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婚約(竜騎士視点)

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「で?無事に婚約できたのか?今日はお前の話でもちきりだぞ。」

彼女を送った後はすぐに報告へ行った。

「はい!婚約できました!」

嬉しさのあまり大声で答えたらドアの外が騒がしくなった。どうやら賭けをしていたらしい。「よっしゃー!」と、「負けたー!」が同時に聞こえてきた。

「おめでとう。竜姫を労ってやれ。今回は竜姫も一緒に罰を受けることになった。」

団長、というより竜騎士団はゼノスが彼女の虜であるのは周知の事実らしい。

さらに、竜姫アメリアが気に入ったとあっては竜騎士の中では婚約者として太鼓判が押されるほどだ。過去に竜が気に入られなくて別れたヤツもいた。その分心配はない。

「承知いたしました。」

飛びだしたのはアメリアだ。規律違反はわかっていただろう。

おかげで出会えて、話ができて、騎竜して、「ぐふふ」柔らかくて、いい匂いがして、恥ずかしがって離れようとしてるのも可愛かった。やばい。

ゼノスが惚けている様子を団長は呆れた顔で見ながら書類を用意。

「幸せ絶頂のところに言い渡す。罰は次の遠征への強制参加と決まった。加えてゼノスは見習い達のところで三日間の講師業務を命じる。」
 
「え、それ!前に断ったやつじゃないですか!」

「次は罰則命令だ。ああ、講義内容は騎士の心得。どうだ。お前の反省にぴったりだろう?」

またか。親父の貴族位、兄貴達の武勇伝もあるから勝手にオファーが来たんだ。同年代に教えるとか面倒なことになりそうだし、俺よりもっと教えるのが上手い先輩がいるじゃないかとやんわり逃げていたのに。

「遠征は明後日から2週間、詳細はモロー副隊長に聞け。」

「はい!」



明後日か。とりあえず早く口約束でない婚約をしてからだ。時間が足りない。


アメリアと騎乗した翌日、すぐに婚約の儀を簡略的に行った。

あー、可愛かった。


今回の罰則で連続遠征となったため、すぐに婚約を結んでおかなければと思った。しばらく戻れない。


モロー副隊長が任務予定の遠征は西のルマン王国の災害援助活動だった。

その後戻ったらすぐにもともと予定のあった遠征の準備。

ー会いたい。

遠征の出発の時間がちょうど彼女の通勤時間に重なっている。見れるかもしれない。ひと目だけでも。

王妃宮へ向かう出勤前の凛と歩く姿を見た。それだけで活力が漲ってきた。

結局連続の遠征で、婚約してからおよそ2ヶ月経っていた。

「何を書けばいいんだ。」
『ふん!相変わらずヘタレやのぅ。ほれ、何でもいいから書くんじゃ』

「手紙で告白してもいいのかな?でもおしゃれな言葉も知らないし」

婚約者に手紙も送っていないと驚かれて急いでしたためようとしているゼノスにさらに呼び出し。


「ああ、時間もない。」


書いたのは
【会いたい】
一言だけ。



『人間なら婚約したばかりの二人の3ヶ月は長いのぅ?』

「そりゃそうだよ。アメリアに番がみつかったらわかるさ」


『ふん!偉そうに。告白もできてないヤツが何をいう』

アメリアの言うとおり「好きだ」と言っていない。でも、婚約者になったんだ。これからチャンスはある。


成人の儀まであと3ヶ月。

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