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竜王の姫

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アメリアと呼ばれた竜は静かにユーリアを見つめる。

次に竜騎士を一瞥し、フンと鼻をならした。


「助けていただきありがとうございました」

「いや、君のせいじゃないよ」

そりゃ、私のせいじゃないでしょう。

もう、紹介してなんて気分にもなれない。今日は本当に散々だわ。

竜騎士がきたのと、これ以上近づかないことがわかったからか、力を入れたら立てそう。

よし、大丈夫。



ズズズズズ。

ん?

何?何の音?

歩き出したら変な音がした。

振り向くと竜がユーリアに付いてきている。ピッタリとよりそうようまるで従者のように。

思わず振り向いた先に竜の藍色の瞳と視線がぶつかった。じっと見つめ合う。


―「かわいい」

さっきまで怖いと思っていたのに、置いていくなと目で語られているようなその姿に思わず呟いていた。触れてほしそうにしてたのかわからないけれど、気づいたら手を伸ばしていた。

深い緑色の光る鱗は、冷たい。つるつるして触りやすい。

手を動かさずにいると頬ずりされた。


「ここ好きなのー!と触って触って」と言っているようで、思わず笑みが溢れる。


一枚だけ色が変わっている鱗が不思議でそこも触れる。

瞳の色に近い碧色。きれいね。

「私、ユーリアというの。あなた様は?先程竜騎士が呼ばれてましたが、アメリア様とお呼びしてよろしいのかしら?」



グルルル

喉をならされた。

YESだろうけど、迫力あるなぁ。

自然と口角が上がる。

ただ、触れたことで、焦っていた気持ちが少しだけすーっと落ち着いたの。

「会えて嬉しかったわ。」

グルルル

手を離しても擦り寄ってくる様子が可愛くて鼻息もなんだかくすぐったくて離れたくないなぁとまた撫でる。

また会えたらいいと願いながらアメリア様から離れたの。そのままあるき出すと



ズズズズズ。

ドシンドシン。

って、またついてくる。

なんで?
このままだと王妃宮までついてしまうわ。

「あのぅ。大変申し訳ないのですが、竜宿舎まで送っていただけませんか?あなたをとても気に入ってしまったようです。王妃宮には連絡いたしますので。」

アメリア様の竜騎士が困った顔でアメリア様を見ながら声をかけてきた。

「ご挨拶遅れました。わたくし、第2部隊、竜姫アメリアの竜騎士、ゼノスと申します。」

ん?いま、竜姫って言ったわよね?竜王の娘?

「はい。竜王の3番目の娘でございます。」

あ、口にでちゃってたみたい。

「ちょっといまこいつ拗ねてます。すみません。」


そう言ったゼノスは黒髪の頭をくしゃっと掻いて

竜姫アメリア様と同じ緑色の瞳で困惑気味に微笑んだ。


その会話が気に入らなかったのか、ゼノスに向かって明らかな不満の鼻息をならす。髪の毛が乱れるほどの強風だ。


「ご挨拶申し遅れました。わたくし、王妃宮侍女見習い、イーリスフォン・トーマス侯爵が娘、ユーリアと申します。」


竜姫アメリアがグルルルと鳴く。ゼノスは


「あ、あ、あの!、ここここコンヤクシャは?」

・・・この人、ズバッと聞いたわね。妙齢の女子に。噛んでるし。

まあ、見習いって言うだけで目的がそれだものね。挨拶がわりに聞くくらいだし。

「…とにかく、竜宿舎はどちらでしょうか?参りましょう。」

さすがに答えるにはギャラリーが多すぎるわ。

竜騎士さんには悪いけど、私にもプライドがあるのよ!

こんなところで、婚約を受けるなんて!!一体何の恥ずかしめなのよ!


「よぉ!ゼノス!となりのべっぴんさんは婚約者かな?やっと捕まえたのかぁ。よかったな!!」

「だっだん団長!」

振り向くと口髭をオシャレに整えたスキンヘッドがキラリとひかる団長がやってきた。

ってことはこの人!

婚約者なし!確定ね。
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