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第1巻 1期目 臨時国会
ビターエネミイズインザセイムボード
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その日は休日だったので昼まで寝ようと考えていた。会社員のように9:00-18:00の仕事ではないが、朝は早かったので、寝坊はやはり休日しかできなかった。しかし、その安眠を打ち破るがごとくスマホが突然鳴り出した。
しばらく出ないままにしておくと留守電になったのだが、入ってきたメッセージに驚かされる。
「私は渦川俊郎の秘書の小川順子と申します。本日は古味先生にお話したいことがあり連絡致しました。お時間ありましたら折り返しー」
そこまで聞いたところで、がばっと起き上がり、スマホを乱暴に取り出し通話状態にした。
「なっ何のようでしょうか?」
「よかった。電話に出られなかったらどうしようかと思ったわ」
以前、ストーカーと勘違いした時とは別人のような話かただった、というよりそのときのことを覚えていないのか?
「渦川先生が政策に関わることで話があるそうです。もちろん受けられるかどうかは古味先生の自由ですが。場所は議員会館の・・・・」
「ああ、あの部屋ですね。わかります。すぐ行けばいいですか?」
「そうですね。渦川先生は今日は暫く議員会館におられるので、すぐ来られても大丈夫です。部屋を知っているということはお二人は面識あったのですか?」
「あるとも。あんたともな。もともと自分の部屋なんだ忘れるものか」
と、心の中で呟いた。
「それではお待ちしております」
という声とともに電話は切れた。俺は急いで背広を着て議員宿舎を飛び出した。
俺に政策に関する話ってなんだろう。今度は何を自分のものと交換するつもりだろう。少し、毒づいているうちに国会議事堂前駅に着いた。
「失礼します」
議員宿舎のドアをお返しとばかりに勢いよく開けると、渦川俊郎と緒川順子がいた。
「古味君。久しぶりだね」
「本当にお久しぶりですね。この部屋は快適ですか?」
「やっぱり二人とも面識があったのね」
緒川順子はコーヒーを入れながら聞き耳を立てていた。
「もちろん。快適だよ。ところで今日はこの部屋云々の話ではない。君は公約でホームドア設置のことを言っていたね」
「よくご存じで」
どうして俺の公約なんかを知っているんだ。
「実はその件で君にいい話がある。桃山鉄道という会社を知っているかね?」
桃山鉄道とは通称「桃鉄」と言い、福島を端に発し、茨城、埼玉を抜け東京まで伸びる私鉄である。埼玉の南部から東京へかけては乗車率が200%を超えることで有名で、人身事故でも起ころうものなら駅の外まで人が溢れるほどの混雑ぶりであった。
「私は国土交通省の副大臣をやっていてね。今回、その桃山鉄道にホームドアの設置を勧めてみようと思っている。そのために君に桃山鉄道に行ってもらいたい」
なるほど、全く一人では動けなかったホームドアの話であれば、確かに自分に取って渡りに船かもしれない。しかし、なんで俺にその話をするんだろう。二つ返事で乗りたい気持ちを抑えて、俺は聞き返した。
「どうして私なんかに。国交省の職員か民自党の人に行ってもらえばいいじゃないですか」
「ほとんど私の独断で、まだ非公式の話なんだ。なのでできればフリーで動ける君に働いてもらいたいと思っている」
渦川もまさか秋屋に手を回されるのを恐れて人を使えないなどとは言えない。
「話を聞いてもらうだけ、聞いてきてもらってもいいだろうか」
「話を聞いてくるだけでいいですか?」
渦川は煙草を取り出して火を付けた。
「フーッ」
大きく煙を吐き出すが早いか、緒川順子が灰皿を持ってきた。さすが長年ついてきた秘書だけあってすばやい。
「君は子供かね」
「なっなんですか。いきなり」
ここまで呼んでおいてなんだっていうんだ。俺はまた怒りたくなった。
「年長者として一応言っておくが君も政治家なら自分の考えで行動したまえ。政治家は人を動かしてなんぼの職業だよ」
「そうですか。それならば自分で考えて行動させていただきます。桃山鉄道の件、承知しました」
つまり、桃山鉄道にホームドアを設置するように自分で説得するのが面倒だから俺に行けっていうんだろ。だけど、俺が行っていきなり会社が動いたりするものだろうか?でも、まあ行くだけでも何かやったというアピールにはなるだろう。問題が起こったら渦川のせいにすればいい。
もう、不愉快なので部屋を出ようとすると緒川順子が声をかけてきた。
「先生は口は悪いけど古味さんに期待しているようなの。頑張ってね」
電話をかけてきたときと違い、既にさん付けでため口になっていたが気にせず、俺は早速、桃山鉄道に向かうことにした。
しばらく出ないままにしておくと留守電になったのだが、入ってきたメッセージに驚かされる。
「私は渦川俊郎の秘書の小川順子と申します。本日は古味先生にお話したいことがあり連絡致しました。お時間ありましたら折り返しー」
そこまで聞いたところで、がばっと起き上がり、スマホを乱暴に取り出し通話状態にした。
「なっ何のようでしょうか?」
「よかった。電話に出られなかったらどうしようかと思ったわ」
以前、ストーカーと勘違いした時とは別人のような話かただった、というよりそのときのことを覚えていないのか?
「渦川先生が政策に関わることで話があるそうです。もちろん受けられるかどうかは古味先生の自由ですが。場所は議員会館の・・・・」
「ああ、あの部屋ですね。わかります。すぐ行けばいいですか?」
「そうですね。渦川先生は今日は暫く議員会館におられるので、すぐ来られても大丈夫です。部屋を知っているということはお二人は面識あったのですか?」
「あるとも。あんたともな。もともと自分の部屋なんだ忘れるものか」
と、心の中で呟いた。
「それではお待ちしております」
という声とともに電話は切れた。俺は急いで背広を着て議員宿舎を飛び出した。
俺に政策に関する話ってなんだろう。今度は何を自分のものと交換するつもりだろう。少し、毒づいているうちに国会議事堂前駅に着いた。
「失礼します」
議員宿舎のドアをお返しとばかりに勢いよく開けると、渦川俊郎と緒川順子がいた。
「古味君。久しぶりだね」
「本当にお久しぶりですね。この部屋は快適ですか?」
「やっぱり二人とも面識があったのね」
緒川順子はコーヒーを入れながら聞き耳を立てていた。
「もちろん。快適だよ。ところで今日はこの部屋云々の話ではない。君は公約でホームドア設置のことを言っていたね」
「よくご存じで」
どうして俺の公約なんかを知っているんだ。
「実はその件で君にいい話がある。桃山鉄道という会社を知っているかね?」
桃山鉄道とは通称「桃鉄」と言い、福島を端に発し、茨城、埼玉を抜け東京まで伸びる私鉄である。埼玉の南部から東京へかけては乗車率が200%を超えることで有名で、人身事故でも起ころうものなら駅の外まで人が溢れるほどの混雑ぶりであった。
「私は国土交通省の副大臣をやっていてね。今回、その桃山鉄道にホームドアの設置を勧めてみようと思っている。そのために君に桃山鉄道に行ってもらいたい」
なるほど、全く一人では動けなかったホームドアの話であれば、確かに自分に取って渡りに船かもしれない。しかし、なんで俺にその話をするんだろう。二つ返事で乗りたい気持ちを抑えて、俺は聞き返した。
「どうして私なんかに。国交省の職員か民自党の人に行ってもらえばいいじゃないですか」
「ほとんど私の独断で、まだ非公式の話なんだ。なのでできればフリーで動ける君に働いてもらいたいと思っている」
渦川もまさか秋屋に手を回されるのを恐れて人を使えないなどとは言えない。
「話を聞いてもらうだけ、聞いてきてもらってもいいだろうか」
「話を聞いてくるだけでいいですか?」
渦川は煙草を取り出して火を付けた。
「フーッ」
大きく煙を吐き出すが早いか、緒川順子が灰皿を持ってきた。さすが長年ついてきた秘書だけあってすばやい。
「君は子供かね」
「なっなんですか。いきなり」
ここまで呼んでおいてなんだっていうんだ。俺はまた怒りたくなった。
「年長者として一応言っておくが君も政治家なら自分の考えで行動したまえ。政治家は人を動かしてなんぼの職業だよ」
「そうですか。それならば自分で考えて行動させていただきます。桃山鉄道の件、承知しました」
つまり、桃山鉄道にホームドアを設置するように自分で説得するのが面倒だから俺に行けっていうんだろ。だけど、俺が行っていきなり会社が動いたりするものだろうか?でも、まあ行くだけでも何かやったというアピールにはなるだろう。問題が起こったら渦川のせいにすればいい。
もう、不愉快なので部屋を出ようとすると緒川順子が声をかけてきた。
「先生は口は悪いけど古味さんに期待しているようなの。頑張ってね」
電話をかけてきたときと違い、既にさん付けでため口になっていたが気にせず、俺は早速、桃山鉄道に向かうことにした。
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