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竜宿舎
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「だっ団長!まだです。これからお誘いするであります。」
いやいや、これから誘うって。スキンヘッドが眩しい団長様の表情は逆光でわからない。私を見て、竜姫アメリア様を見て、小さくため息が聞こえた。
「・・・後で来い。竜舎からの緊急時以外の飛び出しでの事後報告書を提出しろ。その後罰則を伝える」
「は!」
竜と絆を結んだ竜騎士は一瞬「やっちまった」表情の後、かしこまった返事をした。
おつかれさま。あなたも叱られる日ね。
ズズズッ。ピタ。
宿舎までの道のりを歩く。王妃宮に連絡もしてくれた。今日はこのまま帰宅してもよいと整えてもくれた。仕事はできる。が、それ以外の会話は一切ない。
「・・・。」
いかんせん寡黙すぎる。彼に婚約者がいない理由もわかる気がする。
竜騎士は騎士の中でも別格とされる。竜と絆を結ぶ前に多くの選抜を乗り越え、選ばれたエリートだ。近衛と同じくらい人気がある。
見習い入りで人気が出そうだが、竜騎士の関係場所はすべて見習いは入ることはできない。過去に絆を結んでいない者、竜についての知識がない者が竜を興奮させてしまい、竜は攻撃するつもりがなくても事件、事故になったと聞いているからだ。
だから私達一般人は基本竜宿舎にそもそも入れない。どうやって入るのだろうか。入口まで送り届けたところ、
「あ、あの、こここ婚約者は?」
また噛んだ。よっぽど聞きたいのかな。
「・・・いませんわ」
「良かった。実はここに入るには婚約者か親族でないと難しいので」
これは、なし崩し的に婚約者を得たと判断できる。
「私、今年の成人の儀に出席ですの。」
「知ってる。あと半年、あ、そうなんですね」
今、知ってますと言った。言った!!ちょっと疑いの眼差しでみていると
「アメリアから教えてもらったんだ。」
と言った。アメリアは「心外だ」というように不満げに鼻息をゼノスへ吹きかけた。何か見つめ合い会話をしているようだ。
「私、竜についての知識がないですけれど、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫。竜の鱗の中でも色が変わっているところがあっただろう?そこは気を許したものだけが触れるとされるところだ。竜にとっては信頼の証なんだ。団長にも伝えたし、手続きは簡単だ。それに、一連の流れを見てたヤツもいた。」
「どうして私のところに来たのかしら?」
「・・・。そこは、えーっと、アメリアが君を気に入ったからかな?私ももちろん。ほら、私は竜騎士だし。竜に認めてもらえる婚約者のほうがいいだろう?。竜姫アメリアのお気に入り。どうか私とこここ婚約をしてくれないでしょうか?」
また口に出てたのね。だって、私が竜姫のお気に入りなんて。会ったこともないのに。おかしいじゃない。半年なんて、どうして知ってるのかしら?
・・・現実に迫った婚約の状況。成人の儀だけでも、そうよね。まだこの竜騎士の方がどんな人かもわからないけれど、背に腹は代えられない。
「よろしくお願いします。」
こうして私は竜姫アメリア様のお気に入りとなり、竜騎士の婚約者となった。
「アメリア様、私、お会いしたこともなかったはずですが、気に入っていただきましてありがとうございます。これから竜騎士ゼノス様との婚約者としても、よろしくお願いいたします。」
と言うと、アメリア様は碧色の鱗を触れいうように、首をもたげてきた。私もまた触れる。ツルっとなめらかな触り心地が気持ち良い。
「いいなぁ。」
と隣の竜騎士ゼノスがつぶやく。アメリア様は何か言いたげに尻尾で軽くペシペシとゼノス様の尻を叩いていた。
「やめろって、ほら、入るぞ」
初めて竜騎士の施設へ入った感想、大きい。広い。以上。いや、だって本当に。どこまで歩くのかしら。
すでに放牧していた竜達は宿舎に帰ったらしい。竜姫の建屋はまだ奥にあるらしく、人気のない(竜気のない)道をひたすら歩いた。
足が痛い。さすがに今日はミス続きで疲弊していた。関係各所に謝りにもいった。
「大丈夫?竜に乗るからこのあたりは歩くことないんだ。こんなに遠いとは。あ、アメリア、そんな。嘘だろ、本当に?」
やっぱりアメリア様と会話ができるのね。絆を結んだ騎士は自由に意思疎通ができると聞いたわ。
「アメリアがユーリアさんも後ろに乗せてくれるって。どうかな?」
出てきた提案は少し驚いた。が、正直いつまで続くかわらないこの道より、
「よろしくお願いします」
乗ることを選ぶ。ちょっと怖いけど。
「わかった。じゃ、どうぞ」
アメリア様にヒョイッと乗り、私へ両手を差し出す。待て。これは子供を持ち上げる体勢ではないか?男女の騎乗はお姫様抱っこで乗せてもらうのではないのか?私も夢見る女子だ。ちょっとくらい期待してもいいじゃないか。
不満はあったが両手を出すと、脇下から持ち上げられる。フワッと宙に浮いて、目線が変わる。思ったよりも低い。気になるのは腕が後ろに触れ、横抱きにされたように座ったことだ。
「跨ぐのはスカートだし、ね」
近い。お互いの顔が赤いのか、夕日のせいなのかわからない。
いやいや、これから誘うって。スキンヘッドが眩しい団長様の表情は逆光でわからない。私を見て、竜姫アメリア様を見て、小さくため息が聞こえた。
「・・・後で来い。竜舎からの緊急時以外の飛び出しでの事後報告書を提出しろ。その後罰則を伝える」
「は!」
竜と絆を結んだ竜騎士は一瞬「やっちまった」表情の後、かしこまった返事をした。
おつかれさま。あなたも叱られる日ね。
ズズズッ。ピタ。
宿舎までの道のりを歩く。王妃宮に連絡もしてくれた。今日はこのまま帰宅してもよいと整えてもくれた。仕事はできる。が、それ以外の会話は一切ない。
「・・・。」
いかんせん寡黙すぎる。彼に婚約者がいない理由もわかる気がする。
竜騎士は騎士の中でも別格とされる。竜と絆を結ぶ前に多くの選抜を乗り越え、選ばれたエリートだ。近衛と同じくらい人気がある。
見習い入りで人気が出そうだが、竜騎士の関係場所はすべて見習いは入ることはできない。過去に絆を結んでいない者、竜についての知識がない者が竜を興奮させてしまい、竜は攻撃するつもりがなくても事件、事故になったと聞いているからだ。
だから私達一般人は基本竜宿舎にそもそも入れない。どうやって入るのだろうか。入口まで送り届けたところ、
「あ、あの、こここ婚約者は?」
また噛んだ。よっぽど聞きたいのかな。
「・・・いませんわ」
「良かった。実はここに入るには婚約者か親族でないと難しいので」
これは、なし崩し的に婚約者を得たと判断できる。
「私、今年の成人の儀に出席ですの。」
「知ってる。あと半年、あ、そうなんですね」
今、知ってますと言った。言った!!ちょっと疑いの眼差しでみていると
「アメリアから教えてもらったんだ。」
と言った。アメリアは「心外だ」というように不満げに鼻息をゼノスへ吹きかけた。何か見つめ合い会話をしているようだ。
「私、竜についての知識がないですけれど、大丈夫でしょうか?」
「大丈夫。竜の鱗の中でも色が変わっているところがあっただろう?そこは気を許したものだけが触れるとされるところだ。竜にとっては信頼の証なんだ。団長にも伝えたし、手続きは簡単だ。それに、一連の流れを見てたヤツもいた。」
「どうして私のところに来たのかしら?」
「・・・。そこは、えーっと、アメリアが君を気に入ったからかな?私ももちろん。ほら、私は竜騎士だし。竜に認めてもらえる婚約者のほうがいいだろう?。竜姫アメリアのお気に入り。どうか私とこここ婚約をしてくれないでしょうか?」
また口に出てたのね。だって、私が竜姫のお気に入りなんて。会ったこともないのに。おかしいじゃない。半年なんて、どうして知ってるのかしら?
・・・現実に迫った婚約の状況。成人の儀だけでも、そうよね。まだこの竜騎士の方がどんな人かもわからないけれど、背に腹は代えられない。
「よろしくお願いします。」
こうして私は竜姫アメリア様のお気に入りとなり、竜騎士の婚約者となった。
「アメリア様、私、お会いしたこともなかったはずですが、気に入っていただきましてありがとうございます。これから竜騎士ゼノス様との婚約者としても、よろしくお願いいたします。」
と言うと、アメリア様は碧色の鱗を触れいうように、首をもたげてきた。私もまた触れる。ツルっとなめらかな触り心地が気持ち良い。
「いいなぁ。」
と隣の竜騎士ゼノスがつぶやく。アメリア様は何か言いたげに尻尾で軽くペシペシとゼノス様の尻を叩いていた。
「やめろって、ほら、入るぞ」
初めて竜騎士の施設へ入った感想、大きい。広い。以上。いや、だって本当に。どこまで歩くのかしら。
すでに放牧していた竜達は宿舎に帰ったらしい。竜姫の建屋はまだ奥にあるらしく、人気のない(竜気のない)道をひたすら歩いた。
足が痛い。さすがに今日はミス続きで疲弊していた。関係各所に謝りにもいった。
「大丈夫?竜に乗るからこのあたりは歩くことないんだ。こんなに遠いとは。あ、アメリア、そんな。嘘だろ、本当に?」
やっぱりアメリア様と会話ができるのね。絆を結んだ騎士は自由に意思疎通ができると聞いたわ。
「アメリアがユーリアさんも後ろに乗せてくれるって。どうかな?」
出てきた提案は少し驚いた。が、正直いつまで続くかわらないこの道より、
「よろしくお願いします」
乗ることを選ぶ。ちょっと怖いけど。
「わかった。じゃ、どうぞ」
アメリア様にヒョイッと乗り、私へ両手を差し出す。待て。これは子供を持ち上げる体勢ではないか?男女の騎乗はお姫様抱っこで乗せてもらうのではないのか?私も夢見る女子だ。ちょっとくらい期待してもいいじゃないか。
不満はあったが両手を出すと、脇下から持ち上げられる。フワッと宙に浮いて、目線が変わる。思ったよりも低い。気になるのは腕が後ろに触れ、横抱きにされたように座ったことだ。
「跨ぐのはスカートだし、ね」
近い。お互いの顔が赤いのか、夕日のせいなのかわからない。
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