契約結婚~彼には愛する人がいる~

よしたけ たけこ

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第25話 side アーネスト

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第23話で誤解を招く表現がありました。申し訳ありません。一部修正しました。
アリスの愛する人はアーネストです。m(_ _)m

また、この話より5話ほど主人公不在となります。
モヤモヤされると思いますので、1日2話更新でいきます。

それでは、最後までよろしくお願いします(*^_^*)

~~~~~~~~~~~



私は今日も、仕事の合間に時間を作ってアリスの面会に来ていた。

「アリス、今日も変わりなかったかい?」

いつもの言葉をかける。
今日も変わらず、アリスからの返事はない。
そんなアリスの手を握って、そっと自分の額に当て目を閉じ祈る。

『どうかアリスが目を覚ましますように』

ここまでが、いつもの儀式。

「・・・・・・アーネスト?」

懐かしい声に驚いて顔を上げる。

そこには、目を開いたアリスの姿。

「ア・・・アリス・・・?」

「私、どうしてベッドにいるの・・・?たしか・・・学園で・・・」

思い切りアリスを抱きしめる。

「アリス・・・アリス・・・夢ならどうか覚めないでくれ・・・」

「ちょ、ちょっと、アーネスト?どうしたの?どうして泣いているの?」

これが夢なのか現実なのか分からない。
それでも、嬉しくて涙が止まらない。

○○○

突然、アリスが目を覚ました。

部屋に控えていたメイドが、すぐに公爵様へ報告したようだ。
それからの公爵家は大騒ぎだった。

すぐに公爵様夫妻や使用人達が駆けつけてきて、皆泣いていた。
アリス以外は。

「なんか、アーネスト老けた?お父様もお母様も・・・皆して急に老けた・・・?」

アリスの元に集まって、泣いて喜ぶ皆を見て発した言葉は、そんな一言だった。
アリスらしいその言葉に、その場にいた全ての人の力が抜けたのだった。

それから公爵様の指示で、医師に診察してもらった。
ずっと眠っていたため体は少し弱っているが、すぐに回復するだろうという診断だった。
後遺症は無いだろうと。

奇跡だと思った。

ただ、アリスの記憶は、学園で魔物の襲撃を受けたところで止まっているらしい。
不思議なことに、体の時間も止まっていたかのようにあの頃のままだ。

つまり、目覚めたアリスは身も心も18歳のままだ。

医師の診察が終わった所で、侯爵家に報せを出した。
アリスが目覚めたこと、医師の診察を終えて後遺症も無いとの診断だったこと。
そして今日は公爵家に泊まり、明日邸へ戻ること。

その後は、公爵様夫妻とともにアリスと話をした。

「アリス、君は18年近く眠っていたんだよ。」

「え!?何それ!嘘でしょう!?」

「嘘なんかじゃ無い。私は今年36歳だ。」

「え~~~!!どうりで老けたと思ったわ!」

そんな調子で、アリスが眠っていた間の事をゆっくり話した。
魔物があの後どうなったのか。
アリスがいない卒業式典の様子。
仕事について。
アリスの友人たちのその後のことなど。

しかし、私の結婚の話題については何も話せなかった。
まだ目覚めたばかりなのだから。

・・・18年という時間を考えると、もしかしたらアリスは何か察しているのかもしれない。

○○○

翌日、侯爵家へ戻った。
侯爵家でも大騒ぎになっていた。

「アーネスト様!お帰りなさいませ!」

リチャードが気付いて駆け寄ってくる。

「アリス様が目覚められたというのは本当ですか!?」

「あぁ、本当だ。昨日、突然目を覚ましたんだ。」

「それは・・・。ようございました。」

複雑そうだな。

「あぁ。それで、エレンと話したいから呼んできてくれるか?」

「エ、エレン様は・・・昨日のうちに邸を出て行かれました。」

は・・・?

「昨日のうちに出て行った・・・?」

「さようでございます。昨日、アリス様がお目覚めになったことをお伝えしました。その後、夕食は摂られず、疲れたので早めに休むと仰ってメイドを下がらせたようですが・・・。今朝メイドがお部屋に伺ったときには、既にいらっしゃいませんでした。」

そ、そんな・・・。
いくらなんでも早すぎる。まさかその日のうちに出ていくなんて・・・。

「誰も気付かなかったのか!?そんな遅くに一人で出ていくなんて危険な事を・・・!」

「申し訳ありません!私達も、まさかその日のうちに一人で出ていかれるとは・・・。部屋には手紙が残されていました。こちらは旦那様宛のものです。」

手紙を受け取り、開封する。

『アーネスト様へ
 アリス様が目覚められたと聞きました。
 契約に従い、出て行きます。
 今までありがとうございました。
 どうか、アリス様とお幸せに。
        エレン・ハーディング』

思わず、その場に膝をつく。

「旦那様・・・。」

リチャードに支えられながら自室へ入った。

長年待ち望んだ最愛の人が目覚めた日、大切な人を失った。
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