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第21話 side アーネスト
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あの一件以来、私はアリスに寄り添う時間を増やし、エレンと過ごす時間は最低限にしている。
アリスは相変わらず眠ったままだが、あの時のように容態が悪くなることはない。
「旦那様、もうすぐネイサン様の12歳のお誕生日ですが、どういたしましょう?」
侯爵としての執務をしていると、リチャードに声をかけられた。
「そうだったな。うちに来て初めての誕生祝いか。来年の誕生日には既に魔法学園に入学して寮に入っているだろうし、今回は盛大に祝うことにしよう。跡取りとしての披露目にも、ちょうどいいな。」
「かしこまりました。ではそのように準備を始めさせて頂きます。」
「あぁ、頼む。エレンとネイサンには明日の朝食の時に私から話そう。」
○○○
万全の準備を整え、いよいよ今日はネイサンの誕生日パーティーだ。
私の挨拶についでネイサンも挨拶をする。
本来なら妻であるエレンも一緒に挨拶をするところだが、『私は目立たない方が良いと思います。』と言われてしまった。
自分から距離を置いたくせに、エレンからそう言われると辛く感じる。
私はなんて勝手な男なのだろうか。
多くの招待客の相手をしていると、ふとエレンの姿が目に入る。
久しぶりに会う母と話をしているようだ。
楽しそうなエレンを見ると嬉しいが、その表情が私には向けられない事を寂しくも思う。
そんな自分を自嘲しながら、母に挨拶をするべく二人に近づく。
「エレン・・・。アーネストなんかに、あなたはもったいないわ。あの子と離縁したら、うちへいらっしゃい。私たちとゆっくり暮らしながら、私が良い人を探してあげるわ。そうよ、それがいいわ。」
そんな母の言葉が耳に入る。
エレンが私と離縁したあとに、他の人と再婚する・・・
そんなこと考えたこともなかった。
私のような勝手な男の事も気遣う、穏やかで優しくて素晴らしい女性。
考えてみれば、私と離縁したあとに再婚することも当然あり得る。
頭では分かっていても、そんな事を勧める母に腹が立つ。
「ふふふ。そうですね、それは楽しそうです!」
まんざらでもなさそうなエレンの様子にも腹が立つ。
エレンと母を引き離そうと、エレンに声をかける。
「エレン。魔法学園の学園長がいらしているから、一緒に挨拶を。」
突然現れた私にエレンは驚いている。
母の事は無視して移動しようとしたが、そうもいかない。
「アーネスト、私に挨拶はないのかしら?」
ちっ。
「・・・母上、お久しぶりです。くだらない事をエレンに吹き込まないでいただきたい。それでは。」
言葉少なくエレンを連れて立ち去る。
その後は、エレンとネイサンと3人で挨拶まわりをする。
なかにはエレンに見とれる男もいたりして、内心腹立たしかった。
「ふふふ、エレン様の美しさに見とれる方も多いですね、お義父様。」
さらにネイサンがチクチクと攻撃してくる。
ネイサンに事情を説明してからというもの、ネイサンが少し生意気になったような気がしてならない。
エレンの前では猫をかぶっているのも気にくわない。
「何が言いたいんだ、ネイサン。」
「そんなに睨まないでください。ただ、エレン様は素敵な方だと改めて実感しただけです。誇らしいのではないですか、自分の妻が素晴らしいということなのですから。あ、そうか。本当の妻ではないんでしたね。これは失礼しました。」
・・・本当に憎たらしい。
「アーネスト様?ネイサン?どうかしたのですか?」
「いいえ!エレン様!今日のエレン様はいつにも増してお綺麗だと話していただけですよ!」
「まぁ、ネイサンたら・・・恥ずかしいじゃないですか・・・。」
そうして二人仲良く話し始める。
ネイサンはエレンにすっかり懐いていて、猫をかぶっているが、実は二面性があるようだ。
跡取りとしては、そのぐらいの方が心強いが息子としては扱いにくい。
内心ため息をつきながらも、無事にパーティーは終了した。
アリスは相変わらず眠ったままだが、あの時のように容態が悪くなることはない。
「旦那様、もうすぐネイサン様の12歳のお誕生日ですが、どういたしましょう?」
侯爵としての執務をしていると、リチャードに声をかけられた。
「そうだったな。うちに来て初めての誕生祝いか。来年の誕生日には既に魔法学園に入学して寮に入っているだろうし、今回は盛大に祝うことにしよう。跡取りとしての披露目にも、ちょうどいいな。」
「かしこまりました。ではそのように準備を始めさせて頂きます。」
「あぁ、頼む。エレンとネイサンには明日の朝食の時に私から話そう。」
○○○
万全の準備を整え、いよいよ今日はネイサンの誕生日パーティーだ。
私の挨拶についでネイサンも挨拶をする。
本来なら妻であるエレンも一緒に挨拶をするところだが、『私は目立たない方が良いと思います。』と言われてしまった。
自分から距離を置いたくせに、エレンからそう言われると辛く感じる。
私はなんて勝手な男なのだろうか。
多くの招待客の相手をしていると、ふとエレンの姿が目に入る。
久しぶりに会う母と話をしているようだ。
楽しそうなエレンを見ると嬉しいが、その表情が私には向けられない事を寂しくも思う。
そんな自分を自嘲しながら、母に挨拶をするべく二人に近づく。
「エレン・・・。アーネストなんかに、あなたはもったいないわ。あの子と離縁したら、うちへいらっしゃい。私たちとゆっくり暮らしながら、私が良い人を探してあげるわ。そうよ、それがいいわ。」
そんな母の言葉が耳に入る。
エレンが私と離縁したあとに、他の人と再婚する・・・
そんなこと考えたこともなかった。
私のような勝手な男の事も気遣う、穏やかで優しくて素晴らしい女性。
考えてみれば、私と離縁したあとに再婚することも当然あり得る。
頭では分かっていても、そんな事を勧める母に腹が立つ。
「ふふふ。そうですね、それは楽しそうです!」
まんざらでもなさそうなエレンの様子にも腹が立つ。
エレンと母を引き離そうと、エレンに声をかける。
「エレン。魔法学園の学園長がいらしているから、一緒に挨拶を。」
突然現れた私にエレンは驚いている。
母の事は無視して移動しようとしたが、そうもいかない。
「アーネスト、私に挨拶はないのかしら?」
ちっ。
「・・・母上、お久しぶりです。くだらない事をエレンに吹き込まないでいただきたい。それでは。」
言葉少なくエレンを連れて立ち去る。
その後は、エレンとネイサンと3人で挨拶まわりをする。
なかにはエレンに見とれる男もいたりして、内心腹立たしかった。
「ふふふ、エレン様の美しさに見とれる方も多いですね、お義父様。」
さらにネイサンがチクチクと攻撃してくる。
ネイサンに事情を説明してからというもの、ネイサンが少し生意気になったような気がしてならない。
エレンの前では猫をかぶっているのも気にくわない。
「何が言いたいんだ、ネイサン。」
「そんなに睨まないでください。ただ、エレン様は素敵な方だと改めて実感しただけです。誇らしいのではないですか、自分の妻が素晴らしいということなのですから。あ、そうか。本当の妻ではないんでしたね。これは失礼しました。」
・・・本当に憎たらしい。
「アーネスト様?ネイサン?どうかしたのですか?」
「いいえ!エレン様!今日のエレン様はいつにも増してお綺麗だと話していただけですよ!」
「まぁ、ネイサンたら・・・恥ずかしいじゃないですか・・・。」
そうして二人仲良く話し始める。
ネイサンはエレンにすっかり懐いていて、猫をかぶっているが、実は二面性があるようだ。
跡取りとしては、そのぐらいの方が心強いが息子としては扱いにくい。
内心ため息をつきながらも、無事にパーティーは終了した。
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