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第10話
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「エレン様、これはどんな効能があるのですか?」
「・・・あぁ、それね。それは、集中力を高める作用があるわね。リチャードに頼まれたから植えてみたの。」
安眠効果のある匂い袋を作って、邸の皆に好評価をもらってからというもの、私はすっかり嬉しくて調子にのってしまっている。
これまでの人生で、こんなに人に喜んでもらったことも褒められたこともなかったから。
調子に乗って、様々な効能のハーブを温室で育てるようになった。
胃腸の調子を整える作用があるハーブを使ったハーブティー
リラックス効果があるハーブを組み合わせた匂い袋
便秘解消効果のあるハーブを使ったハーブティー
などなど。いろいろ育てて作ってみては試してもらっている。
それに最近はリクエストされる事も増えた。中でも、あの生真面目な執事のリチャードからのリクエストが多いのよね。
意外だわ。執事ってストレスが溜まるのかしら。
「エレン様がお育てになったものは本当に効果抜群ですよね。」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。」
「でも最近はハーブの栽培が増えて、邸に飾るお花は、以前と同じく仕入れたものを飾るようになったじゃないですか?」
「えぇ、そうね。」
そうなのだ。最近の私はハーブの栽培にばかり気が向いて、花は以前よりも少なくなってしまっている。
そのため、邸に飾る分の花までは手が回らず購入しているのだ。
「花が変わってから、前みたいな邸の中の空気の良さというか・・・活気が溢れる感じというか・・・そういうのが無くなった感じがするんですよね。」
「そうなの?」
「はい。他の使用人達もそう話しているんです。」
いくら何でも、そんなことはないと思うのだけど・・・。摘みたての花ではないからかしら・・・?
「以前のように、邸に飾るお花も育てて頂けませんか?」
「そうねえ・・・。全部は無理だけれど・・・いくつかの花瓶には飾れるように、花の数を増やしましょうか。」
「ありがとうございます!」
気のせいだと思うのだけど・・・。でも、こんなに嬉しそうにしてくれるのなら花を飾れるように頑張るわ。
○○○
アンからの希望で、温室で栽培する花の量を増やして、邸に飾る花の半分くらいをまかなうようになった。
「エレン様!やっぱりエレン様がお育てになった花は違いますね!エレン様の花を飾るようになってから、やっぱり皆元気が出るみたいです!」
「そう言ってくれるのは嬉しいわ。ありがとう、アン。」
私からすれば、やはり思い込みではないかと思うのだけど。それでもこうやって嬉しそうにしてくれて、お礼まで言ってくれるのは本当に嬉しい。
私にも人を喜ばせることができるのだと思うと・・・。嬉しすぎて涙が出そうになる。
ずっと実の両親にも弟にも愛されず、役立たずだと言われて育った。
結婚相手からも見向きもされず、一生愛される事も無い。いつの日か、急に捨てられる。
それくらい自分には価値がないのだと思っていた。
でも、こんなに私が育てたものを喜んでくれて、もっと欲しいと言ってくれる。
私にも生きる価値があるのだと、そう思わせてくれる。
家族からも誰からも愛されないと思っていたけれど、それでも私は一人じゃないのね。
そう思えて、心からアンに感謝している。
『ほぉ、君か。ここのところの異変の原因は。』
急に頭の中に声が響いた。
「え?」
「・・・あぁ、それね。それは、集中力を高める作用があるわね。リチャードに頼まれたから植えてみたの。」
安眠効果のある匂い袋を作って、邸の皆に好評価をもらってからというもの、私はすっかり嬉しくて調子にのってしまっている。
これまでの人生で、こんなに人に喜んでもらったことも褒められたこともなかったから。
調子に乗って、様々な効能のハーブを温室で育てるようになった。
胃腸の調子を整える作用があるハーブを使ったハーブティー
リラックス効果があるハーブを組み合わせた匂い袋
便秘解消効果のあるハーブを使ったハーブティー
などなど。いろいろ育てて作ってみては試してもらっている。
それに最近はリクエストされる事も増えた。中でも、あの生真面目な執事のリチャードからのリクエストが多いのよね。
意外だわ。執事ってストレスが溜まるのかしら。
「エレン様がお育てになったものは本当に効果抜群ですよね。」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。」
「でも最近はハーブの栽培が増えて、邸に飾るお花は、以前と同じく仕入れたものを飾るようになったじゃないですか?」
「えぇ、そうね。」
そうなのだ。最近の私はハーブの栽培にばかり気が向いて、花は以前よりも少なくなってしまっている。
そのため、邸に飾る分の花までは手が回らず購入しているのだ。
「花が変わってから、前みたいな邸の中の空気の良さというか・・・活気が溢れる感じというか・・・そういうのが無くなった感じがするんですよね。」
「そうなの?」
「はい。他の使用人達もそう話しているんです。」
いくら何でも、そんなことはないと思うのだけど・・・。摘みたての花ではないからかしら・・・?
「以前のように、邸に飾るお花も育てて頂けませんか?」
「そうねえ・・・。全部は無理だけれど・・・いくつかの花瓶には飾れるように、花の数を増やしましょうか。」
「ありがとうございます!」
気のせいだと思うのだけど・・・。でも、こんなに嬉しそうにしてくれるのなら花を飾れるように頑張るわ。
○○○
アンからの希望で、温室で栽培する花の量を増やして、邸に飾る花の半分くらいをまかなうようになった。
「エレン様!やっぱりエレン様がお育てになった花は違いますね!エレン様の花を飾るようになってから、やっぱり皆元気が出るみたいです!」
「そう言ってくれるのは嬉しいわ。ありがとう、アン。」
私からすれば、やはり思い込みではないかと思うのだけど。それでもこうやって嬉しそうにしてくれて、お礼まで言ってくれるのは本当に嬉しい。
私にも人を喜ばせることができるのだと思うと・・・。嬉しすぎて涙が出そうになる。
ずっと実の両親にも弟にも愛されず、役立たずだと言われて育った。
結婚相手からも見向きもされず、一生愛される事も無い。いつの日か、急に捨てられる。
それくらい自分には価値がないのだと思っていた。
でも、こんなに私が育てたものを喜んでくれて、もっと欲しいと言ってくれる。
私にも生きる価値があるのだと、そう思わせてくれる。
家族からも誰からも愛されないと思っていたけれど、それでも私は一人じゃないのね。
そう思えて、心からアンに感謝している。
『ほぉ、君か。ここのところの異変の原因は。』
急に頭の中に声が響いた。
「え?」
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