契約結婚~彼には愛する人がいる~

よしたけ たけこ

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第9話 side アーネスト

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結婚してから、気付けば半年以上が経っていた。
とは言っても、私の生活は基本的に何も変わっていない。

早朝に起きて、軽く朝食を済ませたら家を出る。
公爵家に伺って、アリスの顔を見る。しばらくアリスに寄り添ってすごしたら、仕事へ向かう。
仕事が終わったら公爵家へ向かう。そしてアリスの傍でその日にあった事を話しながらゆっくり過ごす。
侯爵家へ帰ったら、侯爵としての仕事をする。そして湯浴みをして休み、朝になればまた同じ事の繰り返し。

妻となったエレンとは、挙式以来一度も顔を合わせていない。
けれど、それも特に気にしたことはない。
書類上の妻になっただけで、私からすれば他人だ。

両親とは仲良くしているようだし、侯爵夫人としての仕事も母から移行し始めているようだ。
そろそろ、養子を迎える準備を始めなければ。

養子については、前から目星を付けてある。
アリスが目覚めたとしても、15年以上も眠っているのだから子どもを持つのは体の負担になるだろう。
だから、アリスとの間に子どもを持つつもりはないのだ。

遠縁から優秀な子を養子として迎えて、できれば早いうちに爵位を譲ってしまいたい。
そうすれば、アリスが目覚めていてもいなくても、今よりも長く傍にいることができる。

○○○

王宮での仕事に、侯爵家の仕事、アリスとの時間に加えて養子を迎える準備も加わって最近はかなり疲れている。
仕事もアリスとの時間も減らすことができないので、必然的に睡眠時間が削られている。
それが疲労の一番の原因のように思う。
さらには、短くなった睡眠時間さえもよく眠れなくなっている。

「旦那様、最近あまり眠れていないように見受けます。」

日に日に目の下のクマがひどくなる私を見かねたのか、執事のリチャードが声をかけてきた。

「あぁ、ここのところ忙しいのに寝付きが悪くてね・・・。」

「さようでございますか。実は最近、安眠効果のある匂い袋を入手しまして。お使いになってみますか?」

安眠効果のある匂い袋?聞いたことがないな・・・。最近でてきた商品か?

「それは初めて耳にするものだな。本当に効果があるのか?」

「はい。私も使っているのですが、本当にグッスリ休めて疲れが取れるのです。」

ほぉ・・・。リチャードが言うのなら試してみる価値はあるな。

「リチャードがそこまで言うのなら使ってみよう。」

「ぜひとも!では、こちらを枕元に置いてお休みになってください。」

そうして、その日の夜はさっそく匂い袋を枕元に置いて目を閉じた。

○○○

コンコン

「旦那様。お目覚めでしょうか。」

「・・・・・」

コンコン

「旦那様?お時間ですが、お目覚めでしょうか?」

「・・・・・ん?」

つい先ほど目を閉じたと思ったら、もう朝か・・・?
目を開けると、すっかり日が昇って部屋が明るくなっている。
こんなにグッスリ眠ったのはいつぶりだろうか。

「旦那様?」

「あぁ、すまない。起きている。入ってくれ。」

「失礼いたします。あまりにも返事がありませんでしたので心配いたしました。体調でもお悪いのでしょうか?」

部屋に入ってきたリチャードが心配そうに見ている。

「いや、むしろその逆だ。久しぶりに良く眠っていたようで、リチャードの声で目覚めたのだ。反応が遅くなって申し訳なかったな。」

私の返事を聞いて、リチャードは安心した表情にかわる。

「それはようございました。やはり匂い袋の効果はバッチリのようでございますね。」

「あぁ。疲れも取れて、気分が良い。良い品を教えてもらって良かったよ。」

「恐れ多いことでございます。」

それからというもの、安眠匂い袋は私の必需品となった。


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