僕らは暗躍に失敗した

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僕らは暗躍する

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ワイワイガヤガヤ
今日も朝から賑やかで、平和な教室の光景を眺めながら私は一人、隅の自席で読書に励んでいた。
今日は新しい担任の先生が来るらしい。
前任の私たちのクラスの先生は女性で、理由は不明だが急遽辞任することになったらしい。
とても私たちに親身に寄り添ってくれる良い先生だったから少し寂しい。
開いた窓からは潮の匂いを帯びた風が流れてくる。
海の見えるこの高校は、どうやら昔は『悲劇の世界』の中心地施設だったらしい。
昔と言っても、今から20年ほど前の話だ。
いや、30年ほど前から20年前まで、の言い方が正しいか。
30年前、世界は悲劇に堕ちた。
多くの人々が、不幸の事故によって命を落とした。
そう、何故か、みんな、たまたま足を滑らせて落下して死んだり、たまたま上から物が落ちてきてそれに当たって死んだり、そんなたまたまが続けざまに多くの人々に襲いかかったのだ。
殺人でも無い。自然災害でも無い。
不慮の事故。
それが原因で、私たちが生まれる少し前までは世界の総人口は78億もいたらしい。とてもじゃないけど、信じられない。
だって、今のこの世界の総人口は、1億にも満たないんだから。
ガラガラガラ
朝のホームルーム開始時刻5分前。
教室の前方の扉が音をたてて開いた。
そこから姿を現したのは、一人の無精髭を生やした中年男性。
間違いなく、私の嫌いな人トップ1位に入りそうな見た目だ。
小汚い。臭そう。だらしない。の三拍子である。

「えー、今からー、ロングホームルームをー、始める」

ロングホームルーム?朝はショートホームルームのはずじゃないの?
スケジュールすら把握してないなんて、この先が思いやられる。

「えー、起立。気をつけー、礼」
パァン!!!!!!!!!!!!!!

きっと私以外のクラスメイトも同じような感想を抱いてるんじゃないか。
みんなが早くもその男性に疑惑の目を向けながら起立して、頭を下げて挨拶をした時。
具体的には、頭を下げてその男性から目を離したほんの一瞬のうちに。
その軽快な音は響いた。
え?
頭を上げると、私の目に映る光景には………
グラ、グラグラ、バタン。
頭部が無く、無理やりにちぎられた首からは血がブシュブシュっと噴き出して、周りを赤く染めている一人の男子だったものの首なし死体が、倒れた。
え、え?
何が起きたのか。いったい、今、な、何が起きたのか。

「えー、これからー、世界の真実をー。あの頃のー、悲劇をー、教えます。今から世界はー、悲劇に堕ちます。よってー、君らにはー、…………暗躍をしてもらう」

男性は、そこから語り出した。
20年前のことを。
『世界の悲劇』とは何なのかを。
私たちは、急にクラスメイトの一人が無惨な死に方をして、なおかつそれを目の前の男性が、その手に持つショットガンで殺ったことは明白で。
私たちは恐怖で、黙って聞くことしか出来ないのだった。

彼の唐突な一人語りは、この一言から始まった。

「えー、まずはー、何から話そうか。そう、そうだ。あれだ。まずは僕らのこと。あと、僕らが集められた『悲劇の世界』の中心地のこと。それから、そこで何があったのか。どのように終わったのか。そう、あの日。僕らは一つの目的で集まったんだ。




――――――僕らは暗躍する




という一つの共通目的で、集まったんだ」
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