契約結婚~彼には愛する人がいる~

よしたけ たけこ

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エピローグ side ネイサン

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ある日突然、アリス様が目覚めてしまった。
あの男、義父のアーネストが契約結婚をしてまで想い続けた女。

そして、それを知った日。
エレン様は部屋に籠もってしまって、俺は何も声をかけられなかった。
翌日に会いにいくつもりだったのに、既に彼女は出て行ってしまっていた。

ショックで立ち尽くす俺に、執事のリチャードから手紙と匂い袋を渡された。
それはエレン様からだった。

手紙を読んで泣いた。
本当は俺も一緒に連れて行って欲しかった。
本当は俺が、エレン様をあいつから救いだして、幸せにしたかった。

エレン様は、俺の初恋だった。

あの時の俺は、まだ子どもで何も出来なかった。
それが悔しかった。

そしてあいつに腹が立った。
エレン様が出て行って落ち込むなんて、行方を捜すなんて、あいつにそんな資格はない。

結局あの女と結婚したが、あの女も気にくわなかった。
もう、あの頃は何もかもに腹が立っていて、世界の全てが気にいらなかった。

そんな苛立ちを抱えながら学園に入学して、しばらく経った頃。
ある日、寮の部屋の机の上に一通の手紙があった。

それはなんと、エレン様からの手紙だった。

『何も言わずに出ていってごめんなさい。居場所は明かせないけれど、私は元気に幸せに暮らしているから心配しないで。』

と書かれていた。そして俺の事を心配する内容も。

エレン様が居なくなったあと、何通か出せない手紙を書いていた。
引き出しにしまっていた、それが無くなっていたため、手紙を盗んだ輩の悪戯かと最初は疑った。
だけど、手紙に添えられた匂い袋は、エレン様が作ったものだ。間違いない。俺が間違える訳が無い。

宛先が分からないけれど、とりあえず俺は返事を書いた。
送ることができずそのまま机に置いて、目を離したすきに消えていた。
慌てて探したけれど見つからなかった。

しばらくしたら、また手紙が届いた。
この不思議な手紙のやりとりのおかげで、俺は色々と踏ん切りがついて前を向いて生きてこられたと思う。

その後エレン様は、どこか遠く、誰も見つけられない場所で結婚されたそうだ。
今度は愛し合っての結婚だから、手紙でたくさん惚気けていた。
本当に幸せそうで嬉しかった。

義父は2回目の離婚をしたあとから、再びエレン様を探し始めた。
俺は呆れていたし、勝手にすればいいと思っていた。
だけど、何年も忙しい仕事の合間に捜索をして、俺が帰省するたびにひどくなる疲弊した姿を見かねて、エレン様が結婚して幸せになった事を伝えた。

「そうか。」の一言を残して部屋を出ていく後ろ姿は、いつもよりも小さく見えた。

その後、学園を卒業すると義父の要望で、俺はすぐに婚約者と結婚して爵位を継承した。
そして義父は邸を出ていった。

義父の行方は今も分からない。

いろいろあったけれど、義父も自分の幸せを見つけられていればいいなと、今はそう願っている。




      fin
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