも、今回に関しては、いきなり狙っても避けてくるような気がしてる。だから、ヨハンとエリザに助けてもらおう。
「御出ででなすったぜ」
オットーが気配を察知した。
「エリザ、ヘイスト頼む。ヨハン、俺の間合いで頼む。」
「わかりました。」
「……了解」
こちらの気配に気づいたサイクロプスが、地響きを立てながらこちらに向かって走ってくる。
奴の一つ一つの動作は遅いが、こちらの攻撃に対する回避行動は意外に素早い。エリザのヘイストが効いてきた。俺の背後ではヨハンが距離を測りながらサイクロプスの目を狙っている。あと5m。
ビュッ!
ちょうどサイクロプスが俺の間合いに差し掛かった時に、ヨハンの射た矢がサイクロプスの目めがけて飛んで行く。さすがヨハン!
サイクロプスは回避行動に入る。
『左か!』
避けたほうに目標を修正して剣を突き立てる。俺の伸ばした右手に急所の手ごたえがあった。
「爆ぜろ!」
魔力を一気に込めと、サイクロプスの頭はザクロのようにはじける。頭を失った胴体はその後10mほど走って俺たちの後方で倒れこんだ。
「よし。イッチョ上がり。助かったよ。エリザ。ヨハン」
「見事なもんだな。」
「いや、フォローがあると助かるよ。それがなきゃあんな風にはいかんさ。」
実際見た目以上にギリギリの勝負だった。まあ結果オーライだ。
その後ミノタウロスも同様にサクッと倒す。奴は角の根元に急所があるが、左右どちらなのかがわからない。前回同様今回も勘が当たった。
で、目の前にはマンティコアの居る大広間の扉だ。さて、次も一撃で……とはいかなかった。
静かに開けた扉の向こうには、すでに起き上がったマンティコアがいた。
翼をこれ見よがしに大きく広げ、こちらを威嚇している。人間に似た顔は口角が吊り上がり、不気味な笑みを浮かべている。開いた口の中にはサメのように尖ったがった細かい歯が3重にびっしりと並んでいる。
「よくここまでたどり着いたな。愚かな人間よ!」
えぇぇ!!しゃべれんの?
その感想は、3人も同じだったようで、微妙な表情でお互いの顔を見合わせた。
「1000年の長きにわたり、我への信仰を忘れた罪。貴様らの命で償ってもらおうか!!」
いやはや、さっきあっさり死んだのはなかった事にするんですね。わかります。じゃねぇよ。なんだよ。しれっと話進めてんじゃねぇよ。
「おい、さっき真っ二つになったのは何だったんだ?お前何もんだ!」
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「ふはははは!不遜な人間よ。我はこの地を統べる神。貴様らはこの場で我に踏みつぶされるのだ!!」
いや、聞いてた?俺の話。
「だから、お前さっき死んだじゃん?あれ何よ?」
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いや、それさっき聞いたよ。俺の話聞けよ。1000年で脳みそも退化したのか?
「もういい。行くぞ。」
やべえ、作戦練るの忘れてた。どうしよう。
「カール、バフかけます。それと、デバフをマンティコアにかけてみて様子を見ましょう。」
「……俺も、魔法攻撃の矢が効くのか確認してみる。カールは注意を引き付けてくれ。」
「俺も状態異常系のアイテムを奴にぶち込んでみる。すきを作ってくれ。頼む。」
さすがSランク、頼りになるねぇ。
エリザのバフが効き始めたのを確認して、俺は奴の前を動き回りかく乱する。前足や顔を切りつけてみて反応を見る。ダメージは通るみたいだな。
「ダメですね。デバフは聞かないようです。」
「状態異常系のアイテムもだめだな。俺は毒系の回復に回る。」
「……物理攻撃の矢は通るが、魔法攻撃はだめだ。奴の体力を削ることは無理そうだから、俺が陽動に回る。」
「了解。じゃあ、本格的に行くぜ。」
俺の攻撃を主軸に、3人がフォローしてくれる。
まずは前足と、尻尾だな。攻撃パターンも単調だ。前足でのひっかき攻撃と、尻尾の毒針による攻撃。
当たらなければどうと言う事はない。
斬撃で奴の体力を削る。これはいけるんじゃないか?と思った時だった。
奴の顔が、不気味にゆがむ。口が大きく開き中に無数の歯が見えた。その時
ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
奴が叫び声をあげる!
「ぐはぁっ!」
強烈な衝撃と痛みが俺を襲う!
なんだ!視界がゆがむ。足がふらつく。目をきつく瞑り、ゆっくりと前を見ると、目の前には血だらけになったエリザが倒れている。
「エリザ!!」
駆け寄ろうとしたとき、背後から何かに肩をつかまれる。マンティコアだ!!
なんだ!場所が入れ替わってるのか?それとも、俺の方向感覚が狂ったのか?なんだと!マンティコアが3匹に分裂している。サイズは小さいが3匹となると厄介だ。とっさに剣を構え、倒れているエリザをかばう。オットーとヨハンは何処へ行った?
すると、小柄になった3匹のマンティコア、その一際小さいやつがこちらに術をかける。
「麻痺(スタン)!!」
ギッ!
ち、身動きが、かろうじて動けはするが攻撃を回避できない。やられる!と思った時。
「魔術解除(デスペル)」
急に体が重くなる。ヘイストが切れたか。おかげで麻痺も取れたが…ってあれ?なんで俺仲間の3人に剣を向けてんの?
……
うわ、危ねぇ!マンティコアに背中向けてたよ。なんで?
エリザがほっとした表情で告げる。
「魅惑(テンプテーション)です。正気に戻ってよかったですよ。マンティコアよりよほどカールの方が恐ろしいですから。」
三人に安堵の色が見える。
「すまん。気を付ける。」
「頼むぜ、カール!」
「おう。」
奴の攻撃パターンは単調だが、魅惑(テンプテーション)はシャレにならんな。なら、まずは叫べないように喉元か。
「もう一度、バフを頼む。まずは叫べなくする!」
「はい!」
俊敏性と攻撃力が向上したのがわかる。一気に喉元を切り裂く。そして!
そして。
そして?
あれ、首が落ちたら動かなくなった。
「おう、一撃だったな。」
「さすがですね、」
「……見事だ。」
あ、あう。そう、そうですね。そうよね。確かにほとんどの生き物が首を落とせば死ぬもんね。そう。計画通り。ニヤリ。
冷汗が流れるが気にしない。
「さて、どうなるかな」
首のなくなったマンティコアは地響きを立ててその場に崩れ落ちる。そして、光の粉に変化し蒸発するように消えてゆく。
それに呼応するように、周囲から邪悪な気配が消えてゆく。これはオットーじゃなくてもわかるくらい明らかな変化だ。が。一応オットーに確認しよう。
「オットー。どうだ、敵の気配は。」
「消えたな。ダンジョンだけじゃなく、鉱山全体から消えたよ。こいつが元凶だったってことだろうな。まあ、釈然とはしないが。」
だよねぇ。でもまあ、良しとするか。
マンティコアの死体が完全に消え去ると、大広間の奥に新たな扉が現れる。
「これは?」
オットーは、慎重に近づくと、周囲を確認する。
「特にトラップはないな。入ってみるか?」
「まあ、意味ありげに出てきた扉だからな。一応入ってみよう。」
オットーが先頭に立って中へと入ってゆく。
『玉座の間』と言うにふさわしい豪華な部屋には、金銀財宝がうずたかく積まれていた。一生遊んで暮らせそう……だが、
少々気がかりだ。これを本当にもらっていいものなのだろうか?今は邪悪な雰囲気が消え、ただの古代遺跡といった様子だが、先ほどまで呪いがかかっていたのは間違いないし、なにより1回目の不可解な感じが不気味でたまらない。
ん~。これの扱いは、ここの領主に任せた方が得策な気がしてきた。
「なあ、オットー、これもらわない方がいい気がするんだが、お前どう思う?」
「奇遇だな。俺も、やばいと思うぜ、これはギルドに任せよう。最終的には領主が判断するだろう。二人も異存ないか?」
「ええ、問題ありません」
「……任せるよ」
まあ、もったいない気もするが、なんとなくここまでの不可解な感じからすると、もらわない方が得策だろう。少々名残惜しいがギルドに向かうとしよう。
「エリザ、冒険者ギルドに転移を頼む」
「承知しました。」
足元に魔方陣が現れ、冒険者ギルド前に転移する。
冒険者ギルドに到着すると、受付嬢とギルドマスターが迎えてくれた。
「鉱山を解放してくれたんだってな!やっぱりSランクはすげーな!」
へ?なに?何で知ってるのさ?すげぇ気持ち悪いんですけど。あからさまにオットーが嫌な顔をしている。このギルドでの対応は明らかに想定外だ。
「お前たちはこの町の恩人だよ!ぜひこの報酬を受け取ってくれ!!」
いやいや、話が速すぎだろ?こっちが説明する暇もなしか。エリザとヨハンは後ずさりし始めている。
「あ、あのよ。ダンジョンの魔物は退治したから、鉱山に魔物はもう出ないと思う。それと、ダンジョンの最奥に財宝があるが、あれの処遇は依頼主の領主に任せる。俺たちは所有権を放棄する。自由にしてくれていい。」
オットーにしては珍しく早口でまくし立てた。もう、一秒たりともこの場所にいたくないんだろう。同じ気持ちだ。なんなんだこいつら。
「ぜひ、領主のもとへ来てくれって、使いの者が来てるぜ!」
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「用意ができ次第出発だ。俺たちは一足早く町を出る。町の外で合流だ。」
奴らが追いかけてきそうで怖いんだろう。賛成だ。俺たち四人はそそくさと街を出て、そこでキャラバンと合流することにした。
もう、この町には近づきたくない。
「ヌー」
ビクゥッ!!
四人とも飛び上がらんばかりに驚いた。エリザの荷物の中に隠れていたヌーがエリザの方に飛び乗り一鳴きしたようだ。
ああ、これからこいつを見るたびにこの町を思い出すのか、暗鬱な気分になった。
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といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
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