107 / 159
第四部 星巡再会
107 永遠に砕けぬいし
しおりを挟む
リーシャンが天井に向かって白光のブレスを吐く。
天上が吹き飛んで、遥か遠くに青空が見えた。
空の手前に、強大な魔力の気配を漂わせた黒い影が見える。
「あそこまで駆け上がるぞ!」
「キュー!!」
真っ先にウサギギツネのメロンが、夜鳥たちを乗せたまま天井に空いた穴を登り始めた。
俺とサナトリスを乗せた大蜥蜴も後に続く。
「枢っちー!」
穴のふちで、真が手を振っている。
「こっちだ!」
手を振り返して、大蜥蜴から穴の開いた床に飛び降りる。
穴を挟んで正面には、人間の上半身に蟲の下半身の化け物がいた。
「……どちらさま?」
なんか見覚えあるなー。
「枢っち。黒崎だよ黒崎」
「え? なんでモンスターになってんの? 誰か分からなかったじゃん」
「誰だか分からないなんて言ってやるなよ。可哀そうだろ」
「……」
真がふうっと溜息を吐く。
いやお前も大概、失礼だろ。
「……近藤枢。まだ異世界の体を統合していないのか? そのレベルでは俺には勝てんぞ」
化け物が低い声で言う。
俺は鑑定で奴のレベルを確かめた。
「Lv.4042?」
知らない間に爆上がりしてんな。
「決着を付けよう、近藤枢。どちらが、この世界の統一神にふさわしいか……」
「ん? なんで頂上決戦みたいになってるんだ。俺は別に、お前と違って世界を支配する気なんてないけど」
俺は首をかしげた。
頭上で小型化したリーシャンが、同じ格好で腕組みして首をかしげている。
「ふざけるな。神聖境界線を作って魔族を締め出し、世界の大部分を支配しているのは、お前たち光の七神だろう」
「言われてみれば……?」
黒崎の声に怒りが混じる。
確かに魔族側から見れば、一方的に神聖境界線で締め出されているように見えるか。
それにしても俺は光の七神なんて名乗った覚えはないのに、いつの間にか公式設定になっているのはどういうことだろう。否定したら、どんどん話の本題から逸れていきそうだ。
真が、長くなりそうな会話に茶々を入れた。
「枢っち、枢っち。ここには戦いに来たんでしょ」
「おお、そうだった。椿は黒崎と話せたのか?」
「……まだ」
振り返って姿を探すと、しょげかえって暗い表情の椿がいた。
「仕方ないな。椿のためにも、どこにいるか分からない心菜のためにも、ここは魔神ベルゼビュートをちゃっちゃっと倒すか」
俺の決意表明を聞いて、ベルゼビュートは嘲笑した。
「……笑止。倒せるものなら、倒してみよ」
「言ったな。後悔すんなよ――晴天千落雷!」
頭上に白い魔法陣が浮かび、雨のように雷撃が降る。
しかし雷撃はベルゼビュートの体に触れると、跳ね返されて周囲に拡散した。
「っつ、光盾」
跳ね返った雷撃を抑えるために、防御魔法を自分と仲間の前に展開する。
「やっぱり、カウンター系のスキルを持ってやがるか……前に戦った時、心菜の刀剣は効いてたよな。ってことは、魔法攻撃無効で、物理攻撃有効か」
これはほんの小手調べだ。
俺は自分の魔法が跳ね返されたことから、ベルゼビュートの能力を冷静に分析する。
「枢っち! ベルゼビュートは倒してしまうと、レベルが二倍になって復活するんだ! さっきも大地の奴が調子に乗って攻撃したから、レベルが二倍になっちまった」
「真さん、俺も反省してるんで、それ以上言わないで下さい。枢さん! 物理攻撃ならリベンジも兼ねて俺が」
真と大地が、俺を挟んで言い争っている。
ほーう。元はLv.2021だったんだな。まあ、それでも十分レベル高いけど。
「まさか、物理攻撃なら俺を倒せると、本気で思っているのか。そもそも、俺を倒すことのできる者など、この世に存在しない。俺は何度でもよみがえり、そのたびに強くなる。不死ゆえに神クラスなのだ」
ベルゼビュートは「分析など無意味だ」と言いたげだった。
俺はその台詞を無視して、真たちを振り返る。
「お前らは手を出すな。黒崎とは、俺ひとりで戦う」
「え?!」
「枢さん?!」
決戦といえばパーティー戦だから、皆で一緒に戦うと思っていたのだろう。
大地や真が驚いた顔をする。
「ウェスペラの時といい、今回といい、俺の心菜にちょっかいかけてきやがって……いい加減にしやがれってんだ」
シシアに殺されたかもしれない心菜のことを考えると、ふつふつ怒りが沸いてくる。
何もかも、うざい黒崎=魔神ベルゼビュートのせいだ。
「くくっ……そうだ、怒りを俺に向けろ、近藤枢。お前のその顔が見たかった」
ベルゼビュートは背中の黒い翅を広げた。
空中に数十個の黒い炎が現れる。
炎の中から、黒い槍が現れた。
「黒毒槍」
槍の大きさや禍々しさが、以前より増している。
前は、光盾を十枚以上重ねて防御した。
相手のレベルが上がっている以上、また同じように防御するだけじゃ、勝てないだろう。
だったら変える。
今ある手札を最大限に使い、工夫して新しい魔法を生み出すのだ。
「――金剛石盾」
工作に使っている魔法で、光盾の魔法を加工して重ね合わせる。
十枚の光盾が重なり、隙間なく圧縮されて、俺の前に浮かんだ。
いくつもの魔法を組み合わせた複雑な構造のため、まるで加工されたダイヤのように光を集め、金剛石盾は眩く輝く。
「何?!」
金剛石盾は、ベルゼビュートの黒い槍を完全に防ぎきってみせる。
「攻撃魔法は通用しないんだっけな。なら、防御魔法はどうだ――増幅魔法、連結。盾運魔法式、起動!」
足元から立ち上った青い光から、ひし形の結晶が二つ、現れる。
その結晶に、金剛石盾の魔法をコーティングする。
「金剛投石機!」
金剛石盾をまとって鋭く尖った結晶は、弧を描いて魔神ベルゼビュートへと、ミサイルのように迫った。
「グッ……!!」
身をひねるベルゼビュートの肩をつらぬき、結晶は衝撃で砕け散る。
その欠片も、ベルゼビュートにわずかなダメージを与えたようだ。
視界の隅に表示された敵のHPの五分の一が減った。
「やっぱり投石は物理攻撃判定か……もういっちょ」
二個目の結晶を投げる。
「ぐああああっ!!」
結晶はベルゼビュートの腕を粉砕した。
さらに五分の一、敵のHPが減少する。
「すごい……!」
「圧倒的っすね……!」
ギャラリーの椿や大地が感嘆している。
確かに良いペースでHPを削っているが……俺は自分のステータスに目を走らせた。
MPの消費がやばい。
セーブクリスタルの時と違い、魔力が無限ではない上に、ベルゼビュートの支配する領域では大地属性の魔法は威力が減り、魔法に必要な魔力消費量も上がるため、今の攻撃でかなりMPを消費している。
もう一度、盾運魔法式を起動して投げると、MPが尽きてしまう。
MPが尽きるまで攻撃しても、ベルゼビュートのHPを削りきれない。
それに……。
「続けて攻撃したらどうだ、近藤枢。インターバルを置くと、俺も回復するぞ……」
ニタリ、とベルゼビュートが嗤った。
敵のHPが徐々に回復している。
高レベルの奴は大概、HPやMPの回復スキルは持っているから、この状況は想定内だ。
「それに忘れていないか? この城は、俺の本拠地だということを。お前たちは俺の舞台で踊っているのだ」
「枢っち!!」
「カナメーっ!」
ドスッと音がした。
床から生えた棘が、俺の体を貫通する。
「ぐっ……」
俺は激痛に眉をしかめた。
見下ろすと、胸に大穴が開いている。
「これが、怪我の痛みか……クリスタルの時は、こういう痛さは無かったからな……新鮮だ」
「何言ってんだよ、枢っち! はやく回復しろよ!!」
真が泣きそうな顔で怒鳴る。
視界の端に表示された自分のHPが急速に減少していくが、俺は回復魔法を使わなかった。
ただ、痛みをこらえて自動回復しているMPの残量に目をこらす。
あともうちょい。
「くっくっく。回復したくても、できないだろうよ。俺の操る槍や棘には、回復を阻害する毒の効果がある」
「そんな?! だけど枢なら……何か勝算があるんじゃ」
「無駄な希望を抱かない方がいいぞ、小早川真。俺が不死である以上、勝負は最初から決まりきっている」
ステータスの状態異常に、毒のアイコンが点滅している。
誰だ、こんなアイコンやらをデザインした奴は。
趣味悪い……いったい誰が、こんな世界を考えたんだ?
「あっけないな、近藤枢。もうすぐHPがゼロになるぞ。少しは反撃したらどうだ?」
「枢っち! 回復しろよ! なんで回復しないんだよ?!」
真の絶叫が響いた。
頭上でリーシャンが右往左往している。
「ああ、僕って回復魔法が苦手だし、どうしたら、どうしたら」
まったくリーシャンの奴。忘れてるのか。
「10…9…8……」
ベルゼビュートが悠長にカウントダウンする。
阿呆か。
「3…2…1……ゼロ。……何?」
俺は真っ赤に染まるHPバーを無視して、胸から突き出た棘をつかんだ。
光盾の魔法を包丁のように使い、棘を切り落とす。
血がだらだら滝のようにこぼれて服がよごれた。
「……もうHPがゼロのはずだ。なぜ動ける?!」
ベルゼビュートが驚愕する。
俺はその顔を見ながら、種明かしをした。
「お前が言ったんだろうが。神クラスは不死だって」
「まさか……!」
「称号"永遠に砕けぬ石"の効果。俺が諦めない限り、HPがゼロになることは無い」
HPバーは残量「1」のまま、ピタリと止まっている。
「黒崎、お前の言う通りだよ。不死である以上、勝負は最初から決まっている。レベル差がどれだけあろうと、関係ない」
「……貴様ぁっ!!」
俺の勝ちに、決まっているのだ。
天上が吹き飛んで、遥か遠くに青空が見えた。
空の手前に、強大な魔力の気配を漂わせた黒い影が見える。
「あそこまで駆け上がるぞ!」
「キュー!!」
真っ先にウサギギツネのメロンが、夜鳥たちを乗せたまま天井に空いた穴を登り始めた。
俺とサナトリスを乗せた大蜥蜴も後に続く。
「枢っちー!」
穴のふちで、真が手を振っている。
「こっちだ!」
手を振り返して、大蜥蜴から穴の開いた床に飛び降りる。
穴を挟んで正面には、人間の上半身に蟲の下半身の化け物がいた。
「……どちらさま?」
なんか見覚えあるなー。
「枢っち。黒崎だよ黒崎」
「え? なんでモンスターになってんの? 誰か分からなかったじゃん」
「誰だか分からないなんて言ってやるなよ。可哀そうだろ」
「……」
真がふうっと溜息を吐く。
いやお前も大概、失礼だろ。
「……近藤枢。まだ異世界の体を統合していないのか? そのレベルでは俺には勝てんぞ」
化け物が低い声で言う。
俺は鑑定で奴のレベルを確かめた。
「Lv.4042?」
知らない間に爆上がりしてんな。
「決着を付けよう、近藤枢。どちらが、この世界の統一神にふさわしいか……」
「ん? なんで頂上決戦みたいになってるんだ。俺は別に、お前と違って世界を支配する気なんてないけど」
俺は首をかしげた。
頭上で小型化したリーシャンが、同じ格好で腕組みして首をかしげている。
「ふざけるな。神聖境界線を作って魔族を締め出し、世界の大部分を支配しているのは、お前たち光の七神だろう」
「言われてみれば……?」
黒崎の声に怒りが混じる。
確かに魔族側から見れば、一方的に神聖境界線で締め出されているように見えるか。
それにしても俺は光の七神なんて名乗った覚えはないのに、いつの間にか公式設定になっているのはどういうことだろう。否定したら、どんどん話の本題から逸れていきそうだ。
真が、長くなりそうな会話に茶々を入れた。
「枢っち、枢っち。ここには戦いに来たんでしょ」
「おお、そうだった。椿は黒崎と話せたのか?」
「……まだ」
振り返って姿を探すと、しょげかえって暗い表情の椿がいた。
「仕方ないな。椿のためにも、どこにいるか分からない心菜のためにも、ここは魔神ベルゼビュートをちゃっちゃっと倒すか」
俺の決意表明を聞いて、ベルゼビュートは嘲笑した。
「……笑止。倒せるものなら、倒してみよ」
「言ったな。後悔すんなよ――晴天千落雷!」
頭上に白い魔法陣が浮かび、雨のように雷撃が降る。
しかし雷撃はベルゼビュートの体に触れると、跳ね返されて周囲に拡散した。
「っつ、光盾」
跳ね返った雷撃を抑えるために、防御魔法を自分と仲間の前に展開する。
「やっぱり、カウンター系のスキルを持ってやがるか……前に戦った時、心菜の刀剣は効いてたよな。ってことは、魔法攻撃無効で、物理攻撃有効か」
これはほんの小手調べだ。
俺は自分の魔法が跳ね返されたことから、ベルゼビュートの能力を冷静に分析する。
「枢っち! ベルゼビュートは倒してしまうと、レベルが二倍になって復活するんだ! さっきも大地の奴が調子に乗って攻撃したから、レベルが二倍になっちまった」
「真さん、俺も反省してるんで、それ以上言わないで下さい。枢さん! 物理攻撃ならリベンジも兼ねて俺が」
真と大地が、俺を挟んで言い争っている。
ほーう。元はLv.2021だったんだな。まあ、それでも十分レベル高いけど。
「まさか、物理攻撃なら俺を倒せると、本気で思っているのか。そもそも、俺を倒すことのできる者など、この世に存在しない。俺は何度でもよみがえり、そのたびに強くなる。不死ゆえに神クラスなのだ」
ベルゼビュートは「分析など無意味だ」と言いたげだった。
俺はその台詞を無視して、真たちを振り返る。
「お前らは手を出すな。黒崎とは、俺ひとりで戦う」
「え?!」
「枢さん?!」
決戦といえばパーティー戦だから、皆で一緒に戦うと思っていたのだろう。
大地や真が驚いた顔をする。
「ウェスペラの時といい、今回といい、俺の心菜にちょっかいかけてきやがって……いい加減にしやがれってんだ」
シシアに殺されたかもしれない心菜のことを考えると、ふつふつ怒りが沸いてくる。
何もかも、うざい黒崎=魔神ベルゼビュートのせいだ。
「くくっ……そうだ、怒りを俺に向けろ、近藤枢。お前のその顔が見たかった」
ベルゼビュートは背中の黒い翅を広げた。
空中に数十個の黒い炎が現れる。
炎の中から、黒い槍が現れた。
「黒毒槍」
槍の大きさや禍々しさが、以前より増している。
前は、光盾を十枚以上重ねて防御した。
相手のレベルが上がっている以上、また同じように防御するだけじゃ、勝てないだろう。
だったら変える。
今ある手札を最大限に使い、工夫して新しい魔法を生み出すのだ。
「――金剛石盾」
工作に使っている魔法で、光盾の魔法を加工して重ね合わせる。
十枚の光盾が重なり、隙間なく圧縮されて、俺の前に浮かんだ。
いくつもの魔法を組み合わせた複雑な構造のため、まるで加工されたダイヤのように光を集め、金剛石盾は眩く輝く。
「何?!」
金剛石盾は、ベルゼビュートの黒い槍を完全に防ぎきってみせる。
「攻撃魔法は通用しないんだっけな。なら、防御魔法はどうだ――増幅魔法、連結。盾運魔法式、起動!」
足元から立ち上った青い光から、ひし形の結晶が二つ、現れる。
その結晶に、金剛石盾の魔法をコーティングする。
「金剛投石機!」
金剛石盾をまとって鋭く尖った結晶は、弧を描いて魔神ベルゼビュートへと、ミサイルのように迫った。
「グッ……!!」
身をひねるベルゼビュートの肩をつらぬき、結晶は衝撃で砕け散る。
その欠片も、ベルゼビュートにわずかなダメージを与えたようだ。
視界の隅に表示された敵のHPの五分の一が減った。
「やっぱり投石は物理攻撃判定か……もういっちょ」
二個目の結晶を投げる。
「ぐああああっ!!」
結晶はベルゼビュートの腕を粉砕した。
さらに五分の一、敵のHPが減少する。
「すごい……!」
「圧倒的っすね……!」
ギャラリーの椿や大地が感嘆している。
確かに良いペースでHPを削っているが……俺は自分のステータスに目を走らせた。
MPの消費がやばい。
セーブクリスタルの時と違い、魔力が無限ではない上に、ベルゼビュートの支配する領域では大地属性の魔法は威力が減り、魔法に必要な魔力消費量も上がるため、今の攻撃でかなりMPを消費している。
もう一度、盾運魔法式を起動して投げると、MPが尽きてしまう。
MPが尽きるまで攻撃しても、ベルゼビュートのHPを削りきれない。
それに……。
「続けて攻撃したらどうだ、近藤枢。インターバルを置くと、俺も回復するぞ……」
ニタリ、とベルゼビュートが嗤った。
敵のHPが徐々に回復している。
高レベルの奴は大概、HPやMPの回復スキルは持っているから、この状況は想定内だ。
「それに忘れていないか? この城は、俺の本拠地だということを。お前たちは俺の舞台で踊っているのだ」
「枢っち!!」
「カナメーっ!」
ドスッと音がした。
床から生えた棘が、俺の体を貫通する。
「ぐっ……」
俺は激痛に眉をしかめた。
見下ろすと、胸に大穴が開いている。
「これが、怪我の痛みか……クリスタルの時は、こういう痛さは無かったからな……新鮮だ」
「何言ってんだよ、枢っち! はやく回復しろよ!!」
真が泣きそうな顔で怒鳴る。
視界の端に表示された自分のHPが急速に減少していくが、俺は回復魔法を使わなかった。
ただ、痛みをこらえて自動回復しているMPの残量に目をこらす。
あともうちょい。
「くっくっく。回復したくても、できないだろうよ。俺の操る槍や棘には、回復を阻害する毒の効果がある」
「そんな?! だけど枢なら……何か勝算があるんじゃ」
「無駄な希望を抱かない方がいいぞ、小早川真。俺が不死である以上、勝負は最初から決まりきっている」
ステータスの状態異常に、毒のアイコンが点滅している。
誰だ、こんなアイコンやらをデザインした奴は。
趣味悪い……いったい誰が、こんな世界を考えたんだ?
「あっけないな、近藤枢。もうすぐHPがゼロになるぞ。少しは反撃したらどうだ?」
「枢っち! 回復しろよ! なんで回復しないんだよ?!」
真の絶叫が響いた。
頭上でリーシャンが右往左往している。
「ああ、僕って回復魔法が苦手だし、どうしたら、どうしたら」
まったくリーシャンの奴。忘れてるのか。
「10…9…8……」
ベルゼビュートが悠長にカウントダウンする。
阿呆か。
「3…2…1……ゼロ。……何?」
俺は真っ赤に染まるHPバーを無視して、胸から突き出た棘をつかんだ。
光盾の魔法を包丁のように使い、棘を切り落とす。
血がだらだら滝のようにこぼれて服がよごれた。
「……もうHPがゼロのはずだ。なぜ動ける?!」
ベルゼビュートが驚愕する。
俺はその顔を見ながら、種明かしをした。
「お前が言ったんだろうが。神クラスは不死だって」
「まさか……!」
「称号"永遠に砕けぬ石"の効果。俺が諦めない限り、HPがゼロになることは無い」
HPバーは残量「1」のまま、ピタリと止まっている。
「黒崎、お前の言う通りだよ。不死である以上、勝負は最初から決まっている。レベル差がどれだけあろうと、関係ない」
「……貴様ぁっ!!」
俺の勝ちに、決まっているのだ。
21
お気に入りに追加
3,937
あなたにおすすめの小説

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明
まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。
そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。
その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

転生チート薬師は巻き込まれやすいのか? ~スローライフと時々騒動~
志位斗 茂家波
ファンタジー
異世界転生という話は聞いたことがあるが、まさかそのような事を実際に経験するとは思わなかった。
けれども、よくあるチートとかで暴れるような事よりも、自由にかつのんびりと適当に過ごしたい。
そう思っていたけれども、そうはいかないのが現実である。
‥‥‥才能はあるのに、無駄遣いが多い、苦労人が増えやすいお話です。
「小説家になろう」でも公開中。興味があればそちらの方でもどうぞ。誤字は出来るだけ無いようにしたいですが、発見次第伝えていただければ幸いです。あと、案があればそれもある程度受け付けたいと思います。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです
yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~
旧タイトルに、もどしました。
日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。
まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。
劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。
日々の衣食住にも困る。
幸せ?生まれてこのかた一度もない。
ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・
目覚めると、真っ白な世界。
目の前には神々しい人。
地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・
短編→長編に変更しました。
R4.6.20 完結しました。
長らくお読みいただき、ありがとうございました。

スキル盗んで何が悪い!
大都督
ファンタジー
"スキル"それは誰もが欲しがる物
"スキル"それは人が持つには限られた能力
"スキル"それは一人の青年の運命を変えた力
いつのも日常生活をおくる彼、大空三成(オオゾラミツナリ)彼は毎日仕事をし、終われば帰ってゲームをして遊ぶ。そんな毎日を繰り返していた。
本人はこれからも続く生活だと思っていた。
そう、あのゲームを起動させるまでは……
大人気商品ワールドランド、略してWL。
ゲームを始めると指先一つリアルに再現、ゲーマーである主人公は感激と喜び物語を勧めていく。
しかし、突然目の前に現れた女の子に思わぬ言葉を聞かさせる……
女の子の正体は!? このゲームの目的は!?
これからどうするの主人公!
【スキル盗んで何が悪い!】始まります!

異世界リナトリオン〜平凡な田舎娘だと思った私、実は転生者でした?!〜
青山喜太
ファンタジー
ある日、母が死んだ
孤独に暮らす少女、エイダは今日も1人分の食器を片付ける、1人で食べる朝食も慣れたものだ。
そしてそれは母が死んでからいつもと変わらない日常だった、ドアがノックされるその時までは。
これは1人の少女が世界を巻き込む巨大な秘密に立ち向かうお話。
小説家になろう様からの転載です!
異世界転生~チート魔法でスローライフ
玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる