え、私が竜姫のお気に入りですか?

さなりこ

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成人の儀

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成人の儀、いよいよ当日を迎えてしまった。いや、おめでたい日ではあるが、婚約もできたし、カッコ仮だけれども。

竜姫アメリア様のお気に入りとなって、婚約を結び、結局会ったのは、

・・・さ、3回?


初めましての竜姫様と、2回目は婚約書類で、3回目は手紙から急に会って、そのまま連絡もなかった。

確かに私も王妃様の誕生会関係で仕事が忙しくなってそれどころじゃなかったけど。

手紙も返事をしたあとは自分から書かなかったけど。

せめて、最低限の婚約者として、構ってもらいたいと思ってしまう。でも、それがわがままなんだろうことは身の程をわきまえているつもりだ。
自分だけが期間限定の婚約者に不満があるなんて、嫌だ。不公平だ。こんやヤキモキした気持ちになるなんて。




成人の儀は女性は花冠、男性は胸元に花のコサージュを入口で渡される。これが成人の印だ。街中でも生花の冠と胸元のコサージュは変わらない。今日は国中で地域に合わせた切花が配られる。まさに成人のお祝いだ。

王城で開かれる成人の儀の花は、毎年白色と決まっている。婚約者同士、付けあう。ちなみに、これまでこれといった会話はない。「今日はよろしくお願いいたします。」のみ。


「赤のドレス、綺麗ですね。あの、今日は、」

やっと何か言いかけていたけれど、入場の呼びかけで途中になった。

婚約者と紹介されながら会場へ入る。陛下の祝辞、ここからは成人として扱われる。

成人の儀のあとは、爵位授与席のところへ、もちろん私も婚約者として着席。こちらは落ち着かない。周りの荘厳な雰囲気に圧倒される。


爵位のお祝い、私から何かしてあげたいな。お祝いなんだから受け取ってくれるよね。たぶん大丈夫。婚約解消してもそれは別だと思いたい。

あとは竜姫様に無事に成人の儀を済ませることができたと挨拶して、婚約届けと同じように、流れ作業で婚約解消する。ちょっと落ち込んじゃうけど、すぐに切り替える。もともと、成人の儀のための婚約者だもの、次よ!次!


「ユーリアさん?」

いつの間にか、爵位式の待機席に戻ってきた彼の胸元には男爵家の紋章がついていた。続けて褒章式が始まっていた。2人式を静かに見つめながらすべての式が終わるのを待つ。

ここに座る人達は、何らかの褒賞で選ばれた人、または付き人だ。私達の他に、成人の花冠とブートニアを付けている人はいないからか、目立っている。

成人してすぐに爵位授与って、彼はかなりの優良物件だ。狙うお姉様方の視線を感じる。婚約解消した人達があれこれ言われなくなって久しい。成人の儀が形骸化が進んでいる結果だ。もちろん、私もそのおかげで婚約できたわけだが。


私たちは静かに席を立ち両親の元へ挨拶へ向かった。一通りの挨拶の後は彼の知り合いが集まりだす。

「婚約おめでとう!」

何故か爵位ではなく婚約のお祝いを伝えられる。

「ユーリアちゃんだよね?ほんと婚約してくれてありがとう」

感謝を伝えられる。

紹介されるような女性もなく、驚くほど彼ゼノスの周りの人達から婚約・・の祝福をされている。

謎だ。

さらに帰り際に
「あの、爵位の祝いで特別休暇があるから、今度のユーリアさんのお休みに合わせて、どっか一緒に出かけませんか?」
のお誘い。

ま、すぐに解消にするのは世間体が悪いからということだろうか。

次の休みの予定もなかったし、正直嬉しい。婚約者っぽいことできるなって気分も良い。素敵な1日になればいいが。
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