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最初の犠牲
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今から僕が語るのは、20年前の最大の悲劇について
◆◆◆◆◆
世界が悲劇に堕ちた年から、10年も経った。
まだ『僕』が6歳で幼い子どもの頃、僕の両親とたった一人の兄は、『悲劇の世界』の犠牲者、1号目2号目3号目と、はじまりの犠牲と呼ばれる形で、その命を儚くも散らした。
全員が、僕の目の前で。
ニュースで、母は包丁を落として誤って手首を切断し出血多量死。父は風呂場で誤って転びバスタブに頭を強打し死亡。兄は経年劣化したベランダの柵に寄りかかり誤って転落死。
そんな風に報道されたけれど。
そんな風に、不慮の事故として扱われたけれど。
僕は見たのだ。
母が、僕のオーダーで手料理を作っている最中、急に叫びだして、
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
と言いながら自分で手首を切り落とした光景を。
僕は見たのだ。
父が、僕と一緒にお風呂に入っている最中、急にブツブツと呟き出して、
「俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない」
と言いながら自らバスタブに頭を打ちつけ、終いにはお湯の張ったバスタブに顔を沈めて窒息死した光景を。
僕は見たのだ。
兄が、母も父もいなくなりすっかり淋しくなった部屋で僕が泣いている隙に、
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
と急に高笑いしながら自ら飛び降りた光景を。
僕はそのどれも。決定的な死の瞬間というものをこの目で確かに見ていたのだ。
しかし、テレビでは先程のように報道された。
これは『不慮の事故』である、と。
兄が死んで、僕はすぐにとある施設に入ることになった。
その施設は、日本に留まらずあらゆる国の代表たちが早急に作り上げた施設。
後になって知るが、その施設は幼い子どもを一人一人隔離して、類稀なる優秀者を作る施設だったのだ。
僕はその施設に入る際に、初日、アメリカを代表する男性から言われたのだ。
「君が1号か。最初は我々も実験しながら君の成長を観察することになる。1号というのは、重要な役割だ。是非とも君にはこの施設で我々の決断が間違っていなかったことを証明してほしい。―――だから私からは、1号の君に、特別に新たな名前をプレゼントする。恐らくこの先、この施設で名前を持つのは君だけになるだろう。それぐらいに君という立場は我々からしても重要なんだ。さて、それじゃあ君の名は。、、、、1号だから、『ハジメ』だ。これからよろしく頼むよ、ハジメ。―――一緒に家族の仇を、そして復讐をしよう」
◆◆◆◆◆
世界が悲劇に堕ちた年から、10年も経った。
まだ『僕』が6歳で幼い子どもの頃、僕の両親とたった一人の兄は、『悲劇の世界』の犠牲者、1号目2号目3号目と、はじまりの犠牲と呼ばれる形で、その命を儚くも散らした。
全員が、僕の目の前で。
ニュースで、母は包丁を落として誤って手首を切断し出血多量死。父は風呂場で誤って転びバスタブに頭を強打し死亡。兄は経年劣化したベランダの柵に寄りかかり誤って転落死。
そんな風に報道されたけれど。
そんな風に、不慮の事故として扱われたけれど。
僕は見たのだ。
母が、僕のオーダーで手料理を作っている最中、急に叫びだして、
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
と言いながら自分で手首を切り落とした光景を。
僕は見たのだ。
父が、僕と一緒にお風呂に入っている最中、急にブツブツと呟き出して、
「俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない俺は悪くない」
と言いながら自らバスタブに頭を打ちつけ、終いにはお湯の張ったバスタブに顔を沈めて窒息死した光景を。
僕は見たのだ。
兄が、母も父もいなくなりすっかり淋しくなった部屋で僕が泣いている隙に、
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
と急に高笑いしながら自ら飛び降りた光景を。
僕はそのどれも。決定的な死の瞬間というものをこの目で確かに見ていたのだ。
しかし、テレビでは先程のように報道された。
これは『不慮の事故』である、と。
兄が死んで、僕はすぐにとある施設に入ることになった。
その施設は、日本に留まらずあらゆる国の代表たちが早急に作り上げた施設。
後になって知るが、その施設は幼い子どもを一人一人隔離して、類稀なる優秀者を作る施設だったのだ。
僕はその施設に入る際に、初日、アメリカを代表する男性から言われたのだ。
「君が1号か。最初は我々も実験しながら君の成長を観察することになる。1号というのは、重要な役割だ。是非とも君にはこの施設で我々の決断が間違っていなかったことを証明してほしい。―――だから私からは、1号の君に、特別に新たな名前をプレゼントする。恐らくこの先、この施設で名前を持つのは君だけになるだろう。それぐらいに君という立場は我々からしても重要なんだ。さて、それじゃあ君の名は。、、、、1号だから、『ハジメ』だ。これからよろしく頼むよ、ハジメ。―――一緒に家族の仇を、そして復讐をしよう」
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