実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~

空色蜻蛉

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願いが叶う島

第44話 天の恵みですわ

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 ルシエルに従って大人しい振りをした方が良かっただろうか。
 いやいや、相手は天使様だ。嘘を付くと、余計に事態が悪化していた可能性もある。
 その晩、ネーヴェは静かすぎる屋敷の中で自問自答しながら、眠りについた。屋敷の中には寝具などが残っており、外で寝るより安全な場所だった。毛布を拝借し、火を消しても暖かい台所の隅で丸くなる。
 空に近いからだろうか。星空が明るく、夜が明けるのも早い。
 目覚めてすぐ、ネーヴェは空腹を覚えた。
 
「……肉料理が食べたくなってきましたわ」

 ネーヴェは、わりと肉食派だ。体を動かすのが好きだからだろうか。
 
「聖域の動物は、食べてはいけませんよね」
 
 昨日ルシエルは、狩猟が許可されているか、教えてくれなかった。
 教会は肉食を禁じている訳ではないが、不要な殺生は控えるよう説いており、教会周辺の森は狩猟禁止区域である。
 狩りは、やめておいた方が無難だろう。
 とりあえず、昨日、卵を拾ったあたりに行って、もう一個拾ってこようと、ネーヴェは考えた。籠城戦がいつまで続くか不透明なので、兵糧は多くあった方が良い。

 コケッコッコーー!

 枝の上を歩いていると、鶏の鳴き声がした。
 見上げると、立派な雄鶏がこちら目掛けて舞い降りてくるところだった。

「天は、私の願いを叶えたもうたのですね!」
 
 ネーヴェは雄鶏を抱擁するように出迎える。
 シチューにしようかしら。
 それともシンプルに丸焼きが良いかしら。
 ああ、トマトがあれば、葡萄酒と一緒に煮込んでカチャトーラを作るのに!

「とっても美味しそうなニワトリ……」
『食うなよ! 食わないでくれ~!』

 どこかで聞いたような哀願だった。
 ネーヴェは受け止めた食材、もとい雄鶏をしげしげと見た。

「あら、モップではないですか。再会できて嬉しいですわ」
『さっき食材を見る目で見てたよな?!』

 雄鶏のモップは、ネーヴェの腕の中で、バサバサ羽ばたいた。
 彼は、城下町で買い上げた女王の飼鳥ペットで、鳥好きのフルヴィアが旅に同行させている。

『食べるなよ。天使のオスが、姫様が寂しくないよう、俺っちを送ってきたんだぞ』
「シエロ様が、非常用食糧をくださったのですね」
 
 やはり天の恵みだったと、ネーヴェは感謝した。
 
「冗談ですよ。食べたりしないので、そんな怯えないで下さい」
『本当に冗談だよな?!』
 
 雄鶏はふさふさの羽毛を一層ふくらませて警戒態勢だ。
 ネーヴェは落ち着いてと雄鶏をゆっくり撫でた。

「私が宝座の天使様にさらわれた後のことを、教えていただけますか」
 
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