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第11話
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えぇっと・・・。これはどういう状況・・・?
今の今まで、私は侯爵家の温室でアンとトーマスとお茶をしながら休憩していたはず。
それが、急に頭の中に声が響いたと思ったら、真っ白い空間にテーブルセットだけがあって。
テーブルを挟んで私の向かいには、見たこともないような美しい男性が座っている。
「え・・・っと・・・。ここはいったい・・・?」
「ここは私が一時的に作った空間だ。君とゆっくり話す必要があってね。」
・・・。夢かしら?夢をみているのかしら?
そうよね、きっとそうよ。居眠りしているんだわ。
早く起きないと。
「夢ではない。」
・・・え?今私、声に出してた?
「いいや?私が読んでいるだけだ。」
「はい?」
「このままでは、らちがあかないな。君がエレンか?」
「え、はい、私はエレンという名前ですが・・・。あなたは・・・?」
「私はサミュエル。精霊王だ。」
「サミュエル様ですか。せいれいおう・・・?」
「そうだ。精霊界の王だ。」
「お、王!?え・・・せいれいかい?とは?」
「精霊がいる世界だ。聞いたことくらいはあるだろう。」
・・・え?あの童話に出てくる精霊・・・?おとぎ話の・・・?
その王様・・・?が、目の前にいるの・・・?
えっと・・・、これはやっぱり夢ね。
こんなに疲れていたなんて。
「だから、夢ではないと言っているだろう。確かに精霊界と人間界が断絶されてから久しいが。・・・かれこれ千年くらいは経っているか?人間はすぐに死ぬからな。忘れられていても無理はないか。」
私ってこんなに想像力がたくましかったのね。知らなかったわ。
精霊が出てくる童話なんて子どもの時に読んだきりなのに。
「精霊達が、君は何も知らないと言っていたのは本当のようだな。」
何の話かしら?
「千年ほど前までは、人間と精霊はとても近い存在だった。精霊は人間から魔力をもらい、対価として人間に力を貸していた。しかし、あるとき。世界を壊してしまいたいと願った人間がいた。そしてその人間の持つ強大な魔力に惹かれて精霊が力を貸し、世界は破滅へと向かっていた。」
・・・そういう話、童話にあったわね。
「そこで神がお怒りになり、その人間と精霊に罰を与えた。そして精霊と人間は関わってはいけないと取り決めを作り、精霊界と人間界は断絶した。」
そうだったわ。そういう話だった気がするわ。
「それ以来、千年以上も断絶関係にあったのに、最近になって精霊達がこっそりと人間界にいくようになっていた。そしてその原因が、君だ。エレン。」
「はい?」
「精霊達は、人間界をのぞき見しているときに、たまたま君が育てた植物を見つけた。それはそれは力強く、美しく、輝いていたそうだ。こっそり人間界に侵入して、その植物から溢れる魔力を吸ったところ最高だったそうだ。」
・・・。私が植物を育てるときに注いでいる魔力のことかしら・・・。
「そうだ。すっかり癖になって、しばしば人間界に侵入しては君の育てる植物に宿る魔力を堪能していた。そのうちに君自身にも惹かれるようになり、君の温室ができてからは、以前よりも多くの精霊が侵入し留まるようになった。そして君への感謝の印として、君の願いをこっそり叶えるようになった。」
・・・え?私の願いを叶える・・・?とは・・・?
「君が植物を育てるときに込めている願いだ。」
えっと。『皆が元気になりますように』とか、『グッスリ眠り、一日の疲れが取れますように』とか祈っていた、あれのこと?
「そう、それだ。君の願いが叶うように、植物に効能を上乗せしていたんだそうだ。」
まさか。アンが言っていたのは本当の事だったのか。本当に効果があったなんて・・・。
「まぁ、君に悪気はないし、悪用することもなさそうだから・・・。精霊達には弱い効能にするように言っておく。」
「いいんですか?」
「本当は・・・よくはないが・・・。ここへ来るなと言っても、言うことを聞かないだろうからな。君も気をつけるように。精霊の力を借りられると知られれば、利用されて君が辛い目に遭うかもしれない。最悪の場合、過去と同じ事が起きないとも限らない。」
・・・これは大変な事になったわね。こんな大変な事が私の身に起きるなんて・・・。
気をつけよう・・・。そんな力、私には重すぎるわ。
知らなかったとはいえ、大それた願いを抱かなくて良かった・・・。
「・・・それでは、エレン。また来る。」
・・・え?また来る?
不穏な言葉を残してサミュエル様は消えて、同時に私は温室に戻っていた。
今の今まで、私は侯爵家の温室でアンとトーマスとお茶をしながら休憩していたはず。
それが、急に頭の中に声が響いたと思ったら、真っ白い空間にテーブルセットだけがあって。
テーブルを挟んで私の向かいには、見たこともないような美しい男性が座っている。
「え・・・っと・・・。ここはいったい・・・?」
「ここは私が一時的に作った空間だ。君とゆっくり話す必要があってね。」
・・・。夢かしら?夢をみているのかしら?
そうよね、きっとそうよ。居眠りしているんだわ。
早く起きないと。
「夢ではない。」
・・・え?今私、声に出してた?
「いいや?私が読んでいるだけだ。」
「はい?」
「このままでは、らちがあかないな。君がエレンか?」
「え、はい、私はエレンという名前ですが・・・。あなたは・・・?」
「私はサミュエル。精霊王だ。」
「サミュエル様ですか。せいれいおう・・・?」
「そうだ。精霊界の王だ。」
「お、王!?え・・・せいれいかい?とは?」
「精霊がいる世界だ。聞いたことくらいはあるだろう。」
・・・え?あの童話に出てくる精霊・・・?おとぎ話の・・・?
その王様・・・?が、目の前にいるの・・・?
えっと・・・、これはやっぱり夢ね。
こんなに疲れていたなんて。
「だから、夢ではないと言っているだろう。確かに精霊界と人間界が断絶されてから久しいが。・・・かれこれ千年くらいは経っているか?人間はすぐに死ぬからな。忘れられていても無理はないか。」
私ってこんなに想像力がたくましかったのね。知らなかったわ。
精霊が出てくる童話なんて子どもの時に読んだきりなのに。
「精霊達が、君は何も知らないと言っていたのは本当のようだな。」
何の話かしら?
「千年ほど前までは、人間と精霊はとても近い存在だった。精霊は人間から魔力をもらい、対価として人間に力を貸していた。しかし、あるとき。世界を壊してしまいたいと願った人間がいた。そしてその人間の持つ強大な魔力に惹かれて精霊が力を貸し、世界は破滅へと向かっていた。」
・・・そういう話、童話にあったわね。
「そこで神がお怒りになり、その人間と精霊に罰を与えた。そして精霊と人間は関わってはいけないと取り決めを作り、精霊界と人間界は断絶した。」
そうだったわ。そういう話だった気がするわ。
「それ以来、千年以上も断絶関係にあったのに、最近になって精霊達がこっそりと人間界にいくようになっていた。そしてその原因が、君だ。エレン。」
「はい?」
「精霊達は、人間界をのぞき見しているときに、たまたま君が育てた植物を見つけた。それはそれは力強く、美しく、輝いていたそうだ。こっそり人間界に侵入して、その植物から溢れる魔力を吸ったところ最高だったそうだ。」
・・・。私が植物を育てるときに注いでいる魔力のことかしら・・・。
「そうだ。すっかり癖になって、しばしば人間界に侵入しては君の育てる植物に宿る魔力を堪能していた。そのうちに君自身にも惹かれるようになり、君の温室ができてからは、以前よりも多くの精霊が侵入し留まるようになった。そして君への感謝の印として、君の願いをこっそり叶えるようになった。」
・・・え?私の願いを叶える・・・?とは・・・?
「君が植物を育てるときに込めている願いだ。」
えっと。『皆が元気になりますように』とか、『グッスリ眠り、一日の疲れが取れますように』とか祈っていた、あれのこと?
「そう、それだ。君の願いが叶うように、植物に効能を上乗せしていたんだそうだ。」
まさか。アンが言っていたのは本当の事だったのか。本当に効果があったなんて・・・。
「まぁ、君に悪気はないし、悪用することもなさそうだから・・・。精霊達には弱い効能にするように言っておく。」
「いいんですか?」
「本当は・・・よくはないが・・・。ここへ来るなと言っても、言うことを聞かないだろうからな。君も気をつけるように。精霊の力を借りられると知られれば、利用されて君が辛い目に遭うかもしれない。最悪の場合、過去と同じ事が起きないとも限らない。」
・・・これは大変な事になったわね。こんな大変な事が私の身に起きるなんて・・・。
気をつけよう・・・。そんな力、私には重すぎるわ。
知らなかったとはいえ、大それた願いを抱かなくて良かった・・・。
「・・・それでは、エレン。また来る。」
・・・え?また来る?
不穏な言葉を残してサミュエル様は消えて、同時に私は温室に戻っていた。
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