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04 俺、幽霊に会う
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猫になった時から、身体の調子がおかしい。
熱いものが食べられない猫舌になるし。
空気の匂いを強く感じたり、物音が大きく聞こえたり。
むちゃくちゃ眠くなって、いつも夜明けまでしているオンラインゲームをせずに、布団の中で爆睡してしまった。朝も眠くてすげえ起きづらい。
寝ぼけてた俺は、朝ご飯を食べるとき、自分が猫舌になったことも忘れてうっかり熱いコーヒーを飲んでしまった。
「あっちー!」
「何やってんのお兄ちゃん」
妹に変な目で見られてしまった。
そんなこんなで、いつもより遅い時間に学校に登校することになったのだが。
通学路の風景がなんだか今までと違って見える。
緑が鮮やかだし、鳩や雀が気になるし。
ん? なんか時代錯誤な赤いスカートを履いたおかっぱの女の子が交差点に立ってるぞ。あんな娘、今まで見たことあったっけ。
『うーらーめーしーやーー!!』
「ウギャア!!」
おかっぱの女の子は俺を見ると、顔の半分まで広がった口角を吊り上げてニヤニヤ笑った。その口元と胸元から血がドバッとしたたる。
赤いスカートだと思ったけど実は流血の赤だったらしい。
朝っぱらからホラーでグロテスクなシーンを目撃した俺は思わず絶叫した。
『ふふふ、うれしーわあ。私が見える人なのね。取り憑いちゃおうかしらあ』
取り憑くって、こいつ幽霊かよっ。
道理で道行く人がこいつを見てない訳である。
昨日に引き続き有り得ない展開に驚いた俺は、ニタニタ笑う少女の幽霊を前に怯えて震えた。
「止めろ」
冷静な制止の声。
楽しそうに血を流していた幽霊の女の子は、途端に詰まらなさそうな顔をした。
『ええー、カズマ、この子見えるのよ。もう少し楽しませてよ』
「そいつは僕と同じ猫族だ。取り憑けないぞ」
『それは残念』
俺と幽霊の間に割って入ったのは、遠藤だった。
幽霊をガン見していて気付かなかったが、俺と同じく登校中らしく学校指定の鞄を片手に持っている。学校の近くで通学路だから出会う確率はゼロじゃない。
また助けられちまった。
「遠藤……こいつ幽霊なの?」
「そうだ」
「幽霊と知り合いなのか?」
「そうだ。ついでにいうと、今君も幽霊と知り合いになった訳だが」
いらねえよそんな知り合い!
冷静な顔で遠藤は淡々と「彼女は50年ほど前にこの交差点で死んだ花子さんだ」と紹介する。そんな情報欲しくない。
『面白くないわあ。最近、霊感のある子が少なくって驚かせがいがないの。せっかく驚かせたと思ったら猫だし』
「そいつは悪かったな」
『カズマも最初は驚いて猫の姿になって尻尾ブルブルさせてたのに、最近冷たいし』
「……」
へえ、そうか。それは良いこと聞いたな。
楽しくなって遠藤を見ると、不快そうに視線を逸らされた。
恥ずかしいらしい。
「須郷、場所を移そう」
「学校は?」
「たまにはサボってもいいんじゃないか」
まあな。
朝からハプニング続きで俺はすっかり学校気分じゃなくなっていた。
いけすかない遠藤に助けを乞うのは気に食わないが、仕方ない。どうやら猫になっちまった以上、最低限の知識は必要そうだ。
花子さんに別れを告げて歩き出す。
補導されないよう念のため制服の上着を脱ぐと、俺たちは連れ立って駅前のマクドナルドに向かった。
熱いものが食べられない猫舌になるし。
空気の匂いを強く感じたり、物音が大きく聞こえたり。
むちゃくちゃ眠くなって、いつも夜明けまでしているオンラインゲームをせずに、布団の中で爆睡してしまった。朝も眠くてすげえ起きづらい。
寝ぼけてた俺は、朝ご飯を食べるとき、自分が猫舌になったことも忘れてうっかり熱いコーヒーを飲んでしまった。
「あっちー!」
「何やってんのお兄ちゃん」
妹に変な目で見られてしまった。
そんなこんなで、いつもより遅い時間に学校に登校することになったのだが。
通学路の風景がなんだか今までと違って見える。
緑が鮮やかだし、鳩や雀が気になるし。
ん? なんか時代錯誤な赤いスカートを履いたおかっぱの女の子が交差点に立ってるぞ。あんな娘、今まで見たことあったっけ。
『うーらーめーしーやーー!!』
「ウギャア!!」
おかっぱの女の子は俺を見ると、顔の半分まで広がった口角を吊り上げてニヤニヤ笑った。その口元と胸元から血がドバッとしたたる。
赤いスカートだと思ったけど実は流血の赤だったらしい。
朝っぱらからホラーでグロテスクなシーンを目撃した俺は思わず絶叫した。
『ふふふ、うれしーわあ。私が見える人なのね。取り憑いちゃおうかしらあ』
取り憑くって、こいつ幽霊かよっ。
道理で道行く人がこいつを見てない訳である。
昨日に引き続き有り得ない展開に驚いた俺は、ニタニタ笑う少女の幽霊を前に怯えて震えた。
「止めろ」
冷静な制止の声。
楽しそうに血を流していた幽霊の女の子は、途端に詰まらなさそうな顔をした。
『ええー、カズマ、この子見えるのよ。もう少し楽しませてよ』
「そいつは僕と同じ猫族だ。取り憑けないぞ」
『それは残念』
俺と幽霊の間に割って入ったのは、遠藤だった。
幽霊をガン見していて気付かなかったが、俺と同じく登校中らしく学校指定の鞄を片手に持っている。学校の近くで通学路だから出会う確率はゼロじゃない。
また助けられちまった。
「遠藤……こいつ幽霊なの?」
「そうだ」
「幽霊と知り合いなのか?」
「そうだ。ついでにいうと、今君も幽霊と知り合いになった訳だが」
いらねえよそんな知り合い!
冷静な顔で遠藤は淡々と「彼女は50年ほど前にこの交差点で死んだ花子さんだ」と紹介する。そんな情報欲しくない。
『面白くないわあ。最近、霊感のある子が少なくって驚かせがいがないの。せっかく驚かせたと思ったら猫だし』
「そいつは悪かったな」
『カズマも最初は驚いて猫の姿になって尻尾ブルブルさせてたのに、最近冷たいし』
「……」
へえ、そうか。それは良いこと聞いたな。
楽しくなって遠藤を見ると、不快そうに視線を逸らされた。
恥ずかしいらしい。
「須郷、場所を移そう」
「学校は?」
「たまにはサボってもいいんじゃないか」
まあな。
朝からハプニング続きで俺はすっかり学校気分じゃなくなっていた。
いけすかない遠藤に助けを乞うのは気に食わないが、仕方ない。どうやら猫になっちまった以上、最低限の知識は必要そうだ。
花子さんに別れを告げて歩き出す。
補導されないよう念のため制服の上着を脱ぐと、俺たちは連れ立って駅前のマクドナルドに向かった。
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