家路

寿太郎

文字の大きさ
上 下
3 / 6
第3章

演劇部復活

しおりを挟む
1週間が経った。今日は演劇部を復活させるための大事な日となった。周りにはたくさんの夫妻や同級生、下級生がいる。3年生は受験が近づいているということもあり出し物をする人は少なかった。
出し物が始まった。演劇部の出番は最後である。1グループ、2グループ、3グループ…どんどん進んで行く。
出番が来た。3人が壇上に上がる。3人とも緊張した顔つきであった。琴音が気づいた。1番目の前に琴音の両親の姿を見つけた。次に翔太も見つけた。明夫も広菜も笑顔でこっちを見ている。翔太が横を向くと秀は顔を真っ青にしてカチカチであった。時間は止まらない。演劇の時間が始まった。

結果は。
一通り流すことは出来た。しかし、秀はあの後もカチカチで一言も台詞が出てこなかった。ほぼ琴音と翔太が話を進めた。琴音は上出来であったが翔太も最後の1番大切な台詞で噛んでしまった。翔太は演劇をしている小学生の頃から今までずっと長かろうと短かろうと噛む癖がある。1番残念なタイプだ。父親にも何度も注意された。同じことを繰り返すやつはバカだと。それを思い出した日となった。琴音は部長としてこのメンバーで成功させることが出来なかったことに対し悔しさが残った。

1ヶ月後。あの発表の日から毎日、3人は演劇の練習をしていた。悔しさをどこにもぶつけることは出来なかったが復活は諦めなかった。3回、ドアからノックされた音が聞こえた。入って来たのは生徒会長の宇宙だった。
「練習中ごめんね。この前の発表会お疲れ様。と言っても1ヶ月前の話だけどね。審議の結果が出たから言いに来たわよ。」
「どうせ不合格だろ。」
下を向きながら翔太は答えた。
「単刀直入に言うわ。結果は部活復活だよ」
3人は固まった。それを見た宇宙は
「発表自体はそんなに良いものとは言えなかった。でもね、しっかりと練習した形跡は見えたの。秀が何も言えなかったけどそこで2人でカバーできた。演劇って1人でやるものじゃないの。人間にはミスも失敗もある。それを周りがカバーしてあげることが大切なの。それをしっかり見せてもらった。それに失敗した秀はそれを反省してしっかり今も練習やっている。この人たちをなぜやめさせる必要があるの?全員一致だったわよ。復活賛成」
琴音は涙が止まらなかった。秀も「ありがとう」と呟いた。そこへ4人の女の子がやってきた。同じクラスメイトで翔太とよく話す愛、翼、しずえ、加奈だった。宇宙が紹介する。
「新入部員よ。あなた達の演劇を見て協力したいと言ってきた人たち。仲良くしなよ。」
翔太が「次の発表する機会はいつだ?」宇宙聞いた。宇宙は少し答えをためらいながら答える。
「卒業式の前日のお別れ会よ。」
翔太は意味をすぐに理解した。もう夏。皆んなはこれから受験に入る。行事も何もない。残すは卒業式。みんなも卒業する。次がラストチャンスと言うことだ。部長の琴音が声を貼りながら
「部員もみんな揃ったよ!今からしっかりみんなで練習しよ!後悔しないようにそして卒業する時にみんなで笑って泣いて想い出を作って終わろう!ファイトー!」
部員7名と生徒会長の宇宙を含めた8人で円陣を組んだ。部長の琴音が指揮を執る。
「ラスト半年!みんなで最高の想い出を!ファイト!おー!」
残り少ないが演劇部が復活した。

今日は皆解散した中で翔太と琴音は教室に残っていた。このシーンとした空気の中翔太が
「なぁ、琴音」
「はい!なんでしょう?」
「この演劇部復活になったタイミングでなんだけどさ…あの…」
緊張した空気が漂う。琴音は息をゴクンと飲み込んだ。翔太は決意を固めて殻を破った。
「これから先の人生、俺と一緒にバイクみたいに風を切っていかないか?」
それまでの緊張した空気が吹き飛んだ。琴音は失笑し外で盗聴していた部員達も全員ズッ転けた。翔太は顔真っ赤である。そして照れた表情をした琴音が満面の笑みで
「はい!よろしくお願いします!」

2人の二人三脚の人生が始まった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

初めてなら、本気で喘がせてあげる

ヘロディア
恋愛
美しい彼女の初めてを奪うことになった主人公。 初めての体験に喘いでいく彼女をみて興奮が抑えられず…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

処理中です...