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第三章 ハムスターと王子様

ハムスター的道案内

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 一方、エステルの失踪に気付いた面々はどうしていたかというと。

 事の次第を知ったパドリックは、急ぎ警邏と騎士団に行方不明の少女の捜索を命じた。
 同時に他にも行方不明者がいないか、試験官に命じて花選びの儀に参加した娘の所在を確かめさせる。
 その結果、何人かの行方不明者が発覚した。
 行方不明者を最後に見掛けた者の証言で、不審な荷車が都の東門を通過したとの情報を掴む。パドリックは近衛騎士を何人か連れて、荷車の行方を追うことにした。

「ところで殿下。そのパムスターはいったい……?」

 王子の乗る月毛の馬の首筋に取り付けられた皮の袋から、クリーム色のパムスターの頭が覗いている。
 愛らしいパムスターと真剣な表情の王子の妙な取り合わせに、近衛騎士の一人は恐る恐る疑問を口にした。

「このパムスターは行方不明の娘が連れていたらしい。手掛かりになるかもしれないから連れて行けと神官に言われた」
「はあ」

 パムスターが何の役に立つのだろうとその騎士は思ったが、口に出さなかった。
 王子の側近で幼なじみの騎士イッシュはこっそり笑いをこらえている。

「キュー」

 人里を少し離れて道なりに進んでいると、突然パムスターが鳴いた。

「どうした?」

 パドリックは馬を止める。
 同行している騎士達も仕方なく立ち止まった。
 パムスターは馬から飛び降りると、道端の草むらの前で止まって、パドリック達を呼ぶように振り返る。

「キュー」

 パムスターの足下にはピマワリの種があった。
 この種がいったいどうしたと言うのだろうか。
 よく分からずに首を傾げる騎士達の前で、パムスターはとことこと走って数メートル先の道の上で止まる。

「キューキュー」

 そこにもピマワリの種が。
 ようやくパドリックや騎士達にもパムスターの行動の意味が分かる。

「そうか!この種を辿っていけば、エステルの所に辿り着くんだな!」

 合点がいったパドリックは顔を輝かせる。
 騎士達も「おお…」と歓声を上げた。

 途中で種をかじるパムスターを追って、パドリック達は道を進む。分岐を通り過ぎて一本道になったところで、パムスターを拾って、全速力で馬を走らせた。
 いつの間にか山道は夕闇に沈んでいる。
 目指す先に浚われた娘がいることを確信しながら、月明かりを頼りにパドリック達は夜道を駆け抜けた。


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