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第四章 ハムスターの恋

好きになっちゃうかも

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 皆様、大変失礼いたしました。
 そして王子様ごめんなさい。

「……」

 憮然とそっぽを向く王子様の美しい横顔には赤い手形が…。
 ひっぱたいてしまいました。
 あああ、世界遺産の美貌に私は何ということを!ユネスコから抗議されてしまうわ!
 私は王子様から貸して頂いた軍服の長衣の裾を手繰り寄せながらブルブル震えた。

「ごご、ごめんなさいい…」

 月毛の馬の背に私を乗せて、王子様は手綱を引きながら歩いている。
 馬に乗せて貰うなんて恐れ多いと私は必死に拒否したのだが、じゃあお姫様だっこしようかと提案され、あまりの恐ろしさに私は失神しそうになった。ちなみに二人乗りすると馬が疲れるということで、王子様と馬に二人乗りというシチュエーションには至っていない。助かったあ。
 王子様は私から目を逸らせてぼそりと言った。

「親にも叩かれたことはないというのに…」

 どこかで聞いた台詞だ。

「この僕に水を掛けたり、叩いたり、君はとんだお転婆娘だな」
「ひゃあ…すいません、わざとじゃありませぇん…」
「本当に?少しでも良心に咎めるというなら、償ってくれ」
「?」

 王子様はちらりと視線を私の方に流して、悪戯っぽく微笑した。

「君の方からキスを……」
「うぎゃおおぅああああ!!」

 私は絶叫して王子様の台詞を遮った。
 む、無理よ!とても考えられない!
 頭を抱えていると、王子様が明るい笑い声を上げた。

「ははっ!君は本当に面白いな」

 怒ってないの?
 恐る恐る様子を窺う。
 王子様は何がそんなに受けたのか、くすくす笑っている。
 無邪気で子供っぽい笑顔。思わず見惚れた。

「冗談だよ。むしろ僕の方が償わなければならないくらいだ。未婚の女性の服の下を見てしまったのだから」
「お見苦しいものをお見せしました…」
「そんなに畏まらなくていいのに。君は自分に自信がないのかい?」
「自信なんか…」
「君は魅力的だよ」

 そう言った王子様はお世辞を言っているふうでは無かった。
 私はただのぽっちゃり系平凡女子なのに。

「確かに世間一般でいう美人ではないな。けれど、君には君の良さがある。他の娘と比べる必要はない。君は僕にとって世界でただひとつの花だ」

 そんなキラキラしながら言わないでっ!眩しいわ。

「……僕を叩くような娘は君くらいだろうしね」
「根に持ってますね」
「まさか」

 しっかし王子様とこんな気安いやり取りする日が来るとは、夢にも思ってなかったよ。王子様は外見はともかく、中身は普通の男の子なんだね。話していて親近感が沸いてきた。それになんだか楽しい。
 困ったなあ。
 外見だけじゃなくて、中身も好きになってしまいそう。
 王子様は人間で……私はハムスターなのに。


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