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いたずらしてみる【トナミ】
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「あのさ、」
とりあえず家に雪崩れ込むことには成功したが、この後の作戦は考えていなかった。こんなことならゼンを寝かせたままにしておけば良かったと後悔しても、もう遅い。
「オレもちょっと飲み過ぎちゃって、これから帰るのしんどいんだけど……」
「じゃあ……泊まっていけば? ……」
あっけらかんと即答され、逆にこっちが驚く。正体不明のオレを泊める決断を瞬時に出来るのがすごい。
……多分、ただの考えなしなんだろうけど。
「助かる~ありがとう~」
つい、いつもの癖で猫撫で声を出してしまった。しかしゼンは気にすることなく、うつらうつらと船を漕いでいる。
オレはゼンの態度に安心すると同時に、何故かプライドを傷付けられたような気がした。
今までの宿主は必ず条件にオレの奉仕を求めた。お互い同意の上でそうしているのだから、その行為自体に不満はない。むしろ自分の性欲も満たされてラッキーくらいに思っていた。
オレにとって求められるのは普通のことで、良くも悪くも"それ"でオレは成り立っていた。
なのに。
目の前の男は今にもまた寝ようとしている。このオレを放置して。
好みじゃないやつに対しての奉仕は気乗りしないことも多く、面倒臭く感じることもあったが、無視されたらされたでイラッとする。なんとなく、自分自身を否定されたような気になってきた。
ヤらなくていいなら、それはそれでいいやって思ってたけど。
オレは口の端を吊り上げて、ゼンの方へ這っていった。
睡魔に負けてゼンが抵抗しないのをいいことに、焦らしながらシャツのボタンを外していく。相手がどう感じているかより、焦らしながら動いている自分の姿に興奮するため、いつも服を脱がせる時は時間をかける。はだけた部分に冷たくなった自身の唇をそっと這わせる。
オレは小さく口を開けて、ゼンの胸の突起に軽く歯を当てた。それからいつものように舌先で転がすように舐める。
「……なにしてんの?……」
ゼンが僅かに動いた。
すぐに拒否されるかと思ったが、意外なほどゼンは普通の顔をしている。
「んー? 気持ちいいこと?」
「……そっか…………」
相当眠いのか、完全に寝ぼけ始めている。
思っていたリアクションと違ったオレは肩透かしをくらい一瞬迷う。しかしここで引き下がるのも悔しい。
オレは自分が着ていたゼンのだぼだぼのTシャツを思い切りよく脱ぎ捨てると、相手を押し倒し、馬乗りになった。
オレよりも体格がいい男を見下ろす快感に酔いそうになる。
「……ぃたっ…………」
とても痛そうには思えない反応でゼンが呟く。しかし呟くだけで起きあがろうとはしない。
少しいたずらするだけのつもりだったが、ゼンの反応が無さ過ぎてやめどころを見失う。
冷たい空気に鳥肌が立ってきたが、ゼンの素肌に手を当てて温もりを分けてもらった。ゼンの身体は温かく、安心する温度だった。
乱れた髪を払うように首を傾けると、オレの自慢のプラチナブロンドの髪が僅かな照明に照らされて細く光った。この髪のお陰でオレは暗闇の中でも自分を見失わないですむ。
ちゅっ、ちゅっ、とわざとらしい音を立てる。後が面倒だから痕は残さない。あくまで音だけなめまかしく。
唇を身体に這わせ、徐々に下半身へと移動していく。徐々にゼンの身体を征服していっているような高揚感を覚える。
自分の下半身を相手の脚に擦りつけ、これでもかというほどに密着する。肌と肌が擦れる度、相手の高揚感は増す。
「ン、ァ、」
別に感じてもいないのに、雰囲気を作るために声を出す。
オレの声は下半身に、クるってよく褒められた。男にしては高めの声がコンプレックスだったが、こういう使い方が出来るなら良いかなとも思う。だから今日も少し大袈裟に演技をする。
オレが声を出すと大概の男は喜んだ。自分が上手いと錯覚できるからだ。
そう思いたいなら思わせておけばいい。おれにとってはどうでもいいことだ。
オレは鼠蹊部のラインを舌でなぞるように舐めながら、グレーのボクサーパンツのゴムの部分を口に含んだ。普通に手で脱がされるより、口で脱がされた方が興奮する変態は案外多い。
オレの唾液でパンツの色が濃く変わる。
思ったよりもゼンの反応は悪かったが、経験上、ここまですれば、もう大丈夫なはずだと思った。
これだけされてもゼンは夢と現実の狭間を行ったり来たりしている。鈍感なのも大概にしろよ、と呆れながらも、そんな状態も長くは持たないからな、と内心笑う。
「オレがED、治してあげよっか?」
聞こえているのかいないのか、オレが喋りかけるとゼンは、んー、と否定とも肯定ともとれない声を出した。
正解はただ単に状況を理解してないだけの相槌。それでもオレは肯定の言葉だと都合よく受け取った。
オレはニヤッと笑うと、相手の熱を露わにしようと、口を使ってパンツをずらし始めた。
「………………え?」
全く反応を示していないそれを目の前に声が出なくなる。瞬間、オレのプライドが脆く崩れ落ち始める。
想像以上の強敵だ、とゼンの顔を見ると、既に気持ち良さそうに寝息を立てていた。途端に自分のしようとしていた行為が馬鹿らしくなり、やる気もなくなった。あれほど興奮していた熱もどこかへ消え去ってしまった。
無理矢理ゼンのパンツを戻し、シャツのボタンは戻すのが面倒臭くなり、部屋の隅に畳んで置いてあった毛布を雑にかけた。
「…………オレももう寝るか」
ゼンと隣り合って横になると、ゼンの上にかけた毛布に潜ろうと腕を伸ばす。が、自分の方に引いてしまうと、ゼンが丸裸になってしまうことに気がついた。
まぁ、しょうがないか。
オレはゼンにピッタリと寄り添うように寝直すと、どちらにもしっかりかかるように毛布を動かした。
ゼンの身体は相変わらず温かい。
無意識に身体を寄せていたことに気付いたオレは、一瞬迷ったがゼンの隣から動かず、久しぶりの伸び伸びとした睡眠を堪能するために目を閉じた。
とりあえず家に雪崩れ込むことには成功したが、この後の作戦は考えていなかった。こんなことならゼンを寝かせたままにしておけば良かったと後悔しても、もう遅い。
「オレもちょっと飲み過ぎちゃって、これから帰るのしんどいんだけど……」
「じゃあ……泊まっていけば? ……」
あっけらかんと即答され、逆にこっちが驚く。正体不明のオレを泊める決断を瞬時に出来るのがすごい。
……多分、ただの考えなしなんだろうけど。
「助かる~ありがとう~」
つい、いつもの癖で猫撫で声を出してしまった。しかしゼンは気にすることなく、うつらうつらと船を漕いでいる。
オレはゼンの態度に安心すると同時に、何故かプライドを傷付けられたような気がした。
今までの宿主は必ず条件にオレの奉仕を求めた。お互い同意の上でそうしているのだから、その行為自体に不満はない。むしろ自分の性欲も満たされてラッキーくらいに思っていた。
オレにとって求められるのは普通のことで、良くも悪くも"それ"でオレは成り立っていた。
なのに。
目の前の男は今にもまた寝ようとしている。このオレを放置して。
好みじゃないやつに対しての奉仕は気乗りしないことも多く、面倒臭く感じることもあったが、無視されたらされたでイラッとする。なんとなく、自分自身を否定されたような気になってきた。
ヤらなくていいなら、それはそれでいいやって思ってたけど。
オレは口の端を吊り上げて、ゼンの方へ這っていった。
睡魔に負けてゼンが抵抗しないのをいいことに、焦らしながらシャツのボタンを外していく。相手がどう感じているかより、焦らしながら動いている自分の姿に興奮するため、いつも服を脱がせる時は時間をかける。はだけた部分に冷たくなった自身の唇をそっと這わせる。
オレは小さく口を開けて、ゼンの胸の突起に軽く歯を当てた。それからいつものように舌先で転がすように舐める。
「……なにしてんの?……」
ゼンが僅かに動いた。
すぐに拒否されるかと思ったが、意外なほどゼンは普通の顔をしている。
「んー? 気持ちいいこと?」
「……そっか…………」
相当眠いのか、完全に寝ぼけ始めている。
思っていたリアクションと違ったオレは肩透かしをくらい一瞬迷う。しかしここで引き下がるのも悔しい。
オレは自分が着ていたゼンのだぼだぼのTシャツを思い切りよく脱ぎ捨てると、相手を押し倒し、馬乗りになった。
オレよりも体格がいい男を見下ろす快感に酔いそうになる。
「……ぃたっ…………」
とても痛そうには思えない反応でゼンが呟く。しかし呟くだけで起きあがろうとはしない。
少しいたずらするだけのつもりだったが、ゼンの反応が無さ過ぎてやめどころを見失う。
冷たい空気に鳥肌が立ってきたが、ゼンの素肌に手を当てて温もりを分けてもらった。ゼンの身体は温かく、安心する温度だった。
乱れた髪を払うように首を傾けると、オレの自慢のプラチナブロンドの髪が僅かな照明に照らされて細く光った。この髪のお陰でオレは暗闇の中でも自分を見失わないですむ。
ちゅっ、ちゅっ、とわざとらしい音を立てる。後が面倒だから痕は残さない。あくまで音だけなめまかしく。
唇を身体に這わせ、徐々に下半身へと移動していく。徐々にゼンの身体を征服していっているような高揚感を覚える。
自分の下半身を相手の脚に擦りつけ、これでもかというほどに密着する。肌と肌が擦れる度、相手の高揚感は増す。
「ン、ァ、」
別に感じてもいないのに、雰囲気を作るために声を出す。
オレの声は下半身に、クるってよく褒められた。男にしては高めの声がコンプレックスだったが、こういう使い方が出来るなら良いかなとも思う。だから今日も少し大袈裟に演技をする。
オレが声を出すと大概の男は喜んだ。自分が上手いと錯覚できるからだ。
そう思いたいなら思わせておけばいい。おれにとってはどうでもいいことだ。
オレは鼠蹊部のラインを舌でなぞるように舐めながら、グレーのボクサーパンツのゴムの部分を口に含んだ。普通に手で脱がされるより、口で脱がされた方が興奮する変態は案外多い。
オレの唾液でパンツの色が濃く変わる。
思ったよりもゼンの反応は悪かったが、経験上、ここまですれば、もう大丈夫なはずだと思った。
これだけされてもゼンは夢と現実の狭間を行ったり来たりしている。鈍感なのも大概にしろよ、と呆れながらも、そんな状態も長くは持たないからな、と内心笑う。
「オレがED、治してあげよっか?」
聞こえているのかいないのか、オレが喋りかけるとゼンは、んー、と否定とも肯定ともとれない声を出した。
正解はただ単に状況を理解してないだけの相槌。それでもオレは肯定の言葉だと都合よく受け取った。
オレはニヤッと笑うと、相手の熱を露わにしようと、口を使ってパンツをずらし始めた。
「………………え?」
全く反応を示していないそれを目の前に声が出なくなる。瞬間、オレのプライドが脆く崩れ落ち始める。
想像以上の強敵だ、とゼンの顔を見ると、既に気持ち良さそうに寝息を立てていた。途端に自分のしようとしていた行為が馬鹿らしくなり、やる気もなくなった。あれほど興奮していた熱もどこかへ消え去ってしまった。
無理矢理ゼンのパンツを戻し、シャツのボタンは戻すのが面倒臭くなり、部屋の隅に畳んで置いてあった毛布を雑にかけた。
「…………オレももう寝るか」
ゼンと隣り合って横になると、ゼンの上にかけた毛布に潜ろうと腕を伸ばす。が、自分の方に引いてしまうと、ゼンが丸裸になってしまうことに気がついた。
まぁ、しょうがないか。
オレはゼンにピッタリと寄り添うように寝直すと、どちらにもしっかりかかるように毛布を動かした。
ゼンの身体は相変わらず温かい。
無意識に身体を寄せていたことに気付いたオレは、一瞬迷ったがゼンの隣から動かず、久しぶりの伸び伸びとした睡眠を堪能するために目を閉じた。
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