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【第二幕開始】天使様の嫉妬
第5話 何を仰っているのですか叔母様
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寝室は暗かったので、灯りを付けた。
第三者の乱入で、すっかりやる気を無くしたシエロは、翼をしまって椅子にふんぞり返っている。女性の部屋に無断侵入したのに、偉そうな態度だ。
ディアマンテがいそいそと、彼の前のテーブルに紅茶をサーブした。この叔母は顔の良い男に弱いので、姪っ子を押し倒していた事実は良い男なら許せるらしい。
「まあ! 大司教のシエロ様が天使ご本人とは、存じ上げませんでしたわ」
「けして口外しないで欲しい」
「もちろんです!」
ネーヴェは椅子を持ってきて、彼の前にちょこんと座った。
誤解を解かねばなるまいと意気込んで。
「シエロ様、そろそろ、ご説明してもよろしいですか」
しかし、対するシエロはもう平静そのもので、のんびり茶をすすっている。
「不要だ。おおむね見当は付いている。城内で、お前の部屋を掃除する妖精がいると人気だからな。範囲を広げたくなったのだろう?」
「よくお分かりで」
シエロは、ネーヴェが掃除好きだと知っている。
過去に何度も、掃除を手伝ってもらった。その度に、軽く文句を言いながらも、彼は楽しげに一緒に働いてくれたものだ。
「ねえ、ネーヴェちゃん。やっぱり夜中に城内をうろつくのは、良くないと思うのよ」
ディアマンテは困った顔で、もっともな事を言った。
「それは、そうなのですけど……」
慣れない王様稼業のストレスを、掃除で消化しているのだ。
今回ばかりは、叔母が正しいと頭で分かっていても、もやもやする。ネーヴェは、自分の前に置かれたティーカップを、浮かない表情で覗き込む。茶の水面に、氷のように凍てついた表情の女が映った。ネーヴェはあまり心情が顔に表れない方だ。
「だから、ほら、他のストレス解消法を、見つけたらどうかしら?」
叔母の提案に、ティーカップから視線を上げると、心配そうな顔をしたシエロと目が合った。どうやらストレス云々で、ネーヴェのことが気になっているらしい。
無理やり乗り込んできたものの、シエロは徹頭徹尾、感情的に責めることはなく、押し倒したのも戯れのような感じだった。
彼の深い海のような蒼い眼差しは、穏やかで包容力を感じさせる。普段は気を張っているネーヴェは、彼の前でだけ、つい童心にかえって甘えてしまう。そして同時に、どこか胸がざわつく。
姪っ子が複雑な感情をもて余していることに気付かず、ディアマンテは意気揚々と続けた。
「掃除以外にも、ストレス解消できることが、あるかもしれないじゃない! 城下町に降りて、シエロ様とお忍びでデートしに行ってみたらどう?」
「デート……?」
思ってもみなかった提案に、ネーヴェは珍しく何も言い返せず、絶句した。
第三者の乱入で、すっかりやる気を無くしたシエロは、翼をしまって椅子にふんぞり返っている。女性の部屋に無断侵入したのに、偉そうな態度だ。
ディアマンテがいそいそと、彼の前のテーブルに紅茶をサーブした。この叔母は顔の良い男に弱いので、姪っ子を押し倒していた事実は良い男なら許せるらしい。
「まあ! 大司教のシエロ様が天使ご本人とは、存じ上げませんでしたわ」
「けして口外しないで欲しい」
「もちろんです!」
ネーヴェは椅子を持ってきて、彼の前にちょこんと座った。
誤解を解かねばなるまいと意気込んで。
「シエロ様、そろそろ、ご説明してもよろしいですか」
しかし、対するシエロはもう平静そのもので、のんびり茶をすすっている。
「不要だ。おおむね見当は付いている。城内で、お前の部屋を掃除する妖精がいると人気だからな。範囲を広げたくなったのだろう?」
「よくお分かりで」
シエロは、ネーヴェが掃除好きだと知っている。
過去に何度も、掃除を手伝ってもらった。その度に、軽く文句を言いながらも、彼は楽しげに一緒に働いてくれたものだ。
「ねえ、ネーヴェちゃん。やっぱり夜中に城内をうろつくのは、良くないと思うのよ」
ディアマンテは困った顔で、もっともな事を言った。
「それは、そうなのですけど……」
慣れない王様稼業のストレスを、掃除で消化しているのだ。
今回ばかりは、叔母が正しいと頭で分かっていても、もやもやする。ネーヴェは、自分の前に置かれたティーカップを、浮かない表情で覗き込む。茶の水面に、氷のように凍てついた表情の女が映った。ネーヴェはあまり心情が顔に表れない方だ。
「だから、ほら、他のストレス解消法を、見つけたらどうかしら?」
叔母の提案に、ティーカップから視線を上げると、心配そうな顔をしたシエロと目が合った。どうやらストレス云々で、ネーヴェのことが気になっているらしい。
無理やり乗り込んできたものの、シエロは徹頭徹尾、感情的に責めることはなく、押し倒したのも戯れのような感じだった。
彼の深い海のような蒼い眼差しは、穏やかで包容力を感じさせる。普段は気を張っているネーヴェは、彼の前でだけ、つい童心にかえって甘えてしまう。そして同時に、どこか胸がざわつく。
姪っ子が複雑な感情をもて余していることに気付かず、ディアマンテは意気揚々と続けた。
「掃除以外にも、ストレス解消できることが、あるかもしれないじゃない! 城下町に降りて、シエロ様とお忍びでデートしに行ってみたらどう?」
「デート……?」
思ってもみなかった提案に、ネーヴェは珍しく何も言い返せず、絶句した。
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