契約結婚~彼には愛する人がいる~

よしたけ たけこ

文字の大きさ
上 下
29 / 44

第27話 side アリス

しおりを挟む
「アリス、今日も変わりはなかったかい?」

・・・ん?なんだか聞き覚えのある声で呼ばれたような。

そっと目を開ける。

誰かが私の手を握っている。・・・誰?

えっと・・・もしかして・・・

「・・・・・・アーネスト?」

なんだか声が上手く出せなかったけど、なんとか声が出せた。

と、思ったら手を握っている人が勢いよくこちらを見る。

やっぱりアーネストね。もの凄く驚いた顔をしてる。

ちょっと面白い。だけど・・・

「私、どうしてベッドにいるの・・・?たしか・・・学園で・・・」

そう言いかけたところで、突然アーネストに抱きしめられる。

「アリス・・・アリス・・・夢ならどうか覚めないでくれ・・・」

え?なに?この反応?しかも泣いてる?

「ちょ、ちょっと、アーネスト?どうしたの?どうして泣いてるの?」

アーネストにきつく抱きしめられながら、訳が分からず混乱していると。
お父様やお母様、使用人達も部屋に慌てた様子で入ってきた。

ようやくアーネストに解放されたのだけど・・・

え?なに?
どうして皆、そんなに泣いているの?余計に訳が分からない。

それにしても・・・

「なんか、アーネスト老けた?お父様もお母様も・・・皆して急に老けた・・・?」

○○○

あの後、お医者さんの診察を受けた。
いろいろ質問されたり、体のあちこちを魔法で調べたりしてたみたい。

診察が終わった後にアーネストと両親と4人で話したのだけど。
私、18年も眠ってたんだって!
そりゃ皆して老けてるはずよね。

私の記憶では、学園に魔物が現れて大変だーってなった辺りで途切れてる。
アーネストの話では、そのあと魔物と戦ってる時にアーネストを庇って魔物の攻撃を受けたらしい。
覚えていないけど、その方が良かったかもしれない。
だって恐ろしいもの。

その後はずっと眠ったままだったそうだ。
どうして急に目が覚めたのかは、誰にも分からないみたい。
私にも聞かれたけれど、何も覚えてない。
突然、アーネストの声が聞こえたとしか言い様がない。

しばらく話して、翌日にも少し話しをしてから、アーネストは侯爵家へ帰っていった。

しかし、18年て。アーネストは36歳だなんて、ビックリ。
・・・奥さんとか、子どもとか・・・いるのかな?
何だか怖くて聞けなかった。

それからしばらくの間、アーネストは姿を見せなかった。

「お母様、あのね、アーネストって・・・」

誰かと結婚しているの?
そう聞きたいのに、怖くて聞けない。

「アーネストがどうしたの?」

「・・・あれっきり来ないから、どうしてるのかなって。」

結局、質問を変えた。でも、お母様の顔が一瞬曇ったような気がする。

「仕事が忙しいのよ、きっと。いつも、あなたに会いに来るために仕事を調整していたみたいだから。」

「そうなの・・・。仕事かぁ。私、これからどうしたらいいのかなぁ。」

働いたこともなく18年も眠っていた私。
かつての同級生も友達も、皆すっかり大人になっているわ。
それこそ、家庭をもったり。

「貴方の好きなようにしていいのよ。ずっとこの家に居てもいいし。・・・結婚してもいいのよ。」

私の好きなように・・・。
本当なら、もうすぐアーネストと結婚するはずだった。
そしてアーネストとの子どもを産んで。

そう、子どもを二人は産んで、一人は公爵家を継がせる。
そのはずだった。
・・・それしか考えていなかった。

アーネストと結婚する以外の未来なんて、考えたこともない。
だけど、もう無理なのかな・・・。

考え込んでいたら、アーネストが来たみたい。

「公爵夫人、アリスに話があるので、外して頂けますか?」

お母様が私の手を一度そっと握ってから、部屋を出て行った。
そして、アーネストが私の前に片膝をついた。

「え?」

そっと私の手をとって

「アリス、ずっと君が目覚めるのを待っていた。私と結婚してくれますか?」

思わず涙が溢れる。

「はい。」

アーネストに抱きしめられる。

良かった。アーネストは18年経っても変わってなかったのね。
しおりを挟む
感想 331

あなたにおすすめの小説

いつか彼女を手に入れる日まで

月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?

お飾り王妃の愛と献身

石河 翠
恋愛
エスターは、お飾りの王妃だ。初夜どころか結婚式もない、王国存続の生贄のような結婚は、父親である宰相によって調えられた。国王は身分の低い平民に溺れ、公務を放棄している。 けれどエスターは白い結婚を隠しもせずに、王の代わりに執務を続けている。彼女にとって大切なものは国であり、夫の愛情など必要としていなかったのだ。 ところがある日、暗愚だが無害だった国王の独断により、隣国への侵攻が始まる。それをきっかけに国内では革命が起き……。 国のために恋を捨て、人生を捧げてきたヒロインと、王妃を密かに愛し、彼女を手に入れるために国を変えることを決意した一途なヒーローの恋物語。 ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:24963620)をお借りしております。

愛されていたのだと知りました。それは、あなたの愛をなくした時の事でした。

桗梛葉 (たなは)
恋愛
リリナシスと王太子ヴィルトスが婚約をしたのは、2人がまだ幼い頃だった。 それから、ずっと2人は一緒に過ごしていた。 一緒に駆け回って、悪戯をして、叱られる事もあったのに。 いつの間にか、そんな2人の関係は、ひどく冷たくなっていた。 変わってしまったのは、いつだろう。 分からないままリリナシスは、想いを反転させる禁忌薬に手を出してしまう。 ****************************************** こちらは、全19話(修正したら予定より6話伸びました🙏) 7/22~7/25の4日間は、1日2話の投稿予定です。以降は、1日1話になります。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。 ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。 ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。 貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

処理中です...