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第一章

第一話 40歳のぼくが死んだ日

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「国外追放処分とする!!」
 頭の中に王様の大音声が響くと、近衛兵にあきらかに必要以上に華美な装飾の謁見の間から、脇を抱えられ、王城の外へ連れ出された。特に弁明する気も、抵抗する気もない。
 ぼくが“この世界”に来てそろそろ2年、ようやく軌道に乗ってきたと思ったらこれだ。
 まぁ、不遇なことには慣れているからいいか。

 さて、こうしたぼくの追放劇がどうして起こったのかを説明するまえに、なぜこの“異世界”に来たのかという話をしなければならないだろう。
 少々唐突な話にはなるが、お付き合い願いたい。

 突然だが、ぼくはキャンプが好きだ。もちろん、ぼっちなので、もっぱらソロキャンプ専門だが。
 キャンプというのは、準備からして楽しいのが素晴らしい!
 道具を選んでいるだけで楽しいし、ファイアースターターを黙々と擦り火を起こすのも悪くない。そして、なんといっても、非日常のなかで食べるキャンプ飯、最高だ。この世の幸福、ここに極まれりと言える。
 その後は、一人で火を見ながらぼーっとするのも、日常の喧騒を忘れて日々溜まった澱を洗い流してくれる。

 しかし、かつていた世界で、40歳独身男性としてそんなふうに時折好きなキャンプライフを楽しみながら、普通の冴えないサラリーマン生活を送っていた「ぼく」こと「葉山樹はやまいつき」は、ある日ソロキャンプ中に不慮の事故で意識を失った。おそらく……死んだのだろう。

 その日は忘れもしない12月31日大晦日、年越しキャンプをしようと意気揚々と車を走らせ、キャンプ場に向かった。
 冬の寒さも厳しい中、ぼくはテントの設営や火の準備をしながら、山中の静かなキャンプ場で夜の帳が下りるのを待っていた。火を起こし、暖かい食事(その日は金曜日までの仕事でひどい目にあったので、奮発して少しだけいい肉を焼いた)をとり、焚き火の炎を眺めながら、心からリラックスしていた。

 その日は特に寒い夜だったので、早々にテントの中に戻り暖を取るため、ぼくは石油ストーブを使っていた。しかし、テントの換気が不十分であることに気づかなかった。普段だったら注意深く換気をしているのだが、その日は本当に疲れていたのだ。その結果、一酸化炭素が徐々にテント内に充満していった。

 やがて、ぼくは体のだるさや頭痛を感じ始めた。しかし、その症状が一酸化炭素中毒の兆候だとは気付かず、ただ疲れているだけだと思っていた。そのまま、意識が薄れていく感覚に抗いながら、ぼくはテント内でうとうとと眠りについてしまった。

 そして、目が覚めると、神々しい森林のなかのようなどこともわからない空間で、目を覚ました。
「う、うーん」
 眼を覚ますと、一人の少女がぼくの顔をのぞきこんでいる。
 彼女は金糸のような金髪で、引き込まれるような美しい青い瞳をしていた。
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