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第14話 side アーネスト
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「リチャード、匂い袋の香りが薄くなってきた。新しいものを仕入れてもらえるか?」
「かしこまりました。気に入って頂けたようで何よりです。」
「あぁ、本当に良い品物だ。眠れるだけでなく疲れも取れる感じがする。あれは、どこから仕入れているのだ?他では耳にする機会も無いから不思議に思っていたんだ。」
「・・・。あれは、エレン様がお作りになっているものでして。何でも、大奥様が不眠に悩まれていた折にエレン様にご相談なさって、ご準備くださったとか。」
「彼女が?」
「はい。エレン様は花がお好きなようで、結婚して少し経った頃に大奥様より温室の管理を任されたそうです。邸内に飾られている花も、一部はエレン様がお育てになったものです。」
「そうだったのか。」
「邸内では、エレン様がお育てになった花を見ると元気になると専らの噂ですよ。そういえば、旦那様のお部屋にも飾っているとメイドが話しておりました。」
言われてみれば、いつからか部屋の空気が清々しく、部屋に居ると気分が落ち着いてくると思っていた。
そうか、彼女が育てる花にはそんな効果が・・・?
にわかには信じがたいが・・・。しかし匂い袋の効果は間違いないな。
「他にも、執務の合間や食事の際にお出ししているハーブティーもエレン様お手製のものです。胃腸の調子を整えたり、様々な効能を持つものがあります。」
そうだったのか。
言われてみれば、いつからか体調がすごくいい。胃痛を感じることがなくなったし、食事もしっかり取れる。
体調が良いせいか仕事の進みも良いから、休む時間も取れて効率がいい。
「リチャード、彼女とお茶をする席を設けられるだろうか?」
「!エレン様とお二人でですか?」
「あぁ。匂い袋のお礼を伝えたいと思うのだが。」
「かしこまりました。エレン様にお伺いし、日程調整いたします。」
「あぁ、頼んだ。」
○○○
数日後、彼女が管理している温室でお茶をすることになった。
温室に行くなんて子どもの頃ぶりだろうか。
たしか、祖母が花を好きで作ったんだったような・・・。
祖母が亡くなってからは、花に興味のある人がいなくて誰も気にしてなかったと思う。
そんなことを考えながら歩いていたら温室についた。
中に入り、息を飲む。
なんだろう、すごく生命力に溢れているというか・・・
一瞬圧倒されてしまった。
リチャードに促され温室内を進むと、中央辺りにテーブルセットがあり彼女の背中が見えた。
「エレン様、お待たせいたしました。旦那様をご案内しました。」
こちらに気付いた彼女が立ち上がり振り返る。
その姿に、私はまた思わず息を飲む。
およそ一年ぶりに見る彼女。
彼女はこんなにも綺麗な人だっただろうか?
なんだか光り輝いているように見える・・・。
彼女は19歳になる頃のはず。
大人の女性へと変わる年頃のせいで、こんなにも違って見えるのだろうか?
「・・・・お久しぶりですね?アーネスト様。」
あまりにも私が何も言わないため、彼女が先に話しかけてくれている。
「・・・あぁ、そうだな。」
そう返すのが精一杯で、彼女の向かいの席に腰をおろす。
メイドがお茶を入れ、リチャードとともに少し離れた所へ移動した。
話したいことがあって、わざわざこの席を設けたが、うまく言葉が出てこない。
よく考えてみれば、アリスが眠りについてからというもの。
まともに女性と話していなかった。
いつも眠っているアリスに一方的に話すか、社交や仕事上で挨拶や用件を話す程度しかしていない。
結婚前は侯爵夫人の座を狙って近寄ってくる女性が多かったが、興味もなく面倒なので冷たく突き放していた。
しかし今回は感謝の言葉を伝えたくて自分からこの場を設けたのだ。
きちんと話さなければならないのだが・・・。
一度しかあった事の無い女性、しかもこんなに若くて綺麗な女性。
そして契約関係とはいえ、妻という立場の彼女。
こういう場での話し方がわからない。
困った。
○○○
長い沈黙の後になんとか、今回の目的であったお礼の言葉を伝えることができ、書斎へ戻ってきた。
恥ずかしくて、彼女の事はあまり見ることが出来なかったが、声の感じでは和やかだったと思う。
「エレン様に感謝の言葉を伝えられたようで、ようございましたね。」
ちょうどいいところでリチャードが声をかけてくれて、戻って来られた。
本当に頼りになる執事だ。
「あぁ。リチャードのおかげだ。君にも感謝している。」
「もったいないお言葉です。」
それにしても、今日の彼女には驚いたな。
「リチャード、彼女は・・・」
「エレン様がどうかしましたか?」
「・・・いや、何でも無い。」
「?・・・では、失礼します。」
「あぁ。」
いやいやいや。『彼女は前からあんなに綺麗だっただろうか?』なんて聞こうとしてしまった。
落ち着こう。何を考えているんだ、私は。
「かしこまりました。気に入って頂けたようで何よりです。」
「あぁ、本当に良い品物だ。眠れるだけでなく疲れも取れる感じがする。あれは、どこから仕入れているのだ?他では耳にする機会も無いから不思議に思っていたんだ。」
「・・・。あれは、エレン様がお作りになっているものでして。何でも、大奥様が不眠に悩まれていた折にエレン様にご相談なさって、ご準備くださったとか。」
「彼女が?」
「はい。エレン様は花がお好きなようで、結婚して少し経った頃に大奥様より温室の管理を任されたそうです。邸内に飾られている花も、一部はエレン様がお育てになったものです。」
「そうだったのか。」
「邸内では、エレン様がお育てになった花を見ると元気になると専らの噂ですよ。そういえば、旦那様のお部屋にも飾っているとメイドが話しておりました。」
言われてみれば、いつからか部屋の空気が清々しく、部屋に居ると気分が落ち着いてくると思っていた。
そうか、彼女が育てる花にはそんな効果が・・・?
にわかには信じがたいが・・・。しかし匂い袋の効果は間違いないな。
「他にも、執務の合間や食事の際にお出ししているハーブティーもエレン様お手製のものです。胃腸の調子を整えたり、様々な効能を持つものがあります。」
そうだったのか。
言われてみれば、いつからか体調がすごくいい。胃痛を感じることがなくなったし、食事もしっかり取れる。
体調が良いせいか仕事の進みも良いから、休む時間も取れて効率がいい。
「リチャード、彼女とお茶をする席を設けられるだろうか?」
「!エレン様とお二人でですか?」
「あぁ。匂い袋のお礼を伝えたいと思うのだが。」
「かしこまりました。エレン様にお伺いし、日程調整いたします。」
「あぁ、頼んだ。」
○○○
数日後、彼女が管理している温室でお茶をすることになった。
温室に行くなんて子どもの頃ぶりだろうか。
たしか、祖母が花を好きで作ったんだったような・・・。
祖母が亡くなってからは、花に興味のある人がいなくて誰も気にしてなかったと思う。
そんなことを考えながら歩いていたら温室についた。
中に入り、息を飲む。
なんだろう、すごく生命力に溢れているというか・・・
一瞬圧倒されてしまった。
リチャードに促され温室内を進むと、中央辺りにテーブルセットがあり彼女の背中が見えた。
「エレン様、お待たせいたしました。旦那様をご案内しました。」
こちらに気付いた彼女が立ち上がり振り返る。
その姿に、私はまた思わず息を飲む。
およそ一年ぶりに見る彼女。
彼女はこんなにも綺麗な人だっただろうか?
なんだか光り輝いているように見える・・・。
彼女は19歳になる頃のはず。
大人の女性へと変わる年頃のせいで、こんなにも違って見えるのだろうか?
「・・・・お久しぶりですね?アーネスト様。」
あまりにも私が何も言わないため、彼女が先に話しかけてくれている。
「・・・あぁ、そうだな。」
そう返すのが精一杯で、彼女の向かいの席に腰をおろす。
メイドがお茶を入れ、リチャードとともに少し離れた所へ移動した。
話したいことがあって、わざわざこの席を設けたが、うまく言葉が出てこない。
よく考えてみれば、アリスが眠りについてからというもの。
まともに女性と話していなかった。
いつも眠っているアリスに一方的に話すか、社交や仕事上で挨拶や用件を話す程度しかしていない。
結婚前は侯爵夫人の座を狙って近寄ってくる女性が多かったが、興味もなく面倒なので冷たく突き放していた。
しかし今回は感謝の言葉を伝えたくて自分からこの場を設けたのだ。
きちんと話さなければならないのだが・・・。
一度しかあった事の無い女性、しかもこんなに若くて綺麗な女性。
そして契約関係とはいえ、妻という立場の彼女。
こういう場での話し方がわからない。
困った。
○○○
長い沈黙の後になんとか、今回の目的であったお礼の言葉を伝えることができ、書斎へ戻ってきた。
恥ずかしくて、彼女の事はあまり見ることが出来なかったが、声の感じでは和やかだったと思う。
「エレン様に感謝の言葉を伝えられたようで、ようございましたね。」
ちょうどいいところでリチャードが声をかけてくれて、戻って来られた。
本当に頼りになる執事だ。
「あぁ。リチャードのおかげだ。君にも感謝している。」
「もったいないお言葉です。」
それにしても、今日の彼女には驚いたな。
「リチャード、彼女は・・・」
「エレン様がどうかしましたか?」
「・・・いや、何でも無い。」
「?・・・では、失礼します。」
「あぁ。」
いやいやいや。『彼女は前からあんなに綺麗だっただろうか?』なんて聞こうとしてしまった。
落ち着こう。何を考えているんだ、私は。
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