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番外編 アーネストのその後
HAPPY END編⑤
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15歳になったニーナが、ある日俺にこう言った。
「私ね、マーサさんの食堂で働こうと思うんだ。」
なんだと?
あそこは確か、酒も出していたはずだ。
酔っ払いがいるかもしれない所で働かせる訳にはいかない。
「だめだ。」
「なんで!?」
「あそこは酒を出すだろう。そんな所で働かせる訳にはいかない。」
「酒って!酒場じゃなくて食堂よ!?」
「だめなものは、だめだ。今のままリリーさんの所で手伝いをすればいいじゃないか。」
「手伝いじゃなくて、仕事をしたいの!私、もう15歳よ!?」
時が経つのは早いものだ。
あんなに小さかったニーナが15歳になって、仕事をしたいと言い始めるなんて。
「・・・じゃあ、役所で働けるように父さんが頼んできてやるから。」
役所なら、みんな真面目な人達だし、俺の目も届くから安心だ。
「嫌よ!!あんな、真面目だけが取り柄の面白みの無いような人達ばっかりいるような所!!あんな所で働けるのなんて、父さんくらいよ!!」
「なんだと!!」
いつからこんなに反抗的になってしまったんだ!
いつも、父さん父さんと言って甘えてきていたのに!
「この分からず屋!!」
そう言い残して、ニーナが家を飛び出していった。
はぁ。こういうときにニーナが逃げ込むのは、昔から手伝いとして預かってもらっているパン屋のリリーさんの所だろう。
そう思って俺はリリーさんの所へ向かう。
「夜分にすみません。うちのニーナがお邪魔してませんか?」
パン屋でそう声をかける。
「あら、アレクさん。ニーナなら奥にいるわ。喧嘩したみたいね?」
「お恥ずかしいかぎりです。」
リリーさんはニコニコと笑っている。
「マーサさんの食堂で働くのに反対なんですって?」
「・・・はい。あそこは酒を出すから、心配で。」
「ふふふ、アレクさん、ニーナの事が可愛くてしかたないのね。それなら、サラがやってる喫茶店ならいいかしら?」
「喫茶店・・・確かにそこなら酒は出さないだろうけど・・・」
渋い顔をする俺をみて、リリーさんは少し呆れたような顔になる。
「アレクさん、ニーナが食堂で働こうとしたのはね、料理を上手になってあなたに食べてもらうためなのよ?」
え?
思ってもみない言葉に驚いていると、そんな俺を微笑ましそうに見ながらリリーさんが話す。
「アレクさん、料理苦手でしょ?ニーナはうちで食事するたびに、『父さんにも、できたての美味しいご飯を食べさせてあげたい』って言ってたわ。」
確かに俺は料理がどうにも苦手で、調理せずに食べられるような物ばかり食べている。
ニーナは、昼間にリリーさんの所でちゃんとしたものを食べているから、それで十分だと思っていた。
まさか、ニーナがそんな風に思っていたとは。
「ニーナはね、『いくら言っても誰かと結婚する気配もないし、私が覚えるしかない!』って言ってたのよ。アレクさんがニーナを大切に思っているように、ニーナもアレクさんの事を大切に思っているのよ。その気持ちを受け取ってあげてくれないかしら。」
そこまで教えてもらって、俺はもう胸がいっぱいで。
ニーナの俺の事を想う気持ちを知って、喫茶店で働くことを認めることにした。
その翌日にはニーナは喫茶店で働き始めた。
絶対に帰りは遅くならないと約束をして。
働き始めてしばらくすると、ニーナは俺に食事を作ってくれるようになった。
どれもすごく美味しくて、俺は本当に幸せ者だ。
いつまでも、このまま幸せな時間が続けばいいと、心から祈っていた。
「私ね、マーサさんの食堂で働こうと思うんだ。」
なんだと?
あそこは確か、酒も出していたはずだ。
酔っ払いがいるかもしれない所で働かせる訳にはいかない。
「だめだ。」
「なんで!?」
「あそこは酒を出すだろう。そんな所で働かせる訳にはいかない。」
「酒って!酒場じゃなくて食堂よ!?」
「だめなものは、だめだ。今のままリリーさんの所で手伝いをすればいいじゃないか。」
「手伝いじゃなくて、仕事をしたいの!私、もう15歳よ!?」
時が経つのは早いものだ。
あんなに小さかったニーナが15歳になって、仕事をしたいと言い始めるなんて。
「・・・じゃあ、役所で働けるように父さんが頼んできてやるから。」
役所なら、みんな真面目な人達だし、俺の目も届くから安心だ。
「嫌よ!!あんな、真面目だけが取り柄の面白みの無いような人達ばっかりいるような所!!あんな所で働けるのなんて、父さんくらいよ!!」
「なんだと!!」
いつからこんなに反抗的になってしまったんだ!
いつも、父さん父さんと言って甘えてきていたのに!
「この分からず屋!!」
そう言い残して、ニーナが家を飛び出していった。
はぁ。こういうときにニーナが逃げ込むのは、昔から手伝いとして預かってもらっているパン屋のリリーさんの所だろう。
そう思って俺はリリーさんの所へ向かう。
「夜分にすみません。うちのニーナがお邪魔してませんか?」
パン屋でそう声をかける。
「あら、アレクさん。ニーナなら奥にいるわ。喧嘩したみたいね?」
「お恥ずかしいかぎりです。」
リリーさんはニコニコと笑っている。
「マーサさんの食堂で働くのに反対なんですって?」
「・・・はい。あそこは酒を出すから、心配で。」
「ふふふ、アレクさん、ニーナの事が可愛くてしかたないのね。それなら、サラがやってる喫茶店ならいいかしら?」
「喫茶店・・・確かにそこなら酒は出さないだろうけど・・・」
渋い顔をする俺をみて、リリーさんは少し呆れたような顔になる。
「アレクさん、ニーナが食堂で働こうとしたのはね、料理を上手になってあなたに食べてもらうためなのよ?」
え?
思ってもみない言葉に驚いていると、そんな俺を微笑ましそうに見ながらリリーさんが話す。
「アレクさん、料理苦手でしょ?ニーナはうちで食事するたびに、『父さんにも、できたての美味しいご飯を食べさせてあげたい』って言ってたわ。」
確かに俺は料理がどうにも苦手で、調理せずに食べられるような物ばかり食べている。
ニーナは、昼間にリリーさんの所でちゃんとしたものを食べているから、それで十分だと思っていた。
まさか、ニーナがそんな風に思っていたとは。
「ニーナはね、『いくら言っても誰かと結婚する気配もないし、私が覚えるしかない!』って言ってたのよ。アレクさんがニーナを大切に思っているように、ニーナもアレクさんの事を大切に思っているのよ。その気持ちを受け取ってあげてくれないかしら。」
そこまで教えてもらって、俺はもう胸がいっぱいで。
ニーナの俺の事を想う気持ちを知って、喫茶店で働くことを認めることにした。
その翌日にはニーナは喫茶店で働き始めた。
絶対に帰りは遅くならないと約束をして。
働き始めてしばらくすると、ニーナは俺に食事を作ってくれるようになった。
どれもすごく美味しくて、俺は本当に幸せ者だ。
いつまでも、このまま幸せな時間が続けばいいと、心から祈っていた。
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