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パーティーのお誘い【sideテオ】
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「姉をご存知のようでしたが、親しい間柄なのでしょうか?」
テオは何気ない話題のつもりで話しかけた。が、カルヴィンは雪のように白かった肌を見る見る内に朱に染め始めた。それはもう見ているこっちが恥ずかしくなるくらいに。
その表情に、直感的に面倒くさい話題を振ってしまったな、とテオは後悔した。
「親しい……とは、言い難いんだが……なんというか、親しくなりたいと言うべきだろうか…………」
カルヴィンは言葉尻がどんどん小さくなり、最後は蚊の鳴くような声で呟いた。
気になる相手の弟に面と向かって何を言っているんだ、と思わなくもないが、そんなことよりあのフィリーネがこんな田舎でまさか端くれとは言え王族を捕まえていることに驚いた。両親の前であれだけ否定していた理由はこれだったのかと合点がいった。あの天然で心優しい姉はちゃんと自分の道を歩んでいっているようだ。少しの安堵感と共に、不意にカルヴィンに向ける目線が品定めの色を含んで目を細めてしまい、あわてて顔を取り繕う。
カルヴィンに少し興味が出てきて詳しく話を聞こうとする。
「と言うと?」
「ま、まだ、クリスマスパーティーに誘っただけで返事は貰えてないんだ……」
テオは心の中で絶句した。たかだかパーティーの誘いを入れただけでこの照れよう。
これは時間がかかりそうだと思った。下手をしたらフィリーネが嫁に行く前にリエナが嫁いでくることになるかもしれないなぁとぼんやりと考える。それは順番的にアリなんだろうか。まぁ文句は言わせないけど。
「まぁ! まぁまぁそうだったの! ついに渡したのね!」
黙って二人の会話を聞いていたエヴァンナは堪え切れないと言うように声を上げた。まるで少女時代に戻ったかのように瞳を輝かせ、頬に両手を当てうっとりとしている。
「はい、エヴァンナ先生が応援してくださったお陰です」
聞けば、カルヴィンはよくエヴァンナに恋の悩みを相談していたらしい。こんな想いは初めてで、どうしたらいいか分からなかったカルヴィンは目上の女性の意見を聞こうとエヴァンナに声を掛けた。同級生に声を掛けない辺り、カルヴィンの世間知らず感が浮き彫りになる。友達はいないんだろうか。
そんなこんなで二人はよくお茶を交えながら相談を続けていたらしい。
「テオ様も応援してあげてくださいね」
「え」
エヴァンナは悪気なくテオの手を取り笑いかける。隣でカルヴィンは顔を真っ赤にして俯いていた。
そんなカルヴィンをジッと見つめる。パッと出の男に大切な姉を取られるのは正直釈然としない。色々難癖を付けて試してやりたいところだが生憎テオにも時間がなかった。フィリーネとリエナが卒業する後一年間の間でリエナを落とし、結婚まで持っていこうと思っているからだ。この学校に通っている間が最後のチャンスなのだ。都会に戻ったら最後、名も知れないような貴族の令嬢が列を成して自分との結婚のチャンスを順番待ちしてくる。それはまだいい。家族になんと言われようと断固として拒否し続ければいいだけの話だからだ。
しかしリエナの方はどうだ。リエナがどこの馬の骨とも分からないような男と結婚してしまう可能性も出てくるのだ。そんなことは耐えられない。
テオは天使のようだと形容された笑顔で頷いた。
「はい、僕で良ければ」
フィリーネには悪いがリエナを取らせてもらう。王族に恩を売れる機会なんてこの先中々無いだろう。未来のために、使えるカードは多いに越したことはない。
「ありがとう」
カルヴィンは心の底からの笑みをテオに向け、まだ熱の収まらない顔を恥ずかしそうに仰いだ。一方テオは入学早々の思わぬ収穫に心を躍らせていた。リエナとの未来がまた一歩確実なものになったと心の中で笑い、この先どう攻めていこうかと目を細く歪ませた。
テオは何気ない話題のつもりで話しかけた。が、カルヴィンは雪のように白かった肌を見る見る内に朱に染め始めた。それはもう見ているこっちが恥ずかしくなるくらいに。
その表情に、直感的に面倒くさい話題を振ってしまったな、とテオは後悔した。
「親しい……とは、言い難いんだが……なんというか、親しくなりたいと言うべきだろうか…………」
カルヴィンは言葉尻がどんどん小さくなり、最後は蚊の鳴くような声で呟いた。
気になる相手の弟に面と向かって何を言っているんだ、と思わなくもないが、そんなことよりあのフィリーネがこんな田舎でまさか端くれとは言え王族を捕まえていることに驚いた。両親の前であれだけ否定していた理由はこれだったのかと合点がいった。あの天然で心優しい姉はちゃんと自分の道を歩んでいっているようだ。少しの安堵感と共に、不意にカルヴィンに向ける目線が品定めの色を含んで目を細めてしまい、あわてて顔を取り繕う。
カルヴィンに少し興味が出てきて詳しく話を聞こうとする。
「と言うと?」
「ま、まだ、クリスマスパーティーに誘っただけで返事は貰えてないんだ……」
テオは心の中で絶句した。たかだかパーティーの誘いを入れただけでこの照れよう。
これは時間がかかりそうだと思った。下手をしたらフィリーネが嫁に行く前にリエナが嫁いでくることになるかもしれないなぁとぼんやりと考える。それは順番的にアリなんだろうか。まぁ文句は言わせないけど。
「まぁ! まぁまぁそうだったの! ついに渡したのね!」
黙って二人の会話を聞いていたエヴァンナは堪え切れないと言うように声を上げた。まるで少女時代に戻ったかのように瞳を輝かせ、頬に両手を当てうっとりとしている。
「はい、エヴァンナ先生が応援してくださったお陰です」
聞けば、カルヴィンはよくエヴァンナに恋の悩みを相談していたらしい。こんな想いは初めてで、どうしたらいいか分からなかったカルヴィンは目上の女性の意見を聞こうとエヴァンナに声を掛けた。同級生に声を掛けない辺り、カルヴィンの世間知らず感が浮き彫りになる。友達はいないんだろうか。
そんなこんなで二人はよくお茶を交えながら相談を続けていたらしい。
「テオ様も応援してあげてくださいね」
「え」
エヴァンナは悪気なくテオの手を取り笑いかける。隣でカルヴィンは顔を真っ赤にして俯いていた。
そんなカルヴィンをジッと見つめる。パッと出の男に大切な姉を取られるのは正直釈然としない。色々難癖を付けて試してやりたいところだが生憎テオにも時間がなかった。フィリーネとリエナが卒業する後一年間の間でリエナを落とし、結婚まで持っていこうと思っているからだ。この学校に通っている間が最後のチャンスなのだ。都会に戻ったら最後、名も知れないような貴族の令嬢が列を成して自分との結婚のチャンスを順番待ちしてくる。それはまだいい。家族になんと言われようと断固として拒否し続ければいいだけの話だからだ。
しかしリエナの方はどうだ。リエナがどこの馬の骨とも分からないような男と結婚してしまう可能性も出てくるのだ。そんなことは耐えられない。
テオは天使のようだと形容された笑顔で頷いた。
「はい、僕で良ければ」
フィリーネには悪いがリエナを取らせてもらう。王族に恩を売れる機会なんてこの先中々無いだろう。未来のために、使えるカードは多いに越したことはない。
「ありがとう」
カルヴィンは心の底からの笑みをテオに向け、まだ熱の収まらない顔を恥ずかしそうに仰いだ。一方テオは入学早々の思わぬ収穫に心を躍らせていた。リエナとの未来がまた一歩確実なものになったと心の中で笑い、この先どう攻めていこうかと目を細く歪ませた。
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